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『ステータス〇〇』スキル



「ひっ・・!!」


 一瞬ビクッとする友人。

 

 だが、すぐに横柄に語りだした。

 

「や、やるじゃねぇか・・!!

 だけど、あいつらは俺と比べたらクソ雑魚中の雑魚どもだ。

 俺はそいつらよりも一億つええ!!

 これくらいでいい気になるんじゃねぇぞ!」

 

 確かに彼の言う通りだ。僕は気を引き締めた。

 

 そうだ。僕がこの数日で飛躍的に強くなったのと同じように、彼もまた成長しているのかもしれない。

 

 再度鑑定をしてみる。

 

ーー


 生命力 30


 最大マナ 30




 力 30


 持久力 30


 魔法操作 30


 敏捷 25


 幸運 -5000


スキル


 鑑定LvMAX


 言語LvMAX

 

 悪行Lv5

 

ユニークスキル


 技能奪取スキルスティールLvMAX


   金属生成メタルクリエイターLvMAX

   

   速度上昇Lv5

   

   ステータス上昇Lv3

   

   毒攻撃Lv5


ーー

 

「確かに・・」


 素のステータスはそこまで上がっていないが、何やら気になるスキルがいくつかあった。

 

 もしかするとそのスキルの効果がこの戦いにとって脅威となるかもしれない。

 

 僕は長期戦を覚悟し、まずは相手の出方をうかがうことにした。

 

「はは・・!!そうだ・・!!俺は強くなったんだ・・!!お前なんて一ひねりで・・!」

 

 しかし、そういう彼は、何故か足が震えている?

 

 まさか・・怖いのか?

 

 いや、もしかしたら武者震いかもしれない。油断を誘うための演技の可能性だってある。

 

 それを心配してみていた奴隷のポチが、何事か必死に言っている。

 

「ご主人様・・!あのスキルなら勝てるはずです・・!」

 

 それを聞いて、彼は震えが止まった。


「そ、そうだ!!

 お前のその、瞬間移動みたいなやつだって・・!!できるようになったんだ!!」 

 

 おそらく、『速度上昇』スキルだろう。

 

 速度は戦いの中で最も重要な要素だ。僕が縮地を扱うゆえに、その強さは分かっている。最も警戒しなくてはならないスキルだ。

 

 ゆえに僕は、安全を期した戦術を行うことにする。

 

 バレない程度に全身を雷魔法で包み込んだ。

 

 マナを大量に消費する技だ。だが、短時間なら問題はないし、自動で触れた相手にダメージが入る。

 

 さらに、服の下の急所に金属生成メタルクリエイターでオリハルコン製の盾を作った。

 

 これで致命傷は避けられるだろう。

 

 場合によってはいつでも縮地で逃げられるように意識する。

 

「み、見てろよ・・!!」

 

 彼は足を一歩踏み出し、そこからこちらへと素早く近づいてきて、


 そして


「ぐえっ!」


 こけた。

 

 一段低くなっているところに足を取られ、倒れてしまったのである。

 

「・・・・?」


 何をしているんだ・??

 

 思わず手を差し伸べたくなるが、しかしダメだ。罠の可能性だってある。

 

 再び彼は立ち上がって、素早く近づいてくるが、


「・・ぐげっ!!」


 しかしまたしても足元の有象無象に足を取られ転ぶ。

 

「えっと」

 

 すると突然、彼はわめきだした。

 

「くそっ!!なんでだ?!皆の前ではちゃんと使えたはずなのに!!

 そうか!違う!俺のせいじゃない!!こんなところに寝っ転がっているお前らのせいだ!!」


 と、気絶している有象無象たちを蹴った。

 

 それに心配そうに見ていたポチは声を掛ける

 

「ご主人様!他のスキルもありましたよね!?」 

 

「そうだ・・ステータス上昇スキルなら・・って今のでマナを使いつくしてしまった!!この・・くそスキルが!!」


 彼は地面を無意味にドンと殴る。

 

 その姿は言うまでもなく隙だらけ。

 

 もし僕が受けに回っていなければ、すでに何回か殺せているほどだ。

 

「(・・もしかして)」


 僕はここでようやく気が付いた。

 

(演技じゃない・・?)


 そう気が付いた。どうやら彼は、技能奪取スキルスティールで奪うスキルの選定に失敗したようだ。

 

 それなら、なぜあんなに自信満々だったのかが分からない、が。

 

 しかし、このまま見ていても何もないだろうと確信し、僕は彼を捕獲することにすることにした。

 

 当然、金属生成メタルクリエイターを存分に使い、安全を期して捕獲することにする。

 

 わめいている彼の周囲に液体金属を伸ばして、すばやくぐるりと取り囲んだ。

 

「! しまっ・・!」


 気が付いたがもう遅い。

 

 彼も金属生成メタルクリエイターでその囲いを破ろうとしたが、僕は魔法で牽制する。

 

「『エレキ』!」

 

「あばっ!あばばばばばばばばば!!!」


 そして、しびれている間に僕は彼への包囲網を完璧にしていく。

 

 オリハルコン製の鉄格子。金属生成メタルクリエイターで抵抗しようとしても、床の部分は魔法を通しやすいミスリルになっており、いつでも彼の行動を阻害することが可能だ。

 

 そして僕は雷魔法を解除する。


 ところどころ黒焦げてしまったが、命に別状はないだろう。

 

「大丈夫か?」

 

「ううっ・・くそっ!なんだよそれ・・!!俺が・・負けるなんてありえない!!

 あんなに子分だっていたのに・・!!スキルだって強そうなのを・・!!くそっ!!」

 

 悲しそうだが、こうしなければどちらにせよ彼は殺されていたはずなのだ。この様子じゃに早々に冒険者に決着をつけられていただろう。


 僕は彼を励ますために、『笑顔』で彼に言う。


「良かったじゃないか。命は助かる」


「っ!? くそ・・!化物め・・!」


 あとはマージョリーさんから貰った、このスキル使用不可と弱体化の薬を飲ませればいいだけだ。


「さあ、あとはこれを飲めば、お前を救うことができる」


 それを見てポチや他の奴隷たちが応援の声を上げた。

 

「ご主人様!大丈夫ですか?!」「が、頑張ってー!!ボスーっ!!」


 それに友人は 反応して叫ぶ。


「うるせぇ!!見てないでさっさと俺を助け・・」


 すると彼は突然ハッと何かに気が付いた。、


「っ!そうだ!!奴隷の女ども!!またあいつらを人質に取れば・・」


 そう言って彼は手を向けると、奴隷用のスイッチを入れたのであろう。


「「あ、ばばばばばっばばば!!」」


 彼女たち、奴隷は一斉にしびれ始める。


 それを見て檻の中で得意げになって友人は叫んだ。

 

「ははは!!こいつらも道連れだ!!どうだ優斗!!お前が殺すんだ!!この数の何の罪もない女たちをなぁ!!それが嫌なら、分かるよなぁ!!」


 前回と同じ手口。


 だが、前回と違う点は、今僕は両手がフリーということだ。


 今からその首輪を分解すればいい。僕は趣味で機械いじりを少しだけたしなんでいた。金属生成メタルクリエイターを併用すればうまくいくかもしれない。


 そう考え、彼女たちに近づくのだが、


「おっと!そうはいかない!!」


 それに反応して彼が叫ぶ。


「奴隷の首輪を壊そうとしたら、俺の金属生成メタルクリエイターでこいつらを殺すぞ!!こんな風にな!!」


 その言葉はハッタリではなかったようだ。


 にゅるにゅるっ、と。


 彼女たちの服の下から、金属の触手が伸び、首を絞め始めた。

 

「あ、あああ・・」


 電気ショックで叫ぶこともままならずに、彼女たちは全身を震わせている。

 

 彼に雷魔法打てば止めることもできるかもしれないが、もしかしたらその瞬間、力加減を間違えて殺すかもしれない。

 

 すると、また見捨てるしかできないのだろうか。


 『比較』すると彼女たちを見捨てるほうが『最善』。

 

 だが、『本当に』他の方法がないのだろうか。


 どちらにせよ、死んでしまうまでしばらく時間はあるだろう。


 彼女たちを助ける方法をしばらく考えてみる。


 すると、

 

「あっ、そっか」


 あるアイディアがひらめいた。

 

 僕は檻へ近寄っていき、そして、彼に手を向ける。

 

「な、なんだ・・?!もしかして俺を殺す気か?!おい!あいつらがどうなっていいんだな?!」


 彼は勘ぐりわめく。

 

 が、もちろんそんなことはしない。


 むしろ檻を解除したのだ。


「え・・?」

 

 彼を開放したのである。

  

 困惑する彼に向って手を伸ばす。

 

 そして、苦渋の表情の演技でこういった。

 

「くそ・・っ!

 お前の目的は、僕のユニークスキルを奪うことだろう?

 あげるから早く彼女たちを開放しろ!!」

 

「!!?」


 いきなりで目を見開く友人。

 

 少し唐突な演技だっただろうか。しかし、


「へ、へへ・・っ!」

 

 大丈夫だったようだ。


 彼は事態が呑み込めたのか、少しずつにたぁと笑う。


「いいのかよ・・!!

 俺をここまで追い詰めておいて、そんな簡単によぉ・・っ!」

 

 少しも怪しまれてしていないようだ。

 

 そして、さっと僕の手に触れると、


「『技能奪取スキルスティール』!」


 スキルを発動するなり、、さっと僕から距離を取った。

 

 続いてさっと手を向け、奴隷の罰則スイッチをオフにする。


 女奴隷たちの悲鳴が止んだ。


 だが、彼は楽しそうに勝利の宣言をする。

 

「そういうところだぞ優斗・・!!てめぇは甘ちゃんすぎるんだ!!

 これでお前は今の檻を使えねぇ!!

 今度はこっちの番だ・・!

 てめぇらの忌々しいこの金属生成メタルクリエイターでぶっころしてや・・」

 


 そう言って、手のひらをこちらに向けてきたのだが・・

 

 


 にゅるにゅる

 

「る・・っ!!」


 彼にとって信じられない事が起こった。


 液体金属は出た。

 

 だが、それは『少量』。


 かろうじて絞り出したかのような弱弱しいものだ。

 

 無論、この状況で手加減などしている暇はない。

 本気で彼は金属生成メタルクリエイターを使おうとしたのだ。

 

「あれ・・ど、どういうことだ?!」


 しばらく悪戦苦闘したが、依然、大量の液体金属を操ることはできない。


 ふと、ステータスを確認したのだろう。


 動きを停止して疑問の声を発した。

 

「あ・・? なんだ?このスキルは・・?」


 彼を自身にあるスキルが追加されたことに気が付いたのだ。

 

 その名前は・・

 

--

  常時ステータス下降

ーー


 そう、これは『ステータス操作』を変化させたスキル。

 

 『金属生成メタルクリエイター』から『武器生成ウェポンクリエイター』に変化させたのと同じ要領だ。

 

 そう、奪われる瞬間、この『常時ステータス下降』だけを残し、全てのスキルを消していたのだ。

 

 つまり、このスキルを友人にわざと奪わせたのである。

 

 そしてそのスキルの効果は単純だ。


 文字通り、強制的にステータスの値を『下げる』こと。

 

 そう、『それだけしかない』。


 ステータスを『元に戻す』効果は『ない』。

  

 その『常時発動の』効果は、オンオフ切り替えの機能を一時的に『無』くすことで実現。

 

 だから、鑑定で彼のステータスを見てみると、こうなっていた。

 

ーー



スキル


 鑑定Lv1


 言語Lv1


ユニークスキル


 技能奪取スキルスティールLv1


   金属生成メタルクリエイターLv1

   

   速度上昇Lv1

   

   ステータス上昇Lv1

   

   毒攻撃Lv1

   

   常時ステータス下降

   

   

ーー

 

 軒並み全てがLv1になっている。

 

「っ・・!なんだこのステータス!!俺のスキルのレベルが全て1に・・?!!

 どどういうことだ?!何をした優斗!!」

 

 僕はそれに答えてやる。

 

「奪うのにもリスクがあるってことだよ。

 スキルにはプラスの者じゃない。マイナスのものもある」

 

 みるみるうちに赤くなってゆく。

 

「マイナスの・・スキルだと・・っ!!わざとそいつを渡したってことかぁ!!」


「ああ」


 それに激昂した彼は何故かどんどんと近づいてきて、


「この野郎!!返せ!俺のスキル!!」

 

 走って無謀にも殴りかかってくる。

 

 が、まだ何か奥の手を持っているとも限らない。

 

 僕は彼をさっと避ける。

 

「ぐぁ!!」


 勢いあまって彼は転倒した。

 

 ステータス下降は、スキルレベルだけでなくステータス値も減少する。

 

 今の彼の強さはこんな感じだ。

 

ーー

 生命力 10


 最大マナ 10




 力 10


 持久力 10


 魔法操作 10


 敏捷 15


 幸運 -4000

 

ーー

 

 一応平均くらいに落ち着くよう調整はしたが、すぐにはうまく体を動かせないだろう。


「くそ・・っ!!さっきまで俺は奪う側だったのに・・!!力が出ない・・!どうしてこんな奴に・・!!!うわぁああああ!!!」


 そう言って、泣き叫び始めた。

 

 もはや、戦闘続行不能だろう。

 

 そこへ、奴隷のポチが彼へと駆け寄ってきた。

 

「ご主人様!」


 その表情は心配そうな顔だ。

 

「うっうっ・・ポチ・・っ!!」


 彼は彼女の胸に顔をうずめる。

 

 それの行為は、多少なりとも気になった。

 

 何か懐かしい記憶を呼び覚まされるような・・。

 

(・・・・) 

 

 そう、そうだ。

 

 今思い出したが、つい先日、僕はあの奴隷が妹に似ていると思いこんでいたのである。

 

 僕はしばらく、友人と奴隷とのスキンシップを自由にさせてやろうと思った。


 今のうちに女奴隷たちの首輪を外してやろう。


 彼女たちの首輪に液体金属を入り込ませれば、大体の内部構造は把握できた。なるほど、思ったより単純そうである。


 僕がその作業をしている間も、友人とポチは大声で話している。


「うわぁああああ!!!」


「大丈夫!大丈夫ですから!!」

 

 そう、彼も悪気がったわけじゃないのだ。


 人を殺したとはいえ、魔王の加護を受けた影響だろう。

 

 だって、あんなに弱弱しく泣き叫ぶ彼が、人を殺すなんてありうるだろうか。


 むしろ被害者とも言っていいだろう。


 必死にポチは励ましていた。

 

「うっうっ・・!!ポチ・・俺の、俺のスキルが・・!!」

 

「ご主人様!分かりましたから、ここは逃げましょう!!」


「でも・・俺はスキルが全部・・レベル1に・・!」


「何を言ってるんですか!ご主人様は最強なんでしょう!?また上げればいいじゃないですか!」


「・・そうだ・・俺は最強・・ここは逃げる・・!!そしてあいつを見返してやる・・!」


 そう言って彼らは、走り出した。


「あっ」 

 

 僕はそれを見て、その逃走劇がすぐに終わることを予期した。

 

 彼らが無駄に絶望に打ちひしがれるのは僕としても歓迎すべきことではない。

 

 そう、この部屋に入る前、別の盗賊たちが入らないようにバリケードを作っていたのだ。

 

 しかし遅かった。それに気が付いた友人が、震え声でそれに気が付いた。

 

「!!これは金属生成メタルクリエイターの壁・・!あいつが俺たちを閉じ込めようと・・!!」


「・・いえ!まだ大丈夫!こっちですご主人様!」


 そう言って、何故かポチは彼を道とは別の方向へ引っ張っていく。


「?」


 どうしたんだろう。獣人までおかしくなってしまったのだおろうか。

 

 いや、待てよ。

 

 僕は数秒考えた。そして・・

 

「・・・っ!」


 ようやく気が付いた。


 僕は首輪の作業を中断し、彼らが走り去った方へと追いかけていく。 

 

 そうだ・・何をやってるんだ僕は・・!!

 

 そう、あそこにはクリスタル・・ダンジョンの入り口に戻るための装置があるのだ!

 

 僕がそこに到着した時点で、すでに彼らは消えていた。

 

 そして・・

 

 パリーン!!

 

 クリスタルがひとりでに破壊される。

 

 おそらく、ボスの特権のようなもの・・特定のオブジェクトを自由に配置できるのだろう。これで追うことができなくなってしまった。

 

「やってしまった」

  

 まさかここまで追い詰めて逃がすなんて・・

 

 だが、「・・・待てよ」


 少し思い直す。

 

 彼は弱体化されているのだ。もう人を襲うことはできないはずである。


 もちろん捕獲するまで安全とは言えない。

 

 しかし、彼は奪われる悲しみを理解したのだ。

 

 もしかしたら、これまでの行いを反省し、盗賊から足を洗うかもしれないのである。

 

 そう考えた僕は、ひとまず彼らを追いかけることはあきらめた。


 どうせ急いで入り口まで戻っても、すでに逃げられているころだろう。

 

 代わりに奴隷や掴まっている人たちの開放を優先することにする。


 ボスは逃げたとはいえ、ここには危険な輩がウヨウヨいるのだ。彼らの安全が最優先だろう。


 その作業をしながら、僕は考える。

 

(少しかわいそうかもしれないが、これが最も良かった結末かもしれない)


 そして、ようやく一つ目の首輪を外すことができた。


 パキンッ。


「大丈夫?」


「あ、ありがとうございます!」 

 

 ーー

 

 

 それとほぼ同じ時刻、

 

 

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