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機械的な殺戮


 

 

 

 僕らは車で最高神のほこらのある国、トップギアへと向かっていた。

 

 魔法で空を飛んで早くつけるのは、せいぜい数キロが限界だ。

 

 それ以上やると、ポーションで魔力を回復したとしても、疲労で数日休めないといけなくなる。


 末に、数百キロから数千キロ程度の距離は、車で移動したほうが効率的なのだが・・それでも僕の焦りは止められなかった。 


 だが、仕方がない。今はこれしか方法がないのだ。

  

 さらに、道中は危険が多い。魔王の影響でモンスターが凶暴化しており、空も完全に安全とは言えない状況なのだ。

 

 とはいえ、地上も危険ではないとは言えない。

 

 普段よりもエンカウントするモンスターの頻度が多いのだ。

 

 ドローンによる自動迎撃によって、ある程度弱いモンスターはさばききることができる。

 

 だがもちろん、機械で対処できないモンスターは、パーティで直接戦闘を行い手早く処理していた。

 

 だが、機械でふるい落とせなければ、もっと疲労していたことだろう。

 

 さらに、僕はあの魔王との戦いから、凡ミスの頻度が増えた気がする。

 

 何故だろう。スキルを発動が一瞬遅れたり、剣を持つ手が震えたりするのだ。

 

 無論、その場の機転、あるいは仲間のサポートによって、大した事故は起こらなかったが、、、しかし、それに対し僕は若干の危機感を覚えていた。

 

(・・・だめだ。このままじゃいずれ、重大なミスを犯すようになる・・!!)


 そうだ。あの時、僕は魔王の言葉によって惑わされ、仕留めそこなったのである。

 

 あの時の一瞬の油断。それによって仕留められたはずの魔王を仕留めそこなったのだ。

 

 完璧に成らなければならない。冷徹に。効率的に。モンスターを処理することができなければ・・!!またあの悲劇を繰り返してしまう。

 

 この旅の間、僕は常にイメージトレーニング。スキル、武術の基礎トレーニングを欠かさなかった。

 

 無駄な動き、スキルをそぎ落とし、確実に敵を倒すために効率的な動きを熟達させる。

 

 夢にまで出てくるまで僕はトレーニングを続けた。

 

 そう、それしか僕には贖罪の方法が分からなかったのだ。

 

 その間中、仲間も僕に影響されたのか、同じようにトレーニングをすることもあった。

 

 そして、その成果が身を結んだと思う出来事があった。


 車の移動中、いつものように敵にエンカウントする。

 

 そう、奴らは確かに『敵』。しかしそれは人外のモンスターだけではない。

 

「ヒャッハー!!」


 馬に乗った柄の悪い集団。今の叫び声は確かに『人』が発したものだった。

 

 そう、盗賊。

 

 モンスターだけでなく、その遭遇率は以前の比ではない。

 

 魔王の気に充てられた盗賊団は、数だけでなく、その性質も一層の凶暴性を増している。

 

 そして何よりも盗賊団の厄介なところは、彼らは考えることができるということだ。

 

 モンスターのように、種族によって攻略方法などといったセオリーが通用しないのだ。魔法やスキルなど、個体によってさまざまな行動を取ってくる。

 

 冒険者のようにモンスター討伐をメインにしている者には、対人相手は苦手なこともあるという。

 

 その対人相手の厄介さを僕らはこの道中に身に染みて分かっていた。

 

 大魔法で全体を攻撃すればいいが、相手も魔法を使って遠距離を仕掛けてきた利することもある。

 

 そのため注意力を高く持たなければならない。

 

「また盗賊~?!」「全く、こんな時に・・」「私あいつら嫌い」


 勇者たちもうんざりしているようだった。

 

 盗賊とは言え、人であることには違いない。彼らの意向により、人相手は殺しは辞めようと生け捕りにしているのだ。

 

 火力全快で魔法やスキルを討つよりも、生かさず殺さずに調整して打つ方が精神力を消耗する。

 

 それが一回や二回程度ならばいいのだが、一日に何十回も来られると、勇者であろうとも疲労感がぬぐえないらしい。

 

 さらに、今回の相手は、いつもよりも大きめの盗賊団のようだ。

 

 彼らは馬だけでなく、オオトカゲや恐竜のモンスターを従えているようだった。

 

 おそらく、盗賊の中に優秀なビーストテイマーがいるのだろう。

 

「でも、しょうがないわよ。皆、早く準備しなさい!」「はいはい」

 

 マージョリーさんがそんな疲労感溢れる雰囲気に声を掛けるが、この状況を鑑みて、僕はある決心をする。

 

「いや、皆、少し待ってほしい」


「・・・え?」


「僕が行く」

 

 そう、この道中、僕は夢や運転中でさえ鍛錬を欠かさなかった。

 

 この量の盗賊相手に勝てるという確信を持っていたのである。


「でも・・、いくら優斗さんでもあの量相手は・・!」

 

「いや、きっと彼ならいけますよ!ね!優斗さん!!」


 北條君が期待を込めたまなざしを向けている。その通りだ。それとは対照的に、マージョリーやアンジェリカたちは不安げに言う。

 

「無理しないほうがいいんじゃ・・だってあなた最近・・・」


「そ、そうですよ!あなた様、この雨調子悪そうでしたぞ?!」


 そう、腕の震えの件だろう。

 

 思わず胸中の暗黒を思い出しかけてしまう。

 

 しかし、それでも大丈夫だという確信があった。


「・・・分かっている。大丈夫」


 それでも、この道中に行ってきたトレーニングが無駄ではなかったと考えていた。


 そのくらいで会話は辞め、目の前の敵に意識を向ける。


 どどどどどどどど、と。

 

 盗賊たちは、モンスターに騎乗しながら接近してくる。

 

 と、このタイミングだ。

 

 僕は指の一本の金属糸に魔力を流し込んだ。と、それと同時に。

  

 ずず、、と。

 

 彼らの足元から、地面がせりあがってきた。

 

「なぁあ??!!」


 足元を取られ、素っ頓狂な声をあげる。次々に上がる悲鳴。

 

 巨大な四つ足のモンスターたちは転倒し、乗っていたモンスターから放り投げだされる。

 

「「「うわあああああああああ!!!」」」


 そう、遠距離から基本魔法を確実に発動させるために、金属糸によって魔力のつながりを高めていたのだ。

 

 前回魔王に敗北したのは、僕の精神面が原因。

 

 ならばやることは簡単。

 

 僕がトレーニングで高めていたのは、『確実に』スキルと魔法を発動させること。

 

 そう、たとえ、この胸中のもやもやが体中を支配したとしても、『無感情に』、そして『強制的に』動けるようにする。

 

 たとえば、こんな風に。

 

 僕は『予め決めていたように』、その場で跳躍する。

 

「お前らぁー!敵は土魔法使いがいるぞぉおおお!!」

 

 盗賊団は、暴力歴な声を上げ、土の防壁を超えてこちらに向かってきた。

 

 だが、、甘い。

 

 既に僕は上空に居た。

 

 そして、予めプログラミングしたとおりの動作を行う。

 

 ナイフ投擲。その行動に、僕の負の精神面が介入する余地はない。

 

 それは感覚的に『殺し』ではなく、無感情な工場。

 

 それができるようにしつこくトレーニングを続けてきたのだ。

 

「ぐはっ!!」「あばっ!!」

 

 それによって全く無警戒な頭上に穴を開けられる盗賊たち。

 

 的確に急所を狙い、次々と死亡していく盗賊。

 

 滞空時間を過ぎ、落下していく。落ちた瞬間、相手がこちらを認識する瞬間、反応された瞬間も、それを確認しながら並列的に盗賊たちの頸動脈を狙って断ち切っていった。

 

「がっ・・!!」「ぐはっ・・!!」

 

 優先すべき個体を、数値化。そしてIDの順番通りに、時には柔軟に変更して『討伐』していく。

 

 そして、再び跳躍や疾走を繰り返し、集団の四角に潜り込みつつ、一方的に攻撃していった。

 

 魔王対策のために、あくまで感情を交えずに戦う。

 

 そう、以前のように、逐次考えながら、相手の機を伺いながらやるよりもそれは精神的に楽な戦いだった。

 

 しかしこうやって実践を行うと、また見えてくるものもあった。

 

 戦闘を行いながら、余裕ができた頭でさらに戦闘プログラム構築を練る。

 

 血しぶきによって目つぶしをすることでさらに隙を作りだしたり、またあるいは恐怖によって動きが鈍るところも計算に入れることによって、さらに効率化が進めそうだった。

 

 そう考えているうちに、戦場は既に大半の盗賊が死亡しており、あとは事後処理といった感覚。

 

 もはや勝利は確定したも同然だろう。

 

 後は適当に逃げようとする盗賊たちを始末。


 最後に炎魔法でまとめて火葬すると、僕は再び仲間の待つ車へと戻っていった。

 

「ごめん、思ったより少し時間がかかった」


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