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友人の盗人生活


「この・・っ!!この・・っ!!」


 バァンッ!バァン!!

 

 宿に帰ってきた後、彼は最初にしたことは、自らの奴隷への当てつけである。

 

「ぶっ・・!!あの・・っ!!ごしゅっ・・!!じんっ・・!!」

 

 その理不尽の仕打ちの理由は、あんなに大見えを切って負けてしまったという羞恥心というのもある。

 

 だが、本当の理由は、恐怖。

 

 今まで下に見てきたポチに、逆に見下されるかもしれないということだった。

 

「なん・・で・・・?」

 

「うるさい・・っ!!お前さえ・・お前さえいなければ・・!!俺は勝っていた・・!!」


 だからこそ、こうやって身分を思い知らせることを真っ先にした。

 

 彼のコンプレックスは劣等感。

 

 唯一、絶対的な優越感を感じることができるポチに見下されたら、彼の心のよりどころはどこにも無くなってしまうだろう。

 

 ゆえに、彼は必死だった。

 

「はぁ・・・!はぁ・・!!」


 だが、ひとしきり殴り疲れた後、自身の血まみれの拳を見て我に返る。

 

 そして、目の前にはぼろぼろになった獣人。

 

(しまった・・っ!俺はなんてことを・・!!)


 ここでようやくやりすぎたことを自覚した。

 

 彼は殺人に抵抗がなくなってはいるが、対象はだれでもいいというわけではない。ペットが死んでしまったら悲しむだけの人間性はあった。

 

 そして、彼女がピクリとわずかに動いたのを見て安堵する。

 

 生きてさえいれば、大きなケガでも生命ポーションで全快する。そのことを彼はギルドの登録時に聞いていた。

 

 瓶を取り出して飲ませる。

 

「大丈夫か?!ポチ!生きろ!ポチ!」


「は・・はい・・ご主人様・・ポチは・・大丈夫です・・」


 獣人は元々再生力もある。加えて生命ポーションも効き目は本物。

 

 自身がつけた傷が見る見るうちに治っていく。

 

 それを見て安心し、抱き着いた。 


「ああ!よかった!ポチが生き返った!!」


「は、はい・・ありがとうございます・・」


 そんないびつな絆を深めて、彼の精神はひとまず落ち着く。

 

 そして一方的に欲望を満たしながら、彼は少し考えて、これからの行動方針を決める。

 

(とりあえず・・あの筋肉だるまをぶっ殺せるくらい強くなる・・!)

 

 そう、ここまでは普通の新米冒険者の思考と変わらない。

 

 普通の冒険者は、地道にモンスターを狩ってステータスを上げていくことをするだろう。

 

 しかし彼は、手っ取り早く強くなる方法を選んだのである。

 

 そしてその方法とは、奪うこと。


(そうだ・・金属生成メタルクリエイターなんてゴミみたいなスキルなんていらねぇ・・

 俺はもっと強いスキルで成り上がるんだ・・!!)

 

 ギルド長との敗北の一番の理由は、スキルが弱いと決めつけ、新しいスキルを手に入れることを決意した。


 そう、技能奪取スキルスティールは、とても強いスキルであるということは言うまでもない。

 

 しかし、そのユニークスキルには二つの制限があった。

 

 一つは、直接『触れた』相手のスキルしか奪えない点。

 

 そしてもう一つは、『一日に一回』、『一種類』のスキルしか奪えないという点である。

 

 これを欠点と呼ぶには小さすぎるかもしれないが、しかし時によってこの制約が致命傷になることもある。

 

 まず。この世界の冒険者はほぼ全員鎧を着用している。

 

 ゆえに露出している部分が顔しかなく。そこに触れるとなると不自然極まりない。

 

 ときによっては敵対や侮蔑行動とみなされかねないのだ。

 

 そして、一度に一種類のスキルしか奪えないとなると、その相手を完全に無力化できないかもしれないのだ。

 

 仲間や、別の強力なスキルで攻撃されるかもしれないのである。

 

 しかし、この小さいようで大きな欠点を、彼はほとんど無視できるものとした。

 

(不審に思われたとしても、奪ったそのスキルで反撃すればいい!)

 

 スキルの獲得は、いうなれば手足や臓器が一つ増えるようなものである。獲得した瞬間100%使いこなせるものではない。

  

 だが、慢心により、自分ならできると彼は思いこむ。

 

 その行為が危険だと知らずに、彼は計画を実行に移すことを決意した。

  

 ギルド長に負けてからわずか翌日、

 

 彼はスキルを品定めしながらテーブルの間を渡り歩く。

 

「(跳躍力、ジャンプがしやすくなる?

 落下耐性、落下によるダメージを軽減?

 毒耐性、鋭い聴覚、発光・・

 ・・ふん、クズスキルが。いらんわそんなもん)」

 

 一日一回しか奪えないという制約ゆえ、その厳選には悩むものがあった。

 

「(パワーボム。一定時間後に爆発する魔力の球を生み出す・・まあまあ使えそうだが、地味すぎる。

 恐竜化、MPを消費して恐竜になる・・うーん)」

 

 そして、ようやく良さそうなスキルを見つける。

 

「(おっ!これはなかなか・・)」


 彼が目を付けたのは、剣を背中に携えた好青年のスキルである。

 

 ーー


 ユニークスキル

 

 ステータスグロウLv5(マナを消費している間、すべてのステータスが数倍になる。

 

 ーー

 

(ステータス強化のスキル・・!

 これなら、あのギルド長に勝てるかもしれねぇ・・!!)

 

 好青年は、じっと見られているにも関わらず、そのことに気づかない。仲間内で楽しそうにこれからの予定を話している。

 

(くくく・・何も知らずに楽しそうにしゃべってやがる・・よし、今のうちにいただこう)


 だが、実際彼はそのスキルを使いこなすことはできないだろう。そのスキルは燃費が悪く、長くても一秒程度しか使えない。

 

 使いこなすには、熟練のタイミングや技術が必要なのだ。

 

 だが、全てがうまくいくと確信している彼は、その行動に迷いがなかった。

 

 そして、すぐそばまで着た瞬間、さっと手を伸ばして能力を発動させようとする

 

技能スキル・・・』

 

 と、その時だ。

 

 

 彼の手をつかむものがいた。

 

「それはいけませんねぇ」



「・・!!」

 

 

 その手の主は、細身の男だった。体にドクロの意匠があり、口元をスカーフで隠している。

 

「あっ、あんだ?て、てめぇ・・!」


 内心心臓をバクバクさせ、冷や汗をかきながらも、彼は凄んで見せた。

 

 そして同時にシーフ男に鑑定を発動させる。

 

ーー


 名前 ログオ=ラフランス


 生命力 1000


 最大マナ 1500



 力 100


 持久力 1500


 魔法操作 400


 敏捷 2500


 幸運 300


(10が平均的な成人の値)


スキル


 鍵開けLv9

 忍び足Lv9

 気配感知Lv9

 潜伏Lv9

 ダンジョン歩きLv5(ダンジョンを移動する技術)

 記憶力Lv4

 毒生成Lv3

 苦痛耐性Lv5

 全異常状態耐性Lv9

 闇魔法Lv5

 光魔法Lv2

 残像Lv9

 分身LvMAX


ユニークスキル


 隠密と殺害ハイドアンドキリングLv5(気配を極限まで薄め姿を消し、相手が即死する部位への攻撃を与える)


ーー

 

 その、すさまじいユニークスキルに友人は驚いた。

 

 それ以外のスキルも物凄いが、この隠密と殺害ハイドアンドキリングというスキルは、姿を消すことができるだけでなく、即死攻撃を放つことができるというのだ。

 

「・・!!」


「ん?なんですかぁ?」


 そして自分が今幸運の星のもとに生まれてきたことを確信する。

 

 今の状況。

 

 そう、その男は自分の手を掴んでいる。

 

 技能奪取スキルスティールで、懸念だった第一の条件をクリアしていた。

 

「(バカめ・・!!そのスキルはいただく・・!!)」


 勝ちを確信して友人はそのまま技能奪取スキルスティールを発動。

 

 体の中のエネルギーのような感覚が消費されるのを認識する。

 

「(これでこのスキルは俺のもの・・!ステータス)」


 そして同時に今奪ったスキルを確認する。

 

 だが・・

 

ーー


 スキル

 

 鑑定LvMAX

 

 言語LvMAX


 ユニークスキル

 

 技能奪取スキルスティールLvMAX

 

    金属生成メタルクリエイターLvMAX


ーー


「あ・・れ・・?」


 スキルが増えていない?技能奪取スキルスティールは確実に発動したはずなのに・・!!

 

「・・・ふっ、ふふ」


 その絶望顔を見て、男が我慢できないという風に口の端をゆがめる。そして

 

「はっはっはっはっは!!あーっはっはっは!!」


 と、腹を抱えて笑い転げた。

 

 呆然とする彼に男はわざわざ説明する。


「種明かしするとね・・!!

 僕らローグ職は呪いアイテムや罠を安全に鑑定するために、スキルを遮断する薄い手袋をつけているんだ・・!!

 つまり君の技能奪取スキルスティールも無効化されるってわけ!!」


「・・!」


 よく見れば、男の手には半透明の手袋が着用されていた。

 

 技能奪取スキルスティールは肌に触れる必要のあるスキル。発動しなくて当然だったのだ。

 

 そのミスに追い打ちをかけるように男はバカにする。


「それなのに、スキル取ったって思い込んで希望を浮かべた顔が次の瞬間絶望に替わるのが面白くて・・・!!ふっふっふ!!」

 

「っ!!」


 見え見えのあおりに怒りがふつふつとこみあげてきた。

 

 そして男を殺すことを決意して金属生成メタルクリエイターを使用としたのだが、

 

「おい、ログオ。そこまでにしとけ」


「あ、皆」


「!」


 いつの間にか、冒険者に囲まれたことを認識する。

 

 再び怒りから困惑へと感情を変化させた。

 

「いつのまに・・?!いったいいつから・・!!」


「最初からさ」


「最初から・・?」


 リーダー格のマッチョが、彼にとって驚くことを言った。


「お前がギルドで大喧嘩した時から、俺たちはお前の動向に目をつけていたのさ」


「何?!」


 そう、数日前、斎藤優斗と彼が対決した時、むろん観客は彼らの話を聞いていた。


 そして、一人として、その事情に介入しようとするものはいない。

  

 なぜならこの程度のもめごとは、すでに何百回も繰り返されてきたことなのである。こんないざこざに手を貸していたらいくら手があっても足りない。

 

 しかし、ある一つのギルドチームは、彼らの話を聞いてこういう方針を打ち出した。

 

 技能奪取スキルスティールの能力は、治安を揺るがしかねない明らかに危険な能力。

 

 ゆえに、彼がもし善良な誰かに使用した場合、チームが全力でもってして対処するというものだ。

 

 そう、あの日から彼はずっと監視されていたのである。

 

 そしてついに、たった今、

 

「とうとう現場を押さえたぜ」

 

「くそ・・っ!でも、別にお前らには関係ないころだろ!!」


「いやあるね。今ログオのスキルを奪おうとしたな?」


「それは・・!」


 その言い訳さえ計算済みだった。


「お前が同じことをされたらどう思う?

 そう、転移者は優遇されているとはいえ、人の者を奪うのは犯罪だ。

 というわけでこれから俺たちは、お前を牢屋にブチこむ」


「っ・・!!」


 そのチームは平均ランクAの実力者。信頼のおけるチーム。

 

 それゆえ、すんなりと衛兵に引き渡されることになったのである。

 

 数時間後、


「ほら、入れ」


「触るなっ!俺を誰だと・・!」

 

 牢屋に彼は連行されていた。

 

 手にはスキル封じの腕輪がつけられている。

 

 これはポチにつけられているのと同じ。

 

 劣等感を刺激され、彼はみじめに叫ぶ。

 

「くそ・・っ!なんでこんな・・!

 俺はただ、強くなろうとしただけなのに・・!!」

 

 屈辱で顔が真っ赤になり、深夜まで鉄格子を叩き、暴れた。

 

 だが、翌朝衛兵かやってきて、思いもよらぬことをしたのである。

 

 ガチャリ

 

「!!」

 

 牢屋のカギを開けたのだ。

 

「ほら出ろ」


「ど、どういうことだ?!」


 一生このままなのかと絶望に身を落としかけた彼にとって、それは信じられないことだった。


「運がよかったな。特例だ。

 自分が転移者であることに感謝するんだな」

 

 そう転移者。

 

 転生者や転生者のがらみのいざこざは、過去にこの世界にとってあらゆる災害、あるいは莫大な利益を生み出してきたのだ。

 

 自分たちは敵対してはいけないと、政治中枢部は判断し、特例が出されたのである。

 

 ただし、それは味方するという意味ではない。

 

「ただし、牢屋からだけじゃなく、この国からも出れるぞ。

 つまり、国外追放だ」


 上層部はやっかいものを、禍根を残さず追い出すことに決めたのだ。

 

 すぐに城壁の外へと連行され、

 

 丁寧に彼の奴隷であるポチも追い出される。


 前方には草原、後方にはもはや入ることのかなわない城壁。

 

「あの・・ご主人様・・?

 これからどうすれば・・」


 彼女は指示を仰いだが、しばらく呆然とした後、怒りがふつふつとこみあげてきた。

 

「くそが・・っ!!俺が出入り禁止だと・・?!二度と来るかこんな国!!」


 しかし、怒ったところで、別の国に行くには馬車が必要だ。

 

 彼らは仕方なく、城壁の周囲を歩いて街道を探す。

 

「あれか」


 彼は行き来する馬車の一つの前に立つ。当然その御者は何事かと停止した。

 

「なんだお前ら」


「おい、お前、俺を乗せてけ」


 横柄な態度だが、何故だかその商人は彼の言葉を聞いた。


「あん・・?目的地は?」


「こことは別の国なら何でもいい」


 少し考え、商人は腰の剣の柄を少し撫でると再度尋ねる。


「・・不遜な態度だが、まあいい。

 私にも貴様くらいの息子がいる。

 若さに免じて金を払えば考えてやらんでもない」

 

「金は今は持っていない」


「ツケということか?

 まあいい。一定期間内に払えないと奴隷落ちもありうる契約書を書かせてもらうぞ」

 

「奴隷落ち・・?!」


 彼の中で恐怖心が一瞬生まれた。

 

 だが、すぐに気を強く持つ。

 

 そう、鑑定をしたところ、この商人はそこまで強くない。

 

ーー


 名前 ネマキス=ウニンシヨ


 生命力 120


 最大マナ 80



 力 130


 持久力 200


 魔法操作 100


 敏捷 130


 幸運 10


(10が平均的な成人の値)


スキル

 剣技Lv2

 ダンジョン歩きLv1

 水魔法Lv1

 炎魔法Lv1

 鑑定Lv1

 アイテム鑑定Lv6

 計算Lv5

 乗馬Lv6

 苦痛耐性Lv3

 話術Lv8


ーーー

 

 

 あの筋肉だるまのギルド長と比べもやしもいいところだ。スキルも大したものは持っていない。

 

 いざとなれば殺せばいい。そう考えて契約書にサインして乗り込んだ。

 

 後部の馬車は、主に荷物を搭載する場所であり、あまり人の座れるところは残っていない。

 

「狭いところだな」


「おい、文句があるなら降りてもらうぞ」


「へいへい」


 そしてポチとともに、行商人の馬車の中でごとごとと揺られる。

 

 初めての馬車。とても揺れる。ゆえに彼は乗ってからわずか数十分後、気分が悪くなっていた。

 

「あの・・大丈夫ですか?ご主人様・・顔色がすぐれないようですけど・・」


「うう・・おい!目的地はまだか!」


「あと数時間はかかるぞ。若いのにこのくらいで文句を言うな」


「ぐぐ・・!」


「大丈夫ですか?ご主人様・・もふもふしますか?」


「ああ・・」


 いつものように抱き着く。


 その時、彼の目に、瓶詰のフルーツが目に映った。

 

「・・これは」

 

 それはもちろん、この商人の所有物だろう。

 

 しかし今、気分が悪くなった彼は、図々しさを隠すこともなくそれに手を付ける。

 

「おい!この食い物いただくぞ!」


「なっ・・?!お前!そんな契約はしていないぞ!」


「いいだろ?減るもんじゃないし!」


 そう言って瓶を開けて中身を食べる。柔らかい果物にシロップで甘みがつけており、気分がよくなっていく。

 

「うま!これうまいぞ!ポチ!お前も食ってみろ!」


「え?え?でもこれはあの人の・・」


「おい貴様・・!」


 背筋の凍るような怒りの口調が前方から聞こえ、馬車が街道の脇に止まった。

 

「ん?どうした?」


 何事かと思っていると、怒りの形相で商人が後部へと歩いてきて言う。

 

「うちの商品に手を出しやがったな・・?」


「・・あーん?だったらどうするよ」


 悪いのは自分なのに、わざと苛立たせるとうに挑発的に答えた。


 そう、内心彼はこの展開を歓迎していた。


 相手を暴力で支配するだけの大義名分を手に入れるためである。


「捕まえて衛兵にしょっぴいてもらう!」


 そして啖呵を切った商人を、


「へへ、雑魚が」


 ボゴォ!


「ぐはぁ!!」


 金属生成メタルクリエイターで殴り、拘束した。


 商人は自身の判断を誤ったことを嘆く。

  

「く、くそ!ステータスが低いからって油断した・・!」


「へへ、そういうことだ。俺のスキルは最強なんだ。

 あ、そうそう、この馬車いただくぜ」

 

「な、なに?!」

 

 商人は命の次に大切なものを侵害され、当然怒りに震える。


 そして自分の無力さから、大見得を切った。

 

「許さん・・許さんぞ!!この恩知らずめ・・!!

 いつか貴様を奴隷落ちさせてやるからな!覚悟しておけ!」

 

「奴隷落ち・・?」


 そう、その言葉を言わなければ、商人は命だけは助かっていただろう。

 

 奴隷、それは彼にとってコンプレックスになっていた言葉だ。

 

 つい前日など、牢屋で奴隷の腕輪をはめられて一生を過ごすのかと恐怖していたのである。

 

 この商人を生かしておけば、いずれ自身を脅かすかもしれない。

 

 そして、その恐怖を消す方法はただ一つ。

 

「やっぱり、殺すしかないか」


「何?!いや、それはやめ・・っ!ぐはっ!」


 言い終わる前に、金属生成メタルクリエイターで作った武器が商人の体を貫いた。

  

 優斗しか殺さないと決めていたわけではない。

 

 だが、思ったよりも忌避感がないことに彼は意外に思う。

 

 そして、数秒後には忘れていた。

 

 たった今手に入れた大量の商品があるのである。 さっそく彼は眼を輝かしてそれらを物色していった。

 

 だがしかしそこへ、

 

 パカラッパカラッ

 

 ここは街道ゆえ、定期的に馬車が行きかっている。

 

「ご主人様っ!別の馬車が・・!!」


「チッ、めんどくせーな」


 口に美味しいものを詰め込んでいた彼は、めんどくさそうに言う。

 

 外で死んでいる商人は目立つだろう。おそらく気づかれる。

 

「しょうがない。

 めぼしいものだけ盗んでとんずらするか・・いや、」

 

 その時、ふと、気づく。

  

(そうだ、あいつらのものも奪えばいいんじゃね?)


 そう、これは初めて彼が一般人を襲い始め、悪名を広めた最初の出来事だった。

 

 

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