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転移、そして裏切り



 確か僕は死んでしまったはず。なのに・・


 いつの間にか白い空間に居た。


 なぜ死んだのに考えることができるのだろう。


 そう疑問に思いつつ周囲を見渡す。


 あきらかにこの世のものといえ思えないような雰囲気。しかし夢のようでいてやけに現実味がある。


 その中で見慣れない人物が存在感を放っていた。


「ほっほっほ」


 後光、それに威厳・・そういうのはこういう存在に使う言葉なんだろう。

 それは豪奢な服装を着た幼女だった。


「、、こども?」


「とんでもない。わしは神様じゃよ」


 神様と言うにはちんまりしている。こういうのはじいさんみたいな仙人的なものをイメージしていたんだが。


「昔はこうじゃけど 最近ではこういうのが流行りなんじゃろ?」


 そう言って姿をいろいろと変えて行く。老人、成人、幼児、胎児・・・


 どうやら変幻自在らしい。 まあ神様なら当然か。


 と言うか 普通に 頭の中をのぞくことができるらしい。まあそれも神様なら当然だろう。


「ほう、柔軟性が高いの。結構結構」


「ありがとうございます。それで、ここはどこでしょう」


「うむ、率直に言おう。ここは死後の世界。つまり貴様は死んでしまったのじゃ」


 確かにそのようだった。あの出血量からして間に合わなくてもしょうがないだろう。


「ふふふ、冷静じゃの?」


 そう言われたので僕は驚いた表情を作った。


「あーよいよい 別にわざわざ驚いたふりをしなくても良い」


 そのようだ。神様相手に僕が現世で培ったスキルなど通用しないらしい。


「さて、さっそく本題に入ろう。

 異世界に転移させてやろうではないか。

 そなたの個性に合ったスキルも与えてやろう。鑑定、言語スキルもセットでな。

 悪い提案ではないと思うがどうじゃろう?」


「転移?異世界?」


「おぬしが今までいた世界とは、別の世界があるのじゃよ。

 そこにはモンスターと呼ばれる魔力を纏った怪物がうようよいる。

 だが心配いらん。前述のスキルはもとより、身体能力も強化しておく。

 これで異世界で困ることはないはずじゃ」


 よくわからないが、別の世界で特殊な能力を与えられて生きることができるらしい。

 かなり優遇されているように見える。


「ありがとうございます」


 僕はとりあえずお礼をしたが、しかし疑問が残る。


「しかし・・どうして僕にそこまでするですか?」


「うむ、そこは親切なわしの計らい、と言いたいところじゃが。

 わしにもちょっとした目論見がある。

 その異世界では魔王が自らの体を現界させようとしているのじゃ」


「なるほど、それを倒すためにここまでしてくれたのですね?」


「いや必ず倒す必要はない。

 まあ、できれば倒して欲しいのじゃが、目的は異世界のレベルを引き上げることじゃ

 貴様が異世界で冒険をするだけで、それに関わったものたちに刺激を与えたいのじゃ」


 なるほど、思ったより壮大な計画のようだった


「まあそういうことじゃな。しかし、とは言っても、貴様はもっと自由に生きてよい。わしは強制せん。それが神様のルールじゃからな」


 大体自体は飲み込めた。だが、ここは『人として』取るべき行動を取るべきじゃなかろうか。


 そう、世界のため、皆のために、魔王を倒す。


 それが『人として当然』のことだ。


「分かりました。魔王討伐のため、善処しましょう」


「・・うむ」


 しかしその前に 一つ聞いておきたいことがあった。


「あの、できれば僕の友人の今の状況を知りたいのですが」


 そう、元の世界に残してきた友人。彼はあの後どうなったのだろうか。


 しかし、彼女が返したのは、よくわからない言葉。


「それは 着いてから本人に聞けば良いじゃろう」


「それはどういう・・?」


「着いたら分かる。それじゃあ送るぞ」


 その言葉とともに意識が遠のいていく。


 彼女の最後の言葉の意味は、早々に知ることになった 。


ーーー



「・・・ここは」


 僕は目覚めた。


 できることならば、僕が死んだことについては全て夢であってほしかったが、しかし見慣れぬ森の中。


 そして刺さった腹の傷もなくなっている。


 直感的にここは元居た世界とは別の世界だと感じるし、おそらく僕の記憶は正しいのだろう。


 ここは異世界だ。


 しかし、あの言葉・・「着いたらわかる」とはどういう意味なのだろう。


 そう考えたとき、意外な人物が僕の名前を呼んだ。


「よう、斉藤」


 少し驚いて振り向いた。


「・・君も来ていたんだな」


 そう、そこには僕の『友人』がいた。


「どういうことなんだ。なぜ君が異世界に・・」


 しかし、彼は予想だにもしないことを言った。


「あの時死んだのは俺だけじゃない

 俺も死んだんだ」


 そして次の言葉とともに僕は『吹っ飛んだ』。


「お前のせいでな!!」


 そう、ほかならぬ『友人』から殴られたのだ。。


「ぐっ!!」


 背後の木に激突したが、あまり痛くない。


 いやそんなことより、なぜ彼が怒っているのか、それが知りたかった。


「どういうことだ?僕のせいで君が死んだだって?」


「はは・・馬鹿が・・まだ気が付かないのか?

 あの時、誰かがお前の背中を突き飛ばしただろう?

 それは俺だ」


「何・・?」


「その後、逆上されたよしこの野郎にめった刺しにされたんだ。・・くそっ!!あいつ!何も殺すことないのに!」

 

 よしこさんが彼を・・そして彼が僕を殺しただって?


 しかし --心の奥底ではなぜか納得している部分がある。どういうことだ ?


 彼は僕の友人ではなかったのか?


【――いや、本当は分かっているはずだろう?】


 僕の冷静な部分がそうささやく。


「君は、まさか、、」


「あん?

 あーそうだよ。 ようやく気がついたか。 俺はお前の友人のふりをしていたんだ。

 最近嫌がらせの手紙を入れたのも俺、机に落書きをしたのも俺だ

 お前のストーカーにあることないこと吹き込んだのもな」


 ああ、なるほど。


 だから、どこか友人は最近不審な態度だったのか。


 そして、僕は今、『友達に裏切られた』。


 分かっている。


 こういう時『普通の人はショックを受ける』んだ。


 僕はわざと声を震えさせて尋ねる。


「そ、そんな・・!どうして・・!

 僕たち友達だろう・・?!」


「ちげーよ。

 お前に告白してくる女子目当てで近づいただけだ」


 だが、それだけでは僕を殺した理由にはならない。


 僕は再度尋ねる。


「それでも、最近まで仲良くしてくれたじゃないか・・!

 なんで突然僕を殺すなんて・・!!」


「そうだな。

 決定的だったのはあの日お前が見せた”大金”のことだ」


 大金?ああ、そういえば・・・

 数か月前彼を救ってやろうと、そんなことをした覚えがある。

 そういえばその次の日からいたずらは始まっていたっけ。


「俺が必死でバイトして貯めた金以上のものを、お前はたやすく稼いで見せた。

 俺がただの優等生のお前に負けるなんてありえない。人の何倍も苦労をしている俺がお前に・・!!」

 そうさ、だから殺した。

 お前のストーカーにあることないこと吹き込んで凶行に及ぶように仕組んだんだ」


「・・・・なるほど」


 それが、彼を凶行に至らせた理由らしい。


 全ての全貌が判明した今、友達である僕がするべきことは『仲直り』だ。


 僕は直角に礼をし、彼に謝った。


「すまなかった・・俺が全面的に間違っていたよ」


 それを見て、彼はニヤリと笑った気がした。そして、言う。


「そうだな・・

 お前、とりあえず、『スターテス』っていってみろ」


 ? よくわからないが言われた通りにしてみる。


「スターテス」


  すると目の前に 半透明の数字は文字が書かれた板が現れた。


ーー


 名前 斎藤勇斗


 生命力 30

 最大マナ 30


 力 20

 持久力 30

 魔法操作 30

 敏捷 50

 幸運 70


(10が平均的な成人の値)


スキル

神舌(全ての言語会話可能

神眼(あらゆるものの鑑定が可能


ユニークスキル

金属生成(金属を生み出し操る固有能力)レベルMAX


ーー


「な、なんだこれ・・?」


 突然の幻覚に僕は多少混乱する。


「うっせーな・・とにかくユニークスキルの項目を見てみろ。

 お前も持っているはずだよな ?神様からもらった 強力なスキルを」


 僕はユニークスキルの項目を見る。


 確かに金属生成メタルクリエイターというユニークスキルがあった。


「これがどうしたんだい?」


「試しに使ってみろ」


 そう言われても、どう使うのだろうか?


 と思ったら、何か直感的に何かを感じて手を前に出してみると、


「これは・・!」


 手から液体金属のようなものが生まれた。


 そしてそれを意識すれば、、色々な形に変形させることができるみたいだ。


 まるで、魔法。


「すごいなこれは、、」


 試しに鞭のようにしならせて近くの岩を叩いてみると、、


 ぼごぉ!


 岩の半分が破壊されて瓦礫になった。


「ははっ大したものじゃねぇか。

 それがお前のユニークスキルだ」


「これが僕のユニークスキル・・」


 友人がすたすたと側までちかづいつきて


「ああ、しかし、、」


 やけに笑顔で僕の肩にぽんと手をおいた。




「それは俺が『頂いた』。

 『技能奪取スキルスティール』」




 ?


 違和感とともに、急に液体金属が消滅した。


「あれ?」


 もう一度使おうとしても無理だった。


 どういうことだ?


 友人に触れられた瞬間、能力が使えなくなった?


 彼を見ると、彼の手からは先ほど僕が操っていた液体金属があった。


「お前の能力は『俺のもの』になった」


「え?」


「くっくっくっくっく・・」


 友人は今までの静かさが嘘のように


「はっはっは!はーっはっはっは!!!」


 高笑いを始めた。


 そして興奮したように言う。


「斎藤・・っ!確かにお前はすごい。だがそれは今までの話だ・・!

 今は俺のほうがもっとすごい!!

 そう、俺のユニークスキルは 触った人の スキルを奪う技能奪取スキルスティールていうスキルだ!

 もう一度スターテスを確認してみろ!」


 言われたとおりに確認すると、、


ーー


 名前 斎藤勇斗


 生命力 30

 最大マナ 30


 力 20

 持久力 30

 魔法操作 30

 敏捷 50

 幸運 70


(10が平均的な成人の値)


スキル

神舌(全ての言語会話可能

神眼(あらゆるものの鑑定が可能


ユニークスキル

○○○○


ーー



 確かに。ユニークスキルか空欄になっている。彼の言うとおりらしい。


 なるほど。これは確かにすごいな。


 物体を操るだけでなくそんな特殊なスキルもあるのか。面白い。


 心の中で感心していると、


「ぷ、ぷぷぷぷ」


 友人がこちらを指さして笑っていた。


「どうだ?悔しいだろう?」


 悔しい?


 夢中になっていて忘れていたが、そう、彼は僕のスキルを奪ったのだ。


 そうだ、こういう時、『普通の人』は・・


「『ぐ・・っ!くそっ!』」


 そうだ、普通の人はこういう時悔しそうな顔をする。


「ははっ、そうだ!その顔だ!ははは!あーっはっはっは!!」


 良かった。彼は僕の悔しい顔が見たかったようだ。


 ここまで嬉しがっているのなら、もうすぐ『仲直り』できるだろう。


 僕は、さらに嬉しがらせるために、『悔しい顔』から『笑顔で』の彼のスキルを称賛した。 



「でもすごいな。

 そんなすごいスキルを持ってるなんて!

 お前って超すごいやつだったんたな!」



 と、僕のその何気ない言葉に。



「え、、?」



 友人は何故か呆気にとられた顔をした。


「な、なんでそんなことが言えるんだ、、?

 それも『笑顔』で・・?!」


 あれ?


 なんでそんなびっくりした顔をするんだろう?


 何もおかしいことはないはずだが・・?


「えっと・・

 何か僕変なことを言ったかな?

 良ければ教えてほしいんだけど・・」


「え!?いや・・だから・・っ!

 何でいきなり平然としてるんだよ?!

 さっきまであんなに悔しがってたのに!」


「あ」


 そうか、、。


 僕は自分が失敗したことを悟った。


「何が『あっ』だ!俺が憎くないのか!?せっかく貰ったスキルなのに!?こういうとき普通泣き叫んで返しててっていうはずだろ!?」


 そう、彼の言う通り、こういう時は、『泣き叫ぶ』なのだ。


 『普通の人はそうでなければならない』のである。


 異世界に着て、スキルを盗まれるだなんて、あまりない経験だから、コミュニケーションを間違えてしまった。


 しかし泣けるだろうか。


 最近は泣く練習を最近あまりやっていなかったからね。


 久しぶりに涙を出そうと意識をする。


 そして、タラっ・・と


 涙を出すことに成功した僕は、再度コミュニケーションを再開。


『真顔』から『悲しみ』の顔に変化させるのだが、、。


「なっ・・!?」


「?」


 何故か恐ろしいものをみたかのような表情で彼はあとずさりしていた。 


「どうしたんだい?」

 

 僕が近づくと、


「な、なんだお前・・!」


 その分だけ後退りする。


「どうして距離を取るんだい?」


 転びそうになりながらも、彼は僕を指さして距離をとろうとした。


「お、お前、絶対、おかしいよ!!

 なんでそんな悲しそうな顔をしながら普通にしゃべれるんだ?!

 普通そんな瞬間的に表情を変えることなんてできないだろ!!

 ロボットかよお前!

 ふ、普通の人間じゃない!」


 友人は お化けでも見たかのような表情で


「く、来るな!近寄るな!」


 木々を掻き分けてどこかへ行ってしまった。


 こういう時、『友達』なら、追いかけて誤解を解くべき。


 だが、ひどく気が動転しているようだった。


 ここは落ち着くまでそっとしておくのが最適だと僕は経験から知っている。


 しかし、疑問が残る。


 彼は僕の泣く顔が見たかったのではないのか?


 表情が急に変わったのが不気味だと言っていたが、あそこまで怖がるほどでもないのではないか?


 分からない。


 そして、一応念のため、1時間ほど待ってみたが、彼が戻る気配はない。


 僕も、いつまでもこうしていても始まらないだろう。


「さて、これからどうしようかな?」



1話を分割しました。


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