絶望の飛行機雲
「嘘だ」
思わず口をついてしまった。
何を言ったんだ‥?魔王、今、こいつ・・
その時の僕は平常心でなかったのだろう。。
――いや、違う。
どうでもいいどうでもいいどうでもいい。
どうせ嘘なのだから。今やることはこいつを殺すこと。
殺すことだけなんだ。
だが、魔王は依然続ける。
「世界というものは主に二種類ある。我々魔王がエサにしずらい世界とできる世界だ。
そしてお前の元居た世界は前者のしずらい世界だった。この世界のように私が降臨できない、天然の防壁がある世界。
だが私は、いずれあの世界を破壊し、わが糧とするために、人々に微小な悪の心を植え付けていた」
僕は全力を出した。金属生成で新しいドリル、針、刃物を無数に作り、切り刻む。魔法をも使い奴を追い詰める。
「だが、不運だったのがお前の母親を標的にしたことだった。
奴らは古の何らかの超人の末裔だったのだろう。
下等存在のくせに私に反撃してきたのだ。
私は戦い奴を何とか殺害したが、私は致命傷を負った」
まだ足りない。馬力を増やすためにエンジンを生成。炎魔法によりブーストを掛ける。
「その後、同じようにその妹に手を出したが・・・同じことだった」
「っ・・・!!」
その言葉を聞いたとき、僕は感情のダムが一気に崩壊したかのようだった。
(ゆるせない・・・絶対に・・こいつはここで殺す・・・!!)
そのために、全意識を攻撃に集中させろ。
より戦車は強固に。凶悪な毒、形状の武器をさらに高速で生み出し、魔王を追い詰めていく。
そのおかげか、奴の体が削れ、押していくスピードがさらに上がった気がするが・・まだ足りないとでもいうのだろうか。
それでも奴は何ら乱されない口調で言う。
「私はあの世界の侵略を一旦諦め、復讐を誓うためにこの下等世界をまずは食うことに決めたのだ
分かるか?優斗よ。お前ら一族が私は憎い。
そして、同時にその強さも認めているのだ。
よくここまで追い詰めたものだよ
褒めてやろう。だが、流石の貴様も、、、」
(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)
僕は集中していた。
集中していたがゆえに、本来の目的を忘れていた。
「最後の最後で油断したな
「ハッ!?」
今、重要な間違いを犯したと気づく。。
作戦は、なんだった?!
奴に攻撃し、この場に足止めし、そして爆弾を起動させ・・・
「っ!!」
しまった。爆弾の位置はもう既に若干過ぎている。
奴は踏ん張る振りをしながら軌道を少しずつずらしていたんだ。
だが、、まだ間に合う!!
爆風に、奴の体の全てを巻き込むことはできなくとも、かする程度なら確実にできる!!
僕は背後の命綱を起動させ瞬間的に背後に退避。。
そして同時に、爆弾を起動。目を閉じる。
瞬間―――光。
キュィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
瞼越しでも至近距離から感じるこの光。そして衝撃は、常人ならば即死してもおかしくないほどだっただろう。
「ぐっ・・・・!!!」
すり鉢状の坂の外側へと吹っ飛ぶ。、
「優斗!!」「優斗さん!!しっかり!!」
「・・ああ、大丈夫だ」
僕はすぐさま立ち上がる。
「作戦は、、成功した・・・?」
「いや、、」
奴を・・魔王を効果範囲に巻き込むことはできなかった。
縮小爆弾は、範囲の内部にあるものを全てえぐり取る危険なもの。かする程度では、足りないのだ。効果範囲内に奴を放り込めなければ意味がない。
その証拠に、まだあふれる邪気をすぐそこに感じる。
煙が強風で一瞬で飛ばされると、そこには魔王がいた。
同時に、哄笑。
「クックック、、フッハッハ、、ハーッハッハhッハ!!!」
奴は、その醜い化物の図体の体の皮が剥げ、筋肉が露出していたが、、すぐさま見る間に再生してゆく。
「今のは危なかったぞ・・!!優斗・・!!よくこんな爆弾を作ったものだなぁ・・!!!」
「魔王・・!!もう一度勝負だ!!」
僕は粋がってそう叫んだ。
だが、僕にはもう奴に勝てる算段はない。
収縮爆弾を使おうにも、残弾はあれ一つだった。
つまり、正々堂々、奴の天文学的膨大なエネルギーを削り続けなければ、奴に勝つことはできない。
しかし、やるしかないんだ。
「行くぞ!!」
金属生成で、剣を作り投擲。だがそれを奴は僕から距離をとることで回避する。
「っ!!どこに行く?!」
「すまない。優斗。正直貴様に付き合うと、こちらの命がいくつあっても足りないのだ。内心、私はお前が怖い。
次はどんな手を使ってくるのか・・。今の攻撃だって、何か特殊な魔法がかけられているのかもわからない」
「だからって、逃げるのか?!」
「そうだ。逃げる」
「魔王といっても大したことがないようだな。卑怯者に改名したらどうだ?」
僕はわざと挑発するように言う。
できるだけ奴を引き留めなければいけない。でなければ奴が次に行うことは・!!
だが、僕のその懸念は、現実のものとなる。
「そうだ。私は卑怯者だ。だから、お前とは戦わずに、、」
にやりと奴は邪悪な笑みを浮かべ、飛び去る。
「この世界の国を少しばかり頂くとしよう」
息を飲んだ。まさか、こいつは、今から大量に食うつもりなのか・・?!人を・・!!
「っ!!待て!!!」
奴は上空へと逃げていく。
飛び道具は?銃?大砲?どうやって追いつく?ドローン?グライダーは?
そうか、魔法攻撃を当てて自分を打ち出して・・!!!
「マージョリー、西園寺さん!!僕を魔法で奴のところまで打ち上げてください!!」
「え?!で、でも・・!!」
「・・わかったわ!!」
マージョリーさんは、魔法陣を瞬間的に僕の足元へと出し、半重力で射出させる。
だが、、
「させん」
「っ!!」
魔王の手の平から飛んでくる圧力によって、墜落。
再び体制を戻したときには、、
「行ってしまった・・・!!!!」
奴の空を通った飛行機雲が、見える。
それは、今の僕らにとって何よりも絶望の証だった。