異空間からの襲撃
「王様!!」
王に一人の従者が駆け寄って何事か耳打ちする。
「がはは、ん?何? 税の引き下げの嘆願だと?そんなの無視しておけ!!」
「しかし・・・」
「あーん?署名も無視できない数が集まっているだと?そうかそうか・・ならば」
そして、軽くいう、
「『全員殺せ』」
まるでその言葉の『意味』を理解していないかのように軽く言う。、
「はっ」
そう言って、従者はその言葉を伝えに部屋を出た。
そう、これは珍しいやり取りではない。
生まれてから一度も、市民たちと一切顔を知らない彼らたちは、もはやゲーム感覚で決断を下す。
そう、それは普通ならやってはいけないことだ。すぐに民衆の心が離れ、反乱がおこるだろう。
だが・・・
このような残虐なやり方でも、押し通すだけの道具が彼らにはあった。
そうそれは、過去の王たちが築いてきた豊かな財政、コネ、
そして、使い魔。法律に従い動く警察、王族の警備などの役目を担う強すぎる兵士たち。
そう、先人たちが作り出してきたその機構により、いまだ盤石なのがこの国だった。
『強すぎる力は、正義にも悪にも利用できる』
そう理解していた初代の王は、後継の教育にも力を入れたのだが・・・
いつしかその教育メソッドは厳しすぎると糾弾され、排斥され・・・
そうして残ったのが今の彼らだった。
「がはは!!ん?ここでするというのか?この雌豚が!!!」
そんな中、一つの小包が届く。
「王様、隣国のポートカバー国から、贈り物が届いています」
「む?」
それに対し、彼は目を見開いた。
そう、周囲の国はあらかた、戦争によって植民地になっている。
だが、それでも従属できない国も少なからずあった。その一つがポートカバー国。
その国は科学力が高く、数多くの忠実な精鋭たちでもかなわないほどの武力で内政を守っている。
だが、、何が原因かわからないが、あのポートカバーが我が国に贈り物があるというのだ。
内心、飛び上がるほどうれしい王は、その小包を奪うように取り、梱包を破る。
それが、危険なものだとは一ミリも考えないが、それも仕方ないだろう。
普通ここに通るものは何十ものチェックがある。
そう、普通なら。
だが・・・
ばしゅっ
「んなっっ!!!!???」
小包を開けた瞬間、閃光。
目を瞑れた貴族たち。
「くっ、くせも・・むぐ!」
そんな彼らを次々と拘束していくのは、どこからともなく伸びてきた金属でできた触手。
「「むぐっ、、むぐごっごごごご!!」」
一瞬でその場にいた全員を拘束する。
むろん、国家反逆罪。
そうなった場合、『普通』なら、警備隊が出現し、犯人を逮捕するはず
だったが・・・
その者たちが来ることはない。
何故ならばすでに『壊滅』しているからだ。
「ふう、作戦は成功したようだな」
そう言って、たった今小包を渡した従者が正体を現す。
それは東堂。
3年がたち、多少違いはあるものの、前と変わらない。
「優斗さん、やりましたね!!
やっとゴミどもを掃除できました!!
ここ数か月間の苦労が・・・」
そんな彼に対し、
「いや、待て・・!」
声に緊張感をはらんだ声。
壁の一部がバタンと倒れ、
「何かおかしいぞ・・・!!」
優斗が姿を現した。
「ん?どうしたんです?優斗さん
作戦はもう終わったはずじゃ・・」
東堂は気楽にそういうが、優斗は依然周囲を見渡している。
「気をつけろ。まだだ。まだ何かある」
「・・・・まさか」
斎藤優斗。
彼は動きやすいピッタリとした厚手のスーツにマントを付けていた。
そして、何よりその雰囲気。
以前とは違い、何か垢ぬけたような印象を受ける。
鉄のような印象を受けた以前より、より人間味があふれているといったところだが・・
今は、厳しい口調で彼は引き続き警戒を促した。
「感じられないが、第六感が言っている。
おそらくは防衛設備の一部だろう。天才が何年もかけて巧妙に隠蔽した術式だ」
「ですがね、、一応彼らの術式は予め全て解除しておきましたし、最高強度の結界も貼っています。
魔術が発動することはないと思いますが、警戒しすぎということは・・・」
「いや、、違うね。賭けてもいい。何か来るし、
何よりこの世でないような存在の視線を感じるだが・・!!」
「ですが結界には何の反応もないと・・ん?」
そこで東堂は気が付いた。
「っ!、まさか、異界の存在との契約で・・!!」
と、その時、ぐらりと空間がゆがみ、人影が現れる。
「!!」
東堂の背後。
そこは誰もいなかったはずの空間。
だが突然そこがぐにゃりとゆがみ、突然高エネルギーが発生したと同時に、
強烈で俊敏な攻撃が放たれ、東堂を両断しようとしたが・・・
ガキンッ!!
「っっっ?!!」
隠しきれないほどの邪悪なオーラ。
いくら速いとはいえ、その一撃を防げないほど彼は弱くはない。
後ろ手に剣を構え、ふいうちを防ぎながら、宙返りで距離を取る。
「なんだっ!!こいつは!!」
予備動作、オーラの揺らぎなど一切なしに、瞬間移動のように『それ』は現れた。
『くくく・・!!』
東堂は今起きた現象に不可解な点を感じ、思わず叫んだ。
「魔法による結果でぐるりと取り囲んでいるるんだろう?
瞬間移動でここに入り込めるのは不可能なはず?!」
そう、魔法による対策は万全。外部からの干渉は不可能だったが、だが今起きたのは紛れもなく魔法。
それに答えたのは優斗。
「おそらく、、異空間から現れたのだろう。
いくら外部から遮断しているとはいっても、この世界以外から入ってくるとは誰も思わなかった。
何故なら、『あそこ』に住めるのは一握りの者だけだからだ。つまり俗にいう、、」
悪魔。そう優斗が言おうとした時だった。
『その通りだ』