25 服飾街と少しぶりの顔合わせ
時系列的にはちょうどカナン様に誤報がついて、ナタと話してる時間。
「えっと…M Card、変化したものにはマークをつけてくれる?」
水牢楼で与えられた部屋に戻り、用意してもらった鏡に手の甲を押し付ける。
髪切り屋の若さんに一喝されたぼくたちはマーチェスさんを城まで送るという旅籠屋さんと別れて水牢楼に戻ってきていた。
リュカはスイシュ様と話をしに行き、成長した白蕾について調べるのと双剣について調べる為、ぼくと白露と白蕾は晩御飯まで放っといてくれるように頼んだ。そう言っておかないと、水牢楼の子供達や訓練担当のランスイさんに呼ばれて扱かれるのは経験済みだったから。
と、淡い光が鏡面に走り情報を並べあげた。
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【名前】キスツス・アルビドゥス
【真名】シーナー
【家名】ヤンガードルシュタイン
【種族】人 lv27❗️
【職業】奴隷 lv23 従者lv4❗️
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HP 1800❗️
MP 820❗️
STR 410❗️
GRD 600
AGI C"
INT 400
MND 1800
DEX 230
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【武器】
・東水主ノ双剣 ヨスナミ ヒクナミ lv1❗️
【装備】
・闇衣 lv??
・肩掛けバッグ 皮 4/10
(保管布
(上等干し肉 一切れ
(皮袋:1銀貨 4銅貨 ❗️
(瓶:硝子飴❗️
・フレザの食客(橙)上 lv16
・フレザの食客(橙)下 lv16
・フレザの食客(橙)ブーツ lv16
・大樹霊ノ鞘 lv 1❗️
【魔具】
・???? lv??
・大樹霊ノ双葉 lv 11❗️
(・大樹霊ノ従属ー森馬 lv 35❗️
・M Card lv1
【聖具】
・no date
【魔法】
・no date
【技術】
・???? lv??
・???? lv??
・夜目 lv19
・痛覚制御lv48
・心身制御lv45❗️
・暗記lv21
・速読lv 20
・生存本能lv75❗️
【加護】
・???? lv??
・???? lv??
【呪い】
・???? lv??
・???? lv??
・死んだ狼 lv43
【称号】
・死んだ狼
・ヤンガードルシュタインの玩具
・悪魔の子
・合成獣使い
・旅の組合員:Z
・精霊蒐集家ー稜明❗️
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…うん、相変わらずツッコミどころが満載ですね。
種族レベルと心身制御、生存本能の上昇はランスイさんに課された訓練の成果だろう。
白露のは訓練だけじゃなく酒場での乱闘と、大樹霊としてのレベルを取り戻していってるってランスイさんも言ってたし納得。
問題は…
「白蕾、頑張ったね…」
『krr♫ラィ、あrジ殿と、クlOく、ん、守rぅ』
おかしいだろう、わずか半日預けただけで30もレベルアップって。ラビ、いったいどんな訓練したのだろうか。聞きたいけど聞きたくない…
『らい、いいこー、でも、あるじどの、はくろ、まもるのー』
にゃうにゃうと子馬サイズの白蕾に戯れかかる白露は可愛いけど踏み潰されないか少し心配だ。
鏡に映る2匹を視界の端にとらえながら、白露がスキルを駆使して作ってくれた蔦を操り、ヨスナミとヒクナミを目の前に持ってくる。
柄を掴めばしっとりと吸い付くように手に収まり、鞘を払えばリョーメイ特有の片刃が現れる。
鋭い切っ先はとろりとした輝きを持ち、ちょうどいい重さの一対は体の重心を揺らすことなく安定させる。
初めて武器を持ったが、これは間違いなく業物と言える逸品だろう。そのことは分かる、そしてこの一対がぼくには使えないことも分かる。
ヨスナミ、ヒクナミ、聞こえる?
どんなに待っても、問いに応える声はなく、白露に触れると感じる森の匂いや気配、精霊の持つ力の存在は双刀に触れても感じられない。
静かで明白なる拒絶。
あの戸棚から姿を現したということは少なからずぼくに興味があったかぼくを認めたか見初めたかしたはずなのに、一対は一言も言葉を発しない。
これでは何が不満なのかも聞けないし、どうすればいいのかもわからない。
幾度か振ってみたのに、レベルも上がっていないということは、本当に欠片も心を開いてもらえていないのだろう。
旅籠屋さんから、結局4銅貨で買った2冊のうちの1冊、魔獣について書かれた本にはそれぞれの魔獣の特徴だけでなく、高位の魔獣に気に入られると交わしてもらえる契約の話も載っていた。
曰く、魔獣が契約を結ぶ理由は大きく分けて4つ
一つは親愛、友愛、恋慕などの感情
二つは魔力、神力、称号などとの相性
三つは生贄、献上品、契約などの利害一致
四つは本能。
出会って数秒、ぼくは白露と親愛や友愛を育む時間なんてなかったし、ぼくの称号は曰く付きばかりで魔力を欲しがる様子はない。生贄や献上品なんて用意する暇なかった。
白露が、いや、樹霊王がぼくのところに来てくれたのは樹霊王とおそらく物語屋にしかわからない本能によるものだったのだろう。
白露は本能、白蕾も多分己の親である白露の主人には従うべき、という本能。
出会った魔獣の中で…いちおう鬼狼族らしいから正確には魔獣ではないが…1番付き合いの長いラビだってリュカがぼくを気にかけていたから仲良くしてくれているにすぎない。
ぼくは本来の魔獣や精霊との付き合い方を全くと言っていいほど知らないのだ。
「ヨスナミ、ヒクナミ…」
ただ持っているだけ、構えているだけなら一対の双刀は快い重さとともにしっくりと馴染んでくれる。
だが、一度振ろうとすれば、
「っ」
がしゃっ
途端に均衡は破れてぼくは刃を地につけることになる。危うくタタミに傷をつけるところだったが、ギリギリで白露が創芽で作ってくれた大樹霊ノ鞘が支えてくれた。
これでは鞘というより第三第四の腕である。
「…ときどき、引っかかるというか乗る時があるんだけどな」
そう、道場で幾度か振ってみた結果、何回か滑らかに動いた気がしたことがあったのだ。
まあ、そういう時もすぐに刃は地についてしまったのだが。
「ヴェルヴァリヴォ侯爵家の製作した逸品、つまりは曰く付き…これは、藍水さんかリュカにお願いして双剣使いの先生もつけてもらうしかない、かなあ。型通りに振ればもしかしたら…」
【紅孔雀の騎士】クロージア侯爵が様々な技術、主に服や宝石などの装飾品の技術者を保護し守っているように【紫水豹の魔術師】ヴェルヴァリヴォ侯爵は魔法関連の技術者を保護している。
クロージア侯爵、つまりはカナン様がお洒落で着飾るのが好きなように、ヴェルヴァリヴォ侯爵を含む侯爵家一族は魔法具の製作や魔薬の調合、魔術の研究が大好きらしい。それはもう、寝食を忘れるレベルで。
二侯爵の違いはクロージア侯爵が純粋に技術者を守る庇護者であり、服飾街フレザを守っていたことを見ていた他の宝飾街ジェルエールや華飾街パーヒェン、織工街カーペンが、都市連合を結成する代わりに守って欲しいと攻撃力を慕って言ってきたのに対し、ヴェルヴァリヴォ侯爵家の方は魔法関連の大家である彼らの技術力を慕った者たちが集ったという点である。
つまり、クロージア侯爵御用達の店は多々あれど、魔法関連の大家であり、大陸最高の技術力を誇るヴェルヴァリヴォ侯爵家が直々に製作した大精霊を擁した双剣が一筋縄でいくわけがないのである。
一つの戦いにつき砂糖一樽を捧げなければならない剣や、美少女にしか振れない鞭、定期的に舞を捧げなければ所有者を呪う杖など枚挙にいとまがない。
「たしか、一度正しい作法で戦舞を行わないと力を貸してくれない戦斧があったはず。」
「この子のことならそれは嘘ですよ。この子が求めていたのは自分にふさわしい技量を持つ戦士ですから、正しい作法でなくても隙あれば私の足を切り飛ばそうとするこの子で土竜を叩き伏せたら話を聞いてくれるようになりました。」
「っ、ナスイさんっ⁈」
こんばんは、シーターくん。
柔らかな笑みを浮かべるナスイさんは、見たことがないくらい穏やかな表情で部屋の入り口に立っていた。
丸一日ぶりのナスイさんに思わず食い気味で言葉が弾ける。
「元気になったんですか?もう動いていいんですか?ごめんなさい、あの時ぼくが動いちゃったから、ナスイさんに大怪我をさせてしまってそれで本当に申し訳ないと思ってて!」
「君のせいでなありませんよ。最近街が荒れていてあの子を狙う輩の動きが活発になっているのを知っているのに油断した私が悪かったんです。」
入っても?と聞いてくれたナスイさんに、ようやく元気になりたてのナスイさんを立たせたままなことに気づき招き入れた。
2匹でうにゃうにゃと遊んでいた白露と白蕾もナスイさんを静かに見上げる。白蕾はナスイさんにあったことがないはずなのに警戒を表す足トントンをしていない。
そういえば本に眷族とその主人は記憶の共有ができると書いてあった。
「体の方はイヴ様の治癒魔術で昼のうちに全回復していたのですが、魔力を魔力枯渇ギリギリに使ってしまったのと、この子に助けてもらったことで動けなくて今までずっと湧水洞にいたんです。」
この子、と先ほどからナスイさんが触れるのはナスイさんの左耳に下がる紫水晶のついた耳飾りだ。
魔法具の飾りに紫水晶を使えるのはヴェルヴァリヴォ侯爵家の作品のみ。間違いなく逸品だろう。
真面目というか苦労人で仕事人間なナスイさんは着物もきっちりと着て機能重視のために装飾品の類は身につけていない。
そんなナスイさんが片耳だけに耳飾りをつけているというのは不思議だった。
桃色の花をつける青い枝の耳飾り。
髪切り屋を訪ねた時も旅の組合に行った時も着けていなかったものだ。
「私が使っていた斧槍を覚えていらっしゃいますか?ああ、あの時は斧と槍に分けていましたが。」
「はい、槍で結界を張って斧で戦ってましたよね。…槍の結界はぼくが破ってしまいましたが」
「その斧槍がこの子です。今は力を使いすぎた私に怒ってこの形をとっていますが武器の基本形は斧槍。基礎となっている世界樹の枝に封じられているのは【水龍姫】です。」
「【水龍姫】というと、【樹霊王】や【浅海王】【深海王】のような水龍の魔王ですか?魔力を喰らい神をも封じる世界樹の枝を器に持つって、相当強い魔王ですよね。」
ぼくの言葉にぽかんと口を開いたナスイさんがくっ
と吹き出した。
突然のことにぼくまでぽかんと口を開き、白露と白蕾がぴくんと耳を立てる。
そしてなぜか、白露がちょっとむくれてる。
『あーるぅーじぃーどーのぅぅ…』
『kUrokrrrrr...』
伏せ状態の白蕾に額部分を舐められて、それでも白露の尻尾はぺしぺしとタタミを叩いている。
本のお陰で白蕾のそれが落ち着かせようとする行為、白露のそれが苛立ちを示す行為と分かってもその理由がわからない。
「シーターくん、私の言い方が悪かったのですが、世界樹は樹霊王の別名ですよ。正確に言うと、白露くんのサーライズ王国での呼び名です。」
「…え?」
そりゃあナスイさんだって吹き出すだろう。大元の樹霊を従えているのにその樹霊の小枝に宿る魔王を褒めたのだから。
そして白露としては自分の名前を覚えられていないという印象を受けたのだろう。そりゃあ拗ねる。出会ってからまだ1週間も経っていないが朝から晩までそれこそお風呂の時だったずっと一緒にいるのだから。
「ごめんね、白露」
『んなぁぁぁぅ…』
白露の顎を撫でてご機嫌取りをしていると、なぜかナスイさんが微妙な顔をするのが視界の端に映った。
白露と戯れているとよく見る顔だが未だにその理由がわからない。
首をかしげてみせるとナスイさんは目をつむって首を振った。
「いえ…そういえばリュカ様にお聞きしました。私たちが寝ている間にそちらの森馬を喚び出されたとか。ご心配をおかけしていないかと思っていたのですが、大丈夫だったようですね。名をお聞きしても?」
「し、心配じゃなかったわけではありませんよ?リュカに言われたんです。ルヴィの物語を知りたければ強くなれと。ぼくには、感情というものがうまく制御できなくて、とにかくできることをしようと思って。えっと、それで、この子が白露の従属の白蕾です。」
ぺこりと頭だけ下げた白蕾の、その少しの動作だけで白露がコロンと転がってしまった。
ぼくですら見上げなければいけない大きさの白蕾はちょっと肩身が狭そうだ。これなら、スイシュ様の部屋のように外とつながっている場所に変えて貰えば良かった。
「ハクライ…白露くんが白い露と書くのはリュカ様にお聞きしましたが、ハクライくんは白い…雷でしょうか?」
「いえ、蕾です。」
それから、白蕾を喚び出してからのこと、藍水さんに教えを受けたことや、ヨスナミヒクナミの双刀のこと、旅籠屋さんのことなどをぽつぽつと話した。
ナスイさんはいつものような気迫のような物を纏っておらず、時々リアクションをしてくれたり、質問してくれたりと楽しく話すことができた。
ぼくを守ってくれたナスイさんとラスイさん、仲良くなったルヴィが怪我して意識不明なのに楽しんでしまった罪悪感をあまり感じずに済んだのはナスイさんがルヴィのことを知ろうとしてくれて嬉しいと言葉にして言ってくれたからだろう。
「ふふ、楽しく聞かせてもらいました。それで、長くなりましたが私がシーターくんの元に来た理由を今からお話ししても構いませんか?」
ナスイさんの体調は本当に大丈夫という言葉を信じて頷くと、何度かお世話になった水牢楼の道場に足を運ぶことになった。
名水さん、復活していました。
カナン様に誤報が入った理由は書きそびれました。すみません。
〈作者の泣き言〉
あらすじが、あらすじがうまく書けません!!
なんか固い感じになってしまうぅぅっ




