緊急事態
すみません。今日六時くらいに上げるの忘れてました。
なので二話連続投稿します
ある日のことだった。
城でいつものように作った機械を見せていた。
「まあ!ドラゴン!」
「ぎゃうーー」
それは、デフォルメされ、この世界のドラゴンとは似ても似つかないほどかわいくなっている。
しかし、細かいクォリティにはこだわっており、うろこの一枚一枚まで精巧に作ってある自信作だった。
それは青白い幻影の炎を吐き、そして彼女の元にすり寄る。
「可愛いわねぇー」
「それに、いつものロボットよりも性能の高いAIを搭載してある。
まだ完全ではないけど、ある程度自由に学習できるように、記憶容量を開けているんだ」
「そうなの?すごいお兄ちゃん!!」
「まあ、これくらいは・・ね」
思わず彼女に褒められると笑みがこぼれる。
いかんと慌てて顔を整えるが、しかしふといつぶりに笑ったのだろうかと考える。
そうか、僕は今まで、何かに縛られて・・
そして、、そんな穏やかな会話の中だった。
ざっざっ、と。
大勢の足音が聞こえた。
それは冒険者だと一瞬で気が付いたが、それにしては何か重苦しい空気を感じる。
不穏に思い百花に尋ねる。
「魔王のしもべ討伐はうまくいっているはずだよな」
「ええ・・少なくても昨日までは大丈夫だったはずですわ」
そして、扉が荒々しく開かれ。ボロボロになった冒険者たちが現れる。その中には、マージョリーや東堂などの、僕が所属していたパーティーメンバーも交じっていた。
「・・・・」
そしてバツが悪そうに、気まずそうにこちらを見ている。
何があったのだろうか?疑問に思っている暇もなく、先頭の冒険者が膝まづいて叫んだ。
「大変です!神々よ!」
「何の騒ぎだ?!」
わらわらと集まってくる神たち。
冒険者は深刻な顔で言った。
「魔王のしもべが・・今までと同レベル、いやそれ以上のモンスターが・・!!」
「何?!」
「それも何十匹も現れたんです!!」
慌てて神の一人が何か空中にタイピングすると、空間に映像が投影された。
それは、周囲の状況を観察するための魔道具なのだろう。
空と草原が天と地を二分している。
そして、その水平線の向こうに移っていたのは・・・
「!!」
巨大な何かが近づいてきている。
ズームアップするとそれが何か、まるで目の前に見て取れるように思えた。
そう、それは地面を埋め尽くさんとする有象無象の群れ。
まさに魑魅魍魎。邪悪なオーラをまとい、異形のモンスターたちがこちらへと向かっていた。
「これは・・一体・・?」
それに対し、冒険者は答える。
「分かりません・・いつものように防衛に徹していたら、次第に敵の数が増えていって・・」
「現在の状況は?」
「魔法使い部隊による結界によって、今は侵攻を食い止めていますが・・いつ破壊されるか・・」
「具体的にはどのくらい?」
「今日、いえ・・もって明日くらいでしょうか」
「分かったわ」
いつになく、ピリピリして妹は周囲の神々を見渡した。
「みんな!きいたわよね!どうしても手が離せない役職以外は、結界張りを手伝ってちょうだい!エネルギーも結界維持に全力を注いで!」
「!!」
神々が息をのむのが見て取れた。
「ですが、私たちがここを離れれば、世界にバグが生じてしまうかも・・」
「惑星にゆがみが生じてしまうよ!!」
「そうです!貴方様hあバタフライエフェクトという言葉をご存じでない?!」
ほぼ全員、その方針に不満なようだ。しかしそれでも。
「お黙りなさい!!」
妹は言った。
「この城が落とされたら全てが終わるわ。多少の不具合は仕方ありません!!」
一喝。その重みを感じたのか、
「確かに、彼女の言う通りだ」「仮にも最高神。反対するわけにもいくまい」
神々はその言葉に従うようだった。
「ですが、これだけは教えてください」
いつまであいつらを抑えればよいのですか?」
その言葉に少し考えるそぶりを見せて妹は答える。
「そうね・・一週間、、いえ、一か月・・」
「・・それまで持たせれば貴方様が何とかしてくれるのですね?」
「ええ。あと少しで『アレ』が完成するわ」
「分かりました」「久々にシャバとはね」
そう言ってぞろぞろとほとんどの神々が出ていく。
それの少し後に、冒険者たちも出ていった。
僕は仲間に声をかけようとしたのだが、、
「優斗、じゃあ、また今度ね!」
「ゆっくり休んでくだされ!」
マージョリーさんやアンジェリカも冒険者たちに続き、分かれの声かけてくれた。
「・・!」
彼らはあくまで、僕の力を借りないつもりらしい。
しかし、この危機的状況に、ただ見ているだけなんて許せない。
僕は小走りで駆け寄って言う。
「待ってくれ。僕も行く!」
だが、
「駄目ですよ!優斗さんは休んでいないと!!」
肩をつかまれて強引に押し込まれる。
「北条君・・しかし・・」
確かに戦力として役に立たなくなったかもしれない。
しかし、それでもそれなりに、頑張って修行をしてきた。
その努力が無駄になったかのような気がして、必死に食い下がる。
すると、北条、マージョリー、アンジェリカだけでなく、東堂までも口を開いた。
「優斗さん。本当に迷惑ですよ」
「・・・っ」
その鋭い口調、そして殺気。
それは、魔王のしもべに比べれば矮小なものかもしれない。
だが、それでも勇者というだけある。
僕はその気迫に圧倒された。
と、同時に内心動揺する。
(東堂君って・・こんなに強い気迫を出せたのか・・?)
戸惑っていると、その隣にいた西園寺は杖で東堂の頭を叩く。
「イタッ!」
「何お世話になった優斗さんにそんな無礼なこと言うのよ!」
「・・・・」
そうやってそっぽを向く東堂にため息をつき、彼女はこちらに向け謝罪を口にする。
「すみません。この馬鹿が失礼なこと言って・・」
「いや、いいんだ。確かに少ししつこかったか・・でも、何も君たちだけで危険なことをしなくても・・」
「勘違いしないでください」
「・・・え?」
そういうと、
そのあとに残るのは、遠くのほうで忙しそうに何か作業をしている神々と、冒険者たちだけだ。
だが、その数秒後も、彼女は動かない。
「・・・?」
じっと額に指を当てて何か考えているような表情の百花。
何ごとかをぶつぶつとつぶやき、神の魔力ともいうべき神聖な気を感じる。
不審に思い、ぼくは彼女に尋ねる。
「・・百花?」
「・・なあに?お兄ちゃん」
その声は、いつものとは違い、消え入りそうだ。
嫌な予感を感じ、僕は再び彼女に尋ねる。
「百花、本当に大丈夫なのかい?本当に、あと一か月で魔王を倒せるんだよな?」
「・・お兄ちゃんは心配しなくていいわ」
「・・・」
二人の間に重苦しい沈黙が流れた。
この感じ・・何年も会っていなかったとはいえ、仮にも妹である彼女のことだから、手に取るように分かった。
「百花、、お前、昔から頭がよかったけど、、唯一予定外のことには弱かったよな・・」
「っ!そ、そんなことは・・!」
やはり。目が泳いでいる。
確信した。
理由は分からないが、今魔王が何らかの理由で力をつけてしまった。
そして、この異常事態に、あらかじめ用意していたという策という奴で対応できなくなっているのだと。
「だったら・・」
僕は拳を握った。
今までは彼女たちが全て対応できるのだから、自分の出番はないのだと思い、魔王討伐から手を引いていたのである。
だが、もはやその前提は崩れてしまった。
なら僕が戦いにでるしかない。
その決意を察したのか、妹は手を取る。
「お兄ちゃん!大丈夫!大丈夫だから・・・」
その声は震えている。だからこそ、彼女の言うことを聞くわけにはいかなかった。
彼女を無視し、手を振り払い、冒険者の後を追おうと、
一歩を踏み出したときだった。
「・・・何を絶望しておる?」