表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/108

人を食らう鎧の悪魔




『その通りだ』



 それに続いたのは、その『本人』からだった。


 彼は3mのあるかという身長に鎧をつけている。



 だというのにその動きはまるで皮装備のように身軽。手にした槍は大人数名が持ち上げられるかどうかという重厚感。



 そして何よりそのオーラは、明らかに人間のものではなかった。



「貴様は、ダークヘイブンに使える使い魔か」



 優斗が冷静に言うと、



『…はんっ』



 内部にこもった声で奴は言う。



『使い魔などという下賤な輩としてみるではない。

 むしろ、われのほうが貴様らよりも上位の存在なのだから。

 我は古来より古の魔法使いと契約をしているだけだ』



 そう言って、空間を切り裂き、この世界でない異世界の情景を見せる。



 そこに映っていたのは・・


「!?」


 骨。数々の・・・人と思しきそれが山のように積み重なっている。


「それは・・!!!」


『吾輩への貢ぎ物だ。この国を脅かす存在と戦うことを条件に、莫大な『マナ袋』をもらい受けることを約束していたのだ』



「っ・・!!マナ袋・・貴様・・!!」


 そう、生け贄。


 二人とも気が付いていた。この存在は人ではなく、神と同質の存在なのだろうということを。


 そして、そういった存在は、人の肉をエネルギーにしているものもいるという。



 そう、それは主に・・悪魔。


 魔王ほど危険な存在ではないが・・それでも、ものによってはこれだけの多大な犠牲が出る。



「この国、きな臭いと思っていたが、、まさかこんな外道なことまで・・っっ!!!」



『ククク・・貴様らの事情など知ったことではない。契約なのでな』



 そう言って、構える。


『さあ、かかってこい』



「・・・っ!!」



 隙が無い構え。それだけで脂汗が東堂の額を流れる。



 あらゆるイレギュラーを起こす存在。


 彼らに善悪はなく、ただ暇つぶしに契約で自分にルールを貸して生きているだけなのだ。



 そんな相手に気合を高めて向かい合う東堂。



 彼に対して、頼りがいのある声が抱える。



「待て、東堂。俺に任せろ」



 優斗が後ろから出ようとする。


 だが、それを東堂は手で制す。



「いえ、優斗さん、俺に任せてください」


「ん?大丈夫なのか?あいつは今まで戦ってきた誰よりも・・」



「俺に任せてください」



 その一言に込められた気迫。


 背中からでも感じられる闘気。



 それは多くの犠牲が出たことへの怒りからくるものなのか、


 それとも強い奴と戦いたいという純粋な気持ちなのか、



 どちらにせよ、その意思を感じ取れない優斗ではなかった。



「ふむ、、そうか。じゃあ、やってみろ。

 ただし危ないと思ったら、容赦なく手は出すがな」



「・・はい!」



 そういって、彼も剣に手をかけ・・



「いざ!!」


 その言葉とともに東堂から動いた。



 あまりに鋭く強烈な一撃を、


 ガキィンッ!!



『ほう・・』



 異界の鎧は軽々と片手に持った剣で受け止める。



 それ以外は一切ぶれていない。不動の構え。



 だが、


「くくっ」



 強敵を見つけたという嬉しさから、鎧は笑みを浮かべる。



 その剣身に刃こぼれが。



『やるではないか・・技術のみで神器に傷をつけるとは・・・な

 これはおよそ100年前、ある高名な刀匠からささげられた・・世界に一つだけの神器で』


「神器、だと?」


 嬉しそうに長々と語る相手を、


「そのクソみたいな強度でか?」



 挑発。




 鎧はつばぜり合いの姿勢から



『・・ぬかせ!!』




 スピードも威力も強烈無比な蹴りを放つ。


 上体が一切ぶれず、反動もゼロ。達人であってもその不意の一撃をよけることは容易ではない。



 だが、、東堂は瞬時に身をかがめ回避。



 と同時に、回転。



その、巨大な歯車のような重量感を備えた軌跡は、



 バキッ!と。



『ぬっ?』


 完全に鎧の刀身を折った。



 そしてさらに、、二回転。


「セイっ!!!」


 下段から放たれた、無力化からの二撃目。




 そのパワー、そしてスピードも申し分ない。



 最高峰の達人と引けを取らない、、凄まじく精密で予測不可避、、かつ回避不可避の技術。


 それは目の前の悪魔にも多少なりとも通用した。



 ザンッ!と。



「くっ・・・」



 一瞬で、まるでバターのように上半身と下半身を分離される。



「やった!!」



 自分の技術が格上の相手にも通用したことに喜び、そして勝利を確信する東堂。


 だが、


「油断するな!!」



 優斗の叱責が入る。


 その言葉の通り、体を真っ二つにされたというのに、


「くくっ・・」



 笑う。



 下半身はばっと微細な粒子になって消え去り、上半身は浮遊していた。



 その次の一瞬。断面から影が盛り上がり・・・


 シュルルルルッ!!と。



「な・・に・・?」


 まるでタコのような、その黒い触手。



 やはり、、異形の存在なのだろう。


 鎧の中身は何もなく、ただ暗闇が存在するのみ。


 

 その闇があふれ出した今、東堂をとらえようと俊敏に襲い掛かる。


「っ!?」



 突然の奇襲。さらに面による攻撃。



「なめ・・るなっ!!



 それにかろうじて東堂は反射的に次々と切り落としていくものの・・



 その再生速度、そしてその量。



 肉薄していたこともあり、東堂のキャパシティーを大きく外れていた。



 触れた瞬間、邪悪な魔力を注入して死に至らしめる。


 その触手が東堂に到達しようとしたその時・・・





「セイント・バレッド」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ