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感謝

1日2話投稿。1話目。

 押忍!! 漢の中の漢、言葉はいならない。そう。俺の名は……ガク。……ちょっと~。照明さん。もうちょっとライトを俺に集中させて下さいよ~。いやいや、後ろにいる水着のサラにライトを集中させなくて……前言撤回もっとやれ~!


 騎士の宿舎からほど近い場所に宿屋があったのでそこに一泊する事にした。

 宿屋の名前は『犬耳ネコ尻尾』。


 営業しているのは普通に人だった。

 犬派と猫派の抗争かな?


 まぁ、そんな事をボ~と考えていろいろあった今日も終わる。


「……身体が痛い」

「ガクさん。大丈夫ですか?」

「あぁ……」


 サラが優しい。

 良い事だ。


「〈蒼火〉をあの大きさで出して、私が知らない魔法を使ったんですからそのダメージは当然です。もしかしたら死んでいたかもしれませんよ?」

「反省します。まさかキレるとあそこまで自分を見失うとは……」


 中級魔法〈蒼火〉。

 拳程の青い火の塊を出す魔法だが、魔力を膨大に込めて繰り出すと二メートルの塊になる。


 代償は口から血を吐く事。

 割に合わん。


「そう言えばガクさんって魔法を使う武器を使ってましたっけ?」

「いやいや、そんな余裕はなかったよ。よく分からないけど……発動……出来た……あれ?」

「あれ?」


 俺とサラで共にクエスチョンマークを浮かべる。


「ガ、ガクさん? 武器も無しに魔法を使ったんですか?」

「そ、そうかな? 武器とかスマホに入れたままだったし……」


 魔法を教わった時、発動には武器を使わないと使う事が出来なかった。

 なのに何故、あの時は使えたのか。


「こ、これは新発見ですよ!」

「おぉ~。戦闘に有利になるし、良い事だ!」

「うぅ~~……」

「「しぃ~~……」」


 マズイ。

 テンションが上がって大きな声を出してしまった。


 ルアンが起きてしまう!?


「……スゥ~~。スゥ~~……」

「「ふぅ~~」」


 良かった。

 再び眠ったようだ。


「ガクさん。今日はもう疲れたので寝ましょうか」

「そうだね。もう寝ようか」


 疲れて変な感じになりつつあるので今日はもう寝よう。


 部屋にベットは二つ。


 一つはルアンとサラ。

 もう一つは俺だけ。


 寂しいぜ~。



----------


 顔を何かがペチぺチと叩く何かによって起こされる。

 無意識に払い退ける。


 のを!


 一瞬で止めるのだ!!


「ルアン。どうした?」

「ガク~。おきた~。おはよう~」

「……ルアン。まだ外は暗いぞ?」

「ん~? あさだよ~?」


 ……スマホで時間を確認すると深夜四時。


 朝と言えば朝だが、夜と言えば夜だ。


「まだ、お外が暗いからもう少し寝よう、ルアン」

「いや! あそぶの~」


 あぁ……。

 俺の髪を引っ張らないで~。


「ルアン。お話をしてあげよう」

「……おはなし~?」


 おぉ。

 興味をひいたようだ。


「物語って言えば良いのかな? おとぎ話かな?」

「おはなしきく~!」

「よし。……肌寒いから俺の布団に入れ。風邪とかになったらダメだからな」

「は~い」


 何の物語にしようかな?

 う~ん。シンデレラにしようかな?


「むかし、むかし。あるところに―」

「スヤァ~~……」

「早いな。物語を喋ってもいないよ」


 どうしたんだろう。

 やっぱり、眠かったのかな?


「ルアンはガクさんが心配だったのだと思いますよ」

「サラ、起きてたのか」

「はい」


 流石だな。


「サラもおいで。俺が寂しい」

「フフフ。嘘ですね」

「バレてしまった。でも、サラと一緒に寝たいな」

「……では、失礼します」


 サラはゆっくりと俺の布団に入ってきた。

 少しサラの手足が冷たい気がした。


「大丈夫?」

「フフフ」


 心配してサラに聞いたら笑われた。


「どうしたの?」

「いえ、……今日はガクさんに何回も大丈夫と言ってもらえて元気をもらいました」

「そう言えば何回も言ってたわ」


 自分のボキャブラリーが少ないのを自覚した。

 クソ!

 もっとカッコイイセリフを言えたら良いのに!


「ガクさんは不思議です。落ち着きます。一緒にいるのが普通というか、傍にいて欲しいと思えます」

「あ、ありがとう」


 メッチャ嬉しい。


 けど、恥ずかしい……。


「私はガクさんに信じて欲しいと言っていましたよね?」

「そうだね」

「私は本当に浮かれていました」


 どういうこと?


「私は嘘や本当を見抜けます」

「そうだね。それが?」


 知ってますよ?


「ガクさんはそのように優しく私を包み、安らぎをくれます。ですが、今日の出来事で再認識しました」

「何を?」

「私はガクさんに救われているという事です」

「俺は……」


 そんなつもりはないのだが……。


「分かっています。ガクさんにそのような気持ちがない事は。だから私は女の子としてアナタの前で笑顔になれるんです」

「……なら、何で泣いてるの?」


 サラの目には涙が溜まっていた。


 俺はその涙を拭く。


「嬉しいのと悲しいのと寂しいのと私ってバカだな~ってのが溢れてしまって……」

「……大丈夫だよ」


 サラが安心するセリフってコレなのだろう。

 それ以外の言葉が出ない。


「本当にガクさんは嘘を付きませんね」

「そうかな? 嘘ついてるかもよ?」

「私の写真を無断で掲示板に載せていた事とかですか?」

「……サラ。俺は世界が平和なら良いかなって思うんだよね」

「話しを変えるのならもう少し上手くならないとダメですね。後、それ嘘ですよね?」


 あ、あれ?

 なぜバレた?


 どこから漏れた?


「気が付かないとでも?」


 サラが笑みのまま怒ってる。

 こ、こわい!?


「可愛いのを選んだから大丈夫だよ?」

「そいう事ではないです。後、そこは本心なんですね」


 もちろん!

 サラの写真に可愛くないモノは少ないが、より厳しい基準で選んでいるからな!


「まったく……。いろいろと考えてるのがバカらしくなってきますね」

「え? 俺、いろいろと考えてるよ?」

「何ですか? どうせエチィ事ですよね?」

「俺を何だと思ってるんだ。……そんな事当たり前じゃないか」


 デフォだ。

 通常運転がそれだ。


 逆にエロイ事を考えないで何を考えるというんだ。


「他に何を考えているんですか?」

「え? ルアンの服」

「……ガクさん」


 あれ?

 質問されたから言ったけど、怒ったかな?


「それは良いですね。何着程度考えているんですか?」

「え? 三十ぐらいかな。ルアンって小さいから何着あってもあまりかさ張らないし、可愛い服とか着せてあげたいし」

「良いですね」


 サラの目に力が宿った。

 やはり、サラもルアンには弱いようだ。


 俺は弱いんじゃないよ?

 無条件降伏してるんだよ?


「……明日、シャルルさんに謝ろうかと思います。少し言い過ぎました。彼女は私の事を気遣ってくれたのに……」

「泣かないの」

「ガクしゃ~ん」

「よしよし。分かったよ。俺も行くから。大丈夫だから」

「ありがどうございまずぅ~」


 サラ、感謝するのは俺の方なんだよ?


 君は知らないけど、俺は日本じゃ誰かの為に怒るような人間じゃなかったんだ。

 心が欠落したよな、死んだようなモノだった。


 そんな俺を変えてくれたのが君なんだよ。

 俺に立ち上がる事を教えてくれたのは、サラ。


 君なんだ。


 だから、俺が君に感謝をする事があっても感謝される事は何もしていないんだ。


 君の笑顔に俺は安心を覚えるし、君の隣は安らぎを感じる。


 君に名前を呼ばれれば心がトキメクし、手を握ると心臓の音が少し高まる。


 君が俺に笑顔を向けてくれる限り、俺も君に笑顔を向けよう。


 君がこんな俺を好きと言ってくるのなら、俺の全てを晒して君を愛する。


 君が俺の隣にいてくれるのなら、頑張って強くなって俺もすぐに隣に立つよ。


 君が俺を守ってくれるなら、俺は君の心を守ろう。


 待てってね。

 俺が強くなるまで。


 君が俺を信じてくれるから俺は自分を信じられるんだから。

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