お願い
押忍!! ガクです。パソコンで色々な動画や写真を見ましたが、やはり本物は違いますね。瑞々しさが違うと言うか、迫力が違うと言うか。まぁ、とにかく良いモノが見れた。
ペチペチと顔を叩く何かによって意識を取り戻す。
「……ルアン?」
「あ、おきた~。サラク、ガクがおきたよ~」
ゆっくりと起き上がる。
頭に顔面にいたルアンは器用に頭の上に昇る。
ここは、お店の中か。
どのぐらい気を失っていたのだろうか。
「あ、ガクさん。お目覚めですか?」
「あ、うん。俺、どのくらい眠ってた?」
「十分ぐらいですかね?」
「そのぐらいか……」
身体に異常がないかを動かしながら確認する。
大丈夫かな?
「すいません。咄嗟に魔法を使って眠って頂きました」
「いえいえ。素晴らしいモノを見れて喜びの極みです」
おっと。
サラの腕を振り上げたぞ?
今日が俺の命日か……。
「ぐぐぅ。今回は私にも問題がありましたので、このくらいにしておきます」
「次、また見ちゃったら?」
「記憶を消します」
「何それ。マジで怖い」
冗談で聞いたらマジで返ってきた。
ダメって言われるとやりたくなるって言うけど、今回はパスかな。
本気で命がヤバイ。
「ガク~。だいじょぶ~?」
「問題ないぞ。起こしてくれてありがとうな、ルアン」
「うん!」
おっと。
そうだ。
「サラも採寸してたって事は何か服を新調するの?」
「いえ、服というか、何と言うか」
「サラクはおむねがキツイんだって~」
「むむ。それはマズいな」
「はぇ!? 何で胸を凝視するんですか!」
胸はちょうどいいモノを着用しなければ形が崩れると聞く。
このままではサラの胸が大変な事になってしまう。
あの大きさ、形、張り、弾力、ツヤ。
どれをとっても素晴らしいあの胸が、壊れてしまう可能性があるのだ。
「サラ、二十着ぐらい作る?」
「そ、そんなにいりません」
「可愛いのとか、寝る用とかは?」
「えっと。寝る用って何ですか? 寝る時に付けるモノなんですか?」
え?
君は寝る時は着けない派なのかい?
通りで柔らかい訳だね!
「ん~。ちょっと小声で喋るけど、胸って脂肪が詰まってるんだよね」
「そうなんですか」
「うん。脂肪だから形が崩れたり、流れたりしちゃうんだって。起きてる時は起きてる用のを、寝てる時は寝てる時用のヤツが必要だよ」
「起きてる時のヤツを使ってはダメなんですか?」
「ダメって事はないのかも知れないけど、起きてる時と寝てる時で身体の態勢が大きく変わるから適した物を使いましょうって聞いた事はある」
薄ら覚えだからどこまで信用できるか分からないけどね。
「ちょっと聞いてきますね」
「了解」
う~ん。
女の子と胸とブラの話をするって結構気恥ずかしいんだね。
下ネタとかサラの前で言うのは慣れてるけど、真面目な話って言うか女の子の話はまだ慣れてない。
しばらくルアンを遊んでいるとサラと店長さんが来た。
どうしたんだろう?
「ガクさんの話を店長さんにお話したら、是非とも夜用のも作りたいとの事でお話を聞きたいそうです」
「え? 俺が?」
「是非、お願いします、お客様!」
店長さんの目が怖いよ。
それから俺のニワカな知識をフルに活かして店長さんにブラの説明をした。
まぁ、さっきサラに話した会話をほぼほぼ一緒なんだけどね。
「なるほど。寝る用に付けるんですね。これは検証した方が良いですね」
「俺が知ってる事は以上です」
さて、帰ろうかな?
「では、この商品が実用化した際には二人に情報提供料として一月毎に売り上げの二割をお渡しいたしますので」
「え!? なんで……」
お金が発生するんですか?
「お客様の情報提供により、素晴らしい商品ができる事があればお礼をするのは当然です」
そんなものか?
ま、くれると言うならもらっておくか。
「と、言っても試作を作り、検証し、成果が出て初めて商品とできるので、結構時間がかかってしまいますが」
「そっちはお任せします。サラとルアンの服はどのくらいで完成しますか?」
「ありがとうござます。ご期待に応える事が出来るモノを作ります。それと、お二人の洋服ですが、三日後には数着は作る事が可能です」
「そうですか」
流石はオーダーメイドだ。
時間もかかるのだろう。
「お支払いはその時にお願いします」
「分かりました」
ちょっと時間がかかってしまったが、買いたいものは買えたね。
馬車に乗って宿に戻った。
晩御飯を済ませ、部屋でゴロゴロする。
ルアンはもう寝てしまった。
話の話題はダンジョンについてだ。
「ダンジョンに入る際に冒険者カードを見せれば入るのに問題はないそうです。持ってなくてもお金を払えば入れますね」
「あ、そうなんだ。ここからどのぐらいの場所にあるの?」
「そうですね。一時間程度でしょうか?」
「遠いね。家を買う時はダンジョンから近い方がいいね。サラもダンジョンで疲れたのに一時間も馬車で家に帰るって疲れるよね」
「そうですね」
でも、広い庭が欲しいんだよな。
俺には色々とやってみたい事もあるし、試したい事もあるからな~。
「家は商会ギルドを通した方がいいかもしれませんね」
俺が資料をサラに見せたらこんな返答が帰ってきた。
「商会の方はそういう伝手がありますから、最悪は紹介してくれます」
「なるほどね~」
なら大丈夫か。
「サラってどんな家が良い?」
「そうですね。やっぱりお風呂があるのが最高ですね。後、台所も欲しいです」
「俺は広い庭だな~。色々と実験とか出来るし」
「フフフ。これでは豪邸になってしまいますね」
「あはは。そうだね」
サラと豪邸に住むのは喜んで、と言いたいが管理と掃除が大変だ。
あ、メイドを雇うか。
そんなバカな事を考え、横のベットで寝るサラとルアンの寝顔を見て俺も寝た。
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俺は気が付くと真っ白な空間にいた。
そうか。
ここは神ちゃんのいる場所だな。
何でこんな場所に俺がいるんだ?
「あなた、状況を飲み込むのが早いわね」
そんな声が聞こえ、声のする方を向いた。
そこには燃え盛るように赤い長い髪を揺らし、鋭い目をした胸の豊満な女性が立っていた。
俺はその人を見た瞬間に分かった。
この人は神ちゃんと同じ神様だ。
てか、何の神様だ?
「私は情熱の神様よ。よろしく、学君。君の事は『親愛の』から聞いてるわ」
「あ、どうも」
俺の名前を知っているのか。
それに神ちゃんと仲が良い神様なのか?
「反応が薄いわね。私、神様よ? 敬いなさい」
「……」
そうか。
この神様も神ちゃんと同類か。
神様はこんなのばっかりか。
「まったく。今の人間は信仰心が足りないのよ」
「あの……」
「なによ」
「どうして俺はここにいるんですか?」
「あ、忘れてたわ」
手に持ってる何かを俺に渡した。
キャッチして見ると石だった。
普通のそこら辺に落ちてそうななんの変哲もない石ころ。
「それはアナタに渡す報酬よ。絶対に必要になるからあげるわ」
「……この石が?」
「えぇ。これが私に出来うる最大限の手助けかしらね」
何かあったのか?
急に表情が暗くなった。
「まぁいいわ。あなたにお願いがあるの」
「お願い?」
「そうよ。私がこの世界に連れてきた子が奴隷に落ちちゃって死んじゃいそうなのよ」
いきなりヘビーな展開だな。
「それで、俺がその子を助けろと?」
「と、言うより育てて欲しいのよ」
育てる?
ん?
「強くすれば良いのか?」
「そうよ。独り立ちできる程度にはね」
「……」
正直に言って気が進まない。
「かなり可愛い子よ」
「神様。俺は可愛ければすぐに飛びつくような男ではないんだ。俺には既に可愛い子が二人もいるし、そもそもなんで俺に―」
「じゃ~別の人に―」
「やらせて頂きます!」
あ!
やっちまった!
「情報はメールに送っておくから、起きたらちゃんと確認してよね」
「は、はい」
なんて俺はチョロイんだ。
くそ、可愛いが正義を貫いてしまう。
反省が絶えない。
だが、不思議と後悔はない。
「あの子に伝言をお願いできる?」
「伝言? 電話して伝えれば良いじゃないか」
「そんな事ができるのはあの子ぐらいよ」
神ちゃんの事か。
結構すごい神様なんだな。
「他の神はこうして呼ぶ事は出来てもあの世界に干渉する事は出来ないの」
「……神ちゃんは色々としてたがな」
「あの子って神は……」
頭痛いって感じですな。
ドンマイ。
「ま、話は分かりました。伝言をお伝えますよ」
「そう? 伝言は。もう、アナタを苦しめる存在は世界から消えたから好きに生きなさい。以上よ」
「分かった。ちゃんと伝えとく」
「よろしく頼むわ」
そう言われ、意識が微睡に吸い込まれて意識を失った。




