最後の会話
僕は、夢を見ていた。
「やあ、久しぶりだね」
そう、白い空間に、少女。女神トラスだ。
そろそろ会う頃だと思っていた。僕は彼女に用事があったのである。
さっそく僕は本題に入る。
「一つ、聞きたいことがあるんです」
「うむ、なんなりときこう」
「魔王は、もう倒したのですか?この世界に居なくなったのですか?」
彼女は、少し考えていった。
「いや、おそらくはまだじゃ」
やはり、と思った。
まだ魔王は生きているのである。
「あなたも感じるのですか?あの邪悪なオーラを」
「ああ、まだ奴は生きている・・、
残念ながら、今のところそれがどこかは特定が難しいところじゃが・・」
いや、それが分かっただけでも十分だ。
この魔王に対する感覚に確かな裏付けが持てた。
「ええ、それともう一つ聞きたいことがあるのですが、、」
そう、ここからは必ずしも必要な質問ではないのだが、一応この世界を守るものとして聞いておかねばならないだろう。
その内容は、次の目的地についてだ。
「この世界の国で、滅んではまずいところはどこでしょうか」
「滅んではまずい・・というと?」
「いえ、国に優劣をつけるつもりはないのですが、、立ち寄る優先順位をつけようと思いまして」
この数か月、魔王を倒すためにしばらく放浪していたのだが、二者択一の際、どちらを先に立ち寄るかをメンバーで揉めたことがあったのだ。。
「ふむ、、下界の子たちに優先順位を付けるつもりはないのじゃが、、」
そう言った前置きをしてから彼女は言った。
「できるだけ小さい国や村を優先したほうがいいのではないかと思うぞ。大きい国ならばある程度なら自衛できるじゃろうし。問題はそれができないところじゃよ」
「・・確かにそうですね」
今まで気にしていなかったが、明日、世界の国の情勢を詳しく聞いてみようと思った。
そして、続けて彼女は言う。
「そのほかに私事かもしれないが、『ほこら』の有無も気にかけてやってほしいのじゃ」
「『ほこら』?」
そういえば聞いたことがあるような気がする。ある国で住民が話していたのを聞いたことがあるのだ。
「ほこらというのは、わしら神がこの世界をつなぎとめるための装置、、
いわば魔道具じゃ」
魔道具・・。つまり、この世界の神というのは、魔法の上位的な存在らしい。
「神というのはつまり、この世界の自然現象を管理する者なのじゃ。例えば風を向きや強さ、動物の量、地殻変動、惑星の動きといった様々なことを調整したりじゃ。
そしてほこらとはこの世界に神が存在するためのもの、いわば神の生命線、あるいは弱点と言ってもよいな」
「生命線・・ですか」
彼女たち神というのはイメージでどこか無敵の存在化と思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「ではあなたも?」
「うむ、全てのほこらの位置のイメージを送るが、わしはここにある」
すると、脳裏に地図が想起された。
「・・なるほど」
各地方にマークがつけられている。これがほこらの位置なのだろう。
その中で色が違うのが彼女のほこらか。
思ったより多い。数百はあるだろうか。
そして、少し気になったのだが、その中心にはひと際大きい印がある。
「この大きい印はいったい・・?」
「それは最高神のほこら。わしたち神々を管理するリーダーじゃ
最重要拠点ゆえに多くの神が実体化し、そこを守っている」
そう言えば、前にその名前を聞いたことがある。
「まあ。l最近代替わりしたのじゃがな」
「代替わり・・そういうこともあるんですね」
「まあの。しかしあの子は少し・・いや、なんでもない」
失言といった風に彼女は口を閉じる。少し気になるが、彼女はそのことについて口を開くことはなかった。
「ともかく、ほこらを破壊され、神々が一人でもいなくなると、世界の自然現象に様々な不具合が生じる。
無論、ほこらには専用の守護者がおるのでな。
どうするかは貴様次第じゃが・・」
「いえ、わかりました。ありがとうございます」
聞くことはそのくらいだったが、
しかし、その後も、しばらく他愛のない話を続ける。
旅の話、食べ物の話、あるいは誰がメンバーの中で一番好きなのかなどだった。
そして、、一番驚いたのは、彼女が言ったハーレムという概念だった。
「だから、僕はメンバーをそういう風に見ていませんよ」
「ふふふ、隠しおってからに・・まあ、誰か一人を決めきれなければ、全員を嫁にすればよかろう」
「・・え?」
「む?何を驚く?
普通貴様のような英傑はそうするものじゃよ?
ハーレムというのじゃ。ごく一般的じゃよ」
「そ、そうですか・・」
少し驚いたが、、しかし自分の世界を広げる良い情報だった。
そして、時間になり、
「そろそろお暇します」
「おう!気を付けるのじゃよ!!わしより早く死なぬでないぞ!」
「‥・・何を冗談言っているんですか・・では」
そうして僕は夢から覚めていく。
だが、それが不穏な会話だということは今気づくことはなかった。