逃げる算段
「逃げる話は明日にして今日はゆっくり二人とも休んだ方がいい」
ヤム家族と一緒に雑魚寝だが久しぶりの屋根の下でファンリーとユナはぐっすり眠ることができた。
朝になりヤムが起きると呆れてしまった。
ファンリーの腕の中にユナが入る形で二人は抱き合って寝ていたのだ。
ヤムの視線を感じたのかユナが目が覚めた。自然にファンリーの腕をそっと外しヤムにあいさつした。
「おはようございます」
「おはよう」
ヤムは大きなため息をついた。
「何もなさそうだし道中そのほうが安全だろうからね」
ユナはヤムが何を言っているのか理解できずにきょとんとしていた。
ヤムは安心しきって寝ているファンリーにイライラして家中響く大きな声で耳元であいさつをした。
「おはよう!」
「うぁぁ」
そのあまりの声の大きさにファンリーは変な声を上げて目覚めた。
「朝食の準備をするから手伝いな」
声をかけてヤムは家の外にでていった。
朝食が終わりヤムに言われるがままファンリーとユナは畑に入り手伝いをしていた。
髪の色で遠くから見てもヨウ国人とわかる為、二人には麻でできた布を頭に巻いて作業をしていた。
朝は日差しが弱かったが段々強くなり汗をかき始めた。
そんな頃、一人の若いルセ人が訪ねてきた。
ファンリーは警戒してユナの前にでてユナを隠した。
作業をしていたヤムも手をとめて手を大きく手を振った。
「大丈夫だよ。怪しい人じゃない。わたしの息子ラエルだよ」
ヤムを見つけるとラエルはヤムまで駆け寄った。ヤムは息子のラエルに城の事を調べてきてもらっていた。
「母さん、かなり難しい事になっているよ」
ユナはどこかで見た事があるとラエルの顔をじっと見た。
その視線に気づきラエルはユナを見てにっこりと笑った。
「あ、どこかで見た事があるような気がしたので」
視線を送っていた事の理由を慌てて話した。
「姫様でいいかな。何度か城で会っているんだ」
「え?あ、姫じゃなくてユナでお願いします」
「じゃぁ、ユナさんでユナさんが気付くはずないけど僕は部屋の隅で待機していて誰かに呼ばれたら返事をするって、ようするに小間使いだねそんな感じでいたんだよ」
「あ!」
ユナはなんとなく思い出したデロイドが気に入ってラエルにいろいろ頼んでいた事思い出した。ほんの少しだけユナは顔くもらせた。その顔の変化にラエルは気付いた。デロイドが気にっている理由でもあるがラエルはささいな人の機微を感じる事ができた。
「心配しなくてもいいよ。デロイド様派ではないよ。母はまがった事が嫌いなこんな母だからね」
あははと笑いラエルはヤムの顔を見た。
「ラエル、難しいってどんな風に難しい何だい」
「姫を探すのにかなり大がかりになっているよ。町や村で少しでも怪しい人がいたら役に連れていかれてる」
「ここも時間の問題かね?」
「いや、この村は大丈夫っぽい。ここら周辺の村に手配が回ってるって話になってるのに実際には回ってない。ハイン様あたりが何か操作しているみたいだ。でもヨウ国に向かう道となるとかなり厳しい検問がある」
うーんとヤムは腕を組み悩んだ。
時間がたてばたつほど不利になるし、万が一見つかって家族を巻き込む事になったらとヤムの胸は痛んだ。
「このままユナさんがつかまっても僕も嫌な感じがする。おじいに頼んでみたら?」
「おじい?」
「父さんのお父さんじゃなくて母さんのお父さんの方だよ」
ヤムはかわりものの父親の顔を思い出した。
「ああ」
そして曖昧な返事をした。