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盗賊ダンジョンの攻略



 暗くて広い空間の中。

 

 その中に松明が線上にならんで、足場を照らし出している。

 

 それらは俯瞰してみると複雑な迷路上になっていた。

 

 壁はなく、道以外の場所は奈落になっている。

 

 そしてその明るい場所を、多くの冒険者たちが巡回していた。

 

「ぎゃはは!!」


「俺たち最強っしょ!!」


「巡回だりー」

 

 いや、違う。冒険者ではなく盗賊。

 

 そう、ここは例の盗賊団結社のアジトだ。

 

 僕はその端の壁に張り付きながら移動していた。

 

 位置的に高い場所を移動しているので、彼らの位置はある程度把握できる。

 

 そう、金属生成メタルクリエイターでなければこんな芸当はできなかっただろう。

 

 ところどころの凹凸を取っ掛かりにして足場を作ったり、触手を伸ばして忍者フックのように体を引き寄せたりしているのだ。

 

 無論、彼ら盗賊たちや、周囲に神眼を目を光らせながらだ。ここは未知の領域。何が仕掛けられているかわからない。

 

 彼ら盗賊たちの一人の平均的なステータスはこんな感じだ。

ーー


 生命力 50


 最大マナ 5



 力 40


 持久力 20


 魔法操作 3


 敏捷 20


 幸運 -10


(10が平均的な成人の値)


スキル

 剣技Lv1

 拳技Lv1

 チームワークLv1

 罵詈雑言Lv5

 悪行Lv5


ーー


 

「(あいつらのステータスは総じて高くない。だが数が問題だ)」


 そう、密集度が高くないとはいえ、この広大な迷宮の隅々にまで彼らはいた。

  

 加えてこの足場。乱戦になったら足を滑らせてしまう可能性だってある。第一時間がかかってしょうがない。。

 

「(危険な移動方法だが、仕方がない。早くボス部屋までいかないと・・)」


 冒険者の方たちは、盗賊の討伐クエストが張り出されたと言っていた。

 

 この場所だって教えてくれたのは彼らなのだから、もうすでにギルドには知られているのだろう。

  

 だが、友人の犯罪を止めるのは、その友達の僕の役目。

 

 その実力だって十分つけていると確信している。

 

「(それに・・僕が先に彼を見つけないと・・そうでなければ・・)」

 

 僕が決意を胸にした、その時。進行方向に神眼の反応があった。

 

「(・・おっと)」


 輪郭が光って見える場所がある。

 

 何かが壁に張り付いているようだ。生き物ではない。

 

 これは・・トラップだ。

 

 僕はそれに鑑定を集中させた。

 

ーー


 名前 名もなきトゲトラップ


 生命力 1

 最大マナ 1


 スキル

 圧力感知Lv1

 潜伏Lv2


 解説

 触れるとトゲが飛び出して対象にダメージを与える。


ーー


 盗賊たちがこのような場所に、こんなものを作れるとは思えない。

 

 だが、ここがダンジョンならばそれも納得できる。


 そう、ギルドの方々に聞いたのだが、このアジトはダンジョン化しているらしい。


 ダンジョンとは意志を持った空間型のモンスターだと言われており、まるで知性を持っているかのようにその内部構造を変化させているというのだ。

 

 盗賊たちが根城にしているこの洞窟も、つい数日前にダンジョンとして進化した。

 

 あの複雑な迷路上の足場もその時に出来上がったものらしい。

 

 そして、ダンジョンには必ずラスボスの間があり、そこには盗賊団のリーダー。つまり、僕の友人がいるというのだ。

  

「(確か、たいていはダンジョンの最も奥にラスボスの部屋があるって聞いたな。

 つまり、このまま進んでいけば友人に会える・・!)」

 

 そして、誰よりも早く止めなくてはいけない。

 

 そうでなければ、彼は冒険者たちに、殺されてしまうからだ。

 

 


 

 

 慣れない移動方法と、常に鑑定をする集中から、消耗も多少あった。

 

 だが適度な休憩と、携帯食料やポーションのおかげで、ついに僕はボス部屋の扉の前へとたどり着いた。

 

 その脇には、クリスタルのようなものがクルクルと宙に浮いて回っている。そういえば、ダンジョンには各階層や入口へワープするための石があるらしい。これがそうなのだろう。

 

 背後の一本道には他の盗賊たちが入ってこないように金属生成でバリケードを作っておく。

  

 そしてマージョリーさんから頂いたポーションを確認、スキル使用不可と弱体化の薬はちゃんとある。

 

 このダンジョンから連れ出すため、これで友人を無力化しなければならない。そのための薬だ。

 

 そして、大きな扉を押して、

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 中に入る。

 



 僕はその異様な光景に息をのんだ。

 

 中には多くの人々がいた。騒いでいたようだが、扉が開いたのと同時に静まり返る。

 

「・・なんだ、お前か」

 

 その奥の、一段高い位置に彼は座っていた

 

 僕は鑑定をしながら、周囲の様子を見渡す。

 

 彼は体中にたくさんの貴金属のアクセサリーをつけており、そして多くの女を侍らせている。その中には前会った彼の奴隷獣人もいた。 

 

 手前側には多くの盗賊たちが酒や肉を飲み食いし、中には嫌がる女たちを強引なことをしている最中の者もいる。


 そんな彼らの一斉に視線を浴びる。

 

 明らかにカタギではないものの目だ。

 

 それを代表するかのように友人は

 

「ようやく会えたな優斗。このチキン野郎め・・!」


 笑いながら立ち上がる。そして周囲の雑多な数々を見せびらかすように言った。

 

「くっく、どうだ?優斗。この女!そしてこの宝の数々!

 羨ましいだろう?!俺から逃げたチキン野郎の今のお前には無いものだ!!」

 

 自慢したいようだが、しかし僕にはそんなことよりも重要なものがある。

 

 僕は彼に尋ねた。

 

「本当か?」


「あ?」


「お前が、この盗賊団のリーダーになったって、本当なのか?」


「ぷっ、何かと思えば・・」


 彼が噴き出したのと同時に、

 

「「がっはっはっはっは!!」」


 と。


 彼らは静まり返ったのが嘘のようにひとしきり騒がしく笑いあった。


「あーおかしい・・お前、何を見ているんだ?その眼は節穴か?

 ここに俺が座っていること、それが何よりの証拠だろうが!!」

 

 そして、自慢するように、女の恥部を強引に揉みしだき、体中のアクセサリーを撫でながら言った

 

「いやぁ、しかし良いぜ。盗賊はよう。

 弱い奴を虐めて殺すだけで金も女もスキルも手に入る!

 こいつら盗賊団だって、少しリーダーのスキルを奪っただけで従順になりやがった!!

 そう、力こそ全てとはよく言ったもんだ!がっはっは!!」

 

 やはり、彼の心は完全に魔王に支配されているようだ。

 

 きっと良心に訴えかけても無駄だろう。

 

「それで、正義の味方のお前は俺を捕まえに来たってか?」


「ああ」

 

 本当のことを言うしかない。


「でも、僕が来たのは君を救うためでもあるんだ」


「ああん?なんだ?宗教の勧誘か?」


「いや、違う。

 ギルドに君の討伐クエストが出されたんだ」


「・・!」


 彼の目にわずかな動揺が生まれた。

 

 そう、マージョリーさんが前面の信頼を置くギルドの実力者たち。

 

 彼らに位置を知られているのである。

 

 その意味が分からないわけでもないだろう。

 

 僕は続ける。


「もうじきここは冒険者によって攻略される。そしてそのトップである君は間違いなく殺されるんだ。

 でも、今ならまだ間に合う。

 僕が君をかくまってあげよう。そう、命だけは助かるんだ・・!」

 

「・・・」


 だが、こんな説得で聞くような相手ではないことは僕もわかっている。

 

 彼は叫んだ。

 

「そう言って、俺を奴隷同然に扱う気だろ!騙されないぞ!!

 それに・・ふん、あいつらが来たら、返り討ちにすればいい。

 俺は強くなったんだ!あれからスキルを三つも奪ったんだ!!

 今なら筋肉だるまにも勝てる!!」

 

 説得失敗か。筋肉だるまというのが誰のことかわからないが。


 まあ、どうせこうなるだろうとは思っていたが、最終手段だ。

  

「なら本当に勝てるのか、試してみないか」


 僕は武器生成ウェポンクリエイターで剣を生成する。

 

「異世界に着て約一週間の僕に勝てなければ、ギルドの実力者たちになんて到底勝てないだろう?」


 そう、最終的には暴力しかない。

 

 彼も乗り気でこういった。

 

「はっ!当然だ!!どうせ殺すつもりだったんだ!!

 野郎ども!!狩りの時間だ!!」

 

 そういうと、取り巻きの盗賊たちが、「へっへっへ」と、武器を構えてにじり寄ってきた。


「ここに来た時点でお前の命はないものと思え!!

 今度は油断しない。しもべも、このスキルも、

 最大限利用してお前を徹底的暴力で殺してやる!!」

 

 その言葉を合図に、彼らは集団で僕めがけて走り出した。

 

 だが・・そのほとんどは、遅い。


 まず、僕は、剣とは反対側の手で毒針を生み出し放つ。

 

 ザシュ!!ザシュッ!

 

「ぐあっ!!」「ぐっ!!」


 武器生成ウェポンクリエイターによって最適化された行動。

 

 もはや、手を振るだけで飛び道具を飛ばせると言ってもいいだろう。


 それを、何度も何度も何度も、放ち続ける。

 

 ザシュザシュザシュ!!

 

 次々と烏合の衆は倒れていく。

 

 大半が戦闘不能になっただろう。

 

 いくらなんでもあの数は理不尽だった。このくらい減らせば十分だ。

 

 そして残ったものは多少能力が突出した、強い子分。

 

 僕は彼らの前から『消える』。

 

「なっ・・?!」


 そう言って、隙を見せたものから接近し、魔法剣の餌食にした。

 

「ぐぁ!!」「速いっ?!」


 彼らはまだ僕の動きについていけてないようだ。

 

 そう、今度は縮地で移動しつつ、直接一人ずつ仕留めていく。


「はぁっ!」


 少し技を見せすぎたからだろうか。かろうじて反応できたものもいた。つばぜり合いをしようとしてくる、僕はそれに、

 

「『エレキ』!」

 

 魔法剣で相手の武器を通してダメージを与える。


「はっはぁ!!やるな坊主!!だが俺のスピードについてこれる・・・・ぐわぁっ!!」


 素早い動きをするやつは、まきびしや、ひも状の金属で罠を生成し、仕留めた。

 

「お前ら!いったん下がれ!ここは俺が範囲魔法で焼き尽くしてや・・ぐはっ!!」

 

 範囲魔法を使ってくる奴には、魔法を通さないオリハルコンで盾を作り、そのまま押しつぶす。

 


 そして、一分以内の出来事だろうか。

 

 死屍累々の人の山ができていた。命までは奪っていない。戦闘できないように急所や足の腱を切ってあるが、この世界のポーションでなら治るだろう。

 

 マージョリーさんとの修行期間があったおかげで、ここまですんなり倒せた。

 

 僕は彼女に心の中で礼をすると、残りの戦闘員に目を向けた。

 

 そう最後の一人は、

 

「ひっ・・!!」


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