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マージョリーの冒険者登録(読み飛ばし可)

幕間的な話です。

本筋とはあまり関係ないので読み飛ばしても構いません。

具体的にはマージョリーと優斗がイチャイチャするギャグ風味な話です。

マージョリーさんの過去が暴かれたりもします。


次からは本編でシリアスな作風になります。


 

 

「マージョリーさん、僕、冒険者ギルドに行こうと思います」


「・・・え?」


 心配しながら待っていた優斗が帰ってきて、事情を説明された後、そう言われた。


 瞬間、彼女は気がつく。

 

 彼が友人を無力化した今、彼がここに居る理由などないということに。

 

 そう、彼はもう一人前の冒険者以上の力をつけている。

 

 これ以上、自身との修行の必要がないくらいにだ。

 

(ならば、私との生活ももう終わり・・?)

 

 一瞬絶望にかられたが、彼女はポジティブに考える。

 

 もしかしたら優斗は、ここを拠点にしてくれるのかもしれない。

 

 そう考えて尋ねたものの、

 

「いえ、普通に町で生活しようと思いますけど・・」


「っ・・!」


 思わずしゃがみこんでしまった。

 

 まさかこんなにすぐに彼との生活に終わりが来るだなんて・・!

 

「これからもあなたの指定する獲物は狩ってきてあげます」


 と優しい言葉を掛けられ一瞬喜んだものの、たまに会えるだけじゃ意味がないと感じた。

 

(何か・・何かないの・・?!もっと彼と一緒に居られる方法は・・!!)

 

 そう、なぜ彼女が優斗にここまで執着するのか。

 

 その理由は単純明快で誰の目にも分かることだろう。

 

 そう、マージョリーは優斗のことが好きなのである。

 

 優斗がモテ体質であるのに加え、本来彼女は惚れっぽい性質。

 

 そして、その惚れっぽい性質が災いして、町に行けなくなってしまったのであるが、


 

(・・よしっ)

 

 彼女は、あることを決心した。

 

「決めたわ!私も冒険者ギルドに今度こそ登録しに行く!!」


「!」

 

 だが、言うと同時に、彼女は分かっていた。

 

 それにはある問題が一つあるということに。

 

 彼女は自身が森を離れられない体質と自称していた。

 

 だが、それは嘘である。

 

 その本当の理由は、自身の『苦手意識』。不安からくるものだ。


 前述の通り彼女は惚れっぽい。

 

 『初めて』森で冒険者を助けたとき、彼女は初めてそのことを自覚した。

 

 そうそれは数十年前のこと。

 

 彼女は森を散歩中、ある場面に遭遇した。

 

「や、やめろ!死にたくない!!」

 

 倒れている冒険者。


 そしてそれに迫りくるモンスター。

 

(危ない!!)

 

 当時の彼女は咄嗟に魔法を発動させた。

 

「『ファイアエクスプロージョン』!」

 

 ドガンッ!

 

「なっ?!」


「大丈夫!!ケガはない?!『ヒール』!」


 咄嗟に近寄ると、その体を抱き起し治療魔法をかける。

 

「ありがとう・・なんて美しい方だ・・君の名は・・?」


「えっと、私の名前は、マー・・」


 そしてふと彼女は気が付いた。


 数百年ぶりに会う男の冒険者。それに顔と顔が急接近しているということに。

 

 彼女は突然、心臓がバクバクするのを感じる。


(うう~、男の人だぁ~!

 かっこいいけど・・)


 立ち上がって、立ち去る。


「じゃ、じゃあね!1」


「ちょっと!?どこへ?!」


 異性が嫌いなわけではない。むしろ好きなのだが、しかしだからこそ彼女は赤面する。

 

(恥ずかしい~!!)

 



 ずっと森の中で一人で生活していたのである。

 

 そう、彼女だって異性と仲良くしたかった。

  

 ゆえにそれを克服するために、時間をかけて少しずつ努力していった。

 

 一つは、他人と出会いを増やすための救出活動だ。

 

 モンスターをペットにして、森の広範囲を巡回させ、冒険者を助ける活動を続けたのである。

 

 もう一つは情報収集。

 

 例えば、彼女が魔女仲間から貸してもらった怪しげな恋愛本にはこう書いてあった。

 

『男の子はか弱い女の子が大好き!!自身を弱く見せて守ってもらおう!!』

 

 その方法を実践するために、ステータス操作スキルまで覚えたのである。

 

 その甲斐あって、人と普通に会話できるようになっていったのだ。

 

 そして、完全に人見知りを克服した彼女は次の目標を実行させようとした。

 

 そう、町へと行くのである。

 

 今までも何回か行こうとしたことはあったものの、門番に対して人見知りを発動させ、そのたびに引き返すことになったのだ。

 

 しかし今なら、耐えられる。

 

(よし・・っ!行くわよ・・!!

 この日のために、とっておきの服まで作ったんだから・・!!)

 

 そう言って、個性的なコーディネートを纏いながら、彼女は町へと入っていった。

 

 だが、予想とは違い、

 

(・・・・っ!!)


 やはり、きつかった。

 

 一人か二人だけならまだなんとかなった。

 

 だが、目の前には大量の人、人、人。

 

 特に男の人がこちらをチラチラとみているのが分かるのだ。

 

 しかしここまで来たのだ。多少苦しくても、この空気に慣れておこうと無理をする。

 

 

 そのほうほうの体でギルドへと足を運んだ。

 

(ふえぇえ・・・っ!)

 

 ただでさえ多くの人が密集している施設。

 

 そしてギルドにつきものなのは・・

 

「ねぇねぇ!!君!!僕らのチームに入らないかい?!」


「ちょうど魔法使いが必要だと思ってたんだ。俺たちのチームに入れや」


「待つのですぞー!僕らの魔法同盟のチームこそ彼女にふさわしーい!!」


 勧誘だ。


 囲まれ、口々に色々なことを言われる。

 

 初めての体験。

 

(きゃああああああああああああああ!!)

 

 一気に彼女は耐えられる緊張の限界を超えてしまった。

 

 そして、予想外の行動に出る。

 

「ふ、ふふふふふ」


 薄く笑いだしたのだ。

 

「ん?どうしたんだ?」「おなかでも痛いのかな?」


「ふーっふっふっふー!!」


 そう笑いながら、彼女は服を『脱ぎ』だしたのだ。


「なっ・・!」


「そんなに私が好きならサービスするわよー!!!」

 

「「な、なにぃいいいいいい!!!」」


 彼女が持っていた中に、『トランス』というスキルがあった。

 

 これは主に研究や修行の時に使われるスキルである。

 

 集中のスキルの上位互換のようなもの。

 自身を恍惚させ。それによって高い集中力を得ることができるのだ。


 彼女はこの緊張から脱するために、トランスを発動させたのだ。

  

 だが、代わりに欠点がある。


 それは、行動に歯止めが利かなくなるというものだ。

 

 そう、彼らに対する好意が過剰になったのである。

 

 ゆえの、脱衣。

 

「ふふふ、筋肉大好きー!」

 

 そう言って冒険者に抱き着くマージョリー。

 

「おい!?どうしたんだ君・・?!」


 それに目ざとく当時の慎まやかだった女冒険者が指摘する。


「ちょっと男子!!新入りに何かしたんでしょ?!最低っ!」


「待て!俺はただ勧誘しただけだ!!」


「ずるいですぞー!!僕らだって少しは筋肉はありますぞー!」


 事態は混乱を極めたが、当のマージョリーは

 

「ふふー!だったらあなたにもハグしちゃうもんねー!!」


 そう言って、火に油を注ぐように、次々とスキンシップを取っていく。

 

 気分をよくした冒険者たちは、彼女に酒をおごり、盛大な宴会となってしまったのだ。

 

 そして、そのまま朝まで彼ら冒険者と飲み明かす。


 しかし、再び起きたときに、彼女は青ざめた。

 

(し、しまった・・!!)


 周囲には、たくさんの酒瓶や酒樽。そして寝転がる冒険者たち。

 

 自分も下着のみというあられもない姿だったのだ。


(恥ずかしいいいいいい!!)

 

 彼女はそのまま城門を出て、ハイスピードで自身の住処に帰っていった。

 

 そう、これが彼女が町に行けないという本当の理由。

 

 町に行くと、理性が崩壊するとすら思い込んでおり、うかつに近づくことすらできなかったのだ。

 

 あまりにもばかげた理由。

 

 しかし本人は真剣だ。

 

 このことを優斗に知られたくないばかりに、そういう体質だと嘘をついていたのである。

 

 しかし、彼ともう会う機会が少なくなると分かると、

 

(あんな恥ずかしい姿を見られたくないけど・・でも・・)

 

 彼女は決断する。

 

(きっと大丈夫よね!!)

 

 そう、優斗とともに行くのなら、自身がトランス状態になっても、止めてくれるだろうという予測だ。

 

 そして、ギルドで自身を知るある一派に遭遇したくないとも考えていた。

 

 ゆえに仮面をつけ自分だとばれないように変装する。

 

「ど、どうかしら・・似合っている・・?」


「ええ、似合っていますよ。とても」


 彼にもお墨付きをもらって満足する。

 

 そして大胆にも、理屈をこねて、彼に腕に引っ付いたのだ。

 

 緊張を紛らわすためであるが、これが功を奏したのだ。

 

 町へと到着し、城門をくぐった時である。

 

「・・!」

 

 とたん、彼女は自身の変化に気が付く。

 

「(人ごみが・・平気だわ!!)」


 そう、前回は一人だけだった。

 

 だが今は優斗という今一番好きな人が隣にいるのである。

 

 信頼できるものに引っ付くことによって一時的に緊張が緩和されていたのだ。

 

「だったら、僕からもう離れても大丈夫なのですか?」


 と言われても、否定するしかないだろう。

 

 元々その装備に緊張緩和の効果はついてないのだ。

 

 

 

 

 

 そして、そのあとギルドに到着。

 

 貴族のジョージたちと面会。

 

 彼の奇行やエレナの嫉妬に辟易し。

 

 優斗がギルド登録をしていた時である。


 背後から見知った声が聞こえた。

 

「マージョリー様・・?!マージョリー様ですよね?!」


「!?」


 それは、マージョリー親衛隊である。

 

 彼らは、前述の事件に結成された一派。


 彼女はトランス状態で、ほぼ全員の冒険者とスキンシップを取ったのだ。


 そのことから、モテない冒険者たちから好感度を集め、アイドル的な信仰を得ているのである。

 

 今では次々に信者の数を増やし、ギルドからの使者も彼らが順番に担当しているのだ。

 

 彼らに遭遇したくないがゆえに、仮面つけていたのだが、

 

 だが、その工夫もむなしく、あっさりばれてしまったのである。


「優斗!あなたはそこで待ってて!!」


 というわけで、一時的に彼と離れて、彼らと話をすることにした。

 

 彼女は、例の黒歴史のことだけは彼に知られたくないのだ。

 

 マージョリー親衛隊はひざまづいて何事か歓喜極まるようにつぶやいている。

 

「マージョリー様がこんなところに・・!!その美しいお姿・・!!そして語り継がれるおっぱ・・」


「ちょっとすとーっぷ!!変なこと言わないで!あとひざまづかなくていいから!!」


「む・・?そうですか・・」


 彼らを立ち上がらせると


「いい?あんたたち」


 マージョリーは必死に言う。

 

「あそこの彼に、私の過去を知られないようにしなさい。

 あと、彼といるときに私に話しかけるのも禁止。いいわね」


 親衛隊たちは基本従順。


 だからこそこうやって上から目線で命令をできるのだが、

 

 何故だか彼らは少し不満顔だった。

 

「まあ、了解ですが・・了解ですけど・・」


「あなたの隣にいるには相応しくなさそうな人ですね・・筋肉も少ないし」


「一つ聞きたいのですが、あの新人、あなたとどういう関係なのですかな?」


「え?ええ・・そうね・・私の恋人・・」


 思わず盛った表現をしたが、


「「な、なんですとー?!」」


 彼らのオーバーリアクションに、慌てて訂正する。


「ではないけど、いずれそうなるかもしれない人・・かな?」

 

「「ぐむむむ・・!!」」

 

 顔を赤くしながら説明する彼女を見て、親衛隊たち難色を示した。

 

 考えても見てほしい。アイドルが結婚などを発表して、そのファンがうれしがるだろうか?

 

 彼女の幸せオーラとは対照的に親衛隊たちは、顔を突き合わせて

 

「隊長、あいつどうしますか?」


「ふむ、マージョリー様が我々に仰せつけられたのは、彼に知られないことと話しかけないこと。別に決闘の制限は掛けられていない」


「だったら、すこしくらい痛い目見てもらうのも・・」


 と、剣呑な雰囲気の会議が決定されようとしている中、パキパキと骨をならす音とともに


「あんたたちぃ・・」


「ひっ!!」


 ビクッとした。


 マージョリーが怖い顔で自分らを見ていることに気が付き、青ざめる親衛隊たち。

 

「彼に手を出したらどうなるか、分かってるわよねぇ」


「「もちろんです!!そんなことは一切考えていませんとも!!」」


「それならいいわ。ふんっ」


 このくらい怖がらせれば大丈夫だろう。

 

 そう考え、懸念していた二つ目の問題を片づけた。

 

 そして振り返り、さっそく優斗のもとに戻ろうとした

 

 その瞬間、再び彼女の眼から光沢が消える。


 多くの勧誘冒険者に優斗が詰め寄られていたのだ。

 

「で?!あなたはどっちのチームに入る?!(の?!)(んだ!?)」

 

 その中には、露出の高い鎧を着たセクシーな女の子の姿も。

 

「(しまった・・っ!!私が少しの間離れていた隙に・・!!)」


 そして、最悪なことに、

 

「はい、では、、」

 

 優斗はどうやらチームに入ることに決めたようなのだ。

 

「いけないっ!!」

 

 その瞬間、トップスピードで彼女は走った。そして、

 

「ちょっと待ったー!!」


 その間に入り込み、言葉を遮る。

 

「この子は私と組む予定なの!!

 分かったらあっちいって!しっし!!」

 

 悪い虫を追い払い。

 

 そしてその後、強引に彼とチームを組んだ。


 多少やりすぎとも思えたが、彼女は後悔していない。

 

(そう、自分は優斗しかいないのよ!)

 

 彼女は、昔魔女仲間に借りた怪しい恋愛本の一ページを思い出す。

 

 『魔女が幸せになるためには、惚れ薬か強気しかない!!』と書いてあった。

 

「今日は少しお疲れでしょう。森に帰ったほうが良さそうですね」

 

 そう言って体調の心配までしてくれるのだ。

 

 これ以上私にぴったりの相手はいるだろうか。そう思いながら帰路につく。

 

「~~♪」


 機嫌よさげに彼の腕にしがみつきながら、そしてこれからの冒険者生活に夢をはせるのだった。

 




 そして、それを見る、一つの存在が、


【・・・・】


 ある『感情』を起伏させたのだ

 

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