選択権
ユナはテーブルの上に置いておいてある水差しから茶碗に水をいれてファンリーに渡す。
ファンリーはごくごくと水を飲み干す。
ふぅ
ファンリーは息を吐き落ち着く。
ファンリーはユナをじっとみる。
目が合う。
えっ
「やっぱり、似ている」
ユナとファンリーは見つめ合いながらしばらく沈黙が続く。
言わないといけないよな。
ファンリーは頭をかきはじめる。
「頼みたい事がある」
「どんなことでしょうか?」
わたしは何もできないお願いされてできる事が見当たらない。カタカタと体が震える。
そうだよなぁと小さな声でつぶやく声が聞こえた。
「娼館からでる金はだすからある方の身代わりになってほしい」
「身代わり?わたしに?」
この国でまっすぐ長い黒髪は珍しいが隣国のヨウ国にはほどほどにまっすぐで長い黒髪の女性はいる。隣の国へ行けばいいだけだ。なぜここで身代わりを調達しなければならないか。
ファンリーは頭から嫌な顔を思いだした。
国の官を管理している大臣の顔だ。
「この国から身代わりをだせばいい?はぁ。そのが者が無事に戻っても戻らなくても後々面倒な事になる。後腐れない者を向こうの国で探せ」
ファンリーを馬鹿にした顔でみる。
簡単に言ってくれるよな。
「ある方をこの国から逃がしたい」
「ある方?」
このヤカモズ帝国とヨウ国は国交はある程度制限はあるが人が普通に行き来する事はなんでもない事だ。
身代わりをしないとこの国をでられない人?
「危険な事?」
「そうだ。だから頼んでいる。ここにいる方が安全だと思う。危険があるが身代わり期間が終われば自由できる様に何とかすると約束する」
この男は優しいのだ。場末の娼館の女など有無を言わさずお金を払いすればどうとでもなる。それなのユナに選択をさせている。
ここにいればどうなるかわかっている。ついていけば危険でも何か変わるかも知れない。未来が見えなかったユナは扉の隙間から見える明かりほどの明かりだが未来が見えた気がした。
「はい。できるかどうかわからないけどやってみます。」