三日後
ミスリルと呼ばれる金属は知っているだろうか。
僕はそれ手の中で生成した。
昨日、僕がマージョリーさんから、それらの金属を教えてもらい、試しにやってみたらできたのである。
ミスリルの性質とは、魔法を通しやすいということ。
僕はそのミスリル剣に雷魔法を通して魔法剣を作り出した。
確かに、この金属は使い勝手が良い。一度魔法をかけただけで数分は持つ。
「ブゥ・・」
そして、目の前にはオークがいる。
オークとてもは二本足で立つ、豚の頭を持ったモンスターだ。
僕は神眼による鑑定を試る。
ーー
名前 リジェネオーク
生命力 1500
最大マナ 30000
力 1000
持久力 300
魔法操作 60
敏捷 300
幸運 3
(10が平均的な成人の値)
スキル
再生Lv5
初期武器装備Lv5
マナ蓄積Lv6
衝撃耐性Lv8
魔法耐性Lv8
こん棒技Lv2
ーー
「ブゥ!」
遭遇した瞬間、こちらへ向かってくるオーク。
僕はその瞬間、前述の魔法剣を片手で作りながら、
「『ファイア』!」
牽制に炎魔法をその足に繰り出す。
一番面積の大きい腹に、耐性を特化させているらしく、大抵の魔法や衝撃跳ねのける。
ならば狙うなら足だ。
しかし相手も自身の弱点を知っているのだろう。
僕が魔法を繰り出すと同時にジャンプする。
「ぶぶっ!!」
そして雄たけびを上げながら空中に弧を描いてこちらへ向かってきた。
だが僕は、引くのではなく前へ。縮地でその下をくぐるように抜ける。
そして交差するその途中で、体勢をぐるっと回転し、足元をミスリル魔法剣で傷つけた。
「ぶっ?!」
着地すると同時にオークは転げる。
自身の体重をケガした足でささえきれなかったのだろう。
その隙を逃さず、魔法剣で追撃。しばらくは独壇場だ。
しかし、体勢を立て直して、オークがダブルラリアットを繰り出したので、回避。
見ると、一瞬前に傷つけたはずの足は元通りに再生していた。
そう、オークは再生力の高いモンスター。その秘密はそのでっぷりとした腹にある。
あの中にはマナが蓄積されており、そしてそれを生命力に変換して再生に利用しているのである。
生半可な攻撃では倒すことはできない。
だが、ダブルラリアット中に僕はナイフを投げる。
ザシュッ!
「ぶっ!」
その腹に傷をつけた。
今僕が投げたナイフの金属は、ミスリルと同様、マージョリーさんに教えてもらったものだ。
そう、オリハルコン製のナイフ。
それはミスリルとは違い魔法を全く通さない。
その代わりに非常に硬い性質を持っている。そして金属生成による加工で、この切れ味。
僕は次々と再生するにも構わずナイフを投げていった。
ザシュッ!ザシュッ!
それに負けじと相手も強引に迫ってくるが、縮地で回避していく。
オークの体力は無尽蔵なのかと思うくらいタフだった。
だが、数十分立ってやっと効果が表れる。
「ぶ、ぶひ・・・?」
足元がおぼつかないようだ。その重量級の体を支えきれない。
「ぶぅ・・」
ドスンっ
まだ生命力やマナが十分に残っているにも関わらず、オークは倒れた。
「やっと効いたか」
そう、僕の作った武器の刃の部分には、鉛を塗布しているのだ。
鉛もミスリルやオリハルコンと同じ金属。
ならば金属生成で作れない通りはない。
卑怯かもしれないが、そうでなければ勝てない相手だった。
ともあれ、ターゲット討伐完了。僕はその死体をアイテム袋に入れてマージョリーさんのところへ戻ってゆく。
マージョリーさんの家。
「師匠の教えてもらった金属、とても役に立ちました」
「そう?それは教えたかいがあったわ」
いつものように彼女に死体を引き渡すと、僕は決心する。
「・・・」
「あら?どうしたの?」
僕は思い切って言った。
「師匠、そろそろ、良いと思うのですが・・」
「・・そうね。あなたは十分に強くなったわ」
そう、今の僕は友人を倒せるレベルにまで上がったと思う。
あのリコリスとの修行の日から、すでに三日がたっていた。
今の僕の強さはこんな感じだ。
ーー
名前 斎藤勇斗
生命力 80
最大マナ 130
力 70
持久力 100
魔法操作 150
敏捷 180
幸運 6500
(10が平均的な成人の値)
スキル
神舌(全ての言語会話可能
神眼(あらゆるものの鑑定が可能
苦痛耐性Lv1(痛みに慣れやすくなる)
ステータス操作Lv3(意図的にステータスを操作できる)
炎魔法Lv5
水魔法Lv6
雷魔法Lv6
土魔法Lv5
風魔法Lv5
ユニークスキル
金属生成Lv5
ーー
「・・まさか数日でここまで強くなるなんてね。
大した人だわあなたは」
「いえ、これもマージョリーさんのおかげです」
「そんなことないと思うけど・・
ともかく、スキルを盗まれない訓練は完璧なのよね?」
彼女はそのことが気になるようだが、その心配は無用だ。
「はい、『ステータス操作』のスキルをLv3まで上げておきました」
Lv3ならば十分実践で使える速度で変化させることができる。
「それなら安心ね」
「それと、このスキルについてあなたに教えておきたいことがあります」
そう、このスキルを重点的に練習しているうちに、ある斬新な利用法を見つけたのである。
「このスキルは隠ぺい以外の使い方もできるんです」
「?どういうこと?」
師匠も知らなかったようだ。
先ず、『ステータス操作』スキルとは、ステータスを上下させる能力。
それを利用すれば、今あるスキルを変化させることができるのである。
「師匠、とりあえず、僕を鑑定してください」
「? ええ、分かったわ」
彼女は今、こういった情報が見えているだろう。
ーー
名前 斎藤勇斗
生命力 80
最大マナ 130
力 70
持久力 100
魔法操作 150
敏捷 180
幸運 6500
(10が平均的な成人の値)
スキル
神舌(全ての言語会話可能
神眼(あらゆるものの鑑定が可能
苦痛耐性Lv1(痛みに慣れやすくなる)
ステータス操作Lv3(意図的にステータスを操作できる)
炎魔法Lv5
水魔法Lv6
雷魔法Lv6
土魔法Lv5
風魔法Lv5
ユニークスキル
武器生成Lv5
ーー
師匠はその中に見慣れないスキルがあることに気が付く。
「武器生成?あなたこんなユニークスキル持っていたっけ?」
「いえ、たった今作りました」
「つ、作った・・?」
混乱しているが、しかし大したことではない。
「いえ、作ったといっても、新しい作ったというわけではなく、元々の金属生成の『レベルを下げている』だけです」
つまり、スキルの機能を絞ることで一つの用途に特化させているのだ。
「なるほど・・確かに、そのスキルの上限内ならば、別のスキルに変化させることも可能・・。
でも、それで何の意味があるの?
そう、確かに、わざわざ武器生成のスキルに変化させなくても、元々武器を作る能力が金属生成にある。
わざわざ武器生成のみに限定しなくてもいいように思えるが、このことにはある利点があるのだ。
「武器生成にすることで、性能を特化させることができるんです。
こんな風に」
そういって僕は次々と手からナイフや剣、槍や盾などと言った武器を作っていく。
この動作は液体金属を介して作っていたのだが、武器生成のスキルに変化させ、その無駄な動作を捨てることで最適化されているのだ。
「なるほど、『ステータス操作』って結構奥深いわね。
正体を隠すためにしか使えないと思っていたけど、こんな使い方があったとは・・」
「はい、師匠から教えてもらったスキルですから、一応あなたに伝えておくべきだと思って」
「ふふ、師匠なのに逆に教えられるなんて・・弟子なのに生意気ね」
「あ」
どうやら、僕は出過ぎた真似をしたようだ。
「すいません、生意気な真似をして・・」
僕は過去の失敗を何も学んでいない。まだまだコミュニケーションを極めたといえないだろう。
そう思っていたのだが、マージョリーさんは
「ふふ、やっぱりあなたはおかしい子ね。
私は嬉しいのよ。
弟子がこんなに育ってくれたのがね」
「師匠・・」
マージョリーさんは僕の肩に手をポンと置いて言う。
「友人のこと、止められるといいわね。」
「・・はい」
僕が彼女と出会って一週間程度だろうか。
長かったようで短かった。
だがこれ以上は、友人の凶行がいつ始まるかわからない。
僕は再度彼女に礼を言う。
「ありがとうございました」
「行く前に、これだけは言わせて
友人のことが大切だってのはわかるけど、自分の命を一番大事にしなさいよ」
「はい。
では行ってきます」
僕は励ましの言葉をもらって一歩を踏み出した。
――だが、ちょうどその時、
ガサゴソ
「ピィ!」
「ん?どうしたの?」
彼女のペットであるリコリスが突然茂みから現れ、何やら彼女と話し始めた。
「どうしたんですか?」
「ちょっぴり嬉しいお知らせよ優斗。
少し速いけど、もう来てるらしいわ」
「?何がですか?」
「ギルドからの使者よ」
そして、数十分後。
森の奥から人影が見えて、
「マージョリー様!!」
彼女の言う通り、数人の冒険者たちが現れた。
彼らを介してギルドに友人のことを報告してくれれば、その凶行を確実に止められるかもしれないのである。
なんだ。僕が急がなくても彼らのほうから来てくれるなら万々歳ではないか。
そうは思ったのだが、何やら彼らの様子がおかしかった。
焦っている様子だったが、彼らは師匠の姿を見ると
「・・大丈夫。マージョリー様には何事もないようだ」
「良かった・・」
安否を確認するなりほっとしていたのだ。
そう、彼らはやたらマージョリーさんのことを尊敬しているようだ。全員彼女の前へとひざまずく。
マージョリーさんが少し動揺して言う。
「な、何事?」
「実は、ここの付近で超大規模な盗賊団が結成されたとの知らせがありまして・・討伐クエストがギルドに貼られたのです。
それを見て私どもは、もしかしてあなた様に何かあったかもしれないと不安になった次第なのです」
この世界で聞きなれない単語が出た。
モンスターが跋扈しているのに、それ以外に人を襲うやつがいるだろうか。
「あの、少しいいですか?
盗賊団とは一体・・」
尋ねると、その冒険者は答える。
「はい、盗賊とは楽して商人や一般人を襲うことで利益をむさぼろうとする不逞なやつらです」
なるほど、利益を優先して犯罪に手を染める。元の世界でもよくあった話だ。
「その犯罪者集団が、今大規模な同盟が結ばれたと・・?」
「はい、つい先日までは盗賊団同士の争いが多かった。
しかし同盟を結んだ分、その被害も甚大なものとなっています」
暴力で人の者を奪うやつらがそんな理性的なことをするのだろうか。
何か裏があるな。
「その理由は分かっているのですか?」
「ええ、何でも強い冒険者が盗賊落ちしたらしく、そいつが複数の盗賊団を取りまとめるようになったとか・・そう、そいつの名前は・・」
「!」
その名前を聞き、僕は驚いた。
「・・本当に名前はそれで間違いはないんですか?」
「? ええ。私たちが聞いたのは今言った通りですが・・」
「どうしたの?優斗?」
不自然に食いついた僕に疑問符を投げるマージョリーさん。
「師匠・・
僕、ギルドに行くのは後にして、
代わりに盗賊団をつぶしに行くほうを優先します」
「え?
・・まさか」
「はい」
事態は思ったよりも先行していたようだ。
まさか『彼』がそんな風になるなんて・・。
「僕の友人は盗賊団のリーダーになったみたいですね」