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出発のとき





「僕は、、やっぱり魔王討伐に参加することにする」


 落ち着いた頃、僕は全員がそろったところで、そのことを決心を報告した。

 

「「!!」」


 それに対して、皆の表情は明るかった。

 

 良かった。もしかしたら反対されるかもしれないと予想していたが、そうではないらしい。

 

 マージョリーさんアンジェリカさんは、こう言ってくれた。


「・・やっぱりね。結局あんたならそういうとおもったわ」


「ごめん、マージョリーさん。でも無理についてこなくてもいいんだ」


「ふん、まあ、私も乗りかけた船だしついていくわ」


 対してもう一人のメンバーは、食い気味にこちらにずいっと顔を寄せてくる。

 

 アンジェリカさんも同じ意見のようだ。


「私もついていきます!!

 命を助けていただいた恩もありますし、、それにあの銃だって上達しました!!

 だからきっとお役に立てると思います!!」

 

 先日、友人を討伐した時の頃から、あの銃は彼女に預けているのだ。彼女のほうが上手く扱えると踏んだからだ。

 

 アンジェリカの射撃能力は素晴らしい。剣だけでなく、銃の扱いも潜在的に長けていたようだった。

 

 心強いものである。


「・・・なら、頼みます」


 二人は大きくうなづいた。


 勇者たちも、表情から察するに、異論はないようだ。


「斎藤さん!!ありがとうございます!!」


「あの金属生成が使えるなら、私たちはやっていける!!期待しているわよ!」


「がんばろうねっ!!ゆーとくん!!」


 こうして、僕と勇者たちのパーティはともに魔王討伐のために手を組むことになったのだ。

 

「新、魔王討伐隊を結成する!!」

 

 一時はどうなるかと思ったが、簡単なことだった。

 

 ただ、僕が正直に魔王討伐に参加すればいいだけだったのである。


 北条くんには悪いけど、彼の代わりになれるように頑張ろう。


 と、ちょうど偶然そう考えた時だった。


 ちょうど勇者だちが彼のことについて話すり


「そういえば、北条の奴はどうする?」


「え?いいじゃんあんな奴。皆頑張ってるのに一人だけ優斗さんのスキルを奪っていただなんて、、見損なったわね」


「うん、それはちょっとねぇ、、」


「ちょっと待ってくれないか!?」と、彼の名誉のために、色々と説明しようと思ったのだが


「まあ、あいつに比べればお前らも最初よりマシになって来たかもしれないがな」


「なっ!あんな奴と比べれば当然よ!わざわざチームメンバーの足を引っ張るようなことはしないわ!」


「わたしはのできることをする!」


「そう、北条みたいに人のものを盗んで背伸びするのは止めるんだぞ!」


「はーい!」


 それを聞いて、説得しようとした声を止めた。


(、、いや、これでいいかもしれない)


 北条四郎という共通の敵ができたことによって、チームは一層の結束感を生んでいるように思えたのである。


 だが、これでいいのだろうか?


 分からない。だが、今は魔王討伐のため、様子を見なければならない。


 それに、まだ彼には名誉挽回のチャンスがあると僕は踏んでいた。






 と、そんな会話の中、ここで、南雲がとぼけた表情で、

 

「ところで、魔王討伐と言っても、私たちは何をすればいい?どこに向かえばいいの?」


 さっそく出発の準備をしていると、南雲がとぼけた声でそう尋ねた。

 

「・・あんたねぇ」


「王様たちから聞いてなかったのか?」


 しっかり者めいた東堂は基より、不真面目そうな印象を受けるギャル系の西園寺もそのことを覚えていた。が、当の南雲は・・

 

「えへへ、忘れちゃった」


 と、この調子だった。

 

 仕方ないから最初から説明する。

 

「現時点で、正確にどこにいるかは分かっていないんだ」


「え?そうなのー?」


「うん、強大な魔王のオーラ反応は察知できるけど、僕がその力をそぎ落としたわけだし、潜伏していれば見つけるのは困難だろうね」


「だったら、どこに行けば・・」


「しかし、魔王には、この世界を崩壊させるという目的があるんだ。

 そのために、儀式場となる、『魔王城』と呼ばれる建造物を作らなければならないらしい」

 

「『魔王城』?」


「うん、聞いたところによると、魔王はその名の巨大建築物を作り、魔法陣を発動させる。一定期間奴にそれを許せば、この世界は破壊されるらしい」


「え?!本当?!ゲキヤバじゃん!」


「でも、その変わり、オーラによってその魔王の位置は分かるようになる」


「そっか、じゃあ、破壊される前に魔王を倒せばいいってことね」


「そう、いつかは魔王と戦う機会は必ず来る。

 でもだからと言って今、手をこまねいて待機しているわけにもいかない。

 

 既に世界中から召喚されている多数の勇者たちが冒険に出て魔王を捜索しているらしい。

 

 魔王城が作られる前に魔王を発見すれば、簡単に魔王のたくらみを破壊できるはずだ」


「なるほど!!じゃあ、さっそく私たちも探しに行かなきゃね!!」


 納得してくれたようだ。

 

 案外、目的を再確認するうえで良い機会だったかもしれない。

 

 最終決戦に向けての修行も兼ね、この冒険は必要なはずだ。


「終わったか?」

 

 と、そこで他メンバーの東堂は待ちくたびれたように言った。


「それについて、聞いてほしいことがある。

 俺も今聞いた情報だが、俺たちがが向かう最近、何人か失踪者が出ているらしい」


「えっ!」


「戦力の足りない周辺の村だ。こんなことは稀によくあるらしいが、時期が時期。

 モンスターか盗賊の仕業だと断定するには早いだろう。

 一分一秒も無駄にはできない」

 

「そうだねっ!!

 じゃあ、明日、さっそく出発しよう!!」

 

「うむ」「そうだな」「そうね」「行きましょう!」「ああ」


 全員同意が取れたところで、

 

 僕らは近くの村の一つへと出発することに決めたのだ。そこが最近で一番失踪者が多いという。

 


 そして、その次の出発の日、僕らは意外な人たちに会うことになる。 

 

  

 

 

 視点は移り、時間は少し巻き戻る。

 

 人物はポチ。時は、彼女が修行後、斎藤優斗たちと別れて少し経った頃だ。

 

 ザシュッ!ザシュッ!!

 

 自慢の速度で四つ足になりながら群れのクマ型モンスターを翻弄。

 ポチは通り過ぎざまに攻撃。つまりヒットアンドアウェイによって敵はなすすべものなく倒されていく。


 彼女の心配をする必要は皆無だった。


 本来、彼女ほどの冒険者ならば、自身の強さを鑑みて、もっとモンスターも強い相手とやりあいたいと感じるものだが、しかし、それをするだけの希望は彼女にはなかったのだ。

 

「・・・ふぅ」


 獲物を収納袋に収納し、一息つくポチ。

 

「今日はこのくらいでいいでしょう」


 そうして独り言を言いながら、町へと戻ろうとしていた。

 

 彼女は魔王討伐に参加することは心情的に無理だった。


 だからこそ、優斗たちに頼らずに一人で生きていくことが必要だった。

 

 実際、それは十分にできている。強いモンスターを狩り、そして奴隷商人などから自分自身の身を守ること。それは危なげなくできていた。

 

 だが、しかし、日々の暮らしが問題なくできるからと言って、それが幸せとは限らない。

 

(・・ご主人様)


 そう、死んだ自らの主人のことを思っていた。

 

 加えて、彼女は人生の目標となる志などと言ったものがないのだ。

 

 その悲しみを忘れるために、何かに没頭するということがなかったのである。

 

 故に、死んだような心持で日々を送っていた。

 

 そんな時である。

 

 今日の分の獲物を持って、町へと帰るところだった。

 

「・・・?」


 嗅覚が何かをとらえた。

 

 始め、それを何かを理解することはできない。

 

 それは、今まで嗅いだことのない匂いではない。

 

 むしろ嗅ぎ慣れているにおい。

 

 だからこそ、何故その匂いが『ここ』にあるのかわからなかったのだ。

 

(・・まさか・・そんなはずありませんよね・・?!)


 すぐに四つ足になる。いつも使用している最速のスタイル。

 

 風のようにかけて、慎重にその匂いのもとをたどっていく。

 

 そしてついに、遠くのほうにその人影が見えた。

 

「っ!!」

 

 瞬時に判断することができた。

 

 既にポチの野生の超視力がある。間違いなかった。

 

 まさに彼は彼女が思い描いていた人物。

 

 だが、それでも信じられなかった。

 

 普通の人が十分に認識できる距離になっても、彼女はまだ半信半疑だったのである。

 

 しかし、彼女は反射的に『彼』にこう呼びかけた。

 

「ご主人様・・!」


 そう、その前に立っているのは、斎藤優斗との苛烈なバトルの末、死亡したはずの、、


「やあ、ポチ、久しぶりだね」


 彼は、にっこりと笑った。

 

 化物の姿ではない。人型だったころの姿だ。

 

「ご主人様ぁあああああああ!!!」


 ポチは彼に、、『死んだはず』の彼に抱き着いた。

 

 それは外見『だけ』見るならば、間違いなく、まごうとなき斎藤優斗の友人。

 

 この異世界に優斗と、そして魔王連れてきた元凶だ。

 

 『それ』は復活した本人なのか。はたまた幽霊なのか、ゾンビなのか、

 

 だが、一つだけ言えるのは、彼のそのまとうオーラは、生前の彼は絶対にしないような、悪意と力に満ち溢れたものだったのは確かだ 

 

 それはまるで魔王のごときである。

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