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熱鉄球と、『ステータス操作』スキル


 翌朝、朝8時くらいだろうか。そろそろと思い、マージョリーさんの小屋をノックする。


 コンコンコン


「マージョリーさん?」


「ふぁーい」


 何やら中からガタンガタンと物音がしてガチャリと目をこすりながら出てきたパジャマ姿の彼女。


 というか、何やら胸のあたりが際どい。何やら二つの膨らみが見え隠れする。

 

 だが、それを指摘するのは野暮というものだろうか?


 迷っていると、彼女は胸を弄り、


「ああ、はいはい、今日の獲物ね」


 そう言ってメモを渡してきた。


「それじゃよろしく」


 それだけ言ってガチャリと戻っていく。

 

「・・まったく、だらしない師匠だなぁ」


 朝から毒気を抜かれたが、気を取り直し早速出発した。



 

 

 

 昨日と同じく、スキルのレベル上げをしつつ、目的地に到着。

 

 とはいっても今日の目的地は普通の開けた森林地帯と変わらない。


 だが、その中心にはぎょっとするようなものがあった。

 

 それは花である。とてつもなく巨大だ。

 

 高さは僕の身長ほどもあるだろうか。地面から直接生えるようにしているその真っ赤な花は、周囲に草一つない土が広がっている。

 

 その土は見ただけでわかるが、とても柔らかそうだ。まるで誰かが毎日丹念に耕しているかのごとくである。

 

 試しにその土に石を投げてみる。

 

 すると・・にゅるにゅる。

 

 何やらその土から蔓が飛び出てきて、その石を領域の外へと投げ飛ばした。

 

「・・実際見てみると奇妙な花だな」


 そして今度は慎重に恐る恐る、足を入れてみると・・

 

 シュバッ!!

 

「おっと」


 素早く蔓が地中から飛び出して、足にムチのような攻撃を仕掛けてきた。当然警戒していたので避けることができたが、もし何も知らずに中に入ってしまっていたら、大変なことになっていた打あろう。

 

 そう、この植物型モンスターの名前は、ドンヨクバナという。

 

 神眼による鑑定はこんな感じだ。

 

ーーー


 名前 名もなきドンヨクバナ


 生命力 1000


 最大マナ 3000


 力 200


 持久力 3000


 魔法操作 50


 敏捷 200


 幸運 6



(10が平均的な成人の値)


 スキル

 器用Lv4(指先を精密に使えるようになる。

 胃丈夫Lv8(あらゆるものを消化できるようになる)

 熱感知Lv8(熱を感知できる。)

 並列作業Lv7(同時に考え作業できる)

 炎耐性Lv5(炎でダメージを受けにくくなる)

 衝撃耐性Lv5(衝撃でダメージを受けにくくなる)

ーーー


 この花は、地中に根を張り巡らせ、圧力を頼りに周囲の異物をどかし、熱を感知して生物を攻撃して捕らえ、栄養にするのだ。食虫植物に似たような生物である。

 

 そして、昨日のモンスターと同じく、こいつの攻略法もすでに分かっている。僕は炎魔法の杖を取り出して唱えた。

 

「『ファイア』!」


 そう、簡単なことだ。熱感知で生物かどうかを察知しているのならば、わざと熱を出すものをとばして混乱させればいい。

 

 昨日のレベル上げでLv2に成っている。その大きさはバスケットボール大程度には成っており、着弾した後もしばらく残り続ける。


 だが、先ほどと同じようにそれぞれ触手が飛び出て鞭のようにしなり炎に対して攻撃を加えた。

 

 その攻撃は強力で、何回かすると風圧で簡単に炎は掻き消える。

 

 だが僕は間髪入れずに再び炎魔法を出す。

 

 そう、このドンヨクバナというモンスターは、一度に動かせる触手の数が決まっているらしく、処理できないくらいの数の炎魔法を飛ばしていくことから攻略が始まる。

 

 そしてその処理能力が上回るほどの炎魔法を出し、それに構っている間に、直接自身が出向いて中央の花を毟ればいいのだ。

 

 ちなみに中央の花に直接投擲武器を投げても、相当強い力でないと破壊することができない。炎魔法も同様。

 

 ただ引っ張る力には弱いから、倒すには直接近づくしかないらしい。

 

 ともかく、続けて炎攻撃を行う。

 

「『ファイア』!『ファイア』!『ファイア』!・・」

 

 だが・・

 

 シュパシュパシュパシュパシュパ!!!

 

「全部処理されているな・・」


 そう、炎攻撃をいくつも飛ばしても、それぞれ同時に蔓の攻撃を加えられ消化される。

 

 全然慌てている用には見えない。平然と処理された。


「するとなると・・外れか」


 僕はアイテム袋のマージョリーさんのメモを取り出した。

 

 チェックポイントとして吹き出しに

 

「全部処理されたら長く生きた強い個体なので、あなたには無理だから諦めなさい」とある。

 

 だが・・本当にそうだろうか。

 

 そう僕は金属生成メタルクリエイターを使うことにした。

 

 今のレベルは3。使い方も慣れてきている。液体金属を遠距離に飛ばして、花を毟れば・・

 

 しかし、まだ手足のようには行かない。かつ金属特有のツルツルした質感で掴むのが難しかった。そうしているうちに圧力を感知したのか蔓を使って液体金属を弾き飛ばす。

 

 シュンッ!

 

 カキンッ!

 

 力200とあってその攻撃で重たい金属塊が、領域の外まで飛ばされる。失敗か・・。

 

 まあいい。そこまで頑張る理由はない。一旦マージョリーさんのところに戻って指示を仰ぐか。

 

 しかし、昨日は早く目的をクリアしたのに、今日は失敗とは。

 

 仕方がないとはいえ、落ち着かないものがある。


 昨日は雷魔法と金属生成メタルクリエイターを組み合わせた裏技まで編み出したのに・・。

 

 ん?魔法と金属・・?

 

「・・・そうか」

 

 その瞬間、僕にある一つのアイディアがひらめいた。

 

 さっそく実行に移す。

 

 まず、金属生成メタルクリエイターで、鉄球を数十個作り出す。できるだけ重さを意識して作り出した。

 

 そしてその一つ一つに

 

「『ファイア』」


 炎魔法で赤くなるまで熱を与える。

 

「『ファイア』『ファイア』『ファイア』」


 十分に熱を与えた鉄球から順に、液体金属で領域の中に飛ばしていった。当然熱を感知したドンヨクバナは蔓で攻撃を試みる。

 

 シュンッ! パチンッ!

 

 だが・・当然鉄球は消えない。

 

 炎魔法の場合、簡単に蔓の攻撃で消化された。

 

 だがこれは熱された重たい鉄球。ちょっとやそっとの攻撃じゃ取り除くことはできない。。

 

 ゆえに次々と鉄球を追加していけば、数十個とは言わず、同時に数百個、数千個の鉄球を送り込むことができる。

 

 そして、領域に大量に鉄球を送り込んでしばらくした。

 

 シュンシュンシュン! パチンパチンパチンっ!

 

 蔓で鉄球を叩いたり運んだりしているが、その中で対応できていない鉄球が散見するのを確認する。


 そして僕はそっと領域の中に足を踏み入れた。

 

「よし」


 足に蔓の攻撃は来ない。


 やはり、こいつは今熱された鉄球に夢中になっているのだろう。僕の存在に気が付くことはないようだ。

 

 依然存在がばれないように、ゆっくりと忍び寄る。

 

 こいつは今まで熱源を攻撃したり、異物を取り除くことしかしてこなかったのだろう。

 

 その繰り返しは、スキルやステータスの上昇には役立ったが、今のように不測の事態には対応しずらくなったのかもしれない。

 

 だからか、僕は簡単に中央の花へと到達することができた。そして手早く一気に花びらを毟っていく。


 ビリッ!ビリビリビリッ!!

 

 そして、内部の構造が露出すると、さっきまで大量に活動をしていた大量の蔓は、ぴくぴくと苦し気に痙攣したのち、だらんと土に崩れ落ちた。

 

 僕は少し様子を見て死亡を確認する。

 

 そして本体を土から引っこ抜いた。土が柔らかくなっているからか思ったよりも簡単に抜ける。

 

 アイテムボックスに入れて討伐が完了した。

 

 そのまま帰ろうとしたが、

 

「あ、そうか。鉄球回収しないと」

 

 少し面倒だが全て分解して回収しておく。

 

 そして、来た時と同じようにスキルの訓練をしつつ帰還した。

 

 




「マージョリーさん。討伐完了しました」


 昨日と同じようにモンスターの死体を引き渡す。今の彼女は流石にもう彼女はパジャマ姿ではない。

 

 今日の仕事の完了を確認すると、彼女が唐突に言った。

 

「そういえばあんた今各種魔法のレベルいくつ?」

 

「えっと、スターテス」


 僕はそれを読み上げる。


ーー



炎魔法Lv2


水魔法Lv3


雷魔法Lv3


土魔法Lv2


風魔法Lv2




ユニークスキル


金属生成メタルクリエイターLv3


ーー 


「ふーん、各レベル2以上は行ってて、中にはレベル3まであるのね。

 なるほどー」


 昨日の夕方は、金属製製がレベル3になったので、釣り合いをとるために魔法を重点的に鍛えていたのだ。

 それと今日の行きかえりの反復練習で今のレベルになったのだろう。


「ふーんそうなんだー、、って」


 彼女はぱっちりと目を開けて突然、


「えええええええええ!?」


 と叫んだ。

 

 どうしたのだろうか?僕が不思議がっていると、


「本当に昨日初めてやって一日でレベル3!?ちょっとやってみて!?」


「え?・・はい」


 というわけて見せてみる。


「『ファイア』!」


 昨日ゴルフボール大程度にしかなかったのが、バスケットボールくらい炎にはなっている。


 他の属性も同様、強化が目に見えて見えるようになった。

 

 別に全然すごいこととは思えないが、マージョリーさんは驚いているようだ。


「本当に魔法を使いこなしているようね・・早い子でも一か月はかかるのに・・

 でも、それなら、今あのことを教えてもいいかもしれないわね」

 

 彼女は何か気になることを口にした。


「どういうことですか?」


「あなたの友人の対抗方法についてよ」


 続いて彼女は説明した。


「あなたに魔法を教えたのは、君には純粋な遠距離攻撃がないということが一番の理由よ。

 そしてあなたはそれをある程度マスターした。

 この威力ならば遠距離の敵ひとり戦闘不能に陥らせるくらいのことはできるでしょう」

 

 確かに。申し分ない威力だ。モンスター相手ならともかく、友人ならばスキルで防がれるかもしれないとはいえ、高い火力の牽制くらいにはなるだろう。


「そう、あなたの戦闘センスも申し分ないから、今彼と出会ったとしたら、最低でも逃げることくらいはできるでしょう。

 だから今度は、もし接近されてスキルを盗まれそうになった時の対処法を教えてあげようと思うの」


「そんな方法があるんですか?」


 そう、僕は既に二回も友人にスキルを取られているのだ。三度目があるかどうかわからないが、石橋は叩いて渡れともいう。そんな方法があるなら知りたいものだ。


「ええ。あるわ。

 と言っても、この訓練の難易度は初級魔法の比ではない。

 でもあなたなら早くマスターできるかも知らないわね」


「だったら、ぜひお願いします」


「ふふふ、いいでしょう。始めるわよ」


 といわけで、早速レクチャーしてもらうことになった。


「ところで、あなたたち転移者や転生者は、鑑定にあたるスキルを持っているらしいわね」


「はい」


 神眼のことたろう。このスキルには何回もお世話になった。


「そのスキルを私に使ってみなさい」


「わかりました」


 言われたとおりにする。



ーー


 名前 マージョリー=フォーレン


 生命力 300


 最大マナ 5000


 力 100


 持久力 150


 魔法操作 100000


 敏捷 200


 幸運 1000


(10が平均的な成人の値)



スキル


属性魔法LvMAX(全ての属性魔法を使える)


調合LvMAX(薬を調合する)


調教Lv3(モンスターを使役できる)


毒耐性Lv7(毒が効きにくくなる)


マナの恵みLvMAX(空気中のマナを効率よく吸収できる)


トランスLv5(自発的に恍惚状態になることができる)


ステータス操作Lv3(意識してステータスを変化させることができる)


森歩きLv6(森の中を効率よく移動できる)


真偽眼Lv1(他者の言動が嘘か本当か判定する)




ユニークスキル


魔法の神髄(スキルシステム『魔法』を理解する)



ーー


「これが私の本来のスターテス。どう?すごいでしょ?

 本当は他人に気軽に見せたり見てはいけないものだけど、あなたは特別よ。

 さて、この数値やスキルを覚えたかしら」


「?はい。」


 なぜ覚える必要があるのだろう。しかし僕は言われたとおりにそれを覚える。


「さて、もう一度鑑定を使ってみて」


「わかりました」


ーー


 名前 マージョリー=フォーレン


 生命力 30


 最大マナ 100


 力 10


 持久力 15


 魔法操作 100


 敏捷 20


 幸運 1000


(10が平均的な成人の値)



スキル


属性魔法Lv1(全ての属性魔法を使える)


調合Lv1(薬を調合する)


マナの恵みLv1(空気中のマナを効率よく吸収できる)


ユニークスキル

無し


ーー


「え!?これって、、」


 僕は驚いた。先ほどと全く違うではないか。


「そう、違うでしょ?

 これが『ステータス操作』のスキルよ

 鑑定で見せるスターテスを通常とは別のものにする。

 ユニークスキルでさえ相手に隠し通してしまう便利なスキルよ」


「なるほど、今の実力を隠ぺいときに使うスキルですか、、」


 僕がそういうと、意外に彼女は指を振って言う。


「そうだけど、間違いよ」


「間違い?どういうことですか?」


「まず結論から言うと、あなたが最初見たステータスと、今見たステータス、どちらも本物なの」


「どちらも本物、、?」


 言うまでもなく、前者のスキルと比べ、後者は十倍近くも弱くなっている。

 

 後者も本物、ならば


「ということは、今のあなたの実力は、、」


「そう、スキルは何も使えないし、力も弱いわ」


 そう言って、近くのテーブルを持ち上げようとするが、プルプル震えているのみであった。普段なら持ち上げられるということなのだろう。


 つまり・・

 

「これは、実力を一瞬で変動させる技術なのですか?」


「その通り」


 そう言って、今度はらくらくテーブルを持ち上げた。それを見て、僕は相槌を打つ。


「そんなことができるのですね、、」


「でも、おそらく誰もがしていることよ。

 ステータスは、自分が今使える実力をシステムが読み取っているに過ぎないの。

 例えば風邪を引いて、スキルのレベルが一時的に低くなったり、あるいは逆に調子の良いときはステータスが上がるとかそういうもの。狙って使うのが難しいだけでね。

 つまりそういうことを人為的に行っているのが、この『ステータス操作』のスキルよ」 

 

 僕は感心した。こんなことが実際にできれば・・。


「そうか、相手を油断させるなどといった、戦闘において効果的な使い方ができますね」


「え?、ええ、そうね。

 そう、戦闘で有利を取れるスキルよ

 別にコミュニケーション手段とかじゃなくてね」


「なるほど」


 しかし僕は疑問に思う。

 

 何故このスキルが友人に対して有効なのか。


「いや待てよ、、」


 友人の技能奪取スキルスティールは、システム上、つまりステータス上のスキルを奪うスキル。ならば・・


「『ステータス操作』で奪われたくないスキルを消せば、そのスキルを、技能奪取スキルスティールで奪うことはできない、、?」


「その通り。

 友人との戦闘においていざというときに役立つと思うわ」

 

「確かにそうですね。

 師匠。こんな便利なスキルを見つけてくれて、ありがとうございます」


「どういたしまして」


 だが、同時にこうも考えていた。その戦法には多少のリスクがつくことを。


「でも師匠。

 それは、見た目の強さを変えるわけではなく、実際の強さを変化させるスキル。

 一時的にせよ自身が弱くなってしまうというデメリットがあります」


「そうね。だからこれは最後の手段として考える必要があるわ。そして使う場合は、あまり隙を見せないよう、ステータス変動をスムーズに行いなさい」


「はい」


 完全とは言えないが、訓練によって隙を少なくすることができるだろう。

 

 というわけで、今度は実際に訓練方法について教わる。

 

 僕らは場所を移す。小屋から出て森の中で稽古が再開した。


「じゃあ、訓練方法を教えるわね。

 最初の段階においてやることは簡単よ。

 『何もしない』こと」

 

「何もしない・・・?」


 僕が少し意外に思うと、マージョリーさんは手をぱんぱんと叩いて叫んだ。


「おいで!リコリス!」

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