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機械仕掛けのドラゴン




「・・・何を絶望しておる?」


「「!?」」



 咄嗟に剣を生成して構えた。


 ほこらには既に冒険者や神々は出払っている。


 そして、その声は、全くの無警戒な位置から発せられたものだった。


 そこには、つい声をかけられる数舜前まで誰もいなかった。


 いや・・それどころか、声をかけられた後でさえ、その声の主を見つけることはできない。


 視覚的に魔法で隠しているかもしれないが、魔王の邪悪なオーラどころか、何の生体オーラも感じないのである。



 慌てて敵を探そうと見渡すが、


 しかし・・「む?どこを見ている。」


 その声は、意外や意外。


 ドラゴンのロボットから発せられていた。



 そう、先ほど、僕が百花に送った、玩具のロボット。


 それが、勝手に人語を話して、明らかに複雑に指を動かしていたのだ。まるで生きているかのように。


「な、何者?!」


 百花は驚き、飛び上がった。


 だが、一方。



(いや・・待てよ・・?この感覚は・・)


 徐々に僕は警戒レベルを落としていく。


 うかつかもしれないが、少なくとも相手が魔王由来の存在でないことは、確信していた。


 このかすかに感じる感覚は、あの邪悪なオーラとは真逆のものだ。


 神聖な・・神々たちのオーラと似た・・。


 そして、思い当たる。


 ドラゴンの山で起こった謎の爆発。


 その正体が目の前の存在であると確信した。



 それに対し、正体不明の彼は、こくりとうなづく。



「左様、わたしが竜神ホワイトノイズ。

 世界を見守る者の一人だ。」


 


 効いたことのない名だ。


 しかし、


「世界を見守る者・・まさか」


「・・知っているのかい?」 


 百花はうなづいた。


「ええ。魔王と同じ。世界と世界を渡る力を持つ一族の総称・・」


 それに対し、本人は機械の体でうなづく。



「その子の言う通りだ。

 我々は、超次元的存在。

 そして、同じく超次元的な害悪種を滅ぼすことを生業としている・・

 のだが・・」



 ほおを書いて目を背けていった。


「少し眠りすぎてしまったようである

 逆に私のこの神気を、魔王の力にされてしまうとは・・面目ない



 だが、今私が目覚めた以上、おぬしらに加勢してやろう。」


「ほ、本当ですか!!」


 百花は驚いたように言った。


 まさに渡りに船といったところだろう。


 今は藁にもすがりたい状況。その提案を受け入れるほかないだろう。


 しかし、



「したいところなのだが・・

 しかし、前述のとおり、肉体が破壊されたことにより、今のわしの戦力は奴にとってゼロに等しいであろうな」


「っ!!」


「そんな・・」


 せっかくつかんだ藁が・・。そう思っていたら、ドラゴンはこちらを見て、言った。


「じゃが・・わしが手を貸す必要はないじゃろうな?」


「え?」


 それはどういう?その疑問符に、ドラゴンはにやりと、表情を崩して羽を広げこちらに近づき言った。





「わしがお前に稽古をつけてやるというとるんじゃ。



 そして、、お前がわしの代わりに魔王を倒すのじゃよ。」


 

「それは・・」


「それで何の問題もあるまい?」



 僕は彼の言った言葉を、何度か頭の中で反芻し、そして、数秒後頭を下げていった。



「よろしくお願いいたします。師範」















ーーー


 一方そのころ・・


 魔王視点



 ドンッドンッドンッ!



「ふむ・・」


 魔王は、薄暗い空間にいた。


 かといって、狭いわけではない。


 異常なほどだだっ広く、そして上空から見て円形状の空間に魔王はいた。


 その壁や床は、建築物とは思えない。


 有機物のような何やら浮き出た血管や、スポンジ状の穴が無数に開いている。


 そして、何より目に付くのは、その円形状の中心にあるのは、巨大な心臓。



 室内にはそこから湧き出る邪悪なオーラが満ちており、常人ならば一瞬で絶命してしまうほどである。




 人の何倍もあるそれはどす黒く、常に鼓動している。


 だがその鼓動は、本体以外由来のものも含まれていた。



 ドンッドンッドンッ!!


「ぐるるうううううううううううゆううとおおおおおおおおおおおお・・」


 低いおぞけの走るうなり声。それはかろうじて人語を発していることが分かる。


 そう、人型のおぞましいモンスターが、その心臓を殴っていた。


 魔王にはその心臓が破壊される心配など一切なかった。


 そう、むしろ壊すどころか、そのモンスターは、心臓にエネルギーを与えているのである。


 どす黒い憎しみのエネルギーを。


 魔王は、くっくっく・・と、思い出したように時節笑う。


 そう、ここは魔王城。その中心となる最上階。


 目の前にある巨大な心臓こそが、この城の本体ともいうべきものであり、その心臓に十分に負のエネルギーが満たされることによって術式は発動する。


 そう、言うまでもない、世界を破滅させる装置こそが、その心臓だった。


 そして、、それを先ほどから絶え間なく殴り続けているモンスター。


 それは、優斗の友人・・・の人格をやどしたモンスター。


 魔王は、彼の魂がどこに行ったかなど、知ったことではない。


 だが、少なくともその人格に宿るおぞましい精神は素晴らしいものであることを実感していた。


 そう、ただの情報に過ぎないその人格データ。


 それが偶然にも負の感情エネルギーを半永久的に増幅させるように固定されていたのだ。



 人格というものは、絡まったスパゲッティコードのようなものだ。


 コピーアンドペーストすることは容易でも、その内容を読み解くのは魔王であれ困難を極める。


 故に、原理はよくわからないが、その人格は、無限に虚空から負のエネルギーをくみ出すような存在になり果てていたのである。




 そう、それはまさしく、ほおっておけば宇宙そのものを破壊するような存在であると同時に、


 魔王にとってこれほど貴重な道具はなかった。



 そう、それはまさに、魔王という『種族』からすれば、喉から手が出るほど欲しがる、魔道具。神器とさえ評してもいいくらいの概念存在になっていたのだ。


 

 それに気が付いた魔王は、それをこの魔王城に使わない手はなかった。



 それが、今回のしもべの大群の強襲の顛末。


 


(くくく・・、まったく良い掘り出し物を見つけましたねぇ。


 この世界を破壊した後も、貴方には働いてもらいますよ)


 そう、魔王はつぶやいた。


 楽しそうに、怒り狂い漆黒の心臓を叩き続ける怪物を見つめながら。


「がるるうううううううううううううううううううううううう!!!ごろ、ごろずうううううううううううううううう!!!」



 世界崩壊まで・・あと3日。




 



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