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一点

1日2話投稿の2話目です。

前の話を読んでいない方は前の話からお読み下さい。

 押忍!! 漢の中の漢。心にはサラを、背にはルアンを刻んで前に進むその者の名は、ガク。 昨日は照明さんがサラの説教を食らっていた。後で聞いたが、水着のまま怒ってたらしい。つまり揺れていたそうだ。羨ましい……。


 そういえば昨日は何も食べてなかった。

 朝からかなりの量を食べた。


 やっぱり人間、お腹が減ったらろくでもない事を考えちゃうからね。

 食事は大切だ。


「ごちそうさま~」

「フフフ。ルアンもたくさん食べましたね」

「うん! おいしかった~!」

「「ルアン~」」

「あはははは~! くすぐったい~よ~」


 俺達はルアンの可愛い笑顔で心を撃ち抜かれ、ニヤニヤしてしまった。

 くすぐったり頭を撫でたりとルアンを可愛がった。


 やっぱり、うちの娘は最強だよ。


「サラ。時間的に早いけど、シャルルとエンドルが騎士の仕事に行く前に宿舎にいこうか」

「そうですね」


 食事を終えて部屋で少しルアンと遊び、昨日訪れた騎士の宿舎に向かう。


 本来ならお昼頃に行くのだが、二人がいないかもと思ったから朝に向かう事にした。

 夕方でも良いんじゃないか、とサラに行ったのだが、少しだけしか喋らないらしく朝になった。


 馬車を使う距離ではないので歩いて行く。

 ルアンは安定の俺の頭の上にいる。


 フードは被っている。

 一応は隠してるつもりだ。


 徒歩で約十分。

 宿舎についた。


「いるかな?」

「どうでしょう?」


 ガチャガチャ。

 ……鍵がかかっていた。


 遅かったかな?


「ガクさん。建物の奥側から人の声が聞こえますよ?」

「あっちか」


 俺達は宿舎を迂回する。

 どうやら宿舎の裏はグラウンドになっているらしく、たくさんの人が走ったり木刀で稽古をしていた。


 そういえば剣の稽古も始めないとな~。


「どこにいるかな?」

「う~ん。……どこですかね?」


 行っても良いのかどうか。

 邪魔にならないか、などを考えて宿舎の陰からコソコソと見ていた。


「誰だ、お前ら」


 不意打ちに後ろから声が掛かった。


 俺とサラは反転し、武器を構えた。

 まったく気が付かなかった。


「ん? すまん、すまん。驚かせたか」


 背後の人物は迫力がある男性で俺達に全くの危害を加えるつもりはないのは分かるが、コッチは警戒せざるを得ない程の人物だった。

 なぜ、これ程の人物が背後に迫っていたのに気が付かなかったのか……。


「そう警戒するな。俺はここのヒヨッコ共の教官だ。騎士だ。名前はバファル。よろしく」

「あ、どうも」


 挨拶され、笑顔に握手をされた俺は警戒を解き、握手に応じた。


「ルアン!?」

「はえぇ? ……グジェッ!」

「隙アリ!」


 ヒドイ……。

 投げ飛ばされた。


 ルアンはもちろん守った。

 身体が受け身をするよりルアンを守る方に無意識に動いた。


「おぉ~~! ガク、もう一回!」


 無事で良かった。


 ルアン。

 これは遊びじゃないんだよ?


「ルアン。大丈夫ですか!?」

「サラク~?」


 サラ、俺の身も案じてほしい。

 結構、芸術的な恰好なんだけど……。


「あ、すまん。癖で投げ飛ばしてしまった……」


 何だ、このオッサン。


 いいよ、いいよ。

 俺が弱いから仕方ないよ!


「こんな綺麗に投げ飛ばされるとは……」

「ふむ。君がガクくんか。で、君がサラクくんに、ルアンちゃんだね?」

「おじさん、だ~れ?」


 ルアンが可愛く聞いた。


「ルアンちゃん。私は二十八だ。おじさんという程の年じゃないぞ」

「ごめんなさ~い」

「うむ。いい子だ。そして、名前を名乗る時はまず、自分から名乗るのが常識だ」

「わかった~。ルアンはルアン!」

「私はバファルだ。よろしく、ルアンちゃん」

「よろしく~」


 すいません。

 常識を持っていないくて……。


 俺が常に勉強してるモノで。


「私たちの名はだけからお聞きに?」


 サラは武器を下げずに聞く。


 俺? まだ地面と密着してますよ?


「エルとシャルに聞いた。……あぁ~すまない。全部聞いた。あいつらは喋らないと言っていたが、命令をして喋らせた。あいつらは誰に構わず言ってる訳じゃないぞ。騎士道を心に持つ者達だ」

「……そうですか」


 武器を下げた。


 本当の事を言っているのか。


「あいつらはあそこで稽古中だ。付いて来い」


 俺達の返事を聞かずに進んで行く。


 サラはルアンを大事に抱えて後を追った。


 サラ、結局俺の事はスルーか。

 一言ぐらいあっても良いと思うんだけどな~。


 ……俺も行くか。


「お前ら! 集合しろ!」


 バファルの一言で皆が一斉に集まり出した。


「エル、シャル。前に出ろ」

「「はい!」」


 軍隊のように整列した列の中から二人が出て来た。

 シャルルは仮面を着けていないようだ。


 二人はどこか気まずそうだな。


「ガクさん。ルアンをお願いします」

「分かった。……一人で大丈夫?」

「フフフ。大丈夫ですよ」


 そうか。


「すいません。シャルルさん。少しだけお時間よろしいですか?」

「あぁ」

「あそこの休憩場所を使うと良い」

「ありがとうございます」

「教官、感謝します」


 二人は木陰にある場所に向かった。


 俺はエンドルと話すか。


 バファルは他の人達を解散した。

 俺達もグラウンドの端に移動した。


「よう」

「……どうしたんだ? こんな時間に」

「ちょっと、サラがな」

「……そうか」


 エンダルは元気がないようだ。


「俺、シャルルが好きなんだ」

「そうなのか?」

「……あぁ」


 内心ビックリしたが、平気な感じで答えた。


「ガク。お前はどうしてそこまで何でも受け止められるんだ?」

「……」


 何でそんなに泣きそうなんだよ。


「……ガク?」

「ちょっと来い」


 俺はバファルの元に行く。


「あの」

「何だ?」

「木刀を二本貸して頂けませんか?」


 バファルは俺とルンダルを交互に見て少し笑った。


「良いぞ。そこのを使え」

「ありがとうございます」


 俺は二本の木刀を持ち、一本をエンドルに渡した。


「な、なんだよ!」

「お前がムカつく! その顔面を叩かせろ!」


 イケメンは死ね!


 おっと。

 俺の個人的感情が……。


「……俺は騎士見習いだ。剣で負けるとでも思っているのか!」

「知るか! 行くぞ!」


 と、その前にルアンを洋服と一緒に移動させる。

 動かないようにと言明して。


 行くぞ、オラ~!!


「少しは剣を握れる程度か……」


 冷静に分析してんじゃねーよ!


「こんな剣が俺に届く事はないぞ!」

「知ってるわ! バカ!」

「な!? 俺をバカだと?!」


 怒ったようだ。

 ちょろいな。


「バーカ! バーカ! お前はバカなんだよ。バーカ!」


 ルアンの笑い声が聞こえる。

 大笑いだね。


「ぐぐぐぅ……。ぶっ飛ばす!」

「やってみろ! バカが」


 杖を構える。


「<火球>」

「〈斬〉! 魔法使うのかよ! 卑怯だろ!」

「俺がいつ魔法しか使わないと言った?」


 フハハハ!

 正々堂々など強者がやる事だ。


 弱者の俺は卑怯に戦うぜ!


「〈飛斬〉」

「おま!?」


 あぶね!?


「エンダルてめえ! 斬撃飛ばすんじゃねーよ!」

「これも剣技だ!」

「「ぶっ飛ばす!!」」


 俺とエンドルの戦いは加速する。


「〈火球〉〈火球〉〈火球〉!」


 連続の俺の魔法を避けるか斬るかして防ぐエンドル。


 動きに余裕はあるが、近づく事はしない。


 彼は昨日、ダルダに使った重力系の魔法と〈蒼火〉も見ている。

 それを警戒しているのだろう。


 警戒の割合でいうならば重力系が大きいか。


「〈速度上昇〉〈身体能力上昇〉」

「〈水球〉!」


 水の連射じゃボケ!


「オラオラオラ!」

「何発撃っても当たらいさ!」


 余裕だなこの野郎!


「さっきみたいに攻撃してこいや!」

「騎士は一般人に危害を加える訳にはいかない。さっきのは威嚇だ」

「弱いくせに粋がるな!」

「お、俺は君より強いぞ!」

「ならさっさと倒せよ!」


 水魔法の影響で俺の周りはビチャビチャだ。


「速攻で勝負をつけさせてもらうぞ!」

「こい。お前が弱い事を証明させてやる」

「〈瞬斬〉」


 俺の視界からエンダルが消えた。


「〈壁〉!」

「遅い」


 俺の目の前にエンドルが現れる。


「終わりだ」


 木刀が振り下ろされる。


「お前がな。エンドル」

「な!? 足場が」


 なぜ、無意味に水魔法を連発したと思っている。

 足場がドロドロになっても気が付かないからだよ。


「さっき詠唱した〈壁〉は嘘だよ」

「なに!?」


 俺が使う事ができる同名称別魔法だ。


 〈壁〉でなく〈沼〉の魔法を使った。


 場所は正面にセットした。

 エンダルの性格なら真正面から攻撃を仕掛けると思ったがドンピシャだった。


「〈冷土〉」


 足場の水が氷る。


「これでお前の両足は使えない。俺の勝ちだ」

「……騎士を舐めるなよ。ガク!」


 エンドルから急に爆発的なエネルギーの放出を受け、俺は数メートルぶっ飛んだ。


「……奥の手か」

「いや、ただの本気だよ」

「この野郎……」


 だが、エンドルの本気を見れた。

 これぐらいで降参するかね。


「見ろ。本物の騎士の一撃を。〈騎撃〉」

「ガクぅ~あそぼ~」

「ルアン?!」


 俺とエンドルの攻撃の間にいつも間にかルアンがいた。


 エンダルは気が付いていないのか!?


 俺は無意識にルアンの元に駆け寄り、身を挺してルアンを守る。


 激しい轟音。

 俺の背中に攻撃の痛みはない。


「サラク~?」

「はい、そうですよ。えっと。……大丈夫でしたか? ガクさん」


 女神だ。


 そこには女神がいた。


「サラ~~!! あぁ~~ごわがったよ~~」

「はいはい。嘘ですね。私に抱き着きたいだけですね」


 なぜバレた?


「ガクさん。ルアンを守ってくれてあるがとうございいます。おかげで衝撃でルアンが傷つきませんでした」

「こちらこそありがとう。死んだって思った」

「フフフ。カッコ良かったですよ。ガクさん」


 それほどでもあるかな?


「な、なにが……」


 エンドルが攻撃を放った体勢から動いていなかった。


 現状を理解できていないようだ。


「サラク! アナタ、いつの間にこっちに来たのよ! それに、何やってるの? エンダル」


 シャルルが走ってきた。


 おや?

 仲が良くなったのかな?


 結構、いい雰囲気だ。


「エル。これはどういう事だ」

「教官!!」


 バファルは元々近くにいたようだ。


 周りを見回すと、結構人が集まっていた。


「あの技は友に向けるべき威力ではなかった。それにルアンちゃんに当たっていたら間違いなく死んでいただろう」


 俺の不注意もある。

 もっとしっかりしなくては。


「教官。ガクは俺を侮辱して―」


 スパーン。


 と、エンダルの頬を叩くシャルル。


「バカなんじゃないの? 自分を侮辱したヤツを倒したいって完全な私情じゃない。そんな事で騎士の技を使うな!」

「その通りだ。それにガク君はお前をワザと怒らせたんだ。分かれ」


 言うなよ。

 恥ずかしい。


 サラにケガはないようだ。

 いろいろ触ったけど、大丈夫だった。


 ルアンも大丈夫だった。


「お、俺は……」

「これで分かっただろう?」

「ガク……」

「俺はお前が思ってるほど強くもないし、助けられる程だ。それと、お前の質問の答えるよ」


 俺は一旦、言葉をためて心から言葉を放つ。


「……好きだからだ。その一点のみにおいて俺は世界で誰よりも彼女が好きだ。それだけは誰にも負けない」


 サラが好きな気持ちは誰にも負けんよ。


 身体のホクロの数とか知らないだろう?

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