間幕 魔王の生存
だが、そんなことをしている間、既に脅威は進行していた。
そう、魔王。
彼は実は生きていたのだ。
(・・やれやれ)
安穏漆黒のスライム状の『それ』は草原を移動していた。
何故生き残れたのか。
確かに優斗たちのおかげで、分裂した無数の魔王は全て殲滅していた。
答えは単純明快。それ以前にも分裂していたのだ。
そう、バックアップを作っていたのである。
ポチとのレベル上げ。
それで得たエネルギーの過剰分を、安全な別の個体に移していたのだ。
それによって、半分以上のエネルギーは失ったものの、まだ魔王は生きていた。
(まだ、安全マージンは十分ではない・・だけどねぇ・・)
潮時だと考えた。
勘が囁く。このまま地道にエネルギーを回収していると、いずれ勇者に全ての体を滅ぼされるのだと。
ゆえに、多少無茶をしてでも、次のフェイズに移ることを決意した。
(『あの狩場』でで一人でレベル上げをするとしようか・・)
そして魔王は変形し、まるでグライダーのように空中を滑空しながらその場所へと向かう。
その場所は、、前に優斗の友人がレベル上げをしていた場所、、
『ドラゴンの山』。
中位、低位ドラゴンや、多くの高レベルモンスターが跋扈する地獄のような戦場。
友人の記憶から、その高リスク高リターンの戦場を知っていた。
危険ではあるが、同時に魔力を多く手に入れる資源の多い土地でもある。
そして、、同時に彼は考える。
(優斗・・あいつは再び私の目の前に立ちふさがるだろう。
あの戦場に行くとしても、まだ『足りない』。
ならば・・)
彼はある『術式』を構築する。それが優斗に通用するかどうか分からない。
だが、通用しなくともよい。
ただ、時間稼ぎができるならばそれでもいいのだ。
その間に、魔王が捕食しようとするのは、その山の頂点。
神のごときエネルギーを放つ上位ドラゴン。それであった。