修行からの帰還
暗闇の中、どれだけ修行しただろうか。
がむしゃらに、適切に休息を挟みながら、僕は魔力の流れ、肉体の感覚を掴んでいく。
1か月後。なのだろう。最近時間の感覚が薄れてきたのだが、砂の容量から計算すると、そのくらいの頃だった。
ふと、この暗闇の中で一つの光が発せられ、ゲートから銀色のドラゴンロボット・・いや、『師範』が現れた。
宣言通り様子を見に来たのだろ
「久しぶりじゃな優斗。とりあえず一か月間。どんな風に仕上がって・・」
そして、師範は突然黙り込み、こちらを注視すると、
「・・・・!!」
何か驚いたかのようにカシャン、と。機械の目を見開いた。
「師範?」
「き、貴様、今まで何をしてきて・・!!」
「え?それは・・師範の言った通りのことを。それと、自分なりに特訓方法を工夫したのですが・・・」
「・・・・」
「師範?」
師範は機械の目を数秒間ぱちくりしている。
そして、尋ねた。
「それは、自分で作ったのか?」
「? ええ、まあ」
彼が指さしたのは、金属生成で人型に加工した鉄の道具・・関節に球体などを取り入れ、稼働しやすくし、
さらにそれを金属製性や魔力で動かすことによって、格闘用の人型即席ロボットをいくつか生成していたのである。
約三十体ほどのそれを、半分自律的に動かし、自分の体術を極めるために今手合わせをしていたのだ。
「・・・まったく、お前という奴は」
「何か問題でも?」
「いや、予想以上じゃ。これなら無事に
予定通り』魔王を倒すための『術』を、身に着けることができそうじゃ」
「はい、よろしくお願いします!!」
それから・・この三年間、外の世界では三日間だっただろうが。
師範に色々と新しい知識を教わり、修行方法を教わり、時には手合わせして・・
そして――現在に至る。
作戦決行にあたり、冒険者たちは全員城の中で集合していた。
たった今まで戦っていたのだろう。ボロボロの冒険者たち。息で肩をしているものもいたが、目は確かに光が宿っていた。
この三日間。作戦の準備やしもべたちの処理など、大忙しだっただろう。
彼らが期待を込めてみるのは、この僕。
彼らが稼いでくれたこの数日間。それを僕が引き継ぎ、そして・・
『魔王を倒す』。その予定になっているはずだ。
だが、そうと聞かされていても、本人を目の前にしなければ、半信半疑なのだろう
故に、僕はその期待を込めた幾多もの視線に、自信、いや、確信をもってうなづいた。
「・・・!」
その一瞬で、理解したのだろう。
いまや、僕にとってこの戦いは、十分勝機があるということに。
そして、冒険者が次々と神の間に入り込んでくる中、見知った顔が。
「優斗!!」「優斗さん!」「優斗殿!!」
マージョリー、アンジェリカ、北条、その他三名の勇者たちは、僕の顔を見るなり駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!!」
そして、妹の百花も。
「大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫。それどころか、今までより一番調子がいいんだ」
「そうなの?良かった・・!」
しかし、彼女はうつむいて、悔しそうに拳を握った。
「・・・でも、この作戦、お兄ちゃんは・・」
「ああ、すでに師範から聞いている」
元々魔王が謎の異常な成長を遂げる前に立てていた作戦を、師範が新たに調整したのが今回の作戦だ。
そして、、そう、この3年の修行。
それで新たな力を得たのは、すなわちこの作戦のかなめ、魔王を直接討伐するための役目を与えられたのである。
「お兄ちゃん、こういうのもなんだけど、あの魔王、ここからでもかなりの邪気を感じる」
「うん、わかっている」
「私なら、少し近づくだけで発狂してしまうと思う」
「ああ、でも僕なら大丈夫だ」
「でも、でもっ!私が城に引きこもって、お兄ちゃんを危険な目に合わせるだなんて・・」
「百花・・」
彼女が言いたいことは分かっている。
逆ならば僕も同じことを思っただろう。
しかし、それは少し前までの話だ。
今や、魔王は『僕の敵ではない』。
魔王が強くても、いや、強いからこそ、勝つことができる。
完封することができるであろうことが理解できる。
だが、それをしらない彼女・・そして僕のパーティ、冒険者たちは不安だろう。
その不安を払拭するために、僕は、
「皆、見てくれ!」
この修行で得た新たなる力を発現してみせた。
「これが、僕の新しい力・・●×▲だ!!」
そして、そこにいた全員に僕の実力を納得してもらうと、早速城壁の外へと向かう。
何をしに?
当然、今から魔王を倒しにだ。
街中の人々に声援を受けながら、僕たち冒険者は定位置についた。
そして、色々な準備を行い、
作戦決行まで・・・・
・・・・残り1時間。
目の前にはモンスターが暴れまわっている。
しかし、その攻撃や騒音がこちらに届くことはない。
何故なら神々が等間隔に手を広げて結界を張っているからだ。
そのおかげで今のところは安全。
だがあくまで『今のところ』だ。
先ほどから疲弊している神もちらほらいる。
バリアもところどころほころびが出てきている箇所もあった。
人員はぎりぎりなのだろう。これだけの広い面積をカバーしているのである。
もってあと数日といったところだろうか。
だが、心配いらない。
作戦が発動すれば、この包囲網を突破することができる。
それに、心強い仲間もいるのだ。
そう、周囲は、静かで静謐な空気で満たされていた。
当然だろう、ここにいるのは、精鋭である数多くの冒険者たち。
その顔つきは、先日とはまるで違う。
この三日間。彼らは神々と協力し、魔王のしもべと死闘を繰り広げていたのだろう。
冒険者たちの実力は、最初会った時からトップクラスだと感じていた。、
だが、今の彼らはそれ以上。異常な速度でパワーアップしている。
そしてそれは、僕のパーティメンバーも同じ。
ここに静かに待っている、アンジェリカ、東堂、西園寺、南雲、北条もまた、雰囲気だけでも別人のようだ。