危うい優斗
十数代の巨大な車、トラックが草原を直進していた。
「これすげーな!!」「異世界の道具らしいが・・さすがは勇者だ」
僕の運転する一台の後部から、がやがやと他冒険者たちの声が聞こえる。
そう、彼らはトップギアに集まっていた、腕利きの冒険者たちだ。このトラック群は、彼らを運ぶために作ったもの。
ここまでのことができたのは、北条君のおかげといってもいい。
彼の持つ異世界の商品を取り寄せる能力がなければこんなものを作ることはできなかっただろう。
取り寄せ、構造を把握し強化改造するだけで事足りた。これにより、移動力が大幅アップ。
迅速な対応が可能となり、安全マージンもこれで多少大きくなっただろう。
だが、、問題は敵のことだ。
魔王のしもべ。本体よりもパワーダウンしているとはいえ、それはあくまで比較しての話。
体調、戦力、どちらも万全とは言え、油断するべき相手ではない。
と、しばらくして。
「見えてきたぞ!!」
地響きが聞こえてきたと思ったら、地平線の向こうから黒い翼の生えた巨人が見えてきた。
「でかい・・!!」
「この圧は・・!!」
全員、その圧倒的オーラに威圧されている。
だが・・同時にここを突破されたら、この世界の終わりであることは知っているだろう。
「者ども!!いくぞぞおおおおおお!!」
「おおおおおおおおおおおお!!!」
トラックから続々と冒険者が飛び出していく。ここらへんでこの車の仕事は終わりだ。
僕も運転席から出て接近していく。後衛と前衛などといった大体の役割は決めており、あとはアドリブでやっていく。
事前に敵の能力はすでに説明されていた。
このモンスターの特筆すべき特性は、ダークボール。当たれば何もかもを吹き飛ばす闇の球を何個も出してくる。
防ぐ手は、高濃度の魔力バリアしかない。僕たちのパーティならば、防ぐだけでもカツカツの戦いだっただろうが、ここには大勢魔法使いの冒険者がいる。
勝算はあるはずだ。
そうだ。この世界を守る妹のために、僕がその手伝いをしてやらなければ!!!
そして、皆とともに走り、接近する。
近くで見ると、魔王ほどではないが、なかなかの迫力。
だが、動きはのろいほうだ。
「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
僕は雄たけびを上げた。
金属製性によって、巨大な剣を作成した。
「うおっ!!」「優斗!一体それは!?」
「どいて!!」
そしてそれを敵に振り下ろす。
ザクッ!!と。
「あ”あ”あ”ああ・・・・!!」
腕を切り落とした。
「す、すげぇえ・・・!」「速い・・!!」
何かいつもと違う間隔を感じる。普段感じたことのない感覚。
そうか、これが、守るものがあるというjことなのか・・!!
今まで僕は、心を凍てつかせて、まるで機械のように戦っていた。
今にして思えばqそれには意志というものがなかったように思える。
だが、敵を倒すごとに今は喜びを感じているのだ。充実感。妹のために動いているという実感。
そう、これも全て、妹のおかげ。彼女が生きていると理解したからだ。
そして僕はさらに追撃を行おうと、さらに剣を振り回す。
・・・が。
「っ!!待って!!優斗!!」
「・・・・?」
何か、致命的なことをしてしまったかのように、マージョリーさんたちの声が聞こえた。
そう、この時の僕は高揚感から、周囲の状況が理解できていなかったのである。
「っ・・!!これは・・!!」
そう、それはダークボール。全身からそれが無数に生み出されていった。
「だが・・!!」
体をひねり、魔法で推進力を得て、空中でそれらをよけていく。
だが、、最後に、
「っ!!」
黒い物体がいきなりこちらに接近していた。
いや、そうか。これは・・尻尾。
巨人は体をひねり、自らの尾でこちらを攻撃してきたのだ。
「ぐっ・・!!」
できるだけそれもよけようとする・・が、完全にはかわしきれなかった。
「ぐわああああああああああああああ!!!」
軽く百メートル以上吹き飛ばされた。
「優斗!!」「優斗さん!!
ちょうど近くにいたマージョリーさんたちに受け止められる。
「大丈夫ですか!!」
「あ、ああ・・」
さすがは魔王のしもべ。かなり強い。
だが・・。まだだ。まだ体力の半分も使っていない。
「ごめん、みんなの邪魔をして・・でももう一回」
そうして再び戦場へと戻ろうとする
が
「優斗!!」
何か叱責するかのようなマージョリーさんの声が聞こえた。
「なんですか?」
不審に思い振り向くと、彼女は不安そうな顔をしていた。
「本当に・・ダイジョウブなの・・?」
「え・・?」
何を不安がっているのかわからなかった。
少しヘマをして心配なのは分かるが、しかし今のボクはかなり調子がいいのだ。
「・・・大丈夫です」
「そう・・ならいいけど」
そう言って僕は再び戦場に戻る。
戦いが始まって既に数分。ほかの冒険者たちは遠距離から少しずつダメージを与えているようだ。
敵が放つダークボールの速度はそれほどでもなく、また飛距離も短い。
ならば・・
「一気に行く!」
僕は魔法と身体能力を駆使して跳躍した。
そして、さらに巨大な杭を作る。
この重量からの衝撃、プラス毒により、一気に多大なダメージを与えられるはずだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
途中、巨人も気が付き、多数のダークボールを飛ばしてきたが、、やはり速度はそこまででもないようだ。
空中でよけて接近していく・・が、ある程度接近したところで、巨人は口を開いた。
「な・・・?!」
そして、口から高出力のマナが集まっていくのを感じた。
(こんな技を隠し持っていた・・だって?!)
しまった。失敗した。
冷静さを欠いてしまった。すでに提示された情報がすべてだと高をくくっていた。
こいつはまだ力を温存していたのだ。そしてその一端を今使い、広範囲攻撃をしようとしている。
この大きさからして、、よけられない。
「くそ・・!!」
金属製性、魔法、体術、全てを使ってこの範囲から逃げようとした・・が。
しかし相手は首を少し動かすだけでいい。こちらをずっと狙っている。
そして、それが出力される、、その寸前。
「優斗!!」「優斗さん!1」
「!!¥」
マージョリー。そして北条がこちらに猛スピードで接近していた。
風魔法、そして機械のバーニアによって速度を加速させている。
そして、僕は彼らにつかまり・・
「がああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
危機一髪、紙一重で回避できた。
「はぁ・・はぁ・・」
「大丈夫ですか!1優斗殿!!」
そういって アンジェリカ、その他皆が集まってきた。
「あ、ああ・・すまない」「いえ、いいんですよ。私たちだって、何度もあなたに助けられてますし・・」
「・・・」
だが、僕は納得できなかった。あんな致命的なミスを犯したなんて、妹になんて顔向けすればいいのか。
この失敗を挽回するには、今の失敗を肝に銘じ、もっと討伐に貢献しなければならない。
「次こそは必ず」
そう言って僕は再び向かおうとした。だが・・
「待って」
「・・・え?」
何やら、厳しい声色でマージョリーさんが僕を止めた。
「どうか、したんですか?」
今までない声色だ。こんなに怒った声を出しているのは、初めてかもしれない。
「行かないで」
目を見ても、真剣な表情だ。
「どういうことなんです?」
「あなたはここで待っていてほしいの」
「・・え?えっと、それは作戦・・?」
困惑してそう帰すと、彼女は一瞬理解できないことを口にした。
「いえ、よく聞いて優斗。
あなたは今日は休んで、私たちの戦いを見守っていてくれないかしら」
「え?」
休んでいる・・・?僕が・・?
こんな強敵を相手に、見ているだけでいいだって・・??
「ちょっと!どうしたんですか!マージョリーさん!!」
困惑していると、北条とアンジェリカが、彼女に詰め寄る。
「優斗どのは大丈夫だといっているではないですか!!」
「そうですよ!!それに彼無しでは、戦力に大きな差ができてしまいます!!
それともそうしなければならない理由があるんですか!」
その北条の問いに、マージョリーさんは
「ええ、あるわ」
予想だにしなかったことを口にした。
「今の優斗は、とても危ない状態よ。
このままだと・・死ぬわ」