君と私×僕と君
気づいたらいつも僕は彼女のことを目で追ってる。
気づいたら不思議と私は彼のことを考えている。
高校は違うけど、駅のホームでいつも一緒になる。
一回だけ、僕は彼女と話したことがある。
一回だけ、私は彼と話したことがある。
僕が駅のホームで立っていたとき、背中に背負っていたバックパックが小刻みに揺れた。
最初は誰かが当たっただけだと思って気にしないようにしていた。
でも、また小刻みに揺れたので僕は後ろを振り向いてみた。
すると女の子が僕の足元を指差して言った。
「あの、イヤフォン……」
「あ、ありがとう。すみません」
自分の服のポケットから地面に落ちていたスマホのイヤフォンを急いで拾って答えた。
その後すぐに電車が来て僕と彼女は違う車両に乗った。
僕が彼女のことを意識するようになったのはそれからだったと思う。それまでも彼女とはホームで何度もすれ違っていたばすなんだろうけど……,。
僕はイヤフォンを耳にかけて音楽を流した。
(あっ、あの人……イヤフォンを落としてる)
言ってあげたほうがいいのかな?
でも、なんか恥ずかしいな。いつも駅のホームで会ってるけど話したこともないし、挨拶だってしたこともない。
けど、このまま彼が落としたことに気づかずに電車に乗っちゃったら無くして困るだろうし。
(どうしよう? なんて声かけたらいいのかな……)
私は線路のほうを見ている彼の後ろにいってバックパックを優しく叩いてみた。
でも、最初は反応がなかった。
だからもう一度さっきより少し強めの力で叩いてみた。
すると彼が後ろをこちらを振り向いたので、足元を指差した。
「あの、イヤフォン……」
私がそう言うと彼は慌てた様子で足元のイヤフォンを拾い上げて服のポケットに入れた。
「あ、ありがとう。すみません」
そしてすぐに電車が来て私と彼は別々の車両に乗った。
「……言えて良かった」
そっと呟いて私は自分のスマホのイヤフォンを耳につけて音楽を流した。