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弱点


 ガキィンンッ!

 

 数多くの棘が、そのまま友人の急所を深々と貫く。

 

 誰が見ても致命傷、運が悪ければ即死。

 

 そう僕は一瞬思ったのだが、


「優斗様・・っ!!」


「ああ、分かってる・・」


 そう、確かにその棘は、彼の体に刺さっている。

 

 だが、おかしい。彼はその貫かれた体勢のまま、停止しているのだ。


 数トンの圧力で、最高高度のオリハルコンの棘が突き刺さっているのにだ。

 

 さらには、その首を動かしてこちらをにらみつける。

 

「じぬがとおもっだぞ・・!ぐぞが・・っ!!」


 彼が棘をどうやって受け止めたのか、僕は見た。

 

 そう、それは・・牙。

 

 鎧の隙間から見える、小さな凶器が全身にある。

 

 それを使い棘を受け止めたのだろう。


 アンジェリカが後衛で叫んだ。


「優斗様・・っ!私は見ました・・!!奴は鎧の下におびただしい牙を持っているようです・・っ!!」


 まさに全身凶器。おぞましいまでに戦いに特化した肉体。


 そして続いて、

 

 モゾモゾ・・と

 

 それを器用に使って棘から抜け出しているのである。

 

「っ!」


 僕はそれに気が付いた瞬間、追撃の飛び道具を放った。

 

 だが、

 

 シュバっ!

 

 ギリギリで逃げられてしまった。

 

 彼は脱出し、もう一度翼を広げて飛翔。


「しまっ・・!!」


「もう一度食らえ・・・!!」

 

 彼はにやりと邪悪に笑いながら

 

「がぁあああああああああ!!!」

 

 先ほどのように雷のブレスを吐いた。

 

 もちろん、直接飛ばすのではなく地面に。僕に対する有効な手段だったと思ったのだろう。

 

「優斗様!!」


 だが、大丈夫だ。二度は同じ轍を踏まない。

 

 僕は跳躍する。

 

 だが、ただ跳躍しても、足場が無ければ意味がない。落下し、再び電撃の餌食になるだろう。


 だから、彼の背中へと向かって跳躍したのだ。


「がっ・・!!?」


 彼がブレスを吐いていたのが幸いした。


 避けられることなく無事に彼の背中に乗れる。

 

 そして、いくらブレスが強いと言っても自分自身に向けることはできない。さらにこの攻撃は致命的な隙をさらしたのだ。


 慌てて彼はブレスを止めようとする、その隙を見逃さない。

 

 剣を生成して、攻撃を開始する。

 

 だが、彼の体を守る鋼鉄の鎧。金属生成で作ったのだろう

 

 その金属はマナを多分に含んだ強度の高いものだった。

 

 普通ならば先ほどのように、相手の体重を利用しなければたやすく貫けない。


 しかしこの場合は違った。

 

 僕は剣を振り下ろすと、いともたやすく鎧を貫く

 

「がっ・・?!」


 そう、この鎧は、彼が作ったもの。


 とはいえ、僕のユニークスキル、金属生成メタルクリエイターで作ったものでもある。

 

 ならば当然、自分のスキルで作られた金属は、分解することができるのだ。

 

 次々と鎧の下の牙と牙の間に刃を通して傷をつけていく。

 

「・・ごの・・っ!!」


 相手の生命力に比べれば微弱な攻撃だろう。ダメージはなくても構わない。

 

 だが、僕ができるのは、単純なダメージ攻撃だけじゃない。

 

 この刃には鉛、水銀、ヒ素などと言った毒物を同時に塗っている。その毒性は最初の比ではない。


 有利ではあるが油断してはいけない。これは相手に超接近して攻撃し続けるという、リスクの高い行動なのだ。

 

「ぎっ、ぎざまぁ・・・!!おぢろぉおおおおお!!」

 

 彼も必死だった。ブレス攻撃後の隙から立ち直るやいなや、急降下や乱高下に飛んで僕を振り落とそうとしてくる。

 

「だ、大丈夫ですかぁあああ!!!」


 アンジェリカさんが地上で心配してくれているみたいだ。


 が、僕は三半規管を鍛えているおかげで酔うことはない。

 

「はい!!僕は平気です!!」

 

 さらに、振り落とされないように、金属生成メタルクリエイターで足元をスパイクのようにくっつけているのだ。

 

 彼が乱高下を繰り返している間も、毒攻撃を続けていく。

 

「ぐ・・っ!!このぎもぢわるいむじめ・・!!だったら・・」


 彼がそういうとともに足元の金属が変化するのを察知する。


「!」

 

 直感で僕は縮地でその場から離れた。

 

 すると数舜後、今いた場所に

 

 ジャキンッ!!

 

 トラバサミのように牙が生えたのだ。


 そう、鎧ごと僕を食らおうとしたのである。

 

 そしてその牙は全身に及んでいる。つまり逃げ場はない。

 

 ジャキンッジャキンッジャキンジャキンジャキン!


「くっ!」


 次々に生えてくる牙のトラばさみを次々と避けていくので精いっぱいだ。

 

「にげるな・・っ!!ぐっでやる・・っ!!」

 

 毒攻撃をするタイミングも減ってしまう。

 

 さらに、牙の攻撃で、鎧の足場が減っていっているのである。

 

 まるでサドンデスゲーム。残り時間は多くない。

 

「ならば・・!!」

 

 タイミングを合わせ、金属生成メタルクリエイターで毒金属を口の中に落とした。

 

 だが、ダメだ。

 

「ぶえ”っ!!」

 

 一つ一つに味覚があるのだろう。たやすく吐かれてしまう。


 やばい。手づまりだ。

 

 一か八か、顔を攻撃してみるか・・?

 

 パッと彼の顔のほうを見る。


 その瞬間、


(・・・これは?)

 

 違和感。


 僕は超速で頭を働かせ、その正体を突き止めた。


「そうか」


 そう、彼の牙によるトラバサミ攻撃。


 その後には穴が残り、既に無数に空いている。


 が、上半身に向かうほど穴が少ないのである。


 そういえば、思い返せば彼の攻撃は上半身に向かわないように意識しているものだった。

 

 試しにそこに向かって足を進める。すると、


「ぐっ・・?!」


 何やら焦った様子で、牙を出してくる。


 さらには手や牙を使い、上半身への進行を止めようとした。

 

(どういうことだ?)


 そこに何か弱点があるのかもしれない。

 

 そう思い僕は、多少不安定な足場でリスキーではるのだが、


 シュバッ!シュバッ!と


 迫りくる手を蹴り、縮地を利用して何とか首元にまで接近する。

 

「ぐ・・っ!!??やめろ!!降りろ!!」


 そう言って狼狽が明らかに加速した。そしてそれとは対照に攻撃の速度は遅くなる。

 

 特に、首の後ろあたりにおける、少し盛り上がった部位。


 そこにはまったく牙の攻撃がないことに気が付いた。


 周囲に穴がたくさん開いているのに、ここだけ鎧がまだ無事なのである。

 

「この中に何か秘密が・・・?」


 前述の通り、僕は金属生成メタルクリエイターで鎧は無効化できる。


 隙を見てその部位に攻撃、


 ザシュッ!!


 と、中身を開いた。

 

 そしてその中にあったのは、

 

「くぅん・・・?」


「っ!」


 驚いた。


 なんと中には人がいたのである。

 

 いや、よく見ると彼女は、彼にポチと呼ばれていた奴隷だ。

 

 そうか、見ないと思っていたが、ここに居たのか。

 

 そして、その途端。



 

「「や”め”ろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」




 空間を震わせるほどの咆哮

 

 そして、

 

 「がぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 

 雷のブレス。

 

 それをあろうことか『自分自身に』向けたのだ。

 

 

「ぐ・・っ!!」


 当然僕は雷に直撃し、硬直する。そしてそれは相手も同じだろう。

 

 彼ごとなすすべなく落下していった。

 

「優斗様!!」


 アンジェリカが近くまで駆け寄ってくれたが、問題ない。液体金属で受け身を取り事なきを得る。

 

 続いてずどんっ!!と彼の巨体も硬直したまま落下した。

 

 そう、今動けるのはアンジェリカだけ。心配そうに見つめる彼女に対し、かろうじて叫んだ。

 

「アンジェリカ・・っ!!攻撃を・・!!」


「っ・・!!はい!」


 彼女は我を取り戻すと構える。筋がいいのだろう。


 ズドンッ!と、


 彼女の銃が、彼の頭部にヒット。反動とともに血が噴き出る

 

「やりましたか?!」

 

 いや、相手の耐久力が化物じみているせいだろう。貫通さえしておらず、痛がる様子さえない。

 

 彼はそれよりも咄嗟に首の後ろに手を回した。


 そして、戻したその手にはポチが乗っている。

 

 それに対し、戦闘中だというのに、心配げな声で語り掛けたのだ。

 

「大丈夫が・・?!あいづに何かされなかっだが・・?!」

 

 彼女は、しどろもどろに答える。

 

「う、うん・・平気」

 

「ああ!!よがっだ・・!!」


 安堵すると、キッとこちらをにらむ。


 まるで大切な宝物に傷をつけられそうになったかのようだ。

 

「なんでしょうか・・?あの獣人はあの化物にとって大事なものなのでしょうか・・」


 アンジェリカ呟く。


 確かに彼女は彼の逃亡に一役買っていた。彼の中の評価が上がっていたのだろう。

 

 そしてそれが友情や愛に替わっていたとしても不思議ではない。

 

(ならば、その彼女の存在という弱点を突いて精神動揺を誘うべきか)

 

 そう冷静に分析したのだが・・

 

 


 次に彼はとんでもない行動に出る。



 手に持った彼女、自らの奴隷であるポチを



「心配しないでぐれ・・ずぐおわるがら・・」



 あろうことか『開いた口の中』に持っていっていく。


 

「っっ!!!???」


 そう、仲間を『捕食』しようとしていたのだ。


 


 そして、

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