勇者たちの実力
北條四郎、彼の自己紹介の後、勇者たちは三者三葉の反応を見せた。
「へぇ・・結構君可愛いじゃん?四郎くんっていったっけ?今いくつ?」
「ふん、そんななよなよした奴など、背中を預けるきにはなれん」
「ちょっと!!東堂とかいうそこのナルシスト!あんたさっきから否定から入ってばっかじゃん!!人格疑うんだけど!」
「正直なかんそうを言ったまでだ」
「ねー!!君!!女の子みたいな顔だから、亜三ちゃんの可愛い服かしてあげよっか?!あっ、でも服は家において来ちゃったんだ!じゃあ今からとってくるね!!」
王様は勇者の取り留めのなさを見て、頭痛がするように頭を押さえている。だが、このままでは話が進まないと無理やり割り込むように発言した。
「そのぉ!!ちょっといいかの!!」
「「!!」」
ようやく彼らは黙って何事かと注目した。コホンと彼は咳払いし、
「とにかく、天啓の通り、貴様らはこの世界のために戦ってくれるということでいいのかの?」
「「・・・はい」」
「では・・貴様らの強さを見せてもらえんか?」
そう言って王様はぱんぱんと手を叩いた。
すると今度は魔法使いが数人表れて、杖を掲げる。すると・・
ガチャガチャ・・と。
魔法陣が表れ、そこから鎧のモンスターが表れた。
それに南雲が幼げのある声で嬌声を上げる。
「わぁっ!!ロボットだぁ!!」
「あっ!ちょっと!!」
そう言って彼女はモンスターに抱き着こうとするものの、
「キャッ!?」
やはり、反撃にあい吹き飛ばされていった。幸いケガはないようだが、来た道をはじかれて戻っていく。
「大丈夫!?」
それに長身の東堂が高慢に一瞥をくれると、彼は一歩前に出る。
「ふん、バカめ。この鎧の人形を倒して実力を示せということなのだろう。
俺から行こう。何となく戦い方は体感で分かっている」
そう言って、彼は兵士から剣を受け取ると、初めて戦ったにしては早い動きで接近し、
「セイッ!」
金属の鎧を一刀両断。
そのモンスターは攻撃性はあまりないものの、防御寄りに偏ったステータスだ。それをいとも簡単に破壊したことにより、貴族たちもおおっと大きなどよめきが入る。
彼の戦闘スタイルは近接物理特化型のようだ。ステータスはこうなっている。
ーー
名前 東堂 修一
生命力 2000
最大マナ 800
力 2300
持久力 2000
魔法操作 300
敏捷 1500
幸運 100
(10が平均的な成人の値)
スキル
鑑定LvMAX
言語LvMAX
剣術Lv5
跳躍Lv5
ユニークスキル
超肉体強化(一時的に魔法を無効化、ステータス超上昇)
ーー
それを見て、西園寺は金髪の髪をくるくるといじると、
「へー、ただのナルシストじゃないみたいね」
と感想を言って今度は彼女が前に出る。
「だったら今度が私がやるわ!!」
「そうか、ならこの剣を使うか?」
「舐めないで頂戴。私はそんなもの必要ないわ」
そう言って西園寺は、何やら両手を突き出し体全体からオーラを纏う。風が吹いていないのに服や金髪がたなびいていた。そして、
「エレクトリック!!」
バチバチッ!!と、
金属の鎧すら溶解するほどの火花が放たれた。モンスターはぐずぐずに崩れて一匹戦闘不能に陥る。
なんて高火力な攻撃魔法。彼女のステータスは東堂と比べて魔法よりだった。
ーー
名前 西園寺 二愛
生命力 1000
最大マナ 2000
力 300
持久力 900
魔法操作 2500
敏捷 800
幸運 100
(10が平均的な成人の値)
スキル
鑑定LvMAX
言語LvMAX
雷魔法Lv3
炎魔法Lv3
闇魔法Lv3
ユニークスキル
詠唱無際限化(詠唱が長ければ長いほど威力が高まる)
ーー
「ふん、貴様も少しはやるようだな」
「うるさいわなぇ・・上から目線やめてくれない?」
「なんだと?人が褒めてやっているのに・・」
東堂と西園寺が言い争いを始めるが、しかしその間を割り込むように、元気に南雲が、
「じゃあ次は私がー!!」
と言って前へ駆けていった。
そして叫ぶ。「へーんしーん♪」
そう発言するとともに、シルエットが変化。何やら背中から羽をバサッと出したのだ。
「何?!」「天使・・・・?!」
それだけでない。何やら服装も白い絹のような服になっている。そしていつの間にか手に持っていたステッキを振り回し、
「粛清~!!」
鎧モンスターに向けると、光の柱が立ち、それが消えるとともにモンスターも消滅していた。
「な、なんだ今のは・・?!」
「あのね、昇天させたの。
自分の」
彼女ができるのはそれだけでないみたいだ。
スターテスを見ると、西園寺と似て魔法よりだが、彼女と違ってどうやら回復スキル特化らしい。
ーー
名前 南雲 亜三
生命力 800
最大マナ 1600
力 200
持久力 400
魔法操作 1500
敏捷 1200
幸運 100
(10が平均的な成人の値)
スキル
鑑定LvMAX
言語LvMAX
昇天Lv1
再生Lv1
回復魔法Lv1
光魔法Lv1
魔法防壁Lv1
状態異常耐性Lv1
ユニークスキル
天使化(物理攻撃が無効になり、魔法攻撃力が上昇する特殊な状態になる)
ーー
「へんしん解除っ!!」
彼女は基の服装に戻る。
「ふん、なかなか美しいじゃないか」
「ありがと~♪」
彼らは引き続き喧嘩している。だが、最後の勇者、北條四郎がまだ動くことをしない。ただボーっとしているだけだった。
王様が再び催促すると、
「あ、はい。私ですね」
と、再び柔和な笑みを浮かべた。
そして彼は剣を兵士から受け取る。そしてその兵士に彼は尋ねた。
「これ、貰ってもいいですか?」
「え?はっ!そのような量産品で良ければ!」
すると、
「‥消えた?」
その剣が塵になったのだ。
それもつかの間、何やら手を目の前に出すと、光の渦が生まれる。それに手を突っ込んだ。
引き抜くと、そこにあったのは、
チュイイイイイイイイイイイン!!
「チェーンソー・・?」
そう、武器類ならばこの世界にいくらでもあるが、チェーンソーはこの世界には存在しないはずの機械類だ。
それを持って北條は鎧に近づき、ギュイイイイイン!!と火花を散らしながら相手を切断していった。
「まあ、こんなところでしょうか」
「な、なんじゃ今の武器は・・?」
「これは私の元の世界にあった工具、いや武器のようなものです」
「なるほど!!貴公の能力は基の世界からアイテムを取り出す能力なのじゃな?!」
「そういうことです。しかし取り出すには相応の所持金が必要、だから剣を売却して強力な武器を取り寄せたのです」
「そうか、所持金が戦闘力に直結する能力なのじゃな・・ならば渡せるだけ渡しておこう!」
「ありがとうございます」
王様は稀有な能力に驚喜していたが、しかし東堂は腕を組んで何やら納得していないみたいだった。
「・・まあ、確かに面白い能力だということは認めざるを得ない。
だがしかし、立ち振る舞い戦士としてはまるで成っていないな」
「やれやれ、東堂とか言ったわね。あなた本当に人にケチをつけるのが得意だわね~」
「なんだと?!俺はただ正当な評価をしただけだ!それに貴様も同じだろう!!」
しかし、東堂の言う通り、確かに先ほどのチェーンソーを扱う北條の立ち振る舞いは、近接戦闘向けではなかった。ステータスも軒並み低い。
ーー
名前 北條 四郎
生命力 500
最大マナ 500
力 200
持久力 100
魔法操作 250
敏捷 180
幸運 100
(10が平均的な成人の値)
スキル
鑑定LvMAX
言語LvMAX
ユニークスキル
異世界購入(異世界の商品を購入できる)
ーー
東堂が剣士、西園寺が魔法使い、南雲が聖職者とするならば、北條はまさしく商人。
遠距離武器で後衛から攻撃するか、もしくは味方のサポート役のような役割なのではないだろうか。
もっとも、その能力はまさしく特殊であり、断定はできないが。
とにかくこれで全員分の能力のお披露目は終わった。
そのあとしばらく会話やパーティに興じた後、僕らも流れで王城で宿泊することになった。
そして翌日・・。勇者四人と僕たちは昨日の広間に呼び出された。
宴会は終わったので貴族たちは今日はいないが、王様に提案される。
「今日は貴様らに簡単なダンジョンを攻略してほしいと思う」
「・・ふん、いいだろう」
「わー!たのしそー!!」
「はいはい、やればいいんでしょやれば」
「・・・」
彼らは乗り気のようだ。きっと彼らなら討伐してくれるだろう。
しかし もうこれ以上僕は関わるべきではないだろう。
「あの、王様!」
挨拶してその場を後にしようとした。
「実は、神様から討伐に関わるなと言われているのです」
「そ、そうだったな。
わしらも夢で言われておる。優斗、貴公を勇者討伐に組み込むな、と。
「ええ、ですので、ここで僕たちはおいとまさせていただきます」
だが、王様は少し焦ったような顔をして引き留めようとしてきた。
「しかし、しかしだな。もう少し彼らの行く末を見守ってくれはしないだろうか。
彼らは異世界に来たばっかりなのだ。先輩となる貴公が居ればより安心だろう」
「・・ですが」
「それに、神に何と言われようと、その決断は貴公自身がするべきだ。
そうは思わないかね?優斗殿」
「・・・確かに」
そうかもしれない。数秒僕は考えると答えた。
「ええ、分かりました。
彼らの冒険を少しなりとも強力しましょう」
「おおっ!そう言ってくれるか!助けるぞ!!」
王様は嬉しそうな顔をしていた。
が、ダンジョンへ出発するために、馬車に乗る間、マージョリーさんはこそこそと僕にこう話したのだ。
「優斗、あなた、もしかして利用されているんじゃ・・?」
僕もそれにこそこそと返す。
「え?何がですか?」
「魔王討伐によ。
おかしいと思わない?あなたの表彰と勇者召喚をわざわざ同じ日に開催するなんて
きっと王様たちは、優斗を討伐に関わらせたいのよ。より確実に魔王を討伐させるためにね」
確かに、彼女の言うことは利に叶っている。王様の態度からして、そう考えるのが自然だろう。
「あなた、それでもいいの?」
「いえ、むしろ、何の問題ですか?」
そう、実は僕自身の気持ちとしては、魔王討伐に少しでも協力したいというのが本音だ。
『人として』世界のために動くのは当然であり、それだけではなく、あの魔王は友人を利用したのである。それに対し何も思わないわけではない。
この因縁にケリをつけたいと思うのだ。先ほどの王様の言葉がその思いを後押ししたと言っていいだろう。
それに対してマージョリーさんは、少し残念そうに
「・・まあ、あなたならそういうわよね。
はぁ、あなたから魔王討伐に今後関わらないと聞いたときは、少しはゆっくりできると思ったんだけどなぁ
まあいいわ。あなたが行くっていうなら、私もついていくからね」
その言葉に、数か月前の彼女の意気込みを思い出す。
マージョリーさん、いや師匠は、僕の成長を見たいからついてきてくれるというのだ。今後もその戦力を利用できるというならば心強いことはない。
「ありがとうございます」
その会話を聞いていたのだろう。アンジェリカさんも、
「待て!!お前だけじゃない!!私もついていく所存だぞ!!」
「あなたまで・・」
「ああ、この前の戦いにおいて、あなた様は自身の力不足を教えてくれた・・。まだまだ強くならなくてはいけないのである!!
「ですが・・」
彼女は他パーティのリーダーのはず。この一か月も少なくない時間を僕らのために費やしてくれたのに、まだついてきてくれるのか。
そのことについてアンジェリカさんは、
「ああ、既にパーティは別のメンバーにリーダーを任せているから、その点については心配いらないぞ!!」
とまで言ってくれた。なんて強さに貪欲な方なのだろうか。僕も彼女に見習わなければいけないのかもしれない。
「分かりました。改めてお願いします。マージョリーさん、アンジェリカさん」
「うん」「ああ!!」
そして、もう一人、僕は目線を下に下げた。
「あなたはどうしますか?」
「・・え?」
そう、ポチだ。僕は目線を彼女に合わせる。
「魔王討伐は、かなり激しい戦いになることが予想されます。
別に無理してついてこなくていいですよ?あなたは既に冒険者として一人で生活することができるのですから」
そうなのだ。彼女を鍛えたのは、このこともある。無理して僕らについてこなくても良くなるようにだ。
それに対して彼女は・・
「そ、それなら・・」
予想通りの返答を返した。