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再会






 盗賊たちは『立ち上がった』のだ。



「・・なっ?!」


 とっさに身構える。



 絶対に立ち上がれないほどのダメージを与えたはずだ。


 それなのに、彼らは動いていた。



 いや、それどころか、、彼らの体が光り輝いたのだ。



 変形。みるみると体格が変化していく。


「いやぁ、参りましたよ」




 白いローブのようなものを身にまとっている。


 そして、パチパチパチ、と


 まるでやる気のない、祝福する気のない拍手が鳴り響いた。



 今や、彼らは先ほどの邪気を感じられなくなった。


 いや、それどころか、そのオーラは聖なるもののような・・



「まさか・・!!」


 気が付く。



 そうそれは、神。



 つまり、彼らは・・


「中心都市、トップギアに住む神々?!」


「そうです」





 そう、しぶしぶといった風に彼らはうなづいた。


「私たちはあなたを試しました」


「試した?」


「はい、そうです。あなたたちが、魔王のしもべとの戦いに参加する資格があるかどうか、、です」



「・・なるほど」


 確かに。魔王のしもべは強かった。無駄な被害を減らすためにも、参加者は厳選しなければいけないだろう。


 だが一瞬納得しかけたところに、仲間たちが言う。




「あれ?それっておかしくない?」


「そうよそうよ。

 伝聞によると、少しでも人手がほしいって嘆いていたはずだわ」



 そうだ。確かに。


「・・うっ」


 それに対して神々も一瞬嘘をついているかのように視線をそらした。



「お前ら、何を隠している?」



 神々は顔を見合わせて話し合う


「やべえよやべえよ」「どどどどうしますか?」「頼めば黙ってもらえるかもしれないです」


「おいおい大丈夫なのか?」



 先ほどの邪気は見る影もない。


 一瞬で彼らの背後に回り込み、言う。



「ちょっと・・話を聞かせてもらえますか?」


「ひ、ひええ・・!」



 少し脅すように言う。仕方がないが、こうでもしないとなあなあで終わらせられるかもしれない。



 だが、彼らの背後から、いつの間にか、ぬっと。



 一人の少女、いや神が現れる。



「・・え?」


「久しぶりじゃの」



 見覚えのある声と姿に驚く。


 それは・・トラス神。


「な、何で生きて・・・?!」


「む?なんでわしが死んだことにされているのじゃ?」


「だって、ほこらを壊されて死んだと思っていたから・・!」



「ああ、そのことか。


 いいか。ほこらは、我ら管理者をこの世界につなぎ止めるための魔道具にすぎぬ。


 ほこらを破壊されて世界の外に押し出されて、すこし驚いたが、少し時間をかければこの世界に戻ってくれるのよ」



「そ、そうだったのですか・・」


「というか、まあすでに死んでるようなもんなのじゃけどな。


 まあともあれ、その『ちびっこ』たちを止めてくれて助かったぞい。


 実体化の濃度が低いのでな。我だけでは止められなかったのじゃよ」



「まあ、それはいいのですが・・


 どうして僕を襲ったのですか?


 何かトップギアに近づけたくない理由が?」



「ああ、その通りじゃw。


 正確にはおぬしが好きすぎる神がの。




「僕が好きな神・・・?」


 全く思いつかない。そもそも神に知り合いなど目の前のトラス神しかいない。



「うむ、実際に合わせたらきっと大変な損害が出るだろうと今トップギアで持ちきりなのじゃよ。


 特に魔王がカウントダウンを始めた今の状況では、な。」



「その神っていうのは、一体・・・?」



「あの方は、この世界の最高神」

「最高神・・?」


 数か月前、その言葉を聞いた気がする。


「確か、」

「そう、貴様に魔王討伐から離れるように言った神じゃよ」


 そうだ。その指令を破り、こうして僕は魔王討伐のために闘っているのだが・・

 ふと、気になって尋ねる。


「その神の、本名は?」

「うむ、その名前は・・・」


 そして、、その名を聞く。


「サイトウ=モモカ」



「なっ・・!!!?」


 全身の毛が逆立つような感覚。

 思わず肩をつかみ、揺らす。



「そ、それは・・本当か?!」



「う、うむ。本当は言いたくなかったのじゃがな。

 貴様らはもうここまで来てしまった・・。もはや隠し事は無意味じゃて。

 そう、奴は貴様の・・」


 最後まで聞かずに、僕は地を蹴る。


「むっ?!」


(そ、それが本当だとしたら・・!!)


 僕は走る。


「あ、ちょっと!」

「どこいくんですか!?」



 仲間の混乱をよそに、僕は一人でトップギアに向かっていった。







 場所は、既に、門の内。


 通り過ぎる風景。


 トップギアはやはりこの世界最大の都市だけあって、かなりの規模を誇っていた。、


 そして、その上空を、舞う影が僕である。


 本当は緊急時以外いけない事ではあるが、、この国の建築物の屋根の上を飛んで走っていた。


「・・・・ッ!!!」



 

 足下にはにぎやかな声があるが、、観光している余裕なんて、一切ない。

 

 そして、つい数日前、魔王と戦った時のことを思い出す。


 ドラゴンの山の頂点。あのクレーターの坂で戦った時のこと。


 奴は言ったのだ。


「お前の妹を殺したのは自分だ」と。


 僕の、たった一人の・・守れなかった、妹


 モモカ、そう・・



「『百花』・・ッ!!」



 異世界にきて、僕は戦いに身をやつしていた。


 常に、暇さえあれば修行をしていたのである。


 だからその時まで、ほとんど『百花』のことは考えずにいた。

 今でも、考えるだけで、狂ってしまいそうだ。


 そう、だからこそ、。致命的な隙をさらしてしまった。


 僕は、弱い。



 


 だが、、今、神様から聞いた言葉、


 そこから導き出される答えは、ボクにわずかな希望をともしていた。


 本来、『ありえないこと』だと分かっているのに、



 わらに縋り付くような気持ちで、トップギアの中心部へ足を速めていた。



 そして、




 ・・・『いた』。

 


「・・百花」



 まだ城にはついていない。



 彼女は、




 妹は屋根の上にいた。




「・・・・・・・・・・・!!」



 声にならない。



 確かに死んだはずだった妹。



 失った命は戻ってこない。



 そうそのはず。


 だから、僕jはどんな手を使ってでも仇を取るつもりだった。



 復讐しかボクにできることはないと思っていた。





 だが・・彼らは、トップギアの神々たちは言っていた。


 この世界の最高神は、、自分のことを『兄』と呼んでいた・・と。


 今まで僕のために色々と手を回していたことを・・!




 やけに僕のステータスの幸運値が高かったのもそのためだ。




 幸運値とは、どれだけ神に祝福されているかを示す値。



 それによって、間接的にこの世界の均衡を保っていく。



 つまり・・そのシステムによって、彼女が贔屓をしてくれたということなのだろう。




 そして、僕を魔王討伐に参加させたくなかった理由も同じことだ。



 逆に僕が彼女の立場ならば、妹を命がけの戦いに参加なんてさせないだろう。




 ぴったりと、疑問になっていた事柄がまるでピースのように当てはまった。


 そしてそれを証明するように、劣化した記憶と寸分たがわず声で彼女は言った。



「おにい、ちゃん」



「うあ・・」


 間違いない。一瞬で確信する。




 と同時に、



 あらゆる感情が一気に押し寄せてきた。



「なん、、なんで、、


 なんで・・・ッッッッッ!!!!!!」





「お兄ちゃん、私、神様になったの」








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