[それぞれの長の名乗り]
〈side 名の一族〉
「お待ちしておりました。我らが頭よ。」
「やはりあなたでしたか、実水」
名水の自室前に控えていた男がゆるりと顔を上げた。
瞳使いが師、実水。または火の一族が副長、実火。
隻水があそこまで呪詛に蝕まれるまで、この男が気づかないはずがない。わざと見逃したのは、考えるまでもなく。
ひんやりとした水牢楼の空気が、よりはっきりと冷たく感じられる。怒りと、悲しみと、諦念と、荒ぶっていた心中は、もう冷え切っていた。
そんな冷たい心を察したかのように、実水は仄かに笑った。
「我らが頭にお尋ね致します。汝の名は、何を統べるか?」
赤色と青色。燃え盛る炎の水と、静かに流れる青い水。
睨みつけてくる一対に意図せず喉がなる。配下でありながら、いや、配下であるがゆえに実水は名水が名水であることを望まない。
自分が手塩にかけて育てた弟子を呪詛に突き落としてまで、頭と仰ぐ私の逆鱗に触れてまで、実水は私を離さない。
私の一言で散る命のくせに。
乱暴な衝動を弄びながら庭先へと目を転じた。
いつもは水楼子の子らが駆け回り、水蛇たちの微睡む穏やかな空間は今は冷たい水に満たされて青白い月の光を湛えている。
「赤の一族、水の一族、火の一族、教会、贖罪の十字軍、けもさんず、物語屋に英雄侯爵、はては稜明国のお客人」
死んだ狼がフレザに来たことから始まった物語は、様々な人々が入り乱れ、好き勝手に躍り狂うせいでその本質がめまぐるしく変わってゆく。
「最近の街は騒がしすぎます。」
別にどうでもよかった。
長い旅を終えて、仕事を得て、かけがえのない友を得て、平安を得た。怒りも憎悪も、忘れたフリをすることだってできないわけじゃなかった。
でも、ここまで見事に虎の尾を踏み抜かれては、黙ってなどいられない。
「実水、いえ、【果炉】」
「はい、頭」
より低く平伏した果炉を見下ろして、久しぶりにそれを名乗る。
「私は、亜神【字名宮】。名を握り使役する者。私の為に死になさい。」
「御意に、頭。」
名乗りーそれは、己の在り方を、本質を定める魔術の一種である。
「ちなみに、今この場で関わっている中でどこが最も数が多いですか?」
「もちろん、我らが名の一族にございます。」
「集合を。場所は羅水の酒場です。」
「御意。城には頭がまだ伏せっていると報告してありますので、そちらの心配の必要はございません。」
名の一族。
それは、稜明国の亜神【字名宮】に助けられ、名付けられた、頭に絶対服従の狂信者の群れである。
〈side 赤の一族〉
「ミーン。」
テラスで転寝をしていた紅孔雀が、ゆったりと首を擡げる。
その拍子に身のうちに起こった炎に、チリチリと体内が焼かれ、眉根が寄った。
「何があろうと、この街の守護をしてくれるか?」
正義の炎、守護の炎。
街を、人を守る、英雄の炎。
あまりにも美しく大きな炎は、只人の身で抱え続けるにはあまりにも重く、あまりにも独善的だ。
守護の炎と言いながら、貶めている水の力に寄り添ってもらわなければ、満足に振るうこともできないなんてちゃんちゃらおかしい。
フレザの炎は、紅孔雀の炎は、赤の少年1人では灯し続けることなどできないのに、歴代の赤の少年はそのことについぞ気づかなかった。あるいは気づいてなお、その歪みを見て見ぬ振りをしてきた。
だって、フレザの民はそれを望まないのだから。
炎は正義、水は悪。
これほどまでに狂おしく恋い焦がれているのに、清浄なる青の力に、優しく穏やかな水の力に、これほどまでに依存しているのに。
「ミーン、頼むよ、フレザの紅孔雀…」
『…ルヴィスの一族の子、あなた自身に忠誠を誓えません。それでも、この街は守りましょう。哀れな炎の子、私は友として、きっとあなたの死を悼む』
燃えている。
フレザが燃えている。
赤の一族と対になる立場でありながら、押さえつけられ続けてきた水の一族の怒りと嘆きが。
魔王の力に誘発されて、日頃の鬱屈を爆発させる街の人々の妬み嫉みが。
腹心の部下に裏切られて、それでも膝を折ることの許されない長の悲哀が。
家族を奴隷として奪われ、残された孤独に息もできないほどに憤る人々の苦しみが。
饗宴と財鉱に知らされた、襲い来るであろう水の災厄を防いでなお狂わずに入れるほど、この街はもう、強くない。
俺はもう、強くない。
「俺の名は、英雄侯爵紅孔雀の騎士、ルヴィス・ミカラナーン・クロージア。最後の赤の少年として、因果の全てを燃やし尽くしてみせようか。」
赤の一族。
それは、紅孔雀の加護を受けた炎と剣使いの英雄侯爵の一族である。
〈side 贖罪の十字軍〉
「わざわざ確認を取るまでもないとは思いますが、服飾街で魔王が暴れています。」
「はいはい、わかっているさね。ぜーんぶグルさんに任せときんしゃい。身内の始末くらい、身内でつけなきゃやってられないさね。」
ふかりと欠伸をした少女に、白衣の女は眉根を寄せた。
件の街より街道で半日の経由街の教会は、今は人気もなく閑散としている。
13の月の土地にある教会は月の神を祀っているが、ここの祭壇は空っぽで、ただ光が差すのみである。
月の神の守護のない、無名の土地の民は、月の神ではなく英雄侯爵を慕い崇める。
陽の光、それは転じて暖かな炎の加護を示す。
そんな陽の光の届かない、陰になった場所で、眠たげな少女はまた1つ、欠伸を落とした。
「本当にわかっているのですか?あなた方は殺されなければならない魔王なのです。今ここにあるのは、ひとえに教会の温情でしかない。」
女は、贖罪の十字軍の存在を許容していなかった。
欲望のままに、人の事を考えせず暴れる魔王どもにかける温情などないというのが持論で、本来ならこの少女と話すことすら嫌で仕方がなかった。
現に、少女の指揮下にあった魔王は離反し、サーライズの守りの要の1つである街を混乱に陥れている。
「私が教皇になったら、必ずあなたをっ」
殺してやる。
その言葉は虚空に消え、白魚のような指がふわりと口元に触れていた。
いつ動いたのかも分からない自然な動きに頭の奥で理性が警鐘を鳴らす。
「それ以上はやめとくさね。なあ、お姫さん、教会は強いさね。長らく魔王から人々を守り続けてきた、国の守護さね。国の剣さね。でもね、お姫さん。」
日陰が、その暗さを増す。
影に渦巻く赤い髪が、黒々と災いを匂わせる。
真っ黒な瞳が、頑是ない子供を宥めるように柔らかく細められる。
「教会は、絶対に魔王の天敵にはなりえないさね。」
赤い舌が、ちろりと舌なめずりをした。
遠くに聞こえる喧騒が、あまりにも遠くに木霊して、目の前にいる少女の異様さを際立たせる。
「思い上がるなよ、人間。こちらが末端を切り捨てれば、教会など3日で沈められるさね。」
これだから、魔王というのは嫌いなのだ。
人では敵わない力を持って、自分の好きなように我儘を押し通して、それが当たり前のように傲岸にそこに在る。
頭を垂れて軍門に下ったふりをして、その実いつでも首に食いつけるのを隠しもせず、私たちの動向をじっとりと見つめ続けているのだ。
「それでも、今のあなたは教会の魔王です。あなたは教会に従う義務がある」
「ま、そうさね。にしてもお姫さんも災難さね。ここまで拗れて、その上リュッさんまで出張って来てる物語の行く末を見届けるなんて、面倒で仕方ないさね。」
人1人分の距離をとった少女が、黒いワンピースの端を摘んだ。
「グルさんは贖罪の十字軍が長、【異形の将】GOV。教会に従う魔王として、離反した魔王に終わりをもたらしてみせまっさね!」
どこか大仰な振る舞いは、強い魔王に通じるもの。
嘘か真か見とおさせないその影に、悲しみを隠した少女は笑った。
贖罪の十字軍。
それは、教会の下につくことで討伐を免れた魔王の属する教会の暗殺組織である。
〈side 水の一族〉
「緑水緑水緑水!」
青年の背に縋った少女の青い髪が、暴風にあおられたかのように大きく蠢いた。
「行くのか?本当に!妾をおいて?緑水緑水緑水…!」
水牢楼は行き場をなくした者たちの集まった避難場所だ。
裏切られて、傷つけられて、心身ともに傷つき弱った者たちが多い。
最近の水牢楼はおかしかった。フラッシュバックに苦しんで暴れる者や、過去を悔やんで自刃を図る者、力を暴発させるならまだよく、しまいには亜神や魔王として本性を強く引き出されて出奔してしまう者まで現れていた。
揺らいでいる。平穏だった日常が、深い水底の眠りが。
何かとてつもなく大きくて、自分勝手な何かが動き出そうとしている。
誰も彼もが不安定に揺れ動き、水の平安ですら届かない激しい情動に突き動かされている。
そんな中、緑水が兄弟に呼び出された。向かうのは王都、ここからはあまりにも遠い土地。
「水守、私の愛しい人。」
緑水の清水の匂いですら、荒ぶる心は治められない。
行くなと言っても、彼が行かなければならないのは変わらないのに、それでも縋ることをやめられない。
怖い、寂しい、悲しい、1人に、しないで。
この静かで冷たい水底は、1人で入るにはあまりにも
「大丈夫ですよ、水守。私は何度だってあなたを守りますから。さ、水守?」
笑うあなたが、寂しそうだから
笑うあなたが、約束を破らないから
「わ、妾は、水牢楼が楼主、水守。あなたに水の安らぎを。」
ふと、思うのは。
身を焼く熱に苦しむ青年の顔。
彼に水が届いているか、それももう、分からない。
水の一族
それは瞳玉屋であり、行き場を失った人々の憩いの場であり、赤の少年と対になる一族の総称である。
〈けもさんず〉
魔王【異形の将】。
その特性は読んで字のごとく、常から外れた者たちを率いることに秀でていることだ。
率いる、という行為の中には率いる対象の心身の整備も含まれる。
魔王というのは己の物を侵されることを嫌う。
そんな性は魔王としては強い部類に入りながらかなり穏やかとされる少女も例外なく持ち合わせていた。
「すーぐ終わるさね。ほんの少しの我慢さね。」
頬に手を添えて覗き込めば瞳の奥に烟る仄暗い青い炎が視える。
憎悪と復讐を駆り立てるそれが、自分の率いる、ひいては自分の手足を勝手に動かしている
そんなの、我慢できるわけない。
「魔王【水装の子】COWA、んー…そうさね、右手の、薬指さね。意識して、そこに炎が灯っているさね。青い青い、憎悪の炎さね。コワの大切な家族を奪う炎さね。」
水楼子に入ることで与えられる瞳玉の、偽りの色のその奥に眠る水の輝きを優しく揺すり起こす。
「さあ、炎は見えたさね?右手の薬指に纏わりつく炎を…コワの水で吹き消すさね!」
水の鎧が形成される。
面頬以外のすべてが、水によって青年を保護する。
それでもまだ、まだまだ足りない。
まだ若いコワでは、グルさんの腹心の部下であったあの男には届かない。
だからこそ、なればこそ。
名将は、配下の力を十二分以上に引き出してこそ。
『Child Of Water Armor』
それは、魔王としての真の名前。
渦巻き逆巻く水の奔流に、押し流されそうになる青年を、その黒い瞳で魅せることで繋ぎ止める。
暴れる水のそのすべてに、少しの助力を付け加え、青年を蝕む炎へと叩きつけた。
『ーっ』
どこか遠くで、猫の鳴き声が聞こえた気がした。
崩れ落ちた青年の顔は、制限を外された反動で真っ青になっている。それでも覗き込んだ瞳の中に、自分ー魔王【異形の将】以外の色がないことを確認してグルリャはぽすんと寝台に腰を下ろした。
「っげほっ、ありがとう、ございます。」
「んーん。気にしないさね。魔王【猫の愛子】はこのグルさんが信用を置いた相手さね。そんな強く古い魔王の呪いに蝕まれて、むしろよく狂わなかったさね。」
「…俺は、もう大切な、たった1人の家族を喪うわけにはいかないし、あの人から家族を奪うわけにもいかないんです。」
へたり込んでなお、水を纏って目を怒らせる青年に、グルリャは薄く笑みを乗せた。
喪うわけにも奪うわけにもいかないというその言葉は、生きようと足掻く者がよく口にするものだ。誰かのために生きようとする者の瞳は、独りよがりな魔王の者とは思えないほどの熱を孕んで美しい。
あの、新緑の瞳を持つ親友が物語を収集する意味がこんな目を見たとき、なんとなくわかる気がした。
「それでも、グルさんはそこまで抱え込むことはできないさね…」
「はい?なにか?」
小首を傾げる青年に、なんでもないと笑って寝台から跳ね降りる。
冷たい床を横切って開いた窓から、むわっとした温かい空気が入り込んできた。
この街は、こんなにも呪いに侵食されてしまった。あの寂しい子供達の絶望が、街を呑み込んでなお苦しいと身悶えている。
「けもさんずの魔王は、みんながみんなグルさんの物さね。世界に、生きることに、他人に、喜びに、優しさに、平安に、絶望したというのなら、グルさんのために生きて、そして死ぬさね。」
コワの呪いはもう払った。後に残ったのは、蒼穹に魅入られた哀れな幼子たちだけ。
「グルさんは、けもさんずが将、グルリャさね。魔王の魔王による魔王のための幸を、探し続けるさね!」
小さな名乗りと宣誓に、将に従うものの1人であるコワが浅い黙礼をする。
「その手始めに、【猫の魔王】ロクを誘き出す必要が、あるさね。コワ、コワ。グルさんは魔王さね。自由で傲慢な魔王さね。それでも、これは命令じゃないさね。命令じゃない、お願いさね。」
目を見て仕舞えば、逃げ場を奪ってしまうから。
熱の燻る街に目を置いて、独り言じみたお願いをつぶやく。
「水牢楼の双子の片割れ。この街の物語の要のあの子が表に出れば、どこの誰も無視できないさね。グルさんは、あの子に表に出てきてほしいさね。そして、知ってほしいさね。偽りの物語と、犠牲の上に揺れながら立っていたこの街がついに限界を迎えたことを、世界がそんなに、優しくないってことを知ってほしいさね。」
残酷なお願いだ。
水楼子としての名を、居場所を、捨てろと言っているのと大差ない願いだ。
それでも、彼が頷かざるをえないことを知って、口に出されたこの願い。
「わかった。俺が、双亜様を連れ出す。」
やはりそうさね。
コワが頷かないわけがなかったさね。
彼の家族も、居場所も、すべてけもさんずが無ければ失われていた物。すべてグルリャが彼を助けなければ奪われていたもの。
「…命令するさね、コワ。水牢楼ソウアを餌に、猫の魔王ロクをおびき出すさね。」
せめて、傷つき疲れた魔王が、これ以上傷つかないように。
命令を下した優しい将の優しい命令に、コワはほんのり笑って言った。
「俺の家族も、居場所も。もう一度得られるなら、あなたの元がいい。」
優しい2人の魔王の間にだけは、嘘も裏切りも、偽りさえも介在しなかった。
けもさんず
それは、魔王の魔王による魔王のための、魔王に優しい家族と居場所を与える組織である。
〈物語屋〉
「さて!さーてさてさて!」
フレザに与えられた一室で、リュカは溢れんばかりの喜びに、手足をばたつかせていた。
部屋の中をスキップして回る様は、ちょっとばかし阿呆のよう。
「久しぶりだよ!久しぶり!ここまで拗れた物語は久しぶり以外の何物でもないよ!ああ楽しい!どうしようかどうしようか、どうしてくれようか!」
「落ち着いてください、リュカ様。」
「依存する側される側、誰もかれもが1人じゃ立てない!特にお気に入りは名簿とヴィアちゃんだよね!方や長として取り合われ、方や要として狙われる!どちらの意思も聞かれぬままに、否応なしに事態は動く!」
輝く新緑が、夜の黒にゆっくりと陰っていく。
蠢めく物語の数々を、自分だけが知っている。
途方も無い優越感に締まりない顔をしたリュカは、部屋のバルコニーへ続く硝子戸を開け放った。
「僕は物語屋のリュカ!何を成そうと何も成さぬと、それは僕の自由なのなら、僕は自由にこの物語を愛そう!」
物語屋
それは、様々な物語を愛し、収集売買する少女とその仲間の呼び名である。
〈火の一族〉
「は?名水が消えた?」
「はい、城には重症のため眠りについているとの報が入ったきり、水牢楼の方では、道場に死んだ狼と入ったきり、行方が分からなくなっています。それと、」
副長が1人、水牢楼担当の瞳使い実火が姿を晦ましました。
これは、やられたのだろう。
あの狂犬どもが遂に名水を引きずり戻してしまった。
【字名宮】に名を与えられ隷属していながら、己の欲望のために名水をも荒御魂へ引きずり落とそうとする稜明国の名の一族。サーライズでいうけもさんずに相当する彼らは、その実似ても似つかない。彼らが求めているのは、強く賢い群れの長であって、名水というあの人自身を求めているわけではないのだ。
水の一族、火の一族、名の一族。
三つ巴の争いに、あっさり決着がついたのは。
「猫の魔王が動き出した。襲撃を開始しろ、我らの在り処をここに示せ。」
猫の魔王の、第一段階の復讐が、始まった。
「俺は火の一族が筆頭副長、卯元。真実の物語の下において、我らが長に栄光を。」
ならばこちらも勝手に動こう。
サーライズの者だって、あの人が欲しくてたまらないのだから。
火の一族
それは、日陰の身の水の一族の長が、真実の物語の下生きて行けるようにと願う者たちの総称である。
〈side 猫の魔王〉
「名簿が動いた、か。」
いつも取り澄ました顔をして、頭だのなんだのと慕われているあれが、出会った頃の顔に戻った。
あれが優しい?あれが頼りになる?
馬鹿を言え、あれはただの童だ。
身のうちに、無邪気で残酷な獣を隠した、親に見捨てられて泣く子供だ。
自分を慕う者たちを、無闇に傷つけて遊ぶ心の育ってない愚かな子供だ。
名簿、名簿
親友であり、恩人であり、同胞である男よ。
苦しいか、悔しいか、悲しいか、憤ろしいか。
らならば泣け、叫べ、怒れ、咆えろ。
その力の限りに暴れまわって、その激情をぶつけてみせろ。
だってほら、もうこの世界に蒼穹はない。
もう、平安は訪れない。
それなら、いっそ。
真っ白な猫と目を合わせる。
額を擦り合わせて、優しく歌う。
「俺は魔王【猫の愛子】LOC。赤い太陽が落ちたなら、はてさてこの恨み、はらさでおくべきか。」
『みゃぁぁん』
夜の街に、猫の鳴き声が木霊する。
重なり合い、絡まり合い、唸りを上げて服飾街を包み込む。
それは、絡まり縺れた物語の終幕へのファンファーレ。
猫の愛子
それは、嫉妬の悪魔の力を持ち、猫に愛された者たちの総称である。
〈side ???〉
苦しい…悲しい…どうして…
憎い…殺したい…喰らいたい…
いやだ…愚かな人間共…沈め…堕ちろ…
我らの仇…樹霊王…切り裂きたい…
許すものか…もう許して…地獄の端まで…
妬ましい…嫉ましい…もういっそ…
沈めてしまおうか
水泡が、浮かぶ
組織が…登場人物が…フラグが…
多すぎますね!
それぞれの意図が、ごちゃごちゃすぎて…
名の一族でてきちゃったし…




