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アンジェリカの告白


 


「「静かに!!」」


「っ~~~!!」


 その凛とした言葉に、一同は口を閉じてしまった。

 

 それはパブロフの犬のように体に染みついている習性。

 

 彼女がまだダークブレイカーのリーダーだったころ、こうやって叱ってくれた記憶がそうさせたのだろう。

 

 母親代わりゆえに、その気迫には誰にも逆らえなかった。

 

 そして作られたその沈黙の中、アンジェリカが静かに告白する。

 

「確かに、、私は酷い人間だ。


 責任ある立場にありながら、それを放棄した。

 

 だからこそ、お前らに言い訳などしない」

 

 その言葉の後、ふうと緊張の糸を緩めるように息をついていう。

 

「自分勝手に決めていたのだが、、まだまだ私も弱いな」

 

「っ!」


 先ほどまで戦っていた相手に向ける表情とは思えないほど彼女は優しい表情をして見る。

 

 それに対し、罪悪感を一同は思わず感じてしまった。思わず量の手を握り締める。


 それに畳みかけるように彼女は言った。

 

「お前らを見たとき、私は迷ってしまっていたんだ。


 何しろお前たちはまだ弱い。実力的にはともかく、精神的にはまだな。

 

 だから、元のパーティに戻るべきなんじゃないか?

 

 そう思ってしまったんだ」

 

「アンジェリカ、、さん?!」


 彼らは信じられないといった顔をした。まさか彼女がそんなことを考えていたなど、夢にも思わなかったのだろう。

 

「そう、私はさっきまで私は考えていたんだ。


 ダークブレイカーに戻るか、、それとも優斗のチームに居続けるか、、」

 

 ごくり、と彼らは息を飲む。

 

 今、彼女の表情を見ればわかる。

 

 アンジェリカは今、そのどちらかを決断したのだ。


「私の答えはこれだ」


 

 そう言い放つとともに、アンジェリカが腰から何かを取り出した。

 

 

「「!!」」


 いきなり取り出したそれを見て、放心しながら見ていた彼らは動揺する。

 

 それは剣というにはあまりにも短く、そして軽い。

 

 だが、彼女はそれを天に掲げて、引き金を引いた。

 

 ブワッ!!

 

「!!」


 一瞬で、白い何かが広がった。煙幕だ。

 

 その直後、彼女は動いた。

 

 剣を片手で抜き放つと、一度の斬撃で、数人を気絶させる。

 

「ぐえっ!!」

 

「うお、うおおおおおおおおおおおお!!!」


 反撃されていると数舜遅れて彼らは気が付く。

 

 視覚が役に立たずとも、風圧でだいたいの位置を察すると、全員で取り囲んだ。

 

 さらに、その上にいる屋根のメンバーたちも落下。まさに360度全て取り囲まれた状態。

 

 何処にも逃げ場がない。まさに多勢に無勢。

 

 だが、、

 

 ・・・この状況においても、彼女のほうが実力において勝っていた。

 

 片手に剣を水平に回転。そしてもう片方の銃を天空に向け、乱射。

 

「「「ぐはぁあああああああああ!!!」」」


 その竜巻のような風圧とともに、視界は晴れていった。

 

 しかしもはや煙幕など必要ない。その路地裏に立っているものはもはやいなかった。


 そして、、跳躍。再び屋根に戻ると、目の前にいた現リーダーに語り掛けた。


「ジョセフ・・」


「アンジェリカさん、、!!」


 くるっているとはいえ、、魔王は彼らの思いを捻じ曲げることはしなかった。

 

 今もっているゆがんだ願望を増幅させて、凶暴にさせただけのこと。

 

 つまり、先ほどの罵詈雑言は、メンバーたちの本心でしかない。

 

 そのことを言葉の色から理解したのだろう。

 

 アンジェリカはそれにこたえなければと思った。

 

「そうか、、お前たちの本心はしかと受け取った。


 だったら、なおのこと私の気持ちを言わなきゃいけないな」

 

 そしt、覚悟したかのように意気を吸い込むと、大声で

 

「わたしはぁああああ!!


「っ?!」


 恥ずかしげもなく叫んだ。



「ゆうとがすきだあああああああああああ!!!」


「・・・・え?」


 ジョセフはきょとんとする顔。

  

 本心でその程度の理由でパーティを脱退したのだとは思ってなかったのだろう。

 

 そんなポカンとした表情で要られるのが恥ずかしくなったアンジェリカは、しどろもどろになりながらも勢いのまま続ける。


「つまり、、今のパーティには、好きな人がいるんだ・・!!


 だから、その人とともにいるには、お前たちのパーティにいるわけにはいかないんだ・・!!」

 

「・・・・」


 ジョセフ、そして黙って聞いていた他のメンバーは、沈黙せざるを得なかった。

 

 全員こう思っていた。

 

(そんなバカみたいな理由でパーティを脱退しただなんて・・!!)と。

 

 そして、

 

「くっく、、」


「!!」

 

 脱力したかのような笑いが、思わず漏れた。

 

「くっくっくっく、、」


 自然に一同から漏れていく。


「わ、分かってくれるか?!」


 アンジェリカは、許してもらえるかもしれないと、思った。

 

 だが、彼らは、一堂に豹変し、


「「ふざけるな!!!」」


「っ!!」


 鬼のような形相。

 

 ピリピリとした気迫が彼女の全身を駆け巡る。


 彼らは本気で怒っているようだった。

 

「そんなことで・・!!その程度で俺たちは、、!!!」

「やっぱり、あんたは殺さなくちゃいけない・・!!」

「あんたに傾倒した俺たちが馬鹿だったんだ!!」


「・・・」


 怒り。魔王に狂わされているに加え、それは時に人を強くする。

  

 殺意から彼女は察した。

 

 おそらく通常時の彼らよりも数段厄介な相手なのだろうと。

 

 しかし、、今は先ほどと違う。

 

 アンジェリカ自身に迷いなどほぼない。

 

 隠すべきものは既に告白してしまったからだ。

 

 ならば、、後は戦って示すのみ。

 

 ただ一つのシンプルな戦いだ。

 

「良いだろう。ようやく私も本気が出せそうだ

 お前たちの実力、久しぶりに見てやろう」


「うおおおおおおおおおお!!!しねぇええええええええええええええ!!」


「私は死なない!!私は勝つ!!勝って幸せを掴んで見せる!!」


 今の彼女には優斗から貰った数段性能の高い銃もある。


 ほぼ戦闘力は互角。

 

 その両者が本気でぶつかり合う、熾烈な戦いが始まったのだ。 

 

 

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