【転生者視点】二人の出会い
数は多かったものの、
街にいる魔物は比較的用意に倒せた。
残る一体となった魔物を
成敗した俺に、この街に常駐している
騎士だという連中が声を駆けてきた。
「いやあ、助かったよ。
あんた強いんだな」
「ええ……まあ、そうみたいですね」
決して強者ぶらない俺に
騎士の連中が困惑したように眉をひそめる。
「と……とにかく街を救ってくれて
ありがとう。ぜひ礼をしたいから、
一緒に付いてきてはくれないか?」
「はあ……お礼ですか?」
そんな大したことはしていないのに感をだすため
気だるげに俺はそうつぶやいた。
騎士に案内されたのは、
この街――タナシスにある
騎士軍の詰め所だった。
ニコニコと笑顔の騎士が
俺に他愛のない世間話を投げてくる。
服装や髪の色などまるで
違う俺だが、不思議と騎士の連中は
そのことを気にしている様子もなく、
俺の素性について質問してくる
こともなかった。
一人の騎士がつい最近に
彼女に振られたことを話していた時、
俺が案内された部屋の扉が開き、
一人の少女が姿を現した。
それは絶世の美女であった。
腰まで伸ばした金色の髪。
長いまつげに縁取られた碧い瞳。
小ぶりの鼻に桜色の唇。
服装は騎士の連中と似ているものであったが、
ズボンではなくミニスカートで
鎧の胸元は開き、胸の谷間が覗いていた。
少女がにこやかな笑みを浮かべて
ペコリと挨拶をした。
「はじめまして。
本日より勇者様の案内役を仰せつかった
セリア・ブライトです。よろしくお願いします」
「へ? 勇者様って?」
疑問符を浮かべるふうを装いつつも、
王道の展開に思わず笑みが溢れる。
だが俺のそんな心うちなど気づく様子もなく
少女――セリアが淡々と言う。
「もちろん、貴方様のことです。
街の危機に颯爽と現れ、またたく間に
魔物を倒した貴方様を、
勇者と言わずしてなんといいましょう」
「いや……そんな大したことは」
バリバリに謙遜する。
「ところで、勇者様のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
少女の問いに、しばし悩む。
ちなみに俺の名前は佐藤幸治という
平凡極まりない名前だ。
だがせっかくの異世界――
このような名前では恥ずかしい。
俺は胸を張り、堂々と答えた。
「聖堂来栖」