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魔王の終焉、能力の正体


 

 魔王は、不可解な相手・・そう、『自分自身』を殺したことを確認する。


「はぁ・・はぁ・・終わった・・・か・・?」


  

 目の前の存在は、殺られてくれた。



 完全に生命活動を停止し、原子レベルまで分解。


  

 少し手間取ったとはいえ、魔王城のの質量差を生かしなんとか倒せた。



 今やここにあるのは、その肉片のみ。






(しかし・・・なんだったんだ、今のは・・)




 魔王は安堵する。


 いや、それよりも、恐ろしさのほうが勝っているだろうか。




 だが・・第六感が告げていた。



 『ここにはいないほうがいい』。



 恐ろしい存在に目をつけられてしまった。



 数秒後には再び現れるかもしれないという、ホラー映画を見たときの夜に目が覚めたかのような感情。。



 『もう何を捨ててでも迅速にこの世界から離れなければならない』




 そう、その直感は当たっていた。



 だが、もはや



「?」



 斎藤優斗の術は、既に『発動』してしまっている。



 唐突に感じる寒気。


 それは第六感による危機的状況の感覚だけではなかった。



 誰かが魔王のエネルギーを吸い取っていた。



「!!!!!!!1」



 いつの間にか置かれていた肩に置かれた手を、脊髄反射的に払いのけ、背後を振り向く。


 するとそこには・・『もう一人の魔王』。


「クックック・・・」


 いや、違う。その光景を表現するのに、それだけの言葉では足りないだろう。



 そう、『魔王』は一人だけではなかった。



「クックッククックック・・・」



 二人?いや三人?


 それとも5人?十人?




 いや違う。


 それ以上だった。



「「「「クックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックッククックックックック」」」」

 

 

「ッッッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」


 声にならない悲鳴。


 先ほど潰したはずの魔王、そう自分自身が、


 そこにはいた。数舜前までは何もなかった空間だというのに。



 密集するように、まるで空間という空間を埋めるかの如く。

 

「きさっ、まらっ!!いったいどこから・・・!!!」



 そう叫ぶ暇もないほどに、魔王『たち』は次の瞬間、


「「「「「お前のエネルギーを寄越せ!!!」」」」」


 こちらへと跳躍。



「!!!???」


 魔王は反射的に逃げた。


 魔王城に穴をあけて、そこから飛び降りる。


 だが、、降り立ったのは・・・



「ハハ、ハハハハハハ・・・」



 地面に感じる、肉の感触。



 血管が浮き出た、有機物的な外壁。



 そう、そこは魔王城の屋上だった。



 何も、地面から上空にワープしたというわけではない。


  

 そう、魔王城から飛び降りた地上。


 そうそこに『魔王城はあった』のだ。


 地面から、もう一本、魔王城がもう一つ、そびえたっていたのである。


 いや、それだけではない。


 魔王城、その醜い肉塊は、無数にあった。



 地面にひしめくほどの、地上が見えないほどの魔王城が、、



 地平線の向こうにまで乱立していただけならまだよかった。



 天を仰ぐと、そこにも無数の『自分』がひしめくように埋まっており、


 雨のように落ちていく。




 そして、地上にはおびただしいほどの自分自身がいる。彼らは争い、互いに攻撃している。



 あらゆる自分がとれる攻撃方法・・・魔法、物理衝撃、魔物を生み出し、毒ガスをばらまき・・



 『自分と同じ』存在が、無数にこの空間で争っていた。



「ハハ、ハハ・・」



 そして、そこにいた魔王に気が付き、



 遠くから複数、『自分』が向かってくるのが見えた。



 この時初めて魔王は、『真の恐怖』、真の絶望を感じた。



「あ、ああああ・・・・・!!!」



 そうやって、地団駄を踏み、苛立たし気に頭をかきむしる。



(そうか、そうか・・、あいつがやったことは・・!我自身の・・!!我自身のコピーを・・!!そしてここは・・結界・・!!)

 









 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 優斗視点。



「・・・あっけない」



 優斗の目の前には、球体上の『何か』があった。



 それはまるで、巨大なガラスの球のようだが、よく見るとそれは周囲を移すのではなく、どこか別の場所を移しているようだった。


 肉の塊のようなまだらの色合いの中に、何か小さなものがあちらこちらに行きかい、時折爆発などを起こしている。



 そう、ここは魔王城の中。



 優斗が魔王に『変質』した『ように見えた』その瞬間、



 まさにその瞬間に『術』を発動していたのだ。



 


 そう、優斗の会得した能力・・それは・・単純な複製、コピーではなく、





ーーー



「カガミ?」



「そう、鏡じゃ。奴はその術を使える才能があったようじゃな」



「なるほど・・だから優斗さんは分身することができたんですね」



 城の中で己の実力を示すために、優斗が行ったのは、自らの体を複数に見せることだった。



 だが、その場にいた神々は全員気が付いていた。


 それがただの分身ではないということに。



「分身といってもな、普通のはただの魔法でできた現身にすぎん。つまり粘土をこねて新しい体を作っているだけじゃ。


 しかし、あいつがやったのは、自分自身の全く同じ複写じゃったのじゃよ。全てまるっきり同じ、な」



「ん?でもさー、それって分身と何が違うのー?」


「確かに、普通の忍者が行う分身も、皆そっくりそのままですよね。優斗さんがあまり特別なことをしていないきがるんですが」


「いや、まったく別ものじゃ。


 普通の分身が魔法の粘土をこねるようなものといったじゃろう?


 つまり、分身を生み出せば生み出すほど、一体当たりの魔力の総量は『減少』する。


 しかしどうじゃ?優斗がやった分身は、その『エネルギーまでもが』どれも全く同じじゃったのじゃ」



「え・・?それってつまり・・!!」


「分身を生み出せば生み出すほどエネルギーが増えていくっていうの?!!」


「すごい・・!!」


「信じられないな・・」


「そうじゃろうそうじゃろう」


 機械のドラゴン人形は、自分が撮った杵柄のように満足そうに言う。



「そして、まだまだ驚くのは早いぞい。


 対象とできるのが自分自身のみならば、単に分身の上位互換とでもなずけるべきじゃったが、


 あやつのすごいところは、対象を自在に変えることができるということなのじゃよ」



「え?あ、、つまり・・!!」



「そうじゃ。それを応用すれば・・・」








 『結界』。



 それは、単なる魔力などによって作り出された壁、閉じたシールドに過ぎない。



 だが、優斗が魔王に使った結界は、従来の性質とは全く異なるものだった。




 まず、魔王の攻撃を防いだ結界。



 それは、魔王の攻撃のエネルギーを『鏡』で移し、実体化。さらに『応用』して逆向きのベクトルにすることで無効化したのである。



 例えば、針が飛んでくるならば、それとは逆向きのベクトルに針を『作り出して』弾く。



 毒ガスならば、それらを無効にする正反対のガスを『映し出して』無害に。



 電撃ならば、マイナスの電流を作り出し・・。など。



 もともと術、魔法とは、魔力を使って世界に何らかのベクトルを作り出し、現象を起こす作業に過ぎない。


 ならば、必ずそれらには逆向きの、『自然な状態』に帰すための魔法が存在するのだ。



 それによって、魔王のすべての攻撃を防いだだけのこと。



 


 そして、魔王を封印した結界。



 それも、以上の原理を考えればすぐに分かるだろう。



 魔王自身を壁として配置し逃げられなくしただけなのである。



 前述の結界が、周囲の害悪から身を守るものだとすれば、、


 この結界は、魔王という害悪を閉じ込めておくための、外界を守るための結界というだけである。



 魔王がこの結界を力任せに突破しようとしたのならば、それと同じ力によって、逆向きに押し返される。



 故に、この結界は、理論上どんな結界よりも硬く、、そして柔軟なのだ。














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