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気づき


 僕は、パーティを視界の隅で見送った後、集中してポチと戦っていた。

 

 能力を使わない基本的な戦闘力は同等。だが僕にはスキルがある。

 

 そう、金属生成。それでであるものを作っていた。

 

 このスピードだ。普通に鞭にして使おうとすれば即座にその隙をとらえられる。

  

 しかし、、ある程度堆積が小さいものならば作り出せる。例えば剣やナイフなどだ。

 

 ならば、金属を纏わせるように作ることも当然可能。

 

 がきんっ!がきんっ!と。

 

 爪と剣の攻防。ポチはよりそのスピードを生かして四方八方から攻撃し、僕はそれに対して基本受けと回避で処理する。

 

 そして、その一瞬、僕はポチの爪撃を見失った振りをした。

 

(っ!!チャンスです!!)


 だが、、動きの癖と殺気から、見ずともだいたいの方向は分かる。

 

 狙い通り彼女は、右斜めから攻撃しようと接近。

 

 それに気づいていながら、僕は依然見失った振りを続けている。

 

 だが、直撃の瞬間、、

 

 がキィンッ!

 

「っ?!」


 武器生成を発動。


 右腕を一瞬で鎧を纏わせ防御した。

 

 そしてその動揺を狙い反撃。右手でつかみかかろうとする。だが、

 

「がっ・・!!」


 紙一重の差で上体を逸らされた。同時にバック宙がえりで距離を取られる。

 

 だが、それによって、僕にさらなる余裕が生まれた。

 

 芋づる式に引き出した一瞬の隙を使いさらに、、

 

 『左腕も鎧に纏わせる』。

 

「っ!!」

 

 同時に接近して拳で攻撃。

 

「ぐっ・・!!」


 今度は直撃。とはいえ体の重心を使い、クリーンヒットを避けられたが、、また隙を使用し、追撃をするのではなく、さらに鎧を纏わせていく。

 

「な・・っ?!」


 何が起きているのだ。そう言いたげな彼女だったが、完成と同時に気づいたことだろう。

 

 そう、完成したこの姿は・・

 

「・・・・っ」


 苛立たし気な表情。

 

 息をのむ声が聞こえるようだった。

 

 そう、この姿はまさしく・・

 

「そんな姿になって・・私の動揺を誘おうって腹ですか!?」


 僕の友人、そして彼女のご主人様の姿。

 

 とは言っても、人型ではない。


 そう、数か月前に戦った、怪物の姿だ。

 

 僕が着こんでいるゆえにスケールは小さくなっているが、記憶を掘り下げて精巧に再現してある。

 

 そして、僕は嘘をついた。

 

「そうだ。私がお前のご主人様だ」


「・・・へ?」


 何を言い出したのかときょとんとするポチ。


 そう思うのも当然だろう。

 

 だが、それを承知で僕は言う。


「だから、お前は私に従え。あの偽物の私を殺すのだ」


「!」


 そういうことかと、途端に怒りに震える。

 

「ご主人様の名を、、騙らないでください!!」


 その怒りは当然だろう。僕はすぐにふざけるのはやめて謝罪した。


「・・すまない」


「ごめんですむと思ったら大間違いです!!馬鹿!!」


 そう言って、再び接近し爪で攻撃する。

 

 ガキガキガキガキガキガキィイインンッ!!

 

 連撃。先ほどまではじくことで精いっぱいだったこの見事な爪攻撃。

 

 しかし、今は違う。

 

 全身を硬度の高い鎧で待っているのだ。

 

 受けをあらゆる部位で行えるようになる。

 

 カウンターを与える余裕ができていた。

 

 攻撃と同時に押し返し、疲労を徐々に与えていく。

 

「ぐっ・・!!」


 そして、その一瞬の隙を狙って、掌底。

 

「ぎゃぁあああああん!!」


 吹っ飛んでいく。が、着磁と同時にシュタッと受け身。

 

「がるるるるるるるぅ!!」

 

 それに対し、余裕で僕は近づいて言った。

 

「一つだけ聞こう」


「なんですかっ!!」


 彼女は主人をバカにされている気持ちなのだろう。怒っていた。

 

 だが、次の僕の質問で、一瞬で表情が変わる。

 

「僕が偽物だとしたら、、

 『あいつは本物だ』っていうのか?!」


「っ!!そ、それは・・!!」


 その、動揺の隙の間に剣を生成、そして振るう。

 

「がっ・・!」

 

 しゃがみで回避するが、そのまま足で踏みつける攻撃。

 

 ずどんっ!!

 

 だが、ゴロンと彼女は転がり、距離を話して構える。

 

「本当は君も気が付いているんじゃないか!!」


 叫びながらその勢いのまま接近。

 

 今度はさっきとまるで立場が逆転した。

 

 ガンガンガンガンガンッ!!と。

 

 剣を振るい、そして彼女は爪で受ける。

 

 全身ガード状態。隙間にさえ気を付ければほぼ全身無敵と言ってもいい。


 肉薄することで常に優位に立つことができる。

 

 対し彼女はジリ貧と言ってもいいだろう。

 

 その連撃と同時に僕は叫ぶ。

  

「あいつは偽物だ。あいつは死んだんだ!」


「ちっ、違います・・っ!!ご主人様は復活したんです・・っ!!神様の力で・・!!」


「でも、魔王が成りすましているかもしれない」


「ち、違うます!本物なんです!!」


「・・・そう言い切れるのか?!」


「それは、、、」


 その言葉の後、彼女は長いこと黙っていた。僕は言葉の続きを待ちながら連撃を続行する。


 そして、沈黙のあと苦し紛れに口にする。


「や、優しいし、 

 毎日ちゃんと褒めてくれるし、、

 狩りにも付き合てくれるし、、っ!!

 貴方みたいに『暴力的な人』ではありませんっ!!」

 

 しかし、それに対し、僕は剣を薙いで一刀両断した。

 

「よく思い出せ!そんな奴だったか!!??あいつは!!」


「!!」


 確かに、今までの行いを悔やみ、心を入れ替えた可能性だってある。

 

 だけど、どんなに心を入れ替えたとて、人が変わるなんてことはあり得ない。

 

 彼に近い人間にはそれが分かるはずだ。ましてや彼女のような逸材ならば雰囲気で即座にわかるはずなのだ。奴が偽物だということに・・!!

 

「わ、私は・・!!」


 明らかに動きが鈍っている。

 

 思い当たる節が多かったのだろう。

 

 実際彼女は思わず記憶を掘り起こしていた。

 

 そう、今まで彼女が逃げていた『主人が偽物である』という決定的な証拠に、ようやく向き合えたのである。

 

(夜明けに香る血の匂い、、! あの不気味な笑顔・・!

 そして何より、動きや気の流れ、雰囲気も全然違う・・!!)


 彼女は気が付いた。自分は悲しみに逃げていただけなのだと。

 

 悲しみを偽りで塗りつぶすために、自分の騙していただけなのだと。

 

(ああ、そうか・・!私は、、!!)

 

 そして、次第に爪の防御が追い付かなくなってきたポチは、

 

 がキィイイイイン!!

 

 ついに爪武器を破壊される。

 

 武器は一定の方向に脆い場合が多い。それが壊れたということは、つまり戦意が喪失したことの表れ。

 

 僕はそれに剣を突きつける。

 

「ふふ、、どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったんでしょうか・・!」

 

 それ以上彼女は抵抗することをせず、ぽつぽつとかたった。

 

「あの方は、、いえ、アレは、、明らかに別の何かだったのに・・!!

 私は、気づかないふりをしていました・・、私の自分勝手な思い出を守るために・・!!

 ごめんなさい、、私は、とんでもないことを・・!」

 

 僕はゆっくりと剣を下す。もう彼女は向かってこない。そう確信できたからだ。


「・・君はもう宿に戻って休んでいてくれ。あとは僕たちが何とかする」


 そう言って、走りだそうとしたところを、彼女は小さいながらも確かな意思のある声で止めた。


「いえ、、待ってください」


 ポチは立ち上がった。

 

 彼女にしては緩慢な動き、

 

 肉体的にはともかく、精神的にボロボロだというのに、、こういった。


「私にも手伝わせてください・・!あいつを、、倒せばいいんですね・・!!」


「いや、だが。君は主人のことが・・」


 しかし、そう、それは一種のけじめだったのだろう。

 

 精神的に疲弊していたはずだが、その眼には確かに意思の光が宿っていた。

 

「いえ、だからこそです。だからこそ許せないんです。

 ご主人様の姿を騙ったあいつが・・!!」

 

「そうか。だったら、、」


 僕は遠くのほうを見て、あたりを無数に飛行しているドローンに視線を投げ手を挙げた。

 

 するとドローンの一つがこちらにやってきて電子音性で言った。


「・・終わりましたか」


 それは、北條の操作するドローンだ。


「ああ。そっちはどう?魔王は見つかった?」


「ええ、発見したはしたんですが、、魔王は分裂しているみたいなんです。いくつもの個体が町中で発見されています」

 

「・・なんだって?」


 優斗も分裂しているとは思わなかったが・・すぐにその可能性は高かったかと思い直した。

 

「でも、今メンバーに倒させています、、!このままいけばなんとか全て倒せそうですが、、」


「でも、できるだけ素早いほうが良い。やってくれるね。ポチ」


 ポチは頷いた。それに対し、ドローンの一つが上空から降りてきて北條が言う。


「あの、それじゃああなたも、このドローンの行くほうについて言ってください。」


「はい!それじゃあ、行きます!!」

 

 そう言って彼女は四つ足になり、高速で駆けていった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください~!!」

 

 それを遅れて追随するドローン。

 

 何という速さ。

 

 あれならば一人で百人分の働きくらいはするだろう。

 

「なら、、僕も負けていられないな」


 そう言って僕は残ったほうのドローンにむけて言う。

 

「魔王の位置を記録した地図を出してくれないか」


「え?、は、はい」


 そう言って、ドローンからモニターを取り出す。

 

 それを見れば、地図にマーカーがいくつもつけられている。

 

 数十はあるだろうか。捜索の成果か、現在進行形でどんどん増え続けている。

 

 確かにこれらすべてを殲滅するのは骨が折れるだろう。

 

 だが、

 

「なるほど、確かここが北だから、、なるほど、分かった」


 液体金属操作を使用して、金属製の糸を放った。。

 

 続いてそれに意識を集中させる。

 

 マーカーの一つにそれを伸ばしていき、そして、

 

「よし、倒した」


 糸の先からハンマーを生成し、跡形もなく潰していく。


 続いて、コツをつかんだのか、先ほどよりも早く、次々と倒していった。

 

「(・・すごい!)」


 ドローンのカメラから見ていた北條は、高精度で行われるそれに対して感嘆の声を上げる。

 

「(やっぱり優斗さんは頼りになるなぁ・・!!)」

 

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