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一か月の成果



 四人全員勇者が集まったは良いのだが、、

 

「何あんたその恰好」

 

 西園寺が腰を当てて、東堂に言った。


「ふふふ」と、不敵に東堂は笑う。


「いいだろう。この一級品の装備。どれも見た目がかっこいいだけでなく性能も高い。まさに機能美と言ったところか」


 彼は剣士というだけあって、シンプルかつ各所に装飾のほどこされた鎧を着ていた。さらにその上にボロボロのマント。

 

 それはどれも魔法の装備であり、ステータス強化の補助が付いている、高価なものだった。

 

 そしてただ装備だけの変化ではない。実力も一か月前とは比べ物にならない数値に成っていた。

 

 ーーー

 



 名前 東堂とうどう 修一しゅういち


 生命力 9000

 最大マナ 1200


 力 9300

 持久力 5000

 魔法操作 500

 敏捷 5500

 幸運 130


(10が平均的な成人の値)


 スキル


 鑑定LvMAX

 言語LvMAX


 剣術Lv8

 跳躍Lv8


 ユニークスキル


 超肉体強化(一時的に魔法を無効化、ステータス超上昇)




 ーーー

 

 だがしかし、西園寺はその恰好を見て「ぷっ・・!」と噴き出す。

 

「なっ・・!」東堂が気分を害したようだった。


 が、彼女は止まらない。


「あはははははははは!!何その恰好!!まるで中二病じゃない!!!」


「な、なんだと・・・!貴様・・!俺が好き好んでこの装備を付けているとでも言いたいのか!?」


「いや、違うかもしれないけど、まるで中二病ゲームのキャラみたいじゃない!!あはははははだっさー!」


「この・・・クソアマ・・!!」


 東堂は怒りを抑えているようだったが、一息つくと反撃に転じる。


「ふん・・まあいい。そういうなら、お前のほうこそなんだその恰好は?」


「え?」


 そう、ゲームのキャラみたいというのならば、西園寺も同様の格好をしていた。

 

 魔法使いがよく装備するローブなのだが、肌を大きく隠す通常の者とは異なり、肩や胸付近、腹などの肌を露出した亜種装備である。

 

 ステータスも彼同様に上がっているようだった。

 

ーー


 

 名前 西園寺さいおんじ 二愛にあ


 生命力 1800

 最大マナ 5000


 力 500

 持久力 1200

 魔法操作 9300

 敏捷 1100

 幸運 120


(10が平均的な成人の値)


 スキル


 鑑定LvMAX

 言語LvMAX


 雷魔法Lv5

 炎魔法Lv7

 闇魔法Lv3

 

 ユニークスキル


 詠唱無際限化(詠唱が長ければ長いほど威力が高まる)




ーー


 しかし東堂は先ほどの嘲笑を根に満っているのか、反撃する。

 

「よくもまあそんな恥ずかしい装備を人前で披露できるものだな?

 もしかして貴様は痴女なのか?」


「だ、誰が痴女だ!!誰が!!」


「ならばなぜそんな恥ずかしい装備を付けられるのか聞かせてほしいものだな。

 きっと止むにやまれぬ事情があったのだと思うが・・もしそうではないのなら、本物の痴女ということになるな。はーっははっは!!」

 

「ぐ、ぐぐぐ!!言わせておけば・・!!」


 今度は西園寺が怒りに肩を震わせる番だった。

 

 そしてそれで我慢できる彼女ではなかった。両者罵詈雑言の言い争いをしながら次第に彼らは剣呑な雰囲気になっていく。

 

 それをおろおろと見ていた南雲が、その中を取り持とうとするが、


「ちょ、ちょっと!!せっかく再開したのに!!もうちょっと仲よくしたら!」


「「うるさい!!」」


「ひえっ」


 そう悲鳴を上げた南雲は、フリルを付けたファンシーな僧侶服に着替えている。彼女もそのオーラから、かなり成長しているようだった。

 

ーー



 名前 南雲なぐも 亜三あみ


 生命力 800

 最大マナ 3600


 力 400

 持久力 700

 魔法操作 9500

 敏捷 5200

 幸運 140


(10が平均的な成人の値)


 スキル


 鑑定LvMAX

 言語LvMAX


 昇天Lv5

 再生Lv4

 回復魔法Lv3

 光魔法Lv5

 魔法防壁Lv2

 状態異常耐性Lv2


 ユニークスキル


 天使化(物理攻撃が無効になり、魔法攻撃力が上昇する特殊な状態になる)Lv2


ーー


 三者三葉、そして僕たちと行動を共にしていた北條も、一か月前とはかなりステータスが上昇している。

 

 しかし彼らは言い争っていた。まるで協調性を求められる状態ではない。


「あんたこそその装備ださい!!!」


「この装備の良さを知らんとは・・痴女だからしかたないのだろうがな!!」


「あわ、あわわわわ」


 その口論を見て、城の兵士たちは頭を抱えている。

 

「なんということだ・・!彼らに世界の平和は託されているというのに・・!!再び不和が・・!!」


「このチームワークでは、魔王どころか、ダンジョンのラスボスレベルの敵も倒せないかもしれません・・」


「何かいい手はないだろうか・・?」


 そう言って僕のほうを見ているが、しかしまだ慌てる時間ではない。

 

 彼らをなだめるように冷静に言葉を返す。


「とりあえず、一度ダンジョン攻略させてみてはどうでしょうか」


「え?」


「前回は足の引っ張り合いで崩壊していましたが、しかし今回は彼らもすくなくない場数を経験したことでしょう。

 ならば、戦いの中で芽生えるチームワークというものもあると思うのです」

 

「! なるほど!!」


 アンジェリカもその経験があるらしく、同意してくれた。

 

「ああ、私も初心者時代にどうしても仲間が足りず即席のメンバーでダンジョンを攻略したこともあった。その時気に食わん奴だと思ったが、不意の強敵で全員の力を合わして撃退したんだ。

 あの時の仲間は今でも交流があるくらいだぞ」

 

「そうですよね!!いやはや私どもとしたことが早とちりして冷静さを欠いてしまいました」


「やはり優斗様は頼りになるお方です」


「いえ、そんな・・」


 何か買いかぶりすぎだと思うが、しかしともかく僕の助言によって僕らは出発する。

 

 全壊と同じ初心者ダンジョン攻略することになったのだ。

 

 その結果。


 ザシュッ!!ザシュッ!と、

 

 東堂の一閃により、複数の蝙蝠型モンスターが落ちる。

 

「ファイヤーアロー!!」


 西園寺の遠距離攻撃で多数の敵が倒れ、

 

「ホーリーライト!!」


 南雲の範囲攻撃や回復魔法も敵を殲滅指定った。


「ふん、あの敵もう少し早く倒せたんじゃないの?」


「少し手を抜いただけだ。それよりもお前こそもう少しだな・・」


 依然二人は喧嘩腰。完全に仲直りというわけではない。

  

 とはいえ、彼らが話している通り、普通に攻略自体は出来ている。

 

 そう、個々の能力は高く、その分モンスターを前回よりサクサクと一撃で倒せているのだ。

 

「何か、良さそうな雰囲気ですな」


「良かったです。これで徐々に彼らが団結し、魔王を倒してくれることでしょう」


 兵士たちは安堵の声を上げた。

 

 そして初心者ダンジョンが完全に攻略されると、兵士の一人が提案する。

 

「それでは皆様、明日はもう少し高いレベルのダンジョンに行くとしましょう」


「ああ、それがいい。お荷物が増えたとはいえ、今更このダンジョンでは物足りないからな」


「何を・・・っ!!あんたこそ『ファイヤーアロー!!』」


 そして翌日。予定通り中級車向けのダンジョンの一つに行ったのだ。

 

 ここは、初心者ダンジョンと比較してかなり多くのモンスターが現れる場所。

 

 多少は苦戦するだろうが、あの調子ならば力を合わせてと言った空気になるかもしれない。

 

 そう兵士はきたいしていたのだろうが・・。

 

 ババばばばっ!と、突如鳥型モンスターが目の前に姿を現した。

 

「『ファイヤーアロー』!!」

 

「ぐわっ!!」


 彼女の連発した魔法が味方へとヒットした。


「貴様!!!!いまわざとじゃないか?!1」


「ち、違うわよ!1ただ必死になって倒そうとしただけ!!」


 少し耐久度が上がり、一匹当たりにかける時間が長くなったことにより、お互い足を引っ張る傾向が強くなっていった。

 

「お前!!後ろだ!!そこをどけ!!」

 

「ちょっと!!あぶないじゃない!!」


「こうなったら私が全員倒すから!!ホーリースパーク!!」


「これは・・やばいくないか?」


 兵士の一人が思わずつぶやいた。


 足を引っ張りあうことによって、彼らの戦闘効率はかなり低くなっている。周囲のモンスターが徐々にではあるが彼らに迫り来ていた。

 

 そして運の悪いことに、彼らの攻撃の隙を狙おうと木陰から狙っている猿型モンスターがいた。

 

 ウッキィと呼ばれているそのモンスターは雑魚とはいえ知能が高いタイプの種類で、むろん彼らの連携がバラバラであるということに気が付いているのだろう。その手には爆発する魔法の木の実を持っていた。


「ちょっと、あれ・・」「やばいな・・!」「おい!俺たちも化成するぞ!!」


 慌ててサポートに回ろうとする。


 と、その時だった。 

 

 言い争っている彼らの周囲に、一筋の銀色の何かが飛来した。

 

「・・?」


 そう、それは金属生成スキルによる攻撃だった。

 

 素早くとびかかった猿型モンスターの息の根を止める。

 

 無論それは僕がやったものじゃない。

 

「なんだ・・・?お前、その触手は・・?」


 そう、それは北條四郎が発動した金属生成だ。

 

 いざというときの窮地を脱したにもかかわらず、彼は愛想のよい笑みを浮かべていた。

 

「皆、大丈夫?」


「あ、ああ・・」「うん・・」


 さっきまでの言い争いが嘘のように彼らは黙るが、続いて東堂が意外そうな顔をして尋ねた。

 

 それもそうだろう。今まで彼は一度も戦闘に参加していなかったのだ。

 

「お前、戦えたのか?」


「うん、出し惜しみしてごめん、君たちだけで大抵のモンスターは倒せると思って、少し体力を温存していたんだけど・・咄嗟の時に助けられてよかったよ」


「ああ、そうなのか・・」「ありがとうね!!」「腑抜けかと思ったら、中々やるじゃない!」


「どういたしまして」


 そう言って自然な笑顔を返す。


 だが、一見余裕そうに見えるが、しかしこの一か月間の金属生成のレベル上げトレーニングが原因で、彼の体に正体不明の不調が起きていることは知っている。

 

 慢性的とはいえ、今も具合が依然悪いはずなのだ。

 

 ここまで他人を欺くことができるとは、彼は案外他人に対して見栄を張ることがあるようで、体に無理が来ていないか心配である。

 

 この一か月で、スキルレベルが自力で全く上がらなかった。ここまで金属生成のスキルは彼に全く合わないらしい。

 

 だが、少しずつ貸していったレベルを上げていった甲斐あって、今や彼は注目されている。

  

「見直したぞ。北條。貴様はただのサポート要員化と思っていたが、中々どうしてやるではないか」


「今のもう一回やって!!何魔法なの!!私にも教えて!1」


「すごーい!!きれいだった!何今の!ねえなに?!」


 さっきとは一転し、三人に囲まれもてはやされていた北條。

 

 彼は謙遜するように言った。


「これは、普通のスキルではなく、まあ、私のスキルを応用したといいますか・・まあ、大したスキルではありませんが、、通用してよかったです」


「もう一回やって!!」


「いいですよ」


 そう言って、次々と金属生成を使いモンスターを倒していく。流石レベル7というだけあって、このレベルのダンジョンクラスならば簡単に倒せるようだ。


 ちなみに彼のステータスはこうなっている。



ーー



 名前 北條ほうじょう 四郎しろう


 生命力 600

 最大マナ 700


 力 250

 持久力 150

 魔法操作 350

 敏捷 230

 幸運 110


(10が平均的な成人の値)


 スキル


 鑑定LvMAX

 言語LvMAX


 ユニークスキル


 異世界購入(異世界の商品を購入できる)Lv2

 スキル貸与Lv4

  金属生成Lv7(一時)

 虚飾Lv2


ーー

 

「しかし、そのスキルの精密さや速さを見て思ったんだが、」

 

 それを見て関心するように東堂はつぶやいた。


「これで俺たちのパーティの隙をカバーできるんじゃないか?」

 

「・・どういうこと?」


「つまりだな・・俺たちが倒し損ねたモンスターを、北條のスキルで倒してもらえばいいのではないか!?」


 そう、彼らの致命的なチームワークの欠如の原因は、敵モンスターが多すぎ、倒し損ねてしまうということだ。それが原因で、互いの体が接触したり、攻撃を味方に撃ってしまうのである。

 

 だが、彼の金属生成ならその心配は少ないだろう。僕が使い手だからこそわかることだが、軌道を変幻自在に変化させて、あらゆる角度から敵を攻撃できるのである。

 

 だから北條は当然という風に、

 

「ええ、いいでしょう。その作戦で行きましょう」


「やったー!」


 先ほどまでギスギスしていた空気が、北條が介入したことにより、和やかになったような気がする。そこはやはり彼の才能というべきだろうか。

 

「いやあ一時はどうなることかと思いましたよ」


「北條様がいてくれたおかげですな」


 兵士たちも安心したようにそう会話していたが、、


「・・・・」


 僕は少し心配だった。彼は無理をしてスキルを使っている。いくら信頼を勝ち得るためとはいえ、健康を害して行う戦いなんてやるべきではないと思うのだ。


 しかしその僕の考えが杞憂とでも言うようにこの数日間、次々とレベルの高いダンジョンを攻略していく一行。

 

 東堂が提案した作戦がうまくいったようで、それからはほとんど喧嘩になることなく進行していった。

 

 だが、やはりというべきか、致命的な問題は唐突に現れたのである。

 

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