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二者の光明


 

 

 対し、アンジェリカは人間たちと戦っていた。

 

「ぐへへへ・・!!」

 

「くぅ!!」


 彼女は苦戦している。

 

 だが、アンジェリカは持っている実力を全て出し切ってはいなかった。

 

 本気さえだせば、この人数差を覆すほどの力は持っている。

 

 しかし、それは到底不可能だった。

 

 何故ならば、相手がかつての仲間たちだからである。

 

 本来彼女は情に深いタイプ。

 

 だからこそここまで強くなることができた。

 

 しかしそれは逆に言うならば、情に流されやすいという弱点でもある。

 

「ほらほらほらほら!!!」


「ぎゃははははっははははh!!」


 対し、敵たちは狂乱しているとはいえ、見事な連携によって彼女を翻弄。

 

 かろうじて実力の差から複数同時に攻撃をはじく。回避する。

 

 だが、彼女の今の精神状態から、いつ集中力や体力が切れるかもわからない。

 

 プレッシャーから頬に剣をかすめ、血が滴った。

 

「・・・・っ!!」


 その動揺をカバーするために一旦距離を取る。

 

 同時に相手たちは彼女に距離を詰めて来る。

 

 格闘というのは、一般的にだが攻める側が有利。

 

 受けに回る分だけ相手に好きにさせる余裕を与えてしまうからだ。


 だというのに彼女は受けに回り続ける。

 

 加え、相手たちは手段を選んではいなかった。

 

「おらっっ!!」


「っ!!」

 

 屋上の木箱を息を合わせて複数個投擲される。

 

 それを回避しようにもそこには既にメンバーたちが集団で安置を狭めていた。

  

 何という連携。1体多という卑怯さを除けば、なんとも美しいフォーメーション。

 

 まるでチェスのように逃げ場がない。

 

「(っ、、!!こいつら、、!いつの間にこんなに腕を上げて・・!!)」


 彼女は複雑な感情で悪態をついた。


 だが、唯一残っている空間がある。

 

 アンジェリカは咄嗟の機転からその場を逃げる逃走経路を直感で判断した。

 

 そう、背後。足場がない崖。空中。

 

「とうっ!!」

 

 彼女は自ら屋根から飛び降りた。

 

(これでなんとか・・!!)

 

 だが、その逃走経路は悪手。

 

「にたぁ」と、狂気を含んだ笑いを一同はした。

 

 そう、そこは、、

 

「・・・しまった」


 袋小路だ。

 

 逃げようとするものの、次々としゅたしゅたっと降りてくるメンバーたち。

 

(ここは、、!!やばい!!)

 

 再び駆け上がろうかと上を見上げるも、そこにも

 

 見事な連携で、彼女は地上の追い込まれてしまった。

 

「ひひひ・・!!」「ぎゃぎゃぎゃ・・!!」


 所作こそくるっているものの、その戦闘技能は十分トップランカーで通用するもの。

 

 アンジェリカは感慨深く言う。


「強く・・なったな・・」


「ふひっ」


 それに対し、狂ったように彼らは騒ぎ彼女を責めた。


「アンジェリカさんが俺たちをこんなに強くしたんだ!!自業自得だな!!」


「だがあんたは俺たちを捨てた!!」


「あなたのせいで・・!!こんなつらい思いを・・!!」


「・・・っ!」


 アンジェリカは、その言葉に苦痛に眉をゆがめつつ、言う。

 

「皆、、すまない・・」

 

 同時に観念したかのように目を閉じた。

 

 そして、カチリと剣を収める。

 

「「・・・?」」

 

 あり得ない行動に、ダークブレイカーのメンバーも多少の動揺が見られた。

 

「どうしたんですかぁ・・?!降参ですかぁ!!」

「あなたらしくなぁい・・!!」 

「そうだそうだ!!まだ戦え!!」



 がやがやと一同は一斉に罵詈雑言を放つ。

 

 それは鳴りやむことなく、アンジェリカ一人に降り注いだ。

 

 それでも、沈黙。

 

「・・・・」

 

 彼女は言い返さず、微動だにしなかった。

 

 そう、それはまるで、その言葉に耐えるかのように。

 

 いや、あるいはその表情は、まるで

 

 

 『とある』覚悟をしようとしている姿に見えた。

 

 

 そして、、、ある時ゆっくりと目を見開いた。

 

 依然、周囲は汚い雑音で満たされている。

 

 だが、彼女はゆっくりと息を吸い込んで、、、

 

 、、叫ぶ。

 

 

 

「静かに!!」



 途端にあたりを静寂が貫いた。


 













 そのころ、、東堂たちは、突如聞きなれない音に驚いた。



 ヴィイイイイイイン、、

 

 

 その発生源は、浮遊する見慣れない『何か』。

 

 実は、それはついさっき見たばかりのものだった。

 

 円盤にヘリコプターの羽が二つ付いたような形。

 

「これって、、!!ドローン?!」


「ああ、優斗さんが作ったっていう・・!」

 

 そう、それはこの国に到着する前に見せられたもの

 

 そして、金属音だけでなく、そこから電子的な声が流れた。

 

「あっ、、あのー、、」


「!!」


「その声は・・!」

 

 聞き覚えがあった。 

 

 その声は、彼らが今まで嫌悪していた人物の声。

 

「北條・・!?」


「・・北條なの?!」

 

 その声は、以前の彼の立派なイメージとは正反対におどおどしい。

 

 しかし、彼は次に、信じられないことを叫んだ。

 

「あのっ・・!!僕は、他に魔王がいるところをいくつも知っています!!」


「「何?!」」


「つ、ついてきてください・・!!」


 そう言って、ドローンは飛んでいく。

 

 一行は目をあわせてうなづいた。

 

 ドローンの案内通りに屋根を渡っていく。

 

 すると、、「あ、あそこです!!」

 

 ドローンが示す方向を見れば、ゼリー状の冒涜的な物体。

 

 そう、魔王がゴミ箱の陰に蠢いていた。

 

 同時にメンバーは動く。

 

「ファイア!!」「エレキ!!」「オーラソード!!」「ホーリーエリア!!」「」


 ズギャギャギャギャーーン!!!と光が放たれ、


 一瞬で処理した。



 そして、彼らは振り返り、ドローンを期待を込めたまなざしで見つめた。

 

「北條、、お前・・!!」


「え?な、何・・?!」


 怒られるかと勘違いし、北條のドローンは一瞬あとずさりかけるが、

 

 しかし、次の言葉でそれが勘ちがいだったことが分かった。

 

「手伝ってくれるのか!助かる!!」


「こんな時だけど、あんたの力も借りたいわ!!」


「他の魔王の位置も早く教えて!!」


 それに対し、急に褒められたことに動揺しながらも、


「う、うん・・!」


「よし!案内しろ!!今は少しでも多く魔王を倒したいんだ!!」


 その前にマージョリーが気が付く。


「待って。空をよく見て見て」


 すぐに一行は気が付いた。


 空に無数の何かが直線的に行き来している。



「何あれ・・!!気持ち悪いくらいたくさんあるけど、、!!」


「!まさかあれは・・!1」

  

 そうそれは全てドローン


 幾何学的に交差しながら地上を捜索しているようだった。


 ドローンに魔法の銃を取り付けるための試作機をいくつも作っていたのだ。

 

 それが功を奏してこうしていくつものドローンを飛ばせているのである。

  

 思わず東堂が疑問を漏らす。

 

「待て、、あんなに大量のドローンを、お前ひとりが操作しているのか?」


「そ、そうだけど・・?」


「っ!」


 彼らは絶句した。あれほどの量の操作を並行して行うなど、人間業ではない。

 

 しかし実際不可能なことではなかった。

 

 優斗がドローン本体の開発している間、北條は現代から専門書をスキルで取り寄せ、ずっと引きこもりつつ開発を続けていた。

 

 それにより、半自動操縦による大量編隊、さらには画像認識によってモンスターを判別することができていたのである。

 

 それでも、これほどの量を扱うためには幅広い知識と状況判断能力が求められるのだが、こともなげに北條は言う。

 

「一応練習したから、、」


「すごーい!!」


 真っ先に声を上げた南雲だけでなく、他の面々も彼のことを見直したように言う。


「正直、あんたのことはいまいち信用できないけど、でも今はあんたの技術に頼るしかないようね」


「そのようだな」


「う、うん、今もたくさん位置を特定している。でも、これができるのは発見することだけ・・」


 そう、銃付きのドローンは新開発のものであり、まだ量産化できていないのだ。


「だから・・!!」


「ああ、俺たちで全部殲滅するぞ!!」


 そうして、一人一体ドローンがついて、一同は再び分散する。

 

 捜索する必要がない分、魔王を処理するスピードはさらに上昇していったのだ。

 

 このままいけば、全て殲滅できる勢いである。

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