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倒れゆく仲間


 

 エンジンの音。急こう配な坂をタイヤが猛スピードで滑る。

 

 僕たちは車で高速で山を登っていた。

 

 本来こういう道を想定しているわけではないのだが、金属生成や仲間の魔法で補助しながら、何とか荒れた山を猛スピードで上がっていた。

 

 そして、比較的短時間で頂上に到着する。

 

 そこは、たった今巨大案爆発が起こったかのように窪んでいた。

 

 そして、

 

「ククク・・・!!」


 奴は、いた。

 

 まるで、待っていたと言わんばかりに、腕を組んでいる。

 

 奴は、友人の化物の姿をしていた。

 

 しかし、外見はさらに禍々しく、そして感じる邪気も以前の比ではない。

 

「待っていたぞ・・!!さあ、始めようじゃないかぁ・・!!」


 殺意。それに対し、皆が息をのむ感覚が伝わってくるようだったが、しかしここは僕がしっかりしないといけない。作戦通りに僕は合図を出す;


「総員!散開!!」



「「「おう!!」」」


 仲間全員が車の上から飛び出し、魔王を中心に扇形に所定の位置についていく。

 

 さらには北條のドローンが周囲へと散らばっていき、それを旋回していった。

 

 それに対し、ただ見守っているだけの魔王ではない。

 

「・・ふん、ござかしい!!」 

 

 魔王は棘や筋肉の鎧に包まれた両腕を上げ、何やら飛び道具を飛ばしてきた。

 

 それは僕ら一同全員を対象とした全体攻撃。そして一発でも食らえば致命傷は免れないほどの威力。

 

 だが、、今更そんな攻撃が通用する仲間でもない。

 

 北條、ポチやアンジェリカ東堂は弾き避け、マージョリーと西園寺、南雲はマジックバリアで防ぐ。ドローンはいくつか墜落してしまったが、まだまだ数は残っている。

 

 初撃は奴に取られてしまったが、僕らはすぐさま攻勢に転じた。

 

 東堂とアンジェリカが腕を斬りつける!無論まともなダメージが通るとも思えない。牽制程度の浅い攻撃。

 

 だが、そのわずかにできた隙を、ポチと僕が捕らえる!深めの傷を与え、棘の一本が吹き飛ぶが、すぐさま再生を開始しているようだ。ナイフに塗った猛毒もダメージとしては微々たるものだろう。


 そして接近してきた相手に対し、魔王は体全体から近接の衝撃波を放った。だが、その時には既に距離をとっている。

 

 受けたダメージは雀の涙程度だ。蓄積すれば厄介だが、南雲がすぐさま回復してくれるだろう。

 

 そして、近接が引くと同時に西園寺とマージョリー、ドローンは遠距離からいくつもの派手な魔法を放っていた。ための長い大技は避け、目くらましや手数の多い魔法を連打してゆく。

 

 よし、作戦通りだ。


 今のところ、彼らは攻撃よりも、防御に徹している。

 

 無論、回復役もいるとはいえ、永遠にこれを続けているわけにもいかないだろう。戦いを長引かせているのには理由がある。

 

 もちろん、その切り札は、収縮爆弾だ。

 

 普通のモンスターならば、とどめは大技の詠唱魔法でもいい。

 

 しかし、、相手はあの魔王。感じる魔力も邪悪とはいえ膨大なものだ。

 

 単純な破壊魔法で倒せない。

 

 チートで空間ごと削り取り、ゼロにしなければ、エネルギー量が違い過ぎてジリ貧になる。

 

 そして、、その準備をこの戦いの間、少しずつ慎重に進行していた。互角以上の戦い。

 

 だが、魔王は、ジリ貧だと思ったのだろう。

 

「ククク・・この後には魔王城を作らないといけないゆえに、エネルギーをできるだけ節約したかったのだがな・・

 仕方ない。もう少し本気を出すとするか」

 

「「「・・っ?!」」」


 メリメりメリっと。奴の体が少しずつ変化すると同時に、邪気も同時に膨らんでいく。

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!」


 そうはさせまいと東堂が突っ込んでいった。

 

「やめろ!!東堂!!行くな!!」

 

「ふん」

 

 魔王が腕を軽く上げる。たったそれだけで魔法を使った感覚もなかった。それなのに、、

 

「「「ぐわああああああああああああああ!!!」」


 風圧のみで吹っ飛んでいく。

 

「東堂!!」「大丈夫?!しっかり!!」


 慌てて南雲や西園寺などの治療要員が回復を飛ばす。

 

 だが、その間にも相手が待ってくれているとは限らない。

 

 魔王は一歩踏み出し、構えて離れているにもかかわらず突きの構えを取った。途端に増大するポテンシャル。

 

 あれはやばい・・!!そう考える間もなく、ポチは動いていた。

 

 全力で疾走し、爪に全体重をかけて魔王の足を切断する。

 

「許しません・・!!あなたは・・!!!あなただけは・・・・!!!」


「お前は、、ポチか」

 

 だが、平静に魔王は言う。

 

「ずいぶんと世話になったが、なんだその程度だったか」


 魔王は構わず突きを放った。その瞬間。

 

 ドゴォオオオオオオオオ!!!

 

「「きゃああああああああああああああ!!!」」

 

「ぽ、ポチ!!!ぐわあああああああああ!!!」


 超局所的な竜巻が瞬間的に発生。捩れた圧力の中にいた彼女は体の関節をバキバキに破壊され、遠く離れた位置にいる僕らも無事では済まなかった。

 

「・・・っ!!」


 瞬間的に、東堂、ポチが戦闘不能。無論ポーションで回復できるとはいえ、この局面、その不安感はかなりのものだ。

 

 残されたものにとってそれはかなりのストレスだった。特に、後衛職でかつ経験の浅い西園寺と南雲は完全に伸されてしまったようで引きつった半笑いでひざをついた。


「そ、そんな・・!!あんなにだなんて・・!!」「ふ、ふぇええええ・・!!」


「皆!!うろたえるな!!ここは私が守る!!」


「っ!!アンジェリカさんっ!!」


 僕は彼女を止めようとした。あと少し。あと少しで準備が完了するのだ。

 

 それなのに彼女は、少しこちらを向いてから魔王に対し進み続ける。

 

「さあ!!魔王!!次は私が相手だ!!」


「ほう?では楽しませてもらおうか」


「はぁあああああああああああああああああああ!!!」


 気合とともに咆哮を入れた。そして周囲に魔法攻撃の場が出現する。

 

 あれは、、彼女特有のユニークスキル。シャイニングLv6。

 

 動き続けるほど、光魔法を纏うことができ、技として放出できる。

 

 魔王の邪気に対し、光属性は有効なはず。そのフィールドに触れただけで敵はダメージを受ける。

 

 そう思ったのもつかの間、、

 

 ドンッと。

 

 魔王の拳が彼女の腹に直撃した。

 

「ぐっっっっっ?!!」


「~~~~っっっっっ!!!」


 効いていないわけではなかった。自らの拳を魔王は不思議そうに見ると、腕が半分以上が消失している。だが、、レベルが違いすぎるのだ。

 

「楽しませてくれると思ったがな」


 そう言って、腕が再生してゆく。ポチに切断された足も同じだ。いつの間にか元通りになっている。

 

 静寂。今この瞬間、もはや彼に立ち向かうものはいない。

 

「・・・・どうした?もう終わりか?」

 

 拍子抜けという風に魔王は言った。

 

「仕方がない。もう少しやってもよかったのだが、、」

 

 それは皮肉ではなく、本気でまだ足りないという風に、そしてがっかりしたかのように奴は、

 

「では、予定通り、まず初めに、お前らが人間が一か所に集まっている国とやらを、滅ぼしてくれよう」


 そうやって、急ぐこともなく、まるでいつもやっているルーチンワークのように、奴は歩いてゆく。

 

 この客観的に見れば絶望的ともいえる状況に・・

 


 

 僕は内心、『ほくそ笑んで』いたのだろう。



 

「・・・ん?」


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