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魔王の加護


「ゆうと・・ゆうと!」


 誰かが僕を呼ぶ声が聞こえた。


 意識が覚醒する。


「ここは・・・?」


 記憶が確かなら今は木の上で寝たはずである。


 だが見覚えがある空間だ。


 そう、そこは白い世界。転生前に来た神様が死後の世界と言っていた場所である。

 

 神様も目の前に立ってこちらをのぞき込んでいた。

 

「神様?」

 

「う、うむ。起きたか」


「おはようございます」


「うむ。おはよう」


 しかし、神様の様子がおかしかった。


「そ、そのじゃな。今日は貴様に言わなければならないことがあるんじゃ」


 何やらこちらの目をそらしている。

 

「どうしたんですか?」

 

 そして意を決したようにこちらに向き直ると、

 

「すまんかったーっ!!」


 いうなり、土下座した。


 その幼女の体から発する威厳からは、全く似つかわしくないポーズ。


「?」


 僕が不思議そうにしていると、神様が上目使いでこちらを見る。

 

「え?・・いや、そのじゃな。友人にユニークスキルを奪われなかったかの?」


「ああ、ええ。はい」


「む・・・?そのことについて何か思うところはないかの?」


 特にない。

 

「う、うむ。そのようじゃの・・どうやら貴様は特別なようじゃな。

 あれ?おかしいの?

 こういうとき普通は神様のばかー!とかそういう気持ちになるものなのじゃが・・」


 え?そうだったのか。だったら次はそうするか?

 


「いや、別にいいのじゃが・・。」


 ああ、そういえば神様に僕のコミュニケーションは通用しないんだった。


「ともかく本題に入るぞ。

 結論をいえば、貴様の友人には魔王の加護が与えられていたようなのじゃ」


「魔王?」


 魔王と言えば、僕ができることならば倒さなければならない敵だったような。

 

 その加護が友人に、だって?

 

 まさか・・

 

「魔王から加護というのは、危険なんですか?」

 

「いや。加護自体は安全じゃ。

 加護というのは、簡単に言えば神のマーキングのようなもの。

 力をほんの少し与える他に、夢を見せる程度のことしかできん。こうしてわしがおぬしに話しているようにな。

 拒否されれば話しかけることすらできぬからの。その影響力は微量じゃ」


 ならば、大丈夫なのか?


「いや、しかし他の世界から転移してきたものにとっては別じゃ。

 彼は魔法に耐性もなく、精神が荒んでおるみたいだしの。

 ゆえに魔王の誘導に乗ってしまう可能性が大きいのじゃ」

 

 そんな・・。


「具体的には、どんな風になってしまうんですか?」


「まず間違いなく、魔王は自身の現界のために協力させるじゃろう。

 その一番手っ取り早い方法は、この世界に、憎しみや怒りなどの負の感情を高めることじゃ。

 つまり、友人は多くのものを巻き込む、重大な犯罪に手を染めさせてしまう可能性が高い」

 

「なるほど」


 良かった。その悪影響はあくまで精神的なもので、身体的な影響はないらしい。


 でも、だったら・・


 犯罪を起こさせるわけにはいかない。彼を救わねばならない。

 

 それが『友達として当然のことだからな』。

 

 それを聞いて神様は微妙な表情をした。

 

「そうか・・そう思ってくれるか。ありがたいの。

 じゃが、わしが事前に貴様の友人を詳しく調べていればこうはならなかったはずなのじゃ。

 貴様に注意を促すだけでも、ユニークスキルを奪われることだけは回避できたはずなのにの・・。

 わしにできることは、わしの持つ少ない運気を、できるだけおぬしに与えることしかできん。

 情けない神様で、すまない」

 

 再び神様は深く頭を下げた。

 

 しかし、僕はそれをなだめるように言う。

 

「いえ、大丈夫ですよ。

 あなたから貰ったスキル、特に神眼はふんだんに有効活用してもらってますし」

 

「・・しかし」


「それに、金属生成メタルクリエイターのスキルも復活しましたし」


「・・そうかのう。そう言ってくれるなら・・って」


 神様は目を見開いた。

 

「え?えぇええええええええええ????」

 

 そしてこちらにずいっと迫り眼を光らせる。これは神眼を使用しているのだなと理解した。

 

 そして叫ぶ。

 

「ほ、本当じゃ・・!!金属生成メタルクリエイターが復活してる・・?!

 たった一日で、しかもLv2・・?!しゅごい・・!!まさかおぬし・・!」


 言動から察するに、彼女は何か知っているようだ。

 

「僕のユニークスキルがどうして復活したのか、わかるのですか?」

 

「う、うむ。そうじゃな・・

 まず、ユニークスキルとスキルの違いについて教えておこう

 スキルとはつまり、この世界のシステム、スキルシステムによる補助のことじゃ。


 そう、例えば人間が武器を利用するとき、それを扱うだけの技量も必要じゃが、基本的にその武器の力を引き出しているにすぎん。

 それと同じようにスキルとは世界に存在するスキルシステムという『法則』を利用しているだけにすぎないのじゃ。ここまではいいかの?」


 僕はうなづいた。


「うむ、それに対し、ユニークスキルは逆じゃ。

 自身の才能を『法則の核』としてシステムに反映させているのじゃ。

 つまり、技能奪取スキルスティールで表面上のスキルをとられたからと言っても、

 それは世界に反映された影を奪っただけで、『法則の核』自体は残る。


 ゆえに理論上ではユニークスキルは何度でも再生できるのじゃ。

 しかし世界に浸透した事実はリセットされるので、レベルは最初からになるがの」

 

 なるほど、だからLvが1に戻って復活していたのか。

 

 僕が納得していると、神様はこちらをキラキラとした目で見ていた。

 

 ?どうしたのだろうか?

 

「しかし、一日で、しかも無意識に復活するとは・・!!

 これはこの世界のシステムより貴様の精神のほうがはるかに強いということの現れ・・!!

 貴様しゅごいのじゃー!!褒めてやるのじゃー!!」

 

 そう言ってよしよしされる。

 

「あ、ありがとうございます」


 しかし、はたしてそうだろうか?僕は何も特別なことなんてしていないのだが・・

 

「うむ。胸を張って誇ってよいぞ。貴様は数百年に一度の才能を持つ天才じゃ。

 しかし良かったのじゃ。このまま貴様が野垂れ時ぬようなことがったら、心にしこりが残るころだったのじゃ。

 最悪、責任をとってわしがケコーン・・いやごほんごほん、なんでもないぞよ」

 

 何やらぶつぶつ言ってごまかすしぐさをする。何やら頬が赤いがどうしてだろうか。

 

 よく分からないがともかく、

 

「よし」

 

 僕は気を引き締める。

 

 方針がある程度固まったようだ。

 

 まず、この僕のユニークスキル、金属生成メタルクリエイターをさらにレベルアップする。

 

 そして話し合いで解決すればいいが、万が一の時のために友人を止めなければならない。

 

 そうしなければ友人が犯罪を犯してしまうのみならず、この世界の敵、魔王の出現が早まってしまうのだ。

 

 そう、『人助け』。それが『人として大事なこと』なのだ。

 

 

 

 ピーヒョロロロロ。

 

「ゴブゴブゴブゴブ!!」

 

 僕は起床した。鳥とブラッドゴブリンの鳴き声が飛び交う。なんとも騒がしい朝だ。

 

 僕は先ほどまで見ていた夢の内容を思い出す。

 

 昨日まではもう少しのんびりしていてもよいかと思っていた。

 

 が、魔王の加護の件。これはうかうかしていられないようだ

 

 金属の容器に入った朝露でのどを潤しながら僕は考えた。

 

 僕がまずやるべきことは二つ。


 一つは、友人が行ったと思われる、近くの町への方向をしらべること。

 

 二つ目は、金属生成メタルクリエイターのレベルを上げをすること。

 

 幸いなことに この二つは同時に行うことができるだろう。

 

 金属生成メタルクリエイターで高い足場をここで作り出せばいいのだ。高い位置から見渡せば町の位置を知ることができる。

 

 そして昨日と同じく、それを完成させることである程度レベル上げることができる。

 

「よし、そうと決まれば」


 僕は指から金属を生成し始める。

 

 Lv2ゆえに制作速度は昨日の比ではない。

 

 だが、昨日のマジックハンドもどきとは規模が違う。大量の金属が必要だろう。

 

 だがそれでこそいいレベル上げになるはずだ。。

 

 幸いなことに食料は昨日採取したミルクミの実がある。これを食べて今日は足場作りに専念しよう。

 

 まずは土台をしっかり作りこんでいく。具体的には枝や幹に金属を纏わせて完全に固定するのだ。

 

 これだけでも結構の量を使う。

 

 昨日と同じく、適度な休みとストレッチをはさみつつ、昼頃に土台が完成。

 

 続いて塔の部分を作っていく。

 

 円柱で中身をぎっしり金属で詰めるのはコストパフォーマンスが悪い。よって東京タワーを参考に、軽くて堅い素材の骨子で作る。

  

 それは夕方で完成した。

 

 高さ5Mくらいだろうか。このくらいで十分だろう。

 

 強度は高めに作ったのだが、やはり頂点まで登ると揺れる。

 

 四方ははるか遠くに大きな山々が見える。空には異世界らしく、巨大なドラゴンのような生き物がいくつか飛んでいるのが見えた。

 

 そして・・

 

「あれか」


 360度、その高度から周囲を観測し、遠くのほうに見えた町を発見する。

 

 友人は金属生成メタルクリエイターLvMAXを持っているのだ。

 

 僕が今こうやって土台を作ったように一瞬でこれを作って町を確認しただろう。

 

 ならばあそこを目的地に進んだはずだ。

 

「ふう」

 

 丸一日かけて第一の目的はクリア。近くの町の方向を知ることができた。

 

 そして第二の目的。今日一日で金属生成メタルクリエイターのレベルがどのくらい上がったのか・・。

 

「スターテス」

 

 僕はスターテスを開く。

 

ーー

 


 名前 斎藤勇斗




 生命力 40


 最大マナ 40




 力 26


 持久力 37


 魔法操作 50


 敏捷 55


 幸運 500




(10が平均的な成人の値)




スキル


神舌(全ての言語会話可能


神眼(あらゆるものの鑑定が可能




ユニークスキル


金属生成メタルクリエイターLv3





ーー


「よし」


 今日も基礎スターテスとともにスキルレベルが上がっていた。

 

 試しに出してみると、絵の具のチューブから蛇口くらいの量をスムーズに出せるようになっていた。


 操作能力も、手足を動かすように操作できる程度には高まっている。

 

「これならば・・」


 僕は即席であるものを作り個体として固定する。

 

 僕が作ったもの。それはナイフである。

 

 一瞬とは言わないまでも、5秒あればある程度切れる程度の武器が作れるようになった。


 これならば、ブラッドゴブリンに抵抗できるだけの武力を得ることができるかもしれない。


 場合によっては友人も・・そんなことはないほうがいいのだが。

 

 しかし、今日はもう遅い。英気を養うため、もう寝る準備をしておく。

 

 僕は昨日行ったのと同じように寝床などを作り、眠った。

 

 おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピーヒョロロロロ。

 

「ゴブゴブゴブゴブ!」

 

 そして、朝。

 

 昨夜も神様が何やら枕元に立っているかのような夢の記憶があったが、よく覚えていない。


 そして現実世界では昨日と同じく鳥とブラッドゴブリンの鳴き声が響き渡っていた。

 

 しかし、この間にも友人は魔王の誘惑に惑わされているのかもしれないのである。

 

「よし、今日は・・やろう」


 まずはのどを水で潤し、食料を調達して腹ごしらえすると、僕はある武器を作り出した。

 

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