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鎧の悪魔の終わりと、新しい時代の始まり




 一声聞けばその声のおぞましさに寒気が入るだろう。



「肉・・・人肉さえむさぼれれば、魔力が回復するというのにッッ!!」



 彼は、攻撃の衝撃で城から遠いスラム街に這いずっている。



 もしここに人間がいれば、捕食できたかもしれない。


 だが、ちょうど幸運にもこの国では『有志の旅人』によって『革命』が起きていた。



 そしてスラム街の住人たちは戦いの見物、および協力のために、城の場所に集まっている。



 必然的、この地区には現在人気がない



「肉・・・にく、にくぅ・・・・!!」



 だからこその、被害ゼロ。


 普段ならば、少なくともこの時点で数十人は犠牲になっていただろう。









 だが、その怨念。


 そして、そのおぞましい執念が幸運を引き寄せたのか・・


「んなっ!!??」



 一人のみすぼらしい子供が路地裏へ姿を現す。



「な、なにこれ・・?」




 そう、彼は、こんな状況でも、いつも通りすごしている、数少ない人間。




 そして、、何か物音がして、見に行った時、悪魔と遭遇した。



「肉!!」


 

 当然、鎧の悪魔は、食らいつくように飛び上がる。


 そして、、その肉を食らう。


 硬くて・・つめたい、焦げた・・・



「!?



 『自分自身』の肉を。



「なんだ・・・?これは・・・?」


 悪魔は、困惑する。


 先ほど、すぐさっきまで、悪魔が食らいついたのは、子供の柔らかそうな肉だった。


 すり替える余地などないほどの数舜先。



 なのに・・今自分が食らおうとしたのは・・・



 目の前には、自分自身がいた。


「肉・・・!!!」



 そう言って、その『自分』も、自分に向かって食らいつこうとする。


「やめっ・・!!!」



 そう言って飛びのくが・・



 その背後にも何やら冷たい感触。



 恐る恐る振り向いて、


 そして・・すぐに気が付く。



「肉・・ニク・・」


「肉。肉、肉・・!!!」


 周囲を見渡すと、いつのまにか、路地裏の隙間という隙間に、


「肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉」




 『自分自身』の姿が。




「なんだこれはああああああああああああああああああああああああああああ!!!!


 そして、襲い掛かってくる。


 ガチガチガチガチガチガチ


 正確には、共食いを始める。



「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ



 この瞬間、『本体』こそ、死亡した・・が、


 その意識はこの『空間』に充満して、封じられている。


 あとは・・『彼ら』の『精神が死ぬ』まで、この不毛な戦いが続くだけだった。


 精神死ぬ・・つまり、安全で純粋な、魔力エネルギーとして『加工』されるまで

 










ーーーー






「ふう、大丈夫だったか?」


「え?ああ、、うん・・・?」


 子供は茫然としていた。



 今、。さっきまでこちらにとびかかってきた化け物が。



 いきなり球体状に丸まったのだ。


 ぽよんぽよんと、緊張感無く跳ねている。




 その内部では、なにやら多くの『粉』が、はじけているだけなのだが・・。



 かと思えば、背後から黒づくめの男が現れたのだ。


 そして、その球体を、手から出した銀色の触手で引き寄せ、回収する。



「やれやれ、悪い予感がしたと思ったら、間一髪だったな。

 すぐに駆け付けたのが良かった」



「あ、あの・・・あなたは・・!!」


「ん?俺か?俺は斎藤優斗。

 それよりもけがはないか?」


 そう言って、彼はこちらをじっと見る。鑑定で万全を確認した彼は。ほっとしたようにこの場から立ち去ろうとするが・・


「ちょ、ちょっと待ってください!!」


「ん?どうした?サインがほしいのか?」



「い、いや・・そうじゃなくて・・、ちゃんとお礼を・・ってサイン?

 もしかしてお兄さん、ナルシ・・いやなんでも」


 そう子供が口にを手に当てる。



 それに対して彼は首を傾げた。


「ん?何か心外なことを言ってるが・・知らないのか?

 数年前から急激に名を挙げて有名になったからだぞ?っていうか俺のことお前も知っているだろ?」


「いや全然」


「ふっ、そうか」


 実際、この国で話題の中心にいただけでなく、世界的に彼の存在は都市伝説的なカルト性をもってして広まっていた。



 だが、目の前の子供はそれを知らない。


 おそらく、そういう噂よりも大事と呼べるものがあるのだろうが・・。


 ならばとばかりにかれは振り向いて親指を自身に向ける。



「・・なら教えてやるよ」


「っ・・!!」



 その瞳の輝き。


 それは、この異世界に来るまでの、何かが欠損した感情では到底できなかったこと。


 トラウマを抱え機械的に生きていたものには到底無理な輝きだった。



「俺が、、俺の友があの『月』を作ったんだってな」


 そうして天を指さす。


 そこには


「え・・・?あれって、数年前に突然できたっていう新しい衛星・・・」


「そうだ」



 そしてl、彼は語る。


 彼が異世界に来てから、そして現在に至るまでに来歴を。



 友人だと思っていた相手に殺されたこと。


 恩師と呼べる人に出会ったこと。


 友人を殺したこと。


 魔王を倒したこと・


 そしてそれから、『善』と思うものを成してきたこと。



 子供はその痛快な、まるで物語のような語りに夢中になる。


 色々と質問し、優斗はそれに楽しそうに答えていった。



 二人とも、まるで夢見るもののように輝かせながら。



 次第に日は暮れていき、明日への希望を胸に、スラム街に人が戻ってきた。


 その喧騒は、以前のような負のオーラにまみれたものではない。これからどうするか夢を話し合うもの、あるいはただたんに騒ぎたいだけのもの。


 悲しんでいる、本気で怒っているものなど誰一人いなかった。


 そうそれはこのダークヘイブン全ての街に置いて言えることである。



 だが、そろそろ帰らなければならない。そう子供が本能的に察したとき、彼は最後の質問が口を出た。



「あの新しい衛星の名前・・あれってまさか、」


「ああ、あの名前は、俺がつけたんだ。


 俺の友人・・だったものの名前・・せめて良いものとして語り継がれるようにな・・


 その名前は・・」






というわけで最終回です!!


ご愛読ありがとうございました!!


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― 新着の感想 ―
[一言] クソみたいな友人が 神格化されてて笑った
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