ラストバトル開始 魔王との対峙。
魔王城内部。
魔王は、ある時、ある異変を感じた。
魔王城は、城と言いつつも、無機物的な構築物ではない。
いわば魔王の肉体の延長線上にある。この城に誰かが侵入した際、それがすぐに分かるのである。
そして、ほんの数舜前。この城には自分たち以外誰もいないはずだった。
先ほどまで、ずっと変わらずに巨大な心臓を叩く怪物。そして自身だけがいたはずだった。
なのに・・なのにたった今、彼にとって『不快』な存在が、城の深くまで侵入していることを感じ取っていた。
(何・・・?)
その存在は、城の何層にもおける壁を魔法で吹き飛ばし、、
ドガァアアアアアアアアア!!!
「ッッ・・・!!!」
目の前に現れる。それこそが異物の正体。
そうそれは・・いや彼は、
「・・やあ」
「ッ!!??」
斎藤優斗。
彼を認識し、魔王は、
「クククッ」
思わず笑みがこぼれた。
奴なら何か予想外のことをしてくるだろう。
こういった事態が起こりうることを予測していたことには変わりはない・・が。
内心、魔王は、動揺していた。
神と近しい存在である故に、精神力も強靭ではあったが、、
それでも魔王は、ほんの1ミリほど、
目の前にいるたった一人の勇者程度にに、
恐れていたのである。
「ッッ・・・!!」
そして、それを、その恐怖を。
「クックックック・・・」
『嘲笑』で吹き飛ばす。
「アーッハッハhッハッハ!!アーッハッハッハッハhッハ!!」
同時に湧き出るオーラ。色に例えるなら混沌の黒の圧が、
この部屋に満たされる。
常人ならば、それだけで即死だっただろう。
だが、それによって、彼は身じろぎさえもしない。
そして・・告げる。
「魔王。今日、この瞬間、、お前を討伐する」
それは、以前の優斗だった。
目的のためならば、心さえも殺す。
絶対零度の、冷え切った声。
それに対し、魔王は、さらにオーラを増幅させて、地の底から響くような声で答えた。
「ハハハッ・・!抜かせ、お前ひとりごと気に何ができる?」
そんな威嚇のような声に、
「一人、か」
それに対し、いたって平常心で首を振る。
「違う。この力は、僕だけでは手に入らなかった力だ。
師範だけじゃない。マージョリー、アンジェリカ、ポチ、東堂西園寺南雲北条、この世界の人々、そして、百花」
いたって真面目に答えた彼に対し、魔王は、
「くくく、なるほどな。これから『死ぬであろう』、その仲間に支えてもらって・・といったところか」
「そうだ」
そして・・と、優斗は続ける
「それはお前も同じことだろう?」
「・・・何?」
「師範、、そして僕の友達の力を奪いお前は今その力を手に入れた」
「・・・」
予想外の言葉だったのだろう。
怪物は目を見開くと、
「くくく、確かに・・な」
笑いながら、これまで奪ってきた命を思い浮かべながら、返す。
「我々魔王は、愚民から奪うことで強くなってきた
そしてこれからも、ずっと我は奪い続ける。今貴様が言った仲間の力もな!!
故に我は最強・・!!」
そのおぞましい思想に対し、彼は静かに、
「そうだ。お前は奪い続けてきた。
そしてこれからも奪い続けるのだろう。
でも・・ね」
まるで死に際のレクイエムのように、静かに告げた。
「だからこそ、
お前は『弱い』」
「ッ・・・!?」
「お前が自分一人で培ってきた力など、一つもない。
多くの誰かから奪ってきたその力。
それはたやすく貴様の手から零れ落ち、
そして憎悪に変わってお前に復讐しに帰ってくる」
「そんな・・そんなわけないだろう・・?
この力はわれのもの・・」
「そんなお前の命は、弱いという言葉ですら生ぬるい。
そう、お前を一言でいうなら・・」
「我は強い。我は最強なはずだ。」
「お前はもう『終わってる』んだよ。魔王」
「・・抜かせっ!」
そして、最後の戦いが始まる。