嘘がつけない人
デロイドは断りもなくずかずかとファルークの部屋に入ってきた。
「父上、どうしたんですか?」
ファルークは質問をしながら横を向く。
冷静を装ってはいるがファルークを知ってる人なら何か隠してる事はばればれだろうとわかる態度をとっていた。
デロイドはファルークの顔みると睨みつけ、うむを言わさず顔をなぐりつけた。ファルークはなんとか倒れそうになるのをこらえ、なぐられた頬に手をあてた。
「いきなり何するんです」
デロイドは怒りでファルークの言葉さえ入ってはいない。
「お前が姫に興味をもっていただろう。どこにやった」
「え」(なんで)
デロイドはやっぱりと確信した。今度はかなり力を込めて再びファルークを殴ろうとした。
危険だと思った侍従は足に縋り付いた。
「衛兵、とめろ私が責任を負うのでデロイド様をおとめしろ。一人はセナータ様を呼びにいってこい」
恐る恐るながらも衛兵はデロイドを後ろから羽交い絞めにした。
「何をするんだ。許さんぞ」
デロイドは両手を強めに振った。衛兵もこの手を離したら人生の終わりが見えていそうで必死になって止めた。
しばらくの間そんなやり取りをしているとセナータがやってきた。
乱れた姿をみた事がいないというぐらいきっちとしていたセナータだったが酔っ払い衣服が乱れた姿で現れた。
「デロイド様おやめください」
デロイトはセナータの声には反応を示し我に返った。
「セナータか」
セナータの乱れた姿に面白可笑しそうに笑う。
「デロイト様、おやめください。ファルークは何も知らないと思います」
「どうだか」
「私が探して見せます。ルセからヨウ国に出る道などきまっております。必ず見つけ出します」
「お前ならそのまま返した方いいんじゃないか?隠れて逃がす算段じゃないのか?」
「いいえ。違います。デロイド様のおっしゃる通り離婚します。そして姫と結婚するなりすればいい。ただし次の領主はなにがあってもファルークです」
デロイドはセナータの前にやってきてセナータの乱れた髪の毛をさわる。
「すました顔よりずっとそそるな」
セナータはその手を振り払った。
「母上!」
ファルークは悲鳴のような声で母親を呼ぶ。
デロイドはファルークの顔をみてセナータに返答した。
「いいだろう。領主はファルークだ。すぐにかわってやる」
セナータは硬く拳を握った。乱れた髪と衣服を戻した。
「すぐに姫を探させるように手配をします」
セナータは姫探しを手配させるよう侍従に支持をだした。その指示に従い侍従は部屋を退出した。
納得が得られる答えがでたので機嫌よくデロイドがファルークの部屋からでていった。
ファルークは床に手をつく。
どうしてこうなったんだ。
セナータはファルークに近寄って来てファルークの顔を上げさせて優しくさわる。
「母上」
いつもは厳しく一般の領民の母がするような事はしないがセナータはファルークをぎゅっと抱きした。
「あなたは何も心配しなくていい。この母に任せておきなさい」
セナータは覚悟を決めたのだった。