止めの一撃?
目の前の鎧の異形の巨人、
それは僕の友達。
彼は異形の姿と引き換えに、その強さも人間離れしたようだ。
僕はもう一度彼を神眼によって鑑定する。
ーー
生命力 200000000
最大マナ 40000
力 700000000
持久力 3000
魔法操作 300000
敏捷 1300
幸運 -999999999999999999999999999
スキル
鑑定LvMAX
言語LvMAX
拳技Lv3
剣技Lv2
噛みつきLv5
飛翔Lv6
トランスLv5
再生Lv3
苦痛耐性Lv7
忍耐Lv3
剛力Lv8
ユニークスキル
技能奪取Lv1
金属生成Lv2
生命奪取Lv3
鱗Lv3
翼Lv7
火炎袋Lv8
毒袋Lv8
電気袋Lv1
酸袋Lv4
副腕Lv1
爪Lv5
牙Lv9
毛皮Lv5
複目Lv8
触手Lv8
複口Lv6
ーー
この二か月、数々の大型モンスターに挑んできたが、ここまで高い数値と相まみえるのは初めてだ。
そして僕は次に、隣のアンジェリカさんを神眼で鑑定する。
初めて共闘する仲間。ゆえにそのステータスを把握しておかなければならないだろう。
ーー
名前 アンジェリカ=クルセイド
生命力 20000→4000
最大マナ 100000→3000
力 2000
持久力 5000
魔法操作 700
敏捷 20000
幸運 500
(10が平均的な成人の値)
スキル
鑑定
状態異常体勢Lv4
苦痛耐性Lv8(痛みに慣れやすくなる)
剣技Lv9
チームワークLv5
光魔法Lv5
雷魔法Lv6
ユニークスキル
シャイニングLv6(動き続けるほど、光魔法を纏うことができ、技として放出できる)
ーー
それはSランクに恥じない実力。
彼女はスキルからして、近接タイプの戦闘スタイルではないようだ。
だが、今は生命力が削れている。
やる気に満ちてた眼とはいえ、危険を冒させるわけにはいかないだろう。
そう判断した僕は、彼女に腰に下げた魔法銃を渡すことにした。
「アンジェリカさん。
これをお願いできますか?」
「これは・?」
この世界には銃は存在しないゆえに、彼女にとってもなじみがない武器だろう。
その使い方を教える。
「なるほど、筒の先を相手に向けて、魔力を乗せつつトリガーを引けばいいのですか。風変りな・・
しかし遠距離武器ですか
私だけ後ろで戦うというのは・・」
彼女は近接で戦いようだ。
だが、近距離同士で共闘するのは高度な連携が必要なのである。
できれば遠距離と近距離に別れていたほうがやりやすいのだ。
「お願いできますね?」
「う・・分かりました。優斗様」
少し無理やりに押し切ってでも納得させる。そう、このほうが彼女にとっても安全。
この銃も彼女に預けたほうがいいだろう。
だが、少し残念なことに、この銃の弾は先ほど彼女を助けるために一発撃っていた。
「この銃の残り弾数はあと3発だけ。
だからできるだけ確実に、自分を守ることを優先して使ってください」
「・・・分かりました」
こんなことならもっと弾を増やせるようにしておくべきだったか。
いや、今はそんなことを言ってられる場合でもない。
目の前の友人が、毒を吐きながら叫んだのだ。
「ぐソ野郎・・おんなどおしゃべりしすぎだあ・・!ぶっごろすぞ!!」
彼は、足をドンと踏みしめると、顔を上にあげた。
「!!来ますよ!」
「ええ!」
それは見覚えがある動作。
ブレス。
油断をすれば致命傷になりかねない範囲効果力攻撃だ。
僕はこの数か月、低位のドラゴンならば何度も狩っていたのだ。
その中で最も気を付けるべきは、この技。
彼らはこのやっかいな技を頻繁に使用する。
だが、逆に何をすれば分かっているならば、対応もとりやすい。
オリハルコン製の壁。
一瞬で、僕の両手からあたり一帯に広がる。
そして、
ズォオオオオオオオオオオ!! と、
展開したそれに炎のブレスが衝突する。
「ぐっ・・!!」
熱気と衝撃が後方にも伝わったのだろう。
「大丈夫ですか?!アンジェリカさん!!」
「はいっ!何とかっ・・」
今まで食らったことのないくらい、すさまじい威力。
彼女は耐えるようにそう答えたが、同時に感心して言う。
「しかし・・これが噂に聞くあなたの金属生成・・!
ブレスさえ止めてしまうとは・・お見事です!」
そうだ。
一か月前はまだまだ防御が完全ではなかった。
だがレベル上げの成果で、今では完全に防ぎきっているのである。
そして相手のブレスがいかに強力と言えども、反撃さえ可能。
膨大な質量を利用し、徐々に速度をつけてゆっくりと加速していく。
だが、その前に相手から動いた。
「バガが!!じねい!!」
「!!」
圧力を感じ僕は横を向いた。
金属の壁の端からそれはやってきた。
シュルルルル!!
「なっ・・」
触手。いや、彼の尻尾だろう。
それが伸びて、こちらに迫っている。
ブレスと尾の二面攻撃。
少なくともこれまで戦ってきたドラゴンはこんな戦法を使ってこなかった。
人の知恵、相手の力を取り込める彼特有の技術だろう。
それを止めるには、一旦液体金属術を武器生成に切り替えなくてはいけない。
防御がおろそかになるが、僕は投擲武器を生成しようとした。。
だがその前に
「させるか!!」
ドォオオオオン!!
アンジェリカは銃を撃った。
その尻尾の先端がちぎれ飛ぶ。
あの速度の対象を当てるなんて、なかなかの命中力だ。
「化物め・・!汚い触手を優斗様に近づけさせないぞ!!」
毒を吐く彼女に、僕は礼を言った。
「ありがとうございます。危ないところでした・・」
「!・・はい!」
何故か彼女は顔を赤くした。が、今はその奇妙な行動に構っていられない。
のうたちまわる尻尾の隙を突いて液体金属を操り、取り込んでいった。
「ぐぅ・・!!」
忌々しそうな声が前方から聞こえる。
そのまま取り込んでやろうと思ったが、トカゲのしっぽきりのように取り逃がしてしまう。
だが、それは別に良い。
そうしている間にも、液体金属の壁を彼のほうに進めているのからだ。
「ごじゃぐな・・!!ズギルにだよるおろがものめ・・!!」
毒をついた彼は、この状況が不利だと感じたのか、
「がっ・・!」と、ブレスを中断する。
そして翼を使い、上空へと飛翔したのだろう。
ドンっ!と地を蹴る音とともに。
ヒュウウウ!!
風を切りこちらに向かってくる音が聞こえる。
接近戦に持ち込むつもりか・・。僕は後方にむかって言う。
「アンジェリカさん!一旦後ろに距離を取ってください!!」
「優斗様は!?」
「ここで向かい打ちます!!!」
「っ・・分かりました!」
彼女は不満げにも退避してくれる。
僕は液体金属術を、金属生成に戻し、相手の姿を認識。
ヒュウウウウ!!
「おでの剣でごろずっ!!」
やはり、翼を使い、地上十メートルの低空飛行で迫り来ていた。
このまま近寄られては、動きの遅い液体金属では不利だと判断。
速度に優れる武器生成に切り替えた。
そしてまず始めにV字型の金属武器形を作り、飛ばす。
今度はオリハルコン製ではなく、ミスリル製。
彼の堅そうな皮膚にダメージを与えられるよう、魔法剣の要領で投擲武器に雷魔法を付与しているのだ。
それをシュッ!と。
電流を纏いながら飛ばす。
だが、
「おぞい!!」
難なく避けられる。
そうだろう。それで構わない。
シュンシュンシュンシュン!!
僕はある策を実行するために、続けて同じように大量に飛ばした。
ビリッ!
「むっ!!」
偶然、いくらかヒットするも、
「ざごが!!こざがしい!!」
一瞬動きが止まるが、全く体力が削れた様子はない。
その間にも彼は低空飛行で距離を詰めてくる。
(そろそろ回避するか)
十分に布石は打った。距離に余裕をもって縮地を使おうとする。
だが、しかしここで予想外のことが起こった。
「ぞっちが雷なら・・」
彼は首を逸らせ、
「がっ!!」
特徴的な動作。
「!!」
僕は驚いた。
飛びながら彼はブレスを吐こうとしている。
ブレスは確かに強力だが、飛行中に出してくる個体は今まで遭遇したことがない。
その理由は、ブレス中は体力を消耗して動けなくなり、墜落する危険を持っているからだ。
だが、なりふり構わないのか、彼はそれを今やろうとしている。
僕はすぐさま液体金属術に切り替える。
多少不意を突かれたが、ブレスのガードを練習していたおかげでスムーズに展開できそうだ。
だが、その対策の『速さ』が災いした。。
このブレスの属性は先ほどの『炎』だと思っていたのである。
だが、今彼が吐いたのは・・
「がぁあああ!!!」
ビリビリビリビリビリッ!!!
雷のブレス。
それも地面に。
雷は金属を貫通するが、オリハルコン製の壁で防ぐ分なら、雷であろうと通さない。
しかし地面は別。通電率は低いとはいえ、壁をすり抜けて僕の体へと到達する。
「・・・・・・っ!!!」
それによって少しのダメージとともに、一瞬硬直してしまった。
そう、硬直。
ダメージならば、ポーションで回復でき大した問題ではない。
だが、その一瞬の隙が問題だった。
その間に何も行動できないのだ。あっさりと接近を許してしまう。
そして彼は、巨大な剣を背中から抜いた。
「死ねっ!!ゆうどおおおお!!!」
落ちながら攻撃してくる。
剣だけでも圧倒的な重量感を持つそれが、巨体全体の質量で以てして落ちてくる。
当たれば間違いなく即死。
縮地で逃げようにも雷の硬直。
「っ・・!!」
仕方なく、僕は思念だけで操作できる液体金属術で以てしてそれを受け止めようとした。
だが・・
「よわずぎるっ!!!」
メキメキメキ・・ブチッ!!!と
やすやすと剣で貫いてきた。
やはり、圧倒的に質量が足りない。オリハルコン製とはいえ、この程度の厚さでは、膨大な力の値を持つ彼にとっては障子の紙も同然。
「っっっ!!!」
「ゆ・・優斗様ぁあ!!」
アンジェリカさんが走りながら必死の叫びとともに近づいてくるのが分かる。
銃を使えばいいと思ったが、痺れてうまく銃を使えなかったのだろう。
走れているのは、距離が離れており、硬直が少なくて済んだからだろう。
そしてそれは『無意味』なことだと彼女は気づいていない。
僕は必死に声をひねり出そうとした。
「や・・め・・ろ・・!!」
「やめろって言われたって、、助けますぅうううう!!」
それでも近づいてくる。
「い・・や・・!!そうじゃ・・なくて・・!!」
彼女は勘違いをしているようだ。
『もうダメだから逃げろ』と言っていると勘違いしているみたいである。
安心させるように必死に、友人のほうを指さして言った。
「あれ・・を・・」
ヒュンヒュンヒュン!!
「あれは・・・?!」
そう、先ほど行った攻撃がそろそろ到達するころだ。
何か風を切る音がたくさん近づいてくる音が聞こえて、そして
その一発が彼に直撃。
ビリッ!!
「ぐっ・・!?」
友人の体にわずかな電流を流し込んだ。
そして続いて、連続でヒットする無数の電流。
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッ!!
「が・・!!は・・・っ!!」
無数の投擲武器が彼を襲った。
「ながま・・が・・?!」
彼は後方からの攻撃に、仲間の存在を疑ったようだ。
しかし、そうではない。
そう、最初に放ったV字型の投擲武器の正体。
それはブーメラン。
元の世界ではポピュラーなものだが、銃と同じくこの世界ではあまり知られていないらしい。
何かに使えると思い、訓練して飛ばせるようにしていたのが功を奏したのだろう。
単純なステータスの差では圧倒的に負けている僕が、勝つ可能性を上げるにはどうすればいいのか。
からめ手でなければ勝てないと思い、要した策。
そのブーメランには、雷魔法が付与されている。
ダメージがないとはいえ。一瞬硬直する。
それを計算で一気に戻ってくるようにしたらどうなるか。
「ぐ・・・あ・・・・!?」
断続的にその電撃ブーメランは今も彼を襲い続けている。
致命的な隙が生まれ、彼はその体勢のまま、動けずに落下してくる。
ちょうどいい。
その重さを利用して、攻撃させてもらおう。
僕は武器生成を発動させ、
「うが・・っ!!?」
巨大なオリハルコン製のトゲをいくつも作り出した。
ちょうど落下したときに、致命傷を与えることができる位置にだ。
「う・・・がぁ、がぁああああああああああああああああああ!!!!」
彼は、かろうじて避けられない凶器に絶叫する。心苦しいが仕方ない。
スターテスの差は何百倍もある。ここまでやらなければ安全に捕まえることができないのだ。
できれば瀕死にとどまってほしいが・・。
彼は動けないまま、落下して、そして・・