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捜索開始


 

 優斗に残された勇者一行は、それに追いつくために思い思いに移動していた。

 

 魔法使いは空を飛び、近接系は屋根伝いに。

 

 この世界では、近接系のロールは短距離ならば早いが、しかし長距離の移動となると、魔法使いのほうが分があるというのが一般常識。

 

 ゆえに、しばらくしてマージョリーさんは空から下に降りてきて叫んだ。

 

「全く、あんた遅いわ!!捕まりなさい!!」


 アンジェリカを掴んで再び上昇。

  

「!助かる!」


 それを見て西園寺も

 

「仕方ないわね。、」

 

 南雲と協力して、東堂を掴んで再び浮遊した。

 

「わーい!」


「すまん!」

 

 そして、二人は魔法の出力を上げて加速していく。

 

 やはり両者とも高出力の魔法を放てるだけのことはあり、最短で超速度に達した。

 

 十分も経たずに優斗に追いつく。


「・・っ!!」

 

 だが、何やら様子がおかしい。

 

 ガキィンガキィンガキィンッ!!

 

 優斗と誰かがいくつもの残像を作り出し、高速移動して戦っているのだが、、。。

 

 その相手が魔王ではないのである。

 

 その残像を、近接ゆえの視力で東堂がとらえて驚く。

 

「あれは、優斗さん・・それと、、ポチ!?」


「ポチ・・?!なんであの子優斗と敵対しているの、、!」


 マージョリーが驚くと、アンジェリカが冷静に答える。


「おそらくポチは騙されているか、、もしくは操られているのかもしれません!」

 

「そうか、、!だったら私の魔法で・・!!」


 西園寺は魔法を発動しようと手を掲げた。


 それに対して、東堂が慌ててその腕をパシッと掴む。


「待て!西園寺!!今は優斗さんに任せるべきだ!」


「ど、どうしてよ!!」


「あのスピードを見てみろ!!狙いを定められない!フレンドリーファイアは必死だ。

 それだけならまだしも、あれだけの手練れに一瞬でも隙を見せたら殺されるぞ!!」


 彼のいう通り、その攻防は明らかに高レベル同士の戦い。


 他の者が入り込む余地はないようだった。

 

「じゃ、じゃあどうすればいいっていうのよ!」


「それは・・」

 

 そう言いよどんだ次の瞬間、

 

 ヒュッ!と。


 一つの金属片がアンジェリカの足元に向けて投擲された。

  

「むっ?!」


「流れ弾!」


 彼女はそれをパシッと素手で受け止める。

 

「アンジェリカ?!大丈夫か?!」


「いや、攻撃ではない。これはおそらく、、」


「なにそれ?」


 それには何やら文字が浮き出た鉄板だった。差出人には優斗の名前が書かれている。


「優斗からだ。私たちへの手紙のようだ」


「おそらく、激しい戦いのさなか、こうすることでしか意図を伝達できないみたいね・・」


 アンジェリカは仲間を見渡して言う。


「読み上げるぞ!」


 その手紙に書かれていたことは、彼女たちに少なからぬ動揺を与えた。


『今のポチは強い。だからポチは僕が相手する。

 代わりに君たちで魔王を探して倒してほしい』

 

「「え?!」」


 彼らは勇者、とはいえ魔王相手に優斗抜きで挑めるほど自信があるわけではない。

 

 不安そうに南雲がつぶやいた。


「でも、、私たちだけで倒せるの?!」


 それに対し、アンジェリカは冷静に返す。


「いや、大丈夫みたいだ。続きを読むぞ。

 

『あのよわよわしい姿から多少手負いを与えた。

 今の魔王なら、スライムよりも少し強いくらい。

 十分メンバーの一人で挑んでも倒せるはずだ』」

 

「そうか・・!!」


 東堂はその言葉の意図を十分理解できた。

 

 つまり、魔王にやられないよう全員で一塊になって探すのではなく、分散していった方が捜索するほうが効率的だということだ。

 

 それは、ある意味無責任と思われる伝言かもしれない。

 

 いくら弱体化したとはいえ魔王。返り討ちにあう可能性もあるかもしれない。

 

 だが、優斗はその鋭敏な戦闘感覚から、魔王がかつてないほど弱体化していることを察知していたのである。

 

 そしてそんな彼を信頼しているメンバーたちは、迷いなくそれを信じた。


「あの人がそういうなら、、!!」


「でも、ちょっと待って!」


 それでも問題は残っていることに気が付いた西園寺は、質問する。

 

「もしかしたら魔王は見つかりにくいところに隠れているかもしれない、、どうやって探せばいいの?」


「確かに・・」


 それに対し、マージョリーとアンジェリカは的確なアドバイスを答えた。


「魔法使い、、西園寺ちゃんと南雲ちゃんは力を円のように広げればある程度探知ができるはずよ!」


「近接系、東堂は気合というか直感で探してくれ。常人ならまず不可能だが、、そのレベルともなれば可能だろう」


「分かったわ!やってみる!」


 それに付け加え、東堂がある提案をした。


「あと、俺から提案なんだが、誰かが魔王を発見したら、攻撃する前にとりあえず空に信号を送ってくれよ」


「信号?」


「ああ、それが上がったら、全員そこに向けて集合するんだ。

 弱体化していると言えど魔王。卑怯と言えど全員で対処したい!!」


「そうね。何しろ相手は邪悪な存在。警戒しすぎるということはないわ」

 

 あらかた話し合いが終わった一行たちは、顔を見合わせてうなづく。

 

「では、、各自、分散する!!」


「「ええ!!」「うん!!」「おう!」」


 そして、彼らは各自放射状にその場から出発していった。

 

 今世界で、トップレベルで優秀な冒険者が五人。

 

 普通に相手がその場から逃走してさえいれば、すぐにこの戦いは終わっていただろう。

 

 

 だが、魔王の邪悪な企みによりさらなる混乱を引き起こすことになる。

 

 

 

 

 僕は、パーティがこの場から離れて、捜索しにいくのを見て、内心ほっとする。

 

「(よし、、!!彼らは手紙を読んでくれたようだ・・!!)」


 本来なら、僕も探すのに参加するべきだろう。

  

 しかし、目の前のポチ。

 

 今戦ってみて分かった。彼女は強い。

 

 基礎のレベルも高い。別れたときから比べて、格段に上昇のスピードが速い。

 

 噂通り、僕と別れてからも上位のモンスターの狩りを怠らず、研鑽を重ねていたよう。

  

 それに加え、今の彼女の気迫には、鬼気迫るものがあった。

 

 本来の実力の何倍もの戦闘力を有しているように感じる。

 

「(おそらく今のポチじゃ、、勇者の誰も勝てないかもしれない・・」

 

 そう思うほどまでに僕は手こずっていた。

 

 だが、仲間が居てよかった。


 そう今の僕の集中を乱すものは、魔王が逃げてしまうという焦燥感。

 

 だがそれは仲間に託すことで、戦闘に集中させることができる!

 

 これが『信頼』。これが『友情』。

 

 僕は、ポチの猛攻をしのぎながら、精神を統一させた。

 

(・・ここからが本番)


 そして、金属生成を使用し、、あるものを作りだしたのだ。

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