自分の命を天秤にかけたとして、それが動くことなどありえるのだろうか。
私は今、とある所に向かっている。
(質問に答えて1000万円ゲット)
張り紙で見つけたうまい話。
普通ありえない話であるが、これが嘘で、待っているのが死であっても私はそれを受け入れられる。
そんな、心持ちであった。
紙に書いてある場所についた。
何もない所にポツンと一軒白い家が建っている。
家と呼べるかも怪しいような扉が一つあるだけのそれ。
さすがの私もためらう。
しかし、時間をかけて来たので何もなく帰るのも何だと思い恐る恐る扉を開ける。
そこから見えたのは机と、その上にある紙。
私は扉を開けたままでその紙を手に取る。
(赤のボタンを押したらお前が死ぬ。緑のボタンを押したらお前とは関係の無い誰かが10人死ぬ。どちらのボタンでも押した瞬間に報酬と扉の鍵を与える。)
ガチャッ 私がその文を読み終わってもいない時に後ろから音がした。
私は扉に駆け寄る。
案の定扉には鍵がかかっている。
一瞬の静寂の後、ガタンッという音がして
二色のボタンが天井から落ちてきた。
「私一人の命か誰か知らない奴十人の命?」
私はそう言って紙をグシャグシャにした。
「死であっても受け入れる、か。」
私は先程心の中で思っていた事を口に出して復唱した。
私は赤のボタンの上に手をおいた。
そんな簡単に人が死ぬか? そうだ、全部嘘かもしれない。
テレビの企画か何かかもしれない。
大丈夫。大丈夫だ。
私は手に体重をかけようとした。
しかしできなかった。
深呼吸。
押したところで私は死なない。
これは嘘だ、全てが嘘。
嘘? 嘘なら、どっちでもいいよね?
そうして、赤のボタンから私は手をどけて緑のボタンに手を伸ばす。
嘘だから大丈夫だ。
緑のボタンに手をおいた瞬間、なんだか気が楽になった。
そうだ、よく考えたら私の知らない所で私の知らない誰かが死ぬ。
そんな事、毎日のように起こっているではないか。
気の抜けたように私は緑のボタンを押した。
、、、
鍵と金が私の目の前に現れた。
私はそれを持って家に帰った。
何も無い、私には関係無い。
(ニュース速報です。道路で爆発が起こりました。爆発の発生元は社会人の男性と思われ、近くにいた男性の知人によると爆発手前に何か聞こえると言っていた模様です。)
(同じ時間にこのような事例が10件発生しており、同一人物による計画的犯行である可能性も、、、)
金を手に入れた私はしばらくは遊んで暮らした。
金がなくなってもう一度したいと思ったが、あの場所にはもう何もなかった。
金がなくなってしばらく時間が経って、私はもうそんな話、記憶の片隅にある程度だった。
(あなたは、十人の内の一人に選ばれました。)
突如、耳元で囁かれたような声。
ああ、
私は自分のした事を理解した。