表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリオネットの夜想曲  作者: 小丹 雪雷
5/61

 気がつけば、ヴィオレはどこかの部屋のベッドの上に寝かされていた。

 ここはどこなのだろう。

 確かノワールと闘って命からがら逃げて…。

 あたしはもともと戦えるような力やものはもってないから…。

 ああ、漆黒のマーメイドドレスもボロボロだわ…。

 ヴィオレの頭に様々な思考がよぎる。

「…起きた?やっぱり動くんだ…」

 部屋のドアには一人の青年が大きめの箱を抱えて立っていた。

 眼鏡をかけた見知らぬ青年だった。

「誰…?あんた」

 すばやく上体を起こして、ヴィオレは警戒して質問する。

「俺はユウ。お前がボロボロになって倒れてたから、ここに連れてきた」

 睨むヴィオレに構わず淡々と話す。

「あっそ。御苦労。あたしのことはお前と呼ばないで。夜想曲(ノクターン)第4楽章『ヴィオレ』と呼んで」

 ヴィオレは自分の名を口にする。

 この青年が自分の存在に全く動揺しないことが気になった。

 まるで慣れているようだ。

 ヴィオレは、ユウという青年を見定めようとする。

 だが、青年の表情からは何も読み取れなかった。

「じゃあ、ヴィオレ。そのドレス、替える?」

「替えのドレスなんてあるの?ふん、まぁいいわ。こんな品のなくなったドレスとは早くおさらばしたいわぁ」

 大きめの箱からユウが出したドレスは、ヴィオレに似合う白い下地に紫のストライプ柄のものだった。

 なぜ青年がこんなものをすぐに用意できたのかは不明だ。

 だが、このドレスはなかなか気に入った。

「自分で着替えられるから。部屋の外で待ってなさい」

 淑女よろしくヴィオレが言う。

 肩をすくめてユウは部屋の外に出た。

「悪くないわ。これ、あんたが作ったの?」

「そうだよ。まぁ、いろいろあって」

 ドア越しにユウの声が聞こえる。

 もしかしたら、とヴィオレははっとする。

 ───この人があたしを作った人形師かもしれない。

 動く自分を見ても動揺しなかった。

 けれど、正確なところはやっぱりわからない。

 ヴィオレは、いつからか自分を作った人形師を探していた。

 これといった探す理由は特になかった。

 でも、何故か人形師を探さなくてはいけない気がして。

 少し、様子を見てみることにする。

 ヴィオレは密かにそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ