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物語屋と死んだ狼は予言の勇者を望まない!  作者: 春夏秋冬
第0章 始まり
1/49

プロローグ

返して返して返して返して!!!


夕焼けの空、紅と橙と黄色と、数え切れないほどの色の混ざった空に、悲痛な悲鳴が響く


返して!僕の最愛を返して!

返して!僕の唯一を返して!

返して、返して、返して、返して!


僕が唯一仕える人を、

僕が唯一愛する人を、

僕が唯一従う人を、

僕を唯一愛する人を、

僕が唯一待つ人を、


僕に返して、早く返して!


他に何もいらない、彼女を返して!

彼女を返してもらうために、僕以外のなんだって捧げるから、


だから僕に彼女を返して!


喉よ裂けろ、声よ枯れよと言わんばかりの悲痛な悲鳴、悲痛な咆哮

静まり返った世界は、答えることなく淡々と夕焼け色を蠢かす


やるせない。

己の唯一を、己の持つ力の全てを使っても届かないところへ奪われてしまった幼な子の、悲痛すぎる声

それは世界を震わせることもなく、誰に届くこともなく、ただ闇雲に茜色の空に放たれる



返して、返して、返して

ようやく見つけられた愛しい人

ようやく縋れる大切な人

ようやく愛せる優しい人

ようやく守れる美しい人

返して、返して、返して

この世界を滅ぼす必要があるなら

人々を殺戮する必要があるなら

いくらでも何度でもそうするから

お願いだから彼女を返して

僕の命以外ならなんだって捧げるから

彼女を返してお願いだから返して


僕を狂気からすくい上げてくれた

僕を寂しさから守ってくれた

僕に生き方を息の仕方を教えてくれた

僕に喜びと幸せを教えてくれた

僕に食べ物の味を教えてくれた

僕に人としての感情を持たせてくれた

僕に傷つけられてもそばにいてくれた

僕に傷つけないようにしようと思わせてくれた

たくさん喪った僕から喪われなかった


返して返して返して返して

僕に彼女を返して

優しい人美しい人大切な人愛しい人

僕の唯一僕の最愛僕の至高僕の全てを


お願いだから、僕に返して

泣いてるわけではない

叫んでいるわけでも

怒っているわけでもない


悲しい、鳴き声


それが悲鳴

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