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物語屋と死んだ狼は予言の勇者を望まない!  作者: 春夏秋冬
第1章 服飾街フレザ
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[フレザの酒場]

「よお、影の兄ちゃん!」

「うわっ、兄貴じゃねえっすか!」


 酒場に一歩足を踏み入れれば、子狼のように人間が纏わりついてくる。さすがに人を触れてくるほど愚かな人間はいないが、無礼な奴は少なくない。

 ジロジロとこちらを見てくる人の雌が、喧嘩を売っているのではなく求愛行動をしているのだと知るまでは皆殺しにしていたのを思い出した。あのときは俺も若かった。


「物語屋従者の影だ。パーティと街の噂話、それと勅令を教えてくれ。」

「へいよ」


『街の噂話

 ・宝飾街ジェルエール犯人捕縛

 ナラズ商会若旦那、ブーサ・ナラズ

 宝飾街ジェルエールでの犯罪行為の黒幕

 御領主様が倒し、街の衛士が捕らえる

 領主様の株さらにうなぎのぼりか


 ・橙の犬の姫、御来訪

 御領主様の寵愛を一身に受け、橙を戴く姫

 相変わらずのお可愛らしさに

 犬姫様にお仕えし隊

 が緊急集会を開いた

 また、

 白の女王様に命令され隊

 も彼らの動向を伺っている


 ・旅籠屋の若旦那の叶わぬ恋

 フレザ屈指の大旅館旅籠屋の若旦那の告白がついに3桁の大台に達した

 今度の相手は幼馴染の城付き侍女か

 。

 。

 。

 。

 ・水の乙女の再来

 青い髪、青い瞳、白い肌の娘

 強い水の力を持つが、まだ幼く力を扱えない

 店頭で裏切り者、薄情者、と叫ぶ、屋旗を汚す、

 紅孔雀色を嘲笑するなど目に余る行為を繰り返す

 。

 。』


(水の乙女の、再来…か)


 青い瞳を生き生きと輝かせる幼い少女の姿が脳裏に浮かんだ。そして、この街が1度ならず、青を持つと言う理由だけで罪なき娘を殺したことも。


「くだらない」

「っ、はい?」


 言葉が漏れていたのか、あるいは殺気か。

 酒場は静まり返り、酒場の主人が冷や汗を涼しげな頭に浮かべていた。


「気にするな」


『パーティの噂

 ・犬姫様にお仕えし隊 緊急集会

 今回の犬姫様の衣装、お姿について情報交換

 犬姫様への贈り物の会議

 犬姫様と共にいた謎のマントの真相解明


 ・白の女王様に命令され隊

 女王さまのお行動、お姿についての情報交換

 女王さまへの献上物の贈り物の会議

 女王さまのそばに侍っていたマントの素性解明


 ・狼様もふり隊

 狼さ』


「っ、ふー」


 よし、深呼吸。

 俺は、何も、見なかった。


『。

 。

 。

 ・謎の狼仮面の下は美少年⁈

 新たに犬姫様、女王様とともに行動するようになった狼仮面の人物の姿が明らかに

 銀の踊る深緑の瞳、光の絹糸の髪

 白い肌の美少年、彼の親衛隊ができる日も近いか』


 パーティに関する噂話だけは苦手だ。そもそもなんだ、狼様をもふり隊とは。

 リュカの騎獣であって人間共の愛玩動物ではないのだ。あの毛並みだってリュカのために美しく保っているのに人に乱されてたまるか。

 もう一度苛立ちを吐き出して勅令を開く


『・神殿の大予言

 神の予言

「光持たぬ狼が勇者となりうるものをを導く」

 勇者の条件

「魔剣ファイアファーズを携え、時を止めた時計と星の道を示せ」


 此度の魔王は未だ大きな動きを見せていない。

 しかし、最悪の魔王ロスの様に迅速な対応によって魔王の被害を抑え貼ることができることは既に実証されている。

 ゆえに、神殿は新たなる勇者を求め、ここにその条件を述べる。一刻も早く勇者、あるいは光を持たぬ狼を大神殿へお連れすることを国王と神殿の両名において命ずる。


 予言の噂

 王国公爵、ヤンガードルシュタイン家の呪われた子息、【死んだ狼】と呼ばれるキスツス・アルビドゥス・ヤンガードルシュタインが勇者を導く光を持たぬ狼である

 ヤンガードルシュタイン家は予言を知り、【死んだ狼】をどこかへ隠し、勇者の訪れを待っている

 ヤンガードルシュタイン家は【死んだ狼】を殺してしまった

【死んだ狼】自ら勇者を探していらっしゃる

 。

 。

 。』


「予言の勇者…」


 鼻に皺を寄せ、ぎり、と歯を鳴らす

 影の嗤いに酒場には再び緊張の糸が張ったが、そんなことはどうでも良い。

 あれほど虐げ、蔑み、嬲ってきたくせに今となってあの子を探し頼るとは。

 小狼を殺して皮を得ておきながら送り狼を頼ろうとするようなこと、歯を見せてるとしか思えない。


「さて、どうするかな」


 キスツス・アルビドゥス・ヤンガードルシュタイン

 そこに真の名がないことにすこし安心した。

 人の名は面倒だ。

 己の名、己の苗字、隠された真の名、家の名を並べるなど狼はそんな面倒なことはしない。

 己の名と、群れの名。それ以外に入れる必要も作る必要もない。

 まあ、望月公と朔夜公は時折それも名の一部のように呼ばれるが。

 キスツス・アルビドゥス

 嫌な名前だ。祝福されていないことが一目でわかるその名を簡単に口にするのは如何なものか。

 シーナーという真の名が漏れていなくてよかった。仮にシーナーという名が流れても物語屋シーターと関連づける人間はそうそういないだろう。


「どうするかな、主よ」


 ああ、思わず歯が出てしまう






「なんか今回の影、機嫌悪そうなのにめっちゃ笑ってなかったか?」

「あの方が笑うときって大抵何か嫌なことがおこるよな」

「俺たちに関係ないといいんだが…」

 その後酒場が騒めき続け、街の噂話が追加されたことは言うまでもない。

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