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正式な加入


 

 魔王との遭遇、そしてその討伐から、一週間経過した。

 

 僕らパーティーは、いまだにその国に滞留している。

 

 あれからもドローンを飛ばしてはいるし、他の冒険者や兵士の捜索も続いていたが、しかしそれから魔王が新しく発見されることはなかった。

 

 しかし、だとしても、ごく低確率かもしれないが、、まだ魔王が潜伏している可能性はある。

 

 それを懸念して僕らは蝙蝠亭に宿泊していたのだが、、。

 

「・・もうそろそろいいんじゃないの?」


「そうだよー。もう旅に行こうよー」


 南雲と西園寺から不満の声が上がった。

 

 ここ最近は、生きているかもしれない魔王の襲撃に備えて国外への遠征も控えているのだ。無理もないだろう。

 

 それに対し、メイドが板についてきた北條のメイドロボが紅茶をいれながら彼女たちを叱る。


「コラ!優斗さんを困らせちゃダメでしょう?!」


「えー、でもー」

「っていうか、あんた数日でとても変わったわね。口調とか仕草とか」

「そうだねーかわいー!!」

「そんなの関係ないでしょうっ!?」


 そんな他愛のない言い争いをBGMに、僕はずっと考え事をしていた。

 

「しかしいつまでもここに居てもしょうがないのではないか」


「いえ、魔王の討伐が勇者の役目。もし奴が生きているならばこの国の中でしょう」


「もしかしたら国外に逃亡したかも・・」


「それは、少しやばいわね・・」

 

「・・どうしましょう、優斗様」


「・・・」


「優斗様?」


「・・!」


 東堂が再び言ったところで、僕は気が付いた。

 

 慌てて口を開く。


「そうだね。もういいかもしれない。

 それに、あれ以来行方不明者もいないらしいし、冒険者たちも続々とこの町に集まってきた。

 仮に魔王が発見されたとしても、僕ら抜きで十分対処できると思う」


「そっか!」「ならさっそく」


「でも、、優斗・・あなた、最近変よ?」


「そうである!助けになれるかもしれない!言ってください!」


 彼らには心配をかけているようだ。僕の顔色が優れていないからだろう。


 実は数日前から、何やらすっきりしないのだ。

 

 何やらモヤモヤしている感覚。

 

 何回か、こういうことがあった。

 

 友人との死闘の前に感じた感覚。

 

 二番目に魔王と再会した時の感覚。


 この感覚の後に、魔王と邂逅していたのだ。

 

 この際はっきり言えば、、これは魔王に対して感じる予感なのだろう。

 

 僕はそれを感じ取ることができるようだった。

 

 ならば、この感覚を今僕が感じ取っているということは・・!!

 

 ぽつりと思わずつぶやいた。

 

 

「・・魔王はまだ生きている」


「えっ?!」


 メンバーに静寂が訪れた。

 

「まさか、まだ倒しきれていない個体がいるって言うの?!」


 彼女の発言に少し考えて僕は言う。

 

「ああ、しかしこの国にはいない」


 そう、もちろんその言葉に理由はなく感覚にすぎない。

 

 だが、ここ数日かけて精神を集中させ、その感覚をとらえようとした末に確信した。

 

 この国にはもういない。

 

 近くにいるにしては、感覚が薄すぎるのだ。

 

「なら・・!!」


「ああ、すぐにこの国を出て、周りを捜索しよう」


「やったー!!」


「しかし、、魔王が生きている・・か」


「奇を引き締めないとね!!」


「明日、出発しよう。それまで準備しておいてくれ」

 

 一同は解散していこうと席をたつ。が、その時、

 

「あの・・」


「ん?」


 後ろから服を引っ張っている感触に気が付く。

 

「あの、、私は・・」

 

 それはポチだった。彼女はあの戦いの後、僕たちと同じこの宿に泊まっていたのだ。

 

 そうか、彼女はこれからどうするのか、まだ聞いていなかった。

 

 彼女の中でも決心がついているのだろう。意を決したような表情に、パーティメンバーの注目が集まる。

 

「私は、貴方たちについて行きたいです・・!!」


 そう言うと思っていた。

 

 そして彼女のその態度から、聞くまでもないと思うが、一応聞いておく。


「ポチ、、この旅は魔王を倒すためのものだ。

 強い君であったとしても命の危険はある。

 それでもついてくるっていうのかい?」


「はい」


 それに対し、十分考えたのだろう。迷いなく答える。


「だって、、私には他に行くところがないし、、それに・・!!」


 

「こういうことを言うのもなんですが、私はまだご主人様に囚われているのかもしれません。

 魔王がゆるせないというのもあるのですが、、あいつを倒せばご主人様を取り戻せるかもしれないという淡い期待を抱いているんです・・」

 

「そうか・・」


 正直、それはあまり期待しないほうが良いんじゃないか。

 

 乗っ取られたとかそういう以前に、魔王降臨の直前、彼は確かに死亡していたのだ。

 

 だがそれは彼女も承知のことだろう。

 

 今彼女が言ったように、囚われているだけなのだ。

 

 これを解決しないと、彼女の人生に大きな心残りという汚点が残ってしまうのである。

 

 ゆえに、無駄だと分かっていても、行動せざるを得ない。

 

「わかった。

 でも、無理だと思ったら何時でも抜けてもらっても構わないからね」


「・・はい!!」


 その返事とともに、他のメンバーも、次々の彼女を歓迎する。


「この子、、あの優斗さんと互角の戦いをしてた子だよね?!百人力じゃない!」


「何か事情が込み合っているみたいだが、心強いな」


「一緒にがんばろーね!!」

 

「貴様、見た目可愛いが、、優斗に何かしたら・・分かっているだろうな?」


「アンジェリカ・・あんた子供相手に何張り合ってんの?」


「だって、、続けて二人もライバルが登場したのだぞ?!もう少し貴様も危機感をだな・・!」


 ともかく、こうして正式にポチが新メンバーとして加入したのだった。

 

 

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