3年後の彼らは
そして・・3年後。
「はぁ・・・」
白い空間に、ぽつり、と。声が漏れた。
場所は、あの時と同じ、トップギアのほこら。
ただし、あの時の喧騒は見る影もない、
ちらほらと神は行きかっているものの、あたりは静まり返っている。
広々とした清浄な空間。
そんな中、一人だけぽつりぽつりとしゃべるものだから、その呟きは思ったよりも音が響いていた。
そのため息は、何かマイナスなことが起こったからではない。
むしろその逆。
「いい・・・いいよぉ・・・」
その中心、発光する白い材質でできた椅子や机に、彼女は座っていた。
「ふふふ、お兄ちゃんお兄ちゃん・・!!」
最高神百花の前にあるのは、空中に浮いた板。映像。
そのすべてには、あらゆる方向から『ある人物』を映し出しているようだった
そう、どこか暗がりで、耳に手を当てて話している人物。
『斎藤優斗』。
三年前とは服装が違うが、まさしくそれは彼の姿。
彼の映像を百花は何やらうっとりとして食い入るように見ている。
しかし、その背後に、一つの影が。
「おぬし、、さっきからそんなことをしてよいのか?」
その声に、先ほどとは真逆な不機嫌そうな声で返す。
「・・何?邪魔しないで」
そうそれは、機械仕掛けのドラゴン。
神に等しき、、いやそれ以上の力を持つ高位生命体。
それが、手元に何やら書類を持ってたしなめるように言う。
「いや、まだ重要な仕事が残っているんじゃが・・というか、それは盗撮じゃないかのう?」
そう、意外と常識人らしいことを言うが、百花は振り返らずに言う。
「何を言っているの?!これは単に人々を見守っているだけ!!それも神の役目よ!1その人がたまたま私のお兄ちゃんだったってだけのことよ!!」
「・・そ、そうか・・」
その気迫にホワイトノイズは押される。
そう、なぜ普通に彼がここにいるのか。
異次元からの訪問者である超越竜、ホワイトノイズ。
実は、最後の戦いの後、自らの失態のわびとして、しばらくここで働くことになったのである。
だが、ここで過ごしているうちに明らかになった、彼女の問題行動。
(やれやれ・・まったく一世界の管理者とあろうものが一人の肩入れするとは・・
後々、問題も起きるかもしれんが、その時はわしが取り持ってやるとするかのう
)
問題は今のところ起きていないのだ。
その醜態も、威厳のなさも、彼女の神のスキル能力の高さで補っている。
故に、ホワイトノイズは百花に一つ聞くだけにとどめる。
「百花よ。ところで一つ聞きたいのじゃが」
「何?今いいところなんだから!!」
「何故貴様はいつも以上に熱を上げているのであるか?」
そう、いつもはここまでではない。
いつも盗撮まがいのことをしている間、いつも上機嫌な彼女だが、
ここまで興奮するのは稀だ。
「ふふふ・・・」
その問いを待っていたとばかりに、彼女は手招きする。
「・・・む?」
ドラゴンの長めの首を伸ばして、よくその映像の行く末を見てみると・・
斎藤優斗視点。ーーーーーーーー
周囲の魔力の流れをうかがっていた。
そして、小声で胸元のマイクに話しかける。
「そろそろ作戦の時間だな」
それに対し、頼れる仲間たちの声が帰ってくる。
「ええ、そうね」
「準備はとっくにできておりますぞ!!」
「優斗様!!モニターにも何ら変化はありません!! 」
「・・・よし、それじゃあ、合図とともに突入するぞ」
ここは、ダークヘイブンという大国。その、王城のとある一室だ。
煌びやかな装飾、贅に贅を凝らした酒池肉林。
大量の豪華な料理に加え、数々の女たちが半裸でその席に着く参加者をもてなしていた。
「がはは!!くるしゅうない!もっとちこうよれ!!」
「もう・・大胆なんですから・・」「王様~~こっちもどうですかぁ~~」「ねえブランド物のバックがほしくて~」
ダークヘイブン、その国は世界でもトップから数えたほうが早いほどの繁栄を誇っていた。
その繁栄は、この過剰にも豪奢な彼ら王族たちの生活からも見て取れるだろう。
だが、それは『かりそめの姿』。
この国内では最近まで、伝染病、飢餓などにより、多くの貧国層が死亡していた。
それに対し、国は何ら対策をせず、それどころか年々税を上げ、自らの贅沢のために使用しているのだった。
幸運にも、最近になっていきなり現れた『旅のものたち』が、その問題の解決にあたった。
そのおかげで、目の前の問題は解決したものの・・
以前、怠慢な態度の王族たちに、多くの者たちが不満を募らせていた。
しかし・・反乱は起きることはない。
王族たちを守る『過去の遺産である兵士』が異常に強すぎるからだ。
それによって、腐敗はもう誰にも止められることはない。
それでも、大昔の初代の王は素晴らしい人物だったという。
英知、カリスマ、人格、すべてが完璧だったらしい。
その才能でもってして、貴族だけでなく市民含め、多くのものをまとめ、そして平等に幸福にしてきた。
その噂を聞きつけ配下に加わりたい国も多くいたという。
それゆえの栄華であったが、
その栄光にかまけて努力を怠った姿が
「ガハハハ!!良い良い!!黄金でも宝石でもいくらでもなんでも買ってやる!!!」
「やったー!」
今のこの腐敗した状態にあった。
・・・・が、
次の瞬間、この国の歴史によって、大きなターニングポイントが起きた。
ダークヘイブンの大多数の人にとってはいい意味で、
彼らにとっては悪い意味で。