逃げて追われて焦がれて避けて

恋愛を駆け引きだという人が居る。

違うわ。

そんなの間違ってるわ。

駆け引きや打算の上にある恋愛なんて、たかが知れてる。

こうも、本当にこうも傷付くほどに真正面から挑まなければいけないのが、本当の恋愛なのだろう。

相手がこちらに向かなければ痛いし、向いてくれれば嬉しいし、当たり前だけど。

やっぱり痛い思い何かしたくないし。

あとやっぱり思いが通じ合う事の素晴らしさって他には無いと思う。

愛し焦がれた思いが通じ合うなんてとても素敵なことだと思うの。

でもね、こんなに幸福なことが続くと途端、怖くなるのよ。

手の中の砂のように、いつの間にかサラサラとこぼれ落ちてしまって、気が付いたときにはもう無い。

そんな不安に駆られて、まるで確かめるようにしてしまう。

あんなに真正面から向き合っても、お互いに試し合ってしまう。

どうしようもない不安に襲われて、確かなことなのに、それを信じられなくなる。

あぁ、そうして思い知るのよ。

恋愛を駆け引きなんて揶揄した人の気持ちが、ここまで来なければ理解は出来ない、そこまで辿り着いた人にしか判らない、永遠に解けない魔法のように、熱病のようにみんな此処に辿り着いてしまうのよ。

相手をどれほど信じても、何処かにほころびがあるのでは無いか？と何処かに、疑いを持ってしまうのよ、そうして、それがその思いが自分にも向けられてしまうのよ。

哀しい、寂しい。

あれ程好きで好きでどうしようもなくて、心が悲鳴を上げるほど、あれだけ愛を求め捧げ与えられて受け取っていたのに。

そうして、凪いだ先に、永遠で不変的な愛の形があって、でもそこまで辿り着ける人は少なくて、言い訳と自分を騙すことで納得して、そうやって産まれるのもまた愛の形で、手放すとなると惜しくて、でもあるひ突然、ポンと興味を失って、まるで無かったかのように、簡単に止めることができてしまう。

あぁ、そうか。

愛とは恐ろしい物なのだわと初めて気が付いて恐れ戦いて逃げ惑って捕まって捕らわれて再びこの無限の中に放り込まれて、そして、それがとてつもなく心地の良い事だと気が付いて、そしてまた、溺れていく。

あぁ、呼吸の仕方を忘れた、生き物が姿を変えていったように、私達も愛する度に愛する方法を仕方を変えていく。

もっと上手く、もっと深く、もっと…もっと…求めるように。

救われない程の深みへと向かって。

ただ、一つの愛を求めて、奥へ奥へ。

逃げられなくなっていく。