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龍の爆発


(到着したかぁ・・)

 

 既に、視認できるほどに近づいた魔王。

 

 それは白銀の龍だった。

 

 見ているだけで目が焼けそうなその輝き。


 寝ているのか、もしくはその振りをしているだけなのか。


 少なくとも分かるのは、龍はこちらにまるで気が付いていないかのように、微動だにしないということだけだ。


 と、その時、(・・・っ!)

 

 魔王は、山のふもとで待機していた、魔王分身の視覚から、勇者たちが今入山した情報を受ける。

 

(やるしかないねぇ・・!!)


 そう思い、遠距離から魔王自身の分身を投げつけた。それは結界に張り付いて、一つ一つ術式を解いていく。

 

(まず一番弱いのは突破、二つ目も突破、三つ目は・・・なんとかクリアしたねぇ・・!!そして、四つ目は・・ん?何かこの術式おかしいな・・?そうか、なるほど、最初からやり直しだねぇ)


 迷路のごとき結界。だが彼もだてに魔王をしていない。この世界に干渉するのはいわばハッキングのようなものなのだ。

 

 今まで経験したことのない術式だが、何とか精神を総動員させてセキュリティを突破していく。

 

 だが、、安全だと思っていた、ある境目を踏んだ瞬間。

 

 バキュンッ!


 一瞬のひらめきが、龍の周囲のある一点から瞬く。

 

「ガッ・・!!??」

(何・・?!)


 友人の人格と魔王は同時に驚いた。

 

 足が光線によって吹き飛ばされたのだ。


 だが・・「ガるっ!」友人の人格が気合を入れ、瞬時に回復。

 

 しかし、光線が一つだけだと誰が決めたのだろうか。


(なっ・・!)


 魔王がそれを見て驚愕する。

 

 先ほどまで魔王が操作していた術式が、裏返るかのように攻撃魔法へと変化してゆくのだ。


 それはまるで計算されつくした芸術作品のごとき美しさ。


 が、、それを眺めている暇は魔王にも友人人格にもなかった。

 

 表れる魔法陣から光の弾が次々と放出されてゆき、、そこからレーザーが次々と急所を狙ってくる。

 

「が、、、ガウゥウウウ!!」


 友人の人格は苦悶の叫びをあげた。それを冷静な目で見る魔法。


 体中に穴をあけられても、なんとか直前に回収してあったエネルギーで再生を行えるが、、それでもその回数には制限がある。このままでは容赦なく、消耗していき最後には死んでしまうだろう。

 

(・・・仕方ないねぇ、文字通り、全力を出し切るしかない)

 

 彼は、跳躍の指令を与える。「ガルルゥ!!」一部再生が追い付かず欠損してはいるものの、全力でジャンプ。

 

 そして、、上空数キロへと到達し、、再び落下。当然レーザーから狙われるが、全面や腕を硬化させて少しでもダメージを軽減させる。

 

 摩耗と同時に再生。それによって何とか体の形の削りを最小限にしつつ接近していった。

 

(・・・よし、そこだ)


 完全に警戒がこちらに向いたところで、魔王は自身の分身に命令した。

 

 山に登る途中に山の地下に潜らせておいた、自身の80%の分身たち。

 

 それは、既にドラゴンの周囲にまるで沼のように広がっていたのだ。

 

 そして、、まるで砂地獄のように、ドラゴン時代を己の中に取り込もうとしていく。

 

 それに対し、龍はというと、依然微動だにせず、レーザーだけが沼を切り裂く。


 だが、、質量の暴力。


 魔王分身が、龍の周りを保護している結界に張り付いた。


 そのまま解除を進めていく。


 その間にも、魔王分身はレーザーによって焼かれていった・・・が。


 少しばかり魔王の解除のほうが早かった。


(あと・・すこし・・)

 

 そして、、魔王がほぼ消滅寸前のその時、、ついに・・全ての結界を解除が成功した。

 

(やったねぇ・・!!)


 と、魔王が喜んだ瞬間だった。


 その戦いの間、ずっと無防備に動かなかったドラゴン。

 

 その時、やっとそれが動き出したのだ。


 とは言っても、首をもたげたとか、翼を広げたとか、そういう動きではなかった。


 まるで、それは水辺に移った幻影だという風に、体全体が揺らいだのだ。


(な・・エネルギーが不安定になって・・!)


 そう、白銀の体がまるで陽炎のように歪み、

 

 光の爆発的な放出が発生・・・・!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 耳をつんざくような爆発音と表現できればまだマシだっただろう。

 

 それはまさしく音の兵器だった。

 

 某で全身を叩かれるような感覚。

 

 それと同時に今向かっているドラゴンの山頂上付近からかなりの光があふれてゆく。

 

 一瞬で僕はそれが危険なものだと判断して

 

「皆あまり見ちゃだめだ!!」と叫ぼうとしたが、この爆音の中それは無理だと判断

 

 金属生成を使い、何とかシェルターを作り全員を守った。

 

 だが・・・

 

「「うわあぁああああああああああああああ!!!」」


 衝撃波によって全員が吹っ飛ばされる。

 

 いや、波だけじゃない。風、岩、モンスター、この山に存在する全てがその爆発により少なくとも数キロは吹っ飛んでいった。

 

 そして、、、数秒後なのか、数分後なのか、それとも数時間なのか分からないが、、突然の衝撃からやっと意識を取り戻した僕らは、大小さまざまな岩の中から何とか抜け出していく。

 

「み、皆・・大丈夫か・・?!」


「うん、なんとかね・・」


「全員、要るみたいですね」


 奇跡的に全員、かるいけがを負っただけのようだ。

 

 ポーションを飲みながら西園寺が文句を言う。


「一体何なのよ・・!!アレが魔王の力だっていうの・・?!」


「だとしたら、あんな奴に俺たちが勝てるのか・・?」


 絶望しかかっている彼らに対し、僕は少し違和感を感じる。

 

「いや、少なくともあの爆発は、魔王のものじゃない。

 それにしては邪悪なオーラを感じなかった。むしろ、神聖な力のような・・?」

 

「どちらにせよ、何かが起きたのは間違いないわね。

 でも、これからどうする?」

 

「それは当然、魔王を・・」


 その時だった。

 

「ふはははははははははは!!!」


 倒す、と言いかけた僕をあざ笑うかのように、邪悪な声が山中に響き渡る。

 

「「!!!!!!」」


 感じる。いや、感じざるを得ない。

 

 それは、言うまでもない。この場の全員が同時に気が付いたことだろう。

 

 いや、それどころか、全世界中におぞけが走ったのではないか。そのくらいの規模のエネルギー量だった。

 

 『魔王』、そう世界を滅ぼすもの。

 

 たったこの瞬間まで、魔王とは倒せるものだった。弱体化していたがゆえに、魔王は逃げる側の存在だった。

 

 だが、この瞬間、その立場が逆転したことをこの場にいる全員が同時に悟った。

 

「「いいではないか。この力・・!!我と真逆の性質ゆえに、なじむには時間がかかりそうだが、、とりあえず今までやられてきたお礼を存分に返そうではないか」」

 

「なっ・・・?!!!」

 

 姿は見えないが、、その膨大なマナによって脳内に直接その言葉を語り掛けている魔王。

 

 そして、それによれば、今まさに大破壊が行われようとしている。

 

 それを止められるものは、、この世界にいるのだろうか?

 

 いや、いる。

 

 正確には、ある。だが。

 

 確かに僕の手には、今の奴を仕留められる唯一の手段があるかもしれない。

 

「アレを使うしか、ないのか・・」


 現代でも禁忌とされていた兵器を魔法によって改良したもの。圧縮爆弾。

 

 その試作品を使うときが来たかもしれないのだ。 

 

 『圧縮爆弾』。

 

 それは、現代の科学と、この世界の魔法が融合して生み出された最凶最悪の兵器。

 

 始めはこの爆弾を封印しようかとも思った。事故によるリスクがとてつもなく大きすぎるからだ。

 

 しかし、、魔王との戦いにおいては、どんな武器も役に立つはずだと、奴を倒した後一切使わないことを条件に、開発を進めてきた。

 

 その仕組みは、原子爆弾と似たようなものだ。

 

 この世界の原子と、元の世界の原子は、似ているようで異なるらしい。

 

 元の世界では原子同士を互いにぶつけ合うことで、原子を破壊することができた。しかしこの世界ではまるでバグのように周囲を一瞬ゆがませ、、そして収縮するのである。

 

 それを応用してまるでブラックホールのようなものを意図的に作り出すことができるのだ。

 

 これを使えば、、魔王を倒すことができる・・かもしれない。

 

 いや、やらなければ。やらなければ多大な被害を生むことになってしまうのだ。

 

「君たちは、早く逃げて」


「え・・?優斗は?」


「僕は、あいつを止めてきます」


「!!」


 息をのむ声が聞こえる。


「待って!!だったら私も行くわ!!」


「私もお供しますぞ!!


「確かに怖いといえばうそになるが、俺たちは勇者だぞ?」


「まったく、しょうがないわね・・」


「あ、あたしも!!」


「優斗さん、アレを使うなら、、僕も支援できます!!」


「奴は宿敵なんです!連れてってください!!」

 

「皆・・!!」


 みんなの気持ちはうれしい。


 だが、この爆弾は本当にシャレにならないのだ。

 

 本来なら僕一人でいくべきだとは思うのだが・・

 

「・・・」


 彼らの目を見て、それを言う気にはなれなかった。

 

 なれば、綿密な作戦が必要だ。確実に奴を打ち取れるための連携が必須。

 

「・・・頼めるかい?」


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